《軍》の奴らを追うことにした俺たちは道中、運が悪いことにリザードマンの集団にエンカウトしてしまい。安全エリアを出てから、かれこれ30分は経過しているが、その間に《軍》の奴らに追い付くことも撤退して来て鉢合わせこともなかった。
ハチマン「居ないな…………」
クライン「この先はボス部屋だけなんだろう? ひょっして、もうアイテムで帰っちまったんじゃねぇか?」
おどけたようにクラインがそう言うが、俺たちはそうではないと感じた。ボス部屋へと続く長い回廊を進んで行くに連れて足取りが早くなる。
そして、半ば程まで進んだ時に、一番恐れていたことを知らせる音と悲鳴が回廊内を反響しながら俺たちの耳へと届いた。
「うあぁぁぁぁ…………」
ハチマン「!?」
アスナ「!?」
キリト「!?」
クライン「!?」
ハチマン「アスナ、キリト!」
キリト「分かってるっ!」
アスナ「バカ………!」
俺たち、三人は悲鳴が聞こえたと同時にAGIが出せる最大の速度でクラインたちを置いてボス部屋へと走る。
そして、ボス部屋に近くなれば近くなるほど、轟音と悲鳴が大きくなっていく。
キリト「おい!大丈夫か!」
キリト「…ッ!!」
ハチマン「…ッ!!」
アスナ「…ッ!!」
ボス部屋に着いた時に俺たちが見たのは地獄絵図のような光景だった。床一面に青い炎が吹き上げている。その中央では此方に背を向けて屹立する、青い悪魔《グリームアイズ》が《軍》の奴らを蹂躙していた。
また、ボスのHPは一段減って、残り三段。他には《軍》の奴らの人数がもともと十二人のはずが八人しか居ない。つまり、その四人は転移結晶で脱出したか、あるいは…………。
そんなことを考えているとキリトが《軍》の奴らに大声を上げた。
キリト「何をしている!早く転移結晶を使え!!」
軍「ダメだ………!け………結晶が使えない!!」
ハチマン「なっ………」
キリト「嘘だろう………」
アスナ「今まで、ボスの部屋にそんなトラップなかったのに…………」
ハチマン「27層と同じトラップ…………」
結晶無効エリアの言葉であの時の光景が脳裏にフラッシュバックし、俺は全身が震えてしまう。
全身が震えているとボス部屋にいる。コーバッツが剣の切っ先をボスへ向けて叫ぶ。
コーバッツ「我々、《解放軍》には撤退の二文字はありえない!戦え!戦うんだ!」
キリト「バカ野郎……!!」
コーバッツの無謀な指示にキリトも思わず叫んでしまった。
キリトが叫んでから直ぐに、ようやくクラインたち六人が追い付いてきた。
クライン「おい、どうなってんだ!」
クライン「…ッ!?」
キリト「ここでは、転移結晶が使えない。俺たちが切り込めば退路は開けるかもしれないが………」
クライン「何とかならないのかよ……」
ハチマン「…………」
可能性はある………。けれど、これにはキリト、アスナ、クラインたち《風林火山》の助力が必要不可欠。他にも、不安要素はあるがやるか?
けれど、失敗したら確実に誰かが死ぬ。
そんなことを頭の中でグルグルと考えているとコーバッツが新たな指示を出した。
コーバッツ「全員……突撃……!」
ハチマン「はっ!」
キリト「やめろ……ッ!!」
余りにも無謀な突撃だった。これが、残り僅かのHPしかないボスなら、まだ分かる。
しかし、コーバッツがやったのは無策で無謀な突撃だ。
八人全員で攻撃しても、今は焦りや恐怖で満足にソードスキルも繰り出せずに混乱するだけ。故に、攻撃するよりも防御を主体にした態勢で、一人ずつスイッチしてダメージを蓄積しながら円を描くように入り口へ向けて撤退するのが得策だ。
なのに、コーバッツがもたらした結果は………ボスのブレス攻撃を受けてしまい、態勢が崩れ。その隙にボスがソードスキルを放ち。大ダメージになる。
そして、止めにすくい上げる様な攻撃でボス部屋の入り口ギリギリに誰がボスの頭上を越えて落下してくる。
その誰かは………愚策に出たコーバッツ、本人である。
キリト「おい、しっかりしろ!?」
キリトが吹き飛ばされ落下したコーバッツに駆け寄るとコーバッツが装備している兜の耐久値が尽きたのかポリゴンと化し。兜か無くなったことにより、コーバッツの顔が露になるとコーバッツは涙を泣かしながら──────
コーバッツ「あ………ありえない……」ガシャッ!
──────ポリゴンと化した。