キリトがパーティーに加わって一時間ほど、ダンジョンを歩いていると出口を見つけた。
キリト「おっ、出口だ」
ハチマン「やっとかよ……」
出口から出るとそこは広大に広がる渓流だった。
キリト「これはすごいなぁ……」
ハチマン「ああ……」
渓流の水の透明度や生い茂る木々や辺りから聞こえる鳥の囀り。
暇があれば、アスナやシリカ、エギル、クラインたち風林火山を誘ってキャンプに来るのも悪くないほど綺麗だった。
奥にどんどん進んで行くと周りが滝で覆われている開けた場所に着いた。
キリト「ここで行き止まりだな」
ハチマン「そうだな。あるのは台座に鎖を巻き付けられて突き刺さっている剣だけだな」
キリト「どう思う?」
ハチマン「十中八九、剣を抜いたらイベントが発生、ボス戦にシフト」
開けた場所の奥には緑の勇者に出てくる、マスターなソードが刺さっていそうな台座の上に柄は黒で刀身は菫色の片手剣が刺さっているのだ。
また、剣の型は黄金騎士の剣に酷似している。
キリト「ここまで来て、何の収穫も無しで帰るのもな~」
ハチマン「しゃあねぇ。キリト、お前の新しい剣の威力、見せてもらうからな?」
キリト「はいよ」
キリトはシステムメニューを開き、アイテムストレージから白緑色の片手剣を取り出した。
ハチマン「それが新しい剣か?」
キリト「ああ。名前はダークリパルサー」
ハチマン「闇を払う者、ね」
キリトから新しい剣の説明を聞いたあと、俺は台座へと近付き。台座に刺さっている菫色の剣の柄を握り全力で引っ張りあげる。それに合わせて、鎖がジャリジャリと音を鳴らす。
ハチマン「くっ!(固い!)」
キリト「ハチマン、頑張れ!」
ハチマン「ぐぅぅぅ、ウオオオオオオ!!」
柄にもなく、雄叫びを上げながら全力で菫色の剣を引き抜く。すると、鎖がパキンッと砕ける音と共に俺は剣を手放して尻餅を着いてしまう。
ハチマン「うおっ!?」
キリト「ハチマン、大丈夫か?」
ハチマン「ああ、それより剣は?」
辺りを見渡すが俺が引き抜いた剣は落ちていなかった。それと尻が水に濡れて変な感触。
それから約5秒が経つと頭上から何が落下しながら風を切る音が聞こえたので、そこから飛び退く。
すると、飛び退いた場所からガキンッと金属音が聞こえてきた。
ハチマン「なんだ!?」
慌てて、先程までいた自分の場所を見ると台座から引き抜いた菫色の剣がそこには突き刺さっていた。
キリト「ハチマン、信じられないとは思うが、あの剣、独りでに動いてるぞ」
ハチマン「なに!?」
再び、慌てて視線を菫色の剣の方へ向けると剣は独りでに動きクルクルと回転すると、剣先を此方へ向けて突撃してくる。マジで、何処のセ○べ○レ○タだよ!
ハチマン「うわっ!?」
キリト「くそっ!モンスターの反応がないぞ!?」
ハチマン「茅場の野郎、どんな無茶苦茶なイベントを作ってんだよ!?」
俺たちはひたすら菫色の剣を回避、回避、回避する。
しかし、ここであることがわかった。どうやら、あの剣は俺を狙っているようだ。もしもできるなら、叢雲と表された少年と同じように、あの菫色の剣を手懐けてみせることにした。
ハチマン「来い!」
キリト「ハチマン!?」
俺はキリトから離れるように菫色の剣が突き刺さっていた台座に走りだす。
キリト「ハチマン、後ろから来てるぞ!」
ハチマン「…………。(まだだ、もう少しもう少しだ!)」
キリト「ハチマン、危ない!」
ハチマン「ここだ!」
俺は台座に踏み台に飛び上がり空中で体術スキルの《弦月》を使い、後方宙返りをしながら菫色の剣の柄を握る。
ハチマン「そこだっ!」
ハチマン「のうわあああああ!?」
柄を掴んだのは良いが、そのあと菫色の剣は暴れ馬の如く、俺もろとも暴れだす。
その暴れようは、酷い物である。高く舞い上がると途端に急降下をしたり、俺を地面に引き摺りながら暴れたり叩き付けたりで散々だ。
やがて、暴れ飽きたか、または体力が尽きたのか、はたまた俺のことを自分の主と認めたのか菫色の剣は俺を台座の上へと優しく降ろした。
ハチマン「………ん?」
降ろし終わると菫色の剣は刀身を左手に乗せろと言っているかのように左へ倒れた。
そのあと直ぐにリザルトが開かれ、そこには《Instinct fang》と書かれていた。
ハチマン「インスティンクト・ファング。理性の次は本能かよ」
どうやら、これでこの菫色の片手剣は俺の物となったようだ。
キリト「なぁ、ハチマン。その剣、ドロップしたのか?」
