索敵スキルでラフコフたちが離れたことを確認し終わると俺たちはヨルコさんたちの方に体を向ける。
キリト「また、会えて嬉しいよ。ヨルコさん」
ヨルコ「全部終わったら、キチンとお詫びに伺うつもりだったんです、と言っても信じてもらえないでしょうけど」
シュミット「キリトにハチマン、助けてくれたことには礼を言うが何で分かったんだ?あの三人がここへ襲いにくることが」
キリト「それはハチマンのお陰さ」
シュミット「ハチマンの?」
キリト「ハチマンが全ての真相を解き明かし、お前たちを殺して口止めをすると予測したんだ」
シュミット「口止め?」
キリト「なぁ、カインズさんにヨルコさん。アンタたちはあの二つの武器をグリムロックさんに作ってもらったんだよな?」
ヨルコ「はい、彼は最初は気が進まないと言っていました。もう、グリセルダさんを安らかに眠らせてあげたいって」
カインズ「でも、僕らが一生懸命に頼んだら、やっと武器を作ってくれたんです」
ハチマン「残念だが、グリムロックがアンタらの計画に反対したのは自己保身のためだ」
ヨルコ「え?」
カインズ「え?」
キリト「圏内PKなんて派手な事件を起こし、大勢の注目を集めれば、いずれは誰かが気づいてしまうと思ったんだ」
ハチマン「俺たちもその手口に気づいたのは30分くらい前の事さ」
ハチマン「グリムロックはグリセルダさんと結婚していた、なら殺されたグリセルダさんが持っていた指輪はどうなる?」
ハチマン「リアルの夫婦が死別した時、死んだ人の遺産は遺言書等が無ければ残された人の物になる」
シュミット「グリムロックが……あのメモの差出人で、グリセルダを殺したのか?」
キリト「殺したのはグリムロックじゃなく、レッドの連中だ」
ヨルコ「そんな……あの人が真犯人だなんていうなら、何で私たちの計画に協力してくれたんですか?」
ハチマン「だから、言ったろう?口止めだって」
キリト「そのメモのことを知っているシュミットをあぶり出し、ヨルコさんとカインズをここで殺すのが元々の目的だったんだろう」
シュミット「そうか。だから、あの殺人ギルドの連中がここに」
キリト「おそらく、グリセルダさんを殺す依頼をした時にパイプがあったんだろう」
ヨルコ「そんな…………」
ヨルコさんはまさかの真実に倒れそうになるが、それをカインズが受け止める。
アスナ「二人とも、居たわよ」
後ろから別行動をしてもらっていたアスナがグリムロックを連れてやって来た。
キリト「詳しいことは本人に直接聞こう」
グリムロック「やぁ、久しぶりだね、みんな」
ヨルコ「グリムロックさん…………貴方は、貴方は本当に?」
グリムロック「…………」
ヨルコ「なんでなの、グリムロック!何で、グリセルダさんを……奥さんを殺してまで指輪を奪ってお金にする必要があったの?!」ポロポロ
グリムロック「フッ。金?金だって?」フフフフ
グリムロックはヨルコさんの『金』の言葉で笑い始め、笑いが終わるとグリムロックは心の内を語り始めた。
グリムロック「金のためではない。私は、私はどうしても彼女を殺さねばならなかった。彼女がまだ、私の妻である間に」
グリムロック「彼女はリアルでも私の妻だった」
「「「「なっ!?」」」」
グリムロック「一切の不満もない理想的な妻だった。可愛らしく従順で、ただの一度も夫婦喧嘩すらしたことがなかった」
グリムロック「だが………共にこの世界に囚われた後、彼女は変わってしまった。強要されたデスゲームに怯え、恐れ、竦んだのは私だけだった」
グリムロック「彼女はリアルに居た時よりも遥かに生き生きとし充実した様子で、私は認めざるを得なかった。私の愛した『ユウコ』は消えてしまったのだと」
グリムロック「ならば……ならば、いっそのこと合法的殺人が可能なこの世界に居る間にユウコを、永遠の思い出の中に封じ込めてしまいたいと願った私を誰が責められるだろう?」
キリト「そんな理由で、アンタは奥さんを殺したのか?」
グリムロック「十分過ぎる理由だ。君にもいずれ分かる時が来るよ、探偵くん。愛情を手に入れ、それが失われようとした時にはね」
ハチマン「それはアンタの価値観だ」
アスナ「そうだわ。貴方がグリセルダさんに抱いていたのは愛情じゃない、貴方が抱いていたのはただの『所有欲』だわ!」
グリムロック「!?」
ハチマン「愛情っていうのは、どんなに目が腐っていて、どんなにダメな兄貴でも、それでも家族として時には優しく、そして時には厳しく接してくれて、何か不満があればちゃんと相手に伝えてくれる。そういうことを愛情と言うんだ」
ハチマン「お前みたいな野郎は、奥さんに少しも愛情なんてものを注いでいない!アンタは今まで奥さんである、グリセルダさんの何を見てきた?」
ハチマン「グリセルダさんはアンタが塞ぎ込んでから代わりに私がこの世界で明るくならないとって、生き生きとした姿を見せていたんじゃないのか?」
グリムロック「私は、私は…………」
グリムロックは俺たちの話を聞いて項垂れる様に座り込んでしまった。