仮想と混ざりあったリアル   作:黒牙雷真

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胸の内

平塚先生に一言行ってから中庭に出て、自販機でMAXコーヒーを買い、一気に煽る。

 

 

八幡「んっぷは~。すぅ~、はぁ~」

 

 

深く深呼吸をして精神を落ち着かせようとしても、奴の、PoHの甲高い、笑い声が頭の中をリピートする。

 

 

PoH『クッハハハハハ!』

 

八幡「クソッ!」グシャ!(マッ缶潰し)

 

明日奈「八幡くん…………」

 

八幡「明日奈か…………どうしたんだ?平塚先生の所に居なくいいのか?」

 

明日奈「うん。今は君が苦しんでるのに他のことを気にしてなんていられないよ」

 

八幡「俺は別に…………」

 

明日奈「手、震えてたよ……さっき」

 

八幡「ッ!?」ピクッ

 

明日奈「今もそう。君はいつも自分の中に押し込んで、抱え込んで、閉じ込めてしまう」

 

 

明日奈の言葉通り、右手を見るとブルブルと無意識のうちに震えていた。

 

 

八幡「…………」

 

明日奈「もっと、私を頼っていいんだよ?どんな八幡くんになっても私が、元の…………私とユイちゃんが大好きで、心から愛している八幡くんに戻してあげるから」

 

八幡「…………分かった。すまないが、明日奈。少しだけ休んでいいかな?ちょっと、疲れたよ」

 

明日奈「うん、いいよ。私が君を…………あなたを癒してあげる」ホホエミ

 

 

明日奈と共に、こっちの世界の俺の記憶を頼りにベストプレイスに向かい。俺は明日奈に膝枕をしてもらい、少し眠ることにした。   

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《side明日奈》

 

 

 

 

八幡「すぅ~、すぅ~」

 

明日奈「………グスッ」ナミダメ

 

明日奈「どうしたら、本当の意味で君を癒してあげられるのかな…………。胸の奥が痛いよ、君のそんな辛くて苦しそうで悲しい顔を見てるのは……。自分の無力さに腹が立つ」ナデナデ+ポロポロ

 

八幡「すぅ~、すぅ~」ZZZZ

 

明日奈「本当…………私って無力だな。今思えば、SAOの時も須郷の時も八幡くんに助けてもらってばっかりだな、私」ポロポロ

 

ユイ『ママ?』

 

明日奈「ごめんね、ユイちゃん。ママ、少しだけ泣き虫になるね」ポロポロ

 

 

それから10分くらいだろうか、私はその間ずっと八幡くんを起こさないように声を押し殺して泣いた。

 

 

 

ユイ『大丈夫ですか、ママ?』

 

明日奈「うん!一通り泣いたら、スッキリしたから」ニコ

 

ユイ『なら、良かったです』

 

明日奈「ありがと、ユイちゃん。でも、もうユイちゃんに触れられないんだよね……」

 

ユイ『そうでもないですよ?』ピカーン!

 

明日奈「え?きゃっ!?」

 

 

ユイちゃんが何か言ってから私の携帯がいきなり光りだした。その光が眩しくて私は目を瞑ってしまう。光が段々弱くなってきたので目を開ける。

 

 

明日奈「一体、今の光は何?」

 

ユイ「大丈夫ですか、ママ?」キョトン

 

明日奈「え?ユイちゃん……なの?」

 

ユイ「はい、そうですよ」

 

 

目が見えるようになって、ユイちゃんの声が携帯越しではなく、間近に感じると思ったら、目の前に長い黒髪で頭の天辺にピョコンと八幡くんと同じアホ毛と言われる物があり、白い長袖の服を着て、歳からして8才~10才の少女が立っていた。その少女は間違いなく私たちの愛娘のユイちゃんである。

 

 

明日奈「ユイちゃん。現実世界に実体化できるの!?」

 

ユイ「はい。でも正しくは、この世界が『仮想とリアルが混ざりあった』世界だからです」

 

明日奈「仮想とリアルが…………。あっ、だから私たちもSAOやALOの姿になったりモンスターたちが現れたんだね!」

 

ユイ「はい。なので、こんなことも!」

 

明日奈「眩し………」

 

ユイ「できちゃんです。えっへん!( ̄^ ̄)」

 

明日奈「あっ、ナビゲーションピクシーの姿にもなれるんだ」

 

ユイ「なので、これからも私がパパとママをサポートします」

 

明日奈「うん、その時はお願いね。ユイちゃん」

 

