仮想と混ざりあったリアル   作:黒牙雷真

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S級料理

 

 

 

アスナ「一応、弁明を聞きましょうか?」

 

 

エギルの店からアスナによってズルズルと引き摺られ連行された場所は何と、第61層の《セルムブルグ》にあるアスナの家だ。

また、俺たちは向かい合いながら椅子に座っている。

 

 

ハチマン「弁明って、お前な………悪かったよ。アスナよりも先にキリトと先約かあって、忘れてたんだよ。すまん」

 

アスナ「そう、分かったわ。ところでさっき、エギルさんのお店で何を売ろうとしてたの?」

 

ハチマン「ああ。それなら、コレだ」

 

 

俺はメニューウィンドウを開き、《ラグー・ラビットの肉》を見せるとアスナは目を見開き、驚きの表情をする。

 

 

アスナ「なっ、ら、ラグー・ラビット!?」

 

ハチマン「キリトと攻略の帰りに偶然にも見つけてな。俺も料理スキルはあるがコイツを扱えるか不安でな」

 

アスナ「…………」

 

ハチマン「だから、って…………アスナ?」

 

アスナ「フフーン!」

 

 

何やらアスナは席を立ち上がり、胸を張る。

オオー!やはりなかなかの物をおも…「ハチマンくん?」………ごめんなさい。

 

 

アスナ「私、先週に料理スキルをコンプリートしたんだ。どう、凄いでしょう?」

 

ハチマン「それは凄いな。あっ、ならこの肉で何か作ってくれないか?メッセージの件の御詫びも兼ねて」

 

アスナ「やったー!なら、どんな料理が良いとかってリクエストはあるかしら?」

 

ハチマン「いや、強いていうならトマトを使ってない料理なら」

 

アスナ「この世界にトマトは無いわよ。似たような物はあったけど。(ハチマンくんって意外と子供っぽいんだ)」

 

ハチマン「あるのかよ………」

 

アスナ「それじゃ、メニューはシチューにしましょうか。《ラグー》はフランス語で煮込むって言うし」

 

ハチマン「別にアスナの料理の腕を疑ってる訳じゃないから任せるよ」

 

アスナ「じゃあ、座って待っててお茶も出すから」

 

ハチマン「なら、そうさせてもらうわ」

 

 

それから料理が出来るまで俺はアスナに入れてもらった紅茶?を飲みながら小説を読んで待つことにした。

約30分ほど経つとキッチンの方から食欲をそそる美味そうな匂いが本を読んでいる俺の鼻に届く。

 

 

アスナ「ハチマンくん、できたわよ」

 

ハチマン「はいよ。なにか、手伝うことはあるか?」

 

アスナ「なら、付け合わせを作ったからテーブルに持っててくれる?」

 

ハチマン「あいよ」

 

 

アスナの指示の下、シチューに合わせてフランスパンのような物とサラダなどをテーブルへと運ぶ。そして、ある程度、品を並べるとピンクのミトンを着けてシチューが入った鍋を持ってくるアスナから声がかかる。

 

 

アスナ「お待たせしました」

 

ハチマン「おお…………」

 

 

鍋を鍋式の上に置き。アスナが鍋の蓋を取ると中から先ほどとは比べ物にならないほど、とても美味そうな匂いが俺の鼻に届く。

 

 

ハチマン「…………」ゴクリ

 

アスナ「さっ、座って」

 

ハチマン「お、おう」

 

 

二人で向かい合うように座るとアスナが先ほど俺が持ってきたシチュー皿にラグー・ラビットのシチューを装ってくれる。

 

 

アスナ「はい、ハチマンくん」

 

ハチマン「おう。サンキュー」

 

アスナ「それでは…………」

 

 

「「いただきます!」」

 

 

ハチマン「パクッ………………んっ!!」

 

アスナ「パクッ…………んっ!!」

 

 

 

なんだよ、これ!?

ヤバイ、美味過ぎるだろう。このシチュー!

リアルの飯を含めても、こんな美味い料理は食べたことがないぞ?

アスナの料理、恐るべし。

 

そして、その美味い料理を作った張本人を見ると…………。

 

 

アスナ「はぁぁ~…………」フニャ~

 

ハチマン「…………」

 

 

どう説明して良いのか分からないが、所謂トロけ顔とでも言うのだろうか?