ハチマン「ああ、そうみたいだ。名前は《インスティンクト・ファング》だとさ」
キリト「インスティンクト・ファング………本能の牙?変な名前だな」
ハチマン「まったく、リースンモンスターといいコイツといい。なんでこう、俺の武器は厨二くさいんだよ!」
キリト「それより、性能を見ようぜ!」
ハチマン「わかった」
《インスティンクト・ファング》の横にあるシステムメニューをタップして、《インスティンクト・ファング》の性能を見る。
キリト「す、スゲェ………」
ハチマン「だな……」
なんと、《インスティンク・ファング》の性能は俺たちが現在所持しているどの剣よりも性能が上なのだ。それに敏捷値に比例してクリティカル率が上昇する特性付きだ。
ハチマン「てか、耐久値がヤバい」
何故か、まだ使ってもいないのに耐久値が七割を切っていた。けれど、元々の耐久値は《リースンモンスター》より上なので嬉しい。
キリト「多分、さっき地面を擦りながら暴れてたからじゃないのか?」
ハチマン「なのか?」
キリト「よし!これから、俺が知ってる一番腕の良い鍛治師の所へ行こうぜ?」
ハチマン「なら、そうするか。もう、疲れたから転移結晶で帰りたい」
キリト「貴重な転移結晶をここで使うなよ。前衛は俺が引き受けるからさ」
ハチマン「じゃあ、頼んだ」
キリトに前衛をすべて任せて俺はアイアンピークで牽制していると剣を振りながらキリトが声をかけてくる。
キリト「そういえばさ」
ハチマン「なんだ?」
キリト「アルゴの情報、間違ってたな」
ハチマン「そういえば、そうだな」
アルゴの情報は鉱石だったはずなのに、何故か俺は剣を手に入れたのだ。アルゴのミス?それとも何かしらのトリガーを俺とキリトのどちらかが達成していたのか。今になっては分からないことだ。
~それから2時間後~
ハチマン「やっと主街区についた~」
キリト「さぁ、あとは転移門で第49層のリンダースに行くだけだ」
ハチマン「はぁ………早くお家に帰りたい」
転移門をくぐり、リンダースの街の中をキリトに連れられて歩くこと10分。
小川に小さな石橋があり、その直ぐ側には水車が備え付けられている一軒屋があった。
一軒屋の扉の前に立つと《リズベット武具店》と看板がかけられていた。
キリト「ここは、俺のダークリパルサーを作ってくれた店なんだ」
ハチマン「へぇー、なら任せられるな」
キリトを先頭に《リズベット武具店》の中へと入り口のベルをカランコロンッと鳴らしながら入る。
キリト「おーい、リズ。いるかー?」
少し大きめな声でキリトは『リズ』と呼ばれるプレイヤーを呼んだ。
リズ「五月蝿いわねー!叫ばなくとも聞こえるわよ!」
キリトの声に反応したのかカウンターの横にある階段からピンク色のショートヘアで前髪の右側には髪留めを着けて、メイド服のような格好をした女性プレイヤーが出てきた。
キリト「おー、いたいた」
リズ「で、何の用?今、ちょっと忙しいんだけど」
キリト「こいつの新しい剣を整備してほしいんだよ。ついでに俺のも」
リズ「はぁ~。仕方ないわね」
キリト「サンキュー、リズ」
リズ「で、アンタ、名前は?」
ハチマン「え!ハチみゃ………ハチマンです」
キリト「ぷふっ!」
ハチマン「おい、キリト。てめえ、笑ったな?」
キリト「だって、流石に普通そこで噛まないだろ?」
ハチマン「うるせ!ボッチなんだから仕方ねぇだろう」
俺とキリトが漫才をしているとリズベットさんが何かを思い出そうと頭を捻っていた。
リズ「ハチマン?ハチマン?あっ!」
リズ「アンタが《灰の剣士》のハチマン!?」
ハチマン「ああ、それで間違いねぇよ」
リズ「へぇー、アンタが。こんな目の腐った奴にアスナがねぇ~」
ハチマン「目が腐ってるのは認めるが、アスナがなんだよ?」
リズ「ありゃ、これはアスナも苦労するわね」
ハチマン「だからアスナがなんだよ?」
リズ「それは本人に聞きなさい。それより、早く剣を出して」
ハチマン「わかった」
キリト「よろしく、リズ」
それからリズベットさんに俺たちの剣を渡してメンテナンスをしてもらったのだが、俺の二本剣を見た時は「魔剣に聖剣並みのステータス!?」と言われてしまった。
それとキリトがリズベットは《二刀流》スキルのことを知っているようで俺も今後メンテナンスをしてもらう立場になるだろうし、なによりキリトが信頼しているので《二刀流》スキルのことを話した。
他にはリズベットさんをリズと呼ぶことになった。