仮想と混ざりあったリアル   作:黒牙雷真

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黄金林檎

エギルの店に行った翌日。雨が降る中、俺たちは昨日のレストランでヨルコさんにカインズが殺された凶器である短槍の製作者のグリムロックさんについて聞くことになった。

 

 

アスナ「ねぇ、ヨルコさん。貴方、グリムロックって名前に聞き覚えはある?」

 

ヨルコ「!?」ピクッ

 

ヨルコ「はい。昔、私とカインズが所属していたギルドのメンバーです」

 

ハチマン「…………」

 

アスナ「…………」

 

キリト「…………」コクリ

 

 

俺たちは一度顔を見合せてからキリトが頷いて『俺に任せろ』と示したので任せることにした。

 

 

キリト「実はカインズさんの胸に刺さっていた黒い槍。鑑定したら作成したのは、そのグリムロックさんだったんだ」

 

ヨルコ「!!」

 

 

キリトから短槍の製作者がグリムロックだと聞いてヨルコさんは目を見開き、口に手を当てて驚いていた。

 

 

キリト「なにか、思い当たることはないかな?」

 

ヨルコ「…………はい、あります」

 

ヨルコ「昨日、お話できなくてすみませんでした。忘れたい、あまり思い出したくない話だったし。でも、お話します」

 

 

そこからヨルコが語ったのは、ヨルコさんとカインズ、グリムロックが所属していたギルド『黄金林檎』での話だった。

 

 

約半年前にレアモンスターからドロップしたアイテムを巡り、ギルド内で派閥が生まれたらしい。

一つはギルドメンバーで使う。もう一つは質屋に売り、その資金をギルドのために活用するの二つ。

 

最終的には多数決で売りに出すことになった。

そして、ギルドマスターのグリセルダさんが最前線に売りに行ったが帰って来なかったらしい。

 

後にグリセルダさんが亡くなったことを『黄金林檎』のみんなは知ったらしい。

また、その死因は今だに分からないらしい。

 

このSAOはどうやって殺された、また死んだか等、死に方は分かるが、詳しいことは分からないのである。

 

 

キリト「そんなレアアイテムを持って圏外に出ることはないよな……」

 

ハチマン「だとすると睡眠PKか?」

 

アスナ「半年前なら、まだ手口が広まる直前だわ」

 

キリト「ただ、偶然とは考え難いな。グリセルダさんを狙ったのは指輪のことを知っていたプレイヤー、つまり……」

 

ハチマン「黄金林檎の残り7人の誰かだな」

 

キリト「中でも怪しいのは売却に反対した人間だろうな」

 

アスナ「売却される前に指輪を奪おうとしてグリセルダさんを襲った、ってこと?」

 

キリト「恐らく。で、グリムロックさんって言うのは?」

 

ヨルコ「彼はグリセルダさんの旦那さんでした。もちろん、このゲーム内だけですけど」

 

ヨルコ「それでグリセルダさんはとても強い剣士で美人で頭も良くて。グリムロックさんはいつもニコニコしている優しい方で、とってもお似合いで仲の良い夫婦でした」

 

ヨルコ「もし、昨日の事件の犯人がグリムロックさんなら、あの人は指輪売却を反対した三人を狙っているんでしょうね」

 

ヨルコ「指輪の売却に反対した三人の内、二人はカインズと私なんです」

 

キリト「!!」

 

アスナ「!!」

 

ハチマン「!!」

 

 

ヨルコさんから、驚きのカミングアウトをされて俺たちは驚愕のあまり詰め寄ってしまう。

 

 

キリト「じゃあ、もう一人は?」

 

ヨルコ「『シュミット』というタンクです。今は攻略組の……」

 

ハチマン「ああ、あのランサーか……」

 

ヨルコ「シュミットを知っているのですか?」

 

ハチマン「まぁな」

 

キリト「ボス攻略で顔を合わせる程度だけど」

 

ヨルコ「シュミットに会わせてもらうことはできないでしょうか?彼はまだ、今回の事件のことを知らないかも。だとしたら、彼もカインズの様に……」

 

アスナ「シュミットさんを呼んでみましょう。聖竜連合に知り合いが居るから本部に行けば何とかなるはずよ」

 

キリト「だったらまずは、ヨルコさんを宿屋に送ろう」

 

 

こうして、ヨルコさんを宿屋に送り俺たちは転移門へと足を運ぶ。

 

 

アスナ「君たちは今回の圏内殺人の手口をどう考えてる?」

 

キリト「大まかに三通りだな。まずは、一つ目は正当なデュエル。二つ目は既知の手段の組合せによるシステムの抜け道」

 

アスナ「まぁ、そんなところだよね。三つ目は?」

 

キリト「圏内の保護を無効化する未知のスキル」

 

ハチマン「例えば、『アサシン』とかな」

 

キリト「あるいはアイテムの存在。だが、この三つ目はまず無いだろうな」

 

ハチマン「それは俺も思う。アサシンもクリティカル率が上がる程度だろう」

 

アスナ「どういうこと?」

 

キリト「フェアじゃないんだよ。認めるのもなんだけど、SAOのルールは基本、フェアネスを貫いている」

 

ハチマン「だから、もしも俺たちが考えた様な物があるとしたら、既にこのゲームは今以上のデスゲームと化しているだろうよ」

 

アスナ「確かに……」

 

 

 

 

 

 

夕方、何とかシュミットと面談が出来たので、カインズが殺されたことと、ヨルコさんの話を伝えると顔が青くなり、震えながら「分かった」と言って同行してくれた。

 

 

シュミット「グリムロックの武器でカインズが殺されたというのは本当なのか?」ガタガタ

 

ヨルコ「…………本当よ」

 

シュミット「!?」ガタガタ

 