アスナも《ラグー・ラビットの肉》で作ったシチューが美味過ぎて表情がいつもの気を張り詰めたような顔ではなく、表情筋が自然的で柔らかで幸せそうなトロけ顔をしている。

 

あっ、別にエッチい奴じゃないからな?ハチマンウソツカナイ。

 

そんなこんなで、俺たちはS級食材を目一杯堪能したのである。

 

 

「「ふぅ~………」」

 

 

シチューを堪能した余韻に浸りながらアスナが淹れてくれた紅茶を楽しんでいるとアスナが口を開く。

 

 

アスナ「S級食材なんて、二年も経つのに始めて食べたわ。今まで頑張って生き残ってて良かった………」

 

ハチマン「ゲームなのに、リアルの飯よりも美味いっておかしいだろう」

 

アスナ「不思議ね………。なんだが、この世界で生まれて今までずっと暮らしてきたみたいな、そんな気がするわ」

 

ハチマン「そうだったら、どれだけ良かっただろうな。俺もリアルのことを………妹のことを思い出さない日がある」

 

アスナ「攻略のペース自体落ちてるわ。ハチマンくんやキリトくんがあんなに頑張ってるのに……皆、この世界に馴染んできてる」

 

ハチマン「…………」

 

アスナ「でもね、私は帰りたい。だって、あっちでやり残したこと、いっぱいあるから」

 

ハチマン「俺は…………」

 

 

俺はどうなんだ?

もしも、仮にこの世界で死んだら、リアルで待ってるアイツが俺のことを気遣う必要は無くなるんじゃないのか?自由に自分のしたいことをできるんじゃないか?

 

だったら、俺は…………アイツの足枷になっているんじゃないのか?

 

そんなことを考えていると思考の海へと溺れて行くとアスナの声で我に返る。

 

 

アスナ「ハチマンくんは、リアルでやりたいこととかないの?」

 

ハチマン「いや、これと言ってないな。でも、俺たちも頑張らなきゃいけない理由があるから」

 

 

【この世界を終わらす】。これだけは何が何でもやり遂げなければならない、絶対に。

サチとの約束を破る訳にはいかない。

 

サチのことを思い出すと、ふと思ってしまった。

もしも、今もサチが生きていたら。今、目の前でテーブルを囲んでいたのはアスナではなく、サチだったのではないかと思いアスナを見つめてしまう。

 

すると、アスナが変なことを言い出した。

 

 

アスナ「あ、あ………やめて」

 

ハチマン「は?」

 

アスナ「今まで、こういう雰囲気になった男性プレイヤーから、何度か結婚を申し込まれたわ」

 

ハチマン「安心しろ。俺はもう、昔みたいに簡単に誰かを好きになったりしない」

 

ハチマン「それに…………もう大切な誰かを失うのはごめんだ」

 

アスナ「誰かを失って…………もしかして、それはギルドに入らないのと何か関係してるの?」

 

ハチマン「!?」ピクッ

 

アスナ「そう………なんだ」

 

ハチマン「キリトかクラインから聞いたのか?」

 

アスナ「ううん。噂で聞いたくらい」

 

ハチマン「そうか………」

 

 

それから少し重い沈黙が続くとアスナが何か決心を決めたのか両手を合わせてパンッと鳴らしてから、ある提案をする。

 

 

アスナ「よし、ハチマンくん」

 

ハチマン「なんだよ?」

 

アスナ「私とパーティーを組みましょう?」

 

ハチマン「は?なんで?」

 

アスナ「ボス攻略パーティーの編成責任者として、君が噂ほど強い人なのか確かめたいと思ってたところだし」

 

アスナ「それにまだ、私はメッセージの件を許すとは言ってないわよ?」

 

ハチマン「なっ!?くっ…………言われてみれば」

 

アスナ「他には私の実力もちゃんと教えて差し上げないとね」

 

ハチマン「アスナのギルドはそんな簡単に自由行動が許されるのか?」

 

アスナ「うちは別にレベル上げノルマとかないし」

 

ハチマン「じゃあ、あのエギルの店に置いてきぼりにした奴は?」

 

アスナ「置いてくるし」

 

ハチマン「…………」

 

アスナ「それとも私のパーティー組むの、そんなに嫌なの?」上目遣い

 

 

ねぇ、それズルくない?俺が女子に免疫が無いのを知っててやるんだぜ?

でも、これだけ押してもダメなら諦めるしかないけど。俺の実力を知りたいならアイツも道連れにしてやる。

 

 

ハチマン「はぁ~。分かった、組むよ。ただし!」

 

アスナ「ただし?」

 

ハチマン「キリトも一緒だ。俺はアイツと組んでるからアイツの実力も知ってて損はないだろう?」

 

アスナ「そうね、分かったわ」

 

 

 

 

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