シュミット「なんで、今更カインズが殺されるんだ?!アイツが………アイツが指輪を奪ったのか?!」

 

シュミット「グリセルダを殺したのもアイツだったのか……。グリムロックは売却を反対した三人を全員殺す気なのか?俺やお前も狙われているのか」

 

ヨルコ「グリムロックさんに槍を作ってももらった、他のメンバーの仕業かもしれないし。もしかしたら、グリセルダさん自身の復讐なのかもしれない」

 

シュミット「え……?」

 

ヨルコ「だって、圏内で人を殺すなんてこと幽霊でもない限り不可能だわ」

 

シュミット「あ、ぁぁぁ……ぁぁ……」パクパク

 

 

シュミットはヨルコさんから幽霊と聞いた瞬間、鯉の様に口をパクパクとさせた。

 

 

ヨルコ「私、昨夜寝ないで考えた。結局のところ、グリセルダさんを殺したのはメンバー全員でもあるのよ!あの指輪をドロップした時、投票なんてしないでグリセルダさんの指示に従えば良かったんだわ!!」

 

 

ヨルコさんは恐怖のあまりか発狂し始めてしまう。そんな彼女を見た俺たちはあまりの狂気にたじろいでしまう。

 

 

ヨルコ「ただ一人。グリムロックさんだけはグリセルダさんに任せると言った。だから、あの人には私たち全員に復讐して、グリセルダさんの仇を討つ権利があるんだわ」

 

シュミット「冗談じゃない、冗談じゃないぞ。今更、半年も経ってから何を今更……」ガタガタ

 

シュミット「お前はそれで良いのかよ、ヨルコ?!こんな訳の分からない方法で殺されていいのか!?」

 

 

シュミットは今にもヨルコさんを掴み寄ろうとするので俺とキリトでシュミットを止めると窓側から【ザシュッ!】と何かが刺さる音が聞こえた。

 

その正体は窓辺に居たヨルコさんだ。ヨルコさんは目の焦点が合っておらず、やがて、窓の縁に手を置く。そして、ヨルコさんの背中には短剣が刺さっており、そのままヨルコさんは窓から落ちて行った。

 

それを見た、キリトはヨルコさんを助けようと走り出すが間に合わなかった。

そして、俺たちのところからでもヨルコさんに短剣を投げたであろうローブを着た犯人を目視できた。

 

 

キリト「ヨルコさん!」

 

キリト「ハチマン、アスナ。あとを頼む!」

 

 

キリトと何かを見つけたのか窓辺から飛び出し向かいの屋根に飛び乗った。

 

 

アスナ「バカ、ダメよ!」

 

ハチマン「アスナ、キリトのことは俺に任せろ!」

 

 

俺もキリトを追いかけるために窓辺から飛び出し向かいの屋根に飛び乗り、キリトを追う。

 

 

ハチマン「あのバカ!むやみやたらに突っ込みやがって………」

 

 

俺のステータスはキリトよりAGIが高いので直ぐに追い付いた。

 

 

ハチマン「アイツがヨルコさんを?」

 

ハチマン「なら!」

 

 

犯人を捕まえるためにAGI全開で走ると犯人には懐から転移結晶を取り出した。

 

 

ハチマン「転移結晶!?」

 

 

直ぐに転移される前にコートからアイアンピックを引き抜き投擲スキルのシングルシュートを放つ。

また、キリトも俺と同じ様にアイアンピックを投げるが煙突に邪魔されてしまう。

 

そして、犯人が転移先を言おうとした時、街の鐘の音が偶然にも鳴ってしまい転移先が分からなかった。

 

 

ハチマン「クソッ!」

 

 

その後、直ぐにキリトと合流する。

 

 

ハチマン「キリト!」

 

キリト「ハチマン?」

 

ハチマン「このバアタレ!むやみやたらに突っ込むな」

 

キリト「すまん……。ところでハチマンは奴の転移先を聞いたか?」

 

ハチマン「こっちも鐘の音でダメだった」

 

キリト「そうか……」

 

 

二人して、犯人の転移先が聞けなかった事に悔しい思いをしながらアスナたちがいる宿屋に戻る。

 

 

【コンコンコン!】

 

 

アスナ「誰?」

 

ハチマン「アスナ、俺だ。キリトを連れて帰ってきた」

 

アスナ「分かったわ、入って」

 

 

アスナに許可をもらったので部屋に入るとそこには細剣をこちらに構えているアスナがいた。

 

 

ハチマン「おいおい」

 

アスナ「ごめんなさい。用心にと思って」

 

ハチマン「なるほど」

 

アスナ「それとキリトくん!貴方、バカなの?」

 

キリト「バカとはなんだ!バカとは!」

 

アスナ「あんな行動をバカと言わずして何て言うのよ!犯人の手口が分からないのに、あんな無茶をして!」

 

キリト「…………」

 

アスナ「それでどうだったの?」

 

ハチマン「結果からして逃げられた」

 

キリト「それに宿屋の中ならシステム的に保護されている。ここなら、安全だと思い込んでいた」

 

キリト「クソッ!」

 

 

キリトは怒りのあまり部屋の壁を殴るが紫色の《immortal object》の表示が出現する。

 

 

シュミット「あのローブはグリセルダの物だ……。あれはグリセルダの幽霊だ!俺たち全員に復讐を仕掛けたんだ!」ガタガタ

 

シュミット「はははは。幽霊なら圏内でPKするくらい楽勝だよな……。あっはははは」ガタガタ

 

シュミットは恐怖のあまり、笑い狂っていた。

 

 

ハチマン「幽霊なんかじゃねぇよ。幽霊なんかが転移結晶なんて使うかよ」

 

キリト「ああ、二件の圏内殺人には何らかのシステム的なロジックが存在するはずだ。絶対に」

 

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