ユイ「はい」

 

八幡「んん~」

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

《side八幡》

 

 

 

明日奈に膝枕をしてもらって意識が夢の中に落ちて行ってから、どのくらいだったろう。意識が少しずつ覚醒していくと明日奈と誰かもう一人の声が聞こえる。

 

 

八幡「んん~」

 

明日奈「あっ、八幡くん。もう、大丈夫?」

 

八幡「ああ、大丈…………いや、まだ大丈夫じゃないようだ。ユイに似たナビゲーションピクシーが目の前に居るだなんて……。てな訳でお休み」

 

明日奈「ああー、待って待って!この子は正真正銘、ユイちゃんだから!」

 

八幡「え?本当にユイなのか?」

 

ユイ「そうですよ、パパ。私を幻か何かと決めつけるだなんて!」プンスカ

 

八幡「わ、悪い。だってリアルなのにユイがいるなんて思わないだろ?」

 

ユイ「それは、そうですけど………ムムムム 」

 

八幡「後で皆と一緒に買い物に行くから、その時に何でも好きな物を食べさせてやるから」

 

ユイ「本当ですか!」キラキラ

 

八幡「ああ、約束だ」

 

ユイ「なら、約束の証として指切りがしたいです」

 

八幡「指切りか……いいぞ」

 

 

指切りをする前にユイは、一度その場で一回転してピクシーの姿から人間の姿に変わる。

 

 

「「指切拳万、嘘ついたら針千本呑ます。指切った!」」

 

ユイ「もし、約束を破ったら本当に針千本呑ませますからね、パパ」

 

八幡「それは怖いな。ところで明日奈、ユイが現実にいる訳を教えてくれないか?」

 

明日奈「うん。ユイちゃんが言うには、この世界は『仮想とリアルが混ざりあった』世界みたい」

 

八幡「なるほどな、俺たちのあの現象もそういうことか……」

 

 

と明日奈にユイが現実にいる理由を聞いていたら携帯にメールが届いた。

 

 

明日奈「誰から?」

 

八幡「平塚先生からだ。もう一時間も経ってるから戻って来いってさ」

 

明日奈「え?そんなに経ってたの!?」

 

八幡「俺は30分くらいだと思ってたんだがな」

 

明日奈「私も…………。それじゃ、怒られないうちに行こっか」

 

八幡「ああ。ユイ、肩車するからおいで」

 

ユイ「わ~い、パパの肩車です」キャッキャ

 

 

 

 

平塚先生からのメールで急いで会議室に戻った。

それと会議室に入る前にユイを降ろして明日奈とユイの両手を繋いでいる。

 

 

八幡「すみません、思ったより体調の治りが悪くて」

 

平塚「仕方あるまい、あんな話をすれば誰だって気分が悪くなる。比企谷、今日はもう家に帰っていいぞ。桐ヶ谷たちから大体の話を聞いた。後日、プリントを渡すから、それに君の知っている情報を書いてくれ」

 

八幡「わかりました」

 

平塚「結城、君は少し残ってくれ」

 

明日奈「はい」

 

平塚「それと……君たちの間にいる少女は誰だね?」

 

八幡「えっと…………あっちの世界でゲームの中で保護した、俺たちの娘です」

 

平塚「ぐはっ!?まさか、教え子に恋人ならまだしも。子持ちだと…………」ガクリ

 

ユイ「パパ、ママ。このお姉さんが平塚先生で合ってますか?」

 

平塚「」ピクリ

 

八幡「あ、ああ。(流石はユイ。ナイスフォローだ!)」

 

明日奈「そうだよ。この綺麗なお姉さんが平塚先生だよ。ユイちゃん。(流石はユイちゃん。ナイスフォローだよ!)」

 

平塚「いやー!流石は比企谷の娘じゃないか、良いこと言うじゃないか!アハハハハ!」バンバン

 

八幡「あ、ありがとうございます。(痛い、痛いよ、痛いから!)

 

平塚「それと比企谷と結城。君たちにはこれを渡しておく」

 

八幡「なんすか、これ?」

 

 

平塚先生から渡された物は警察手帳みたいな形で中が盾の上に二本の剣が斜めにクロスされたブローチのような物が嵌められていた。

 

 

鬼瓦「それは私からの送り物だよ。今後、君たちはモンスターたちと戦うことになると思う。だから我々警察と連携してモンスター撃破にあたってほしい」

 

八幡「わかりました。俺たちもできるだけの協力はさせてもらいます」

 

鬼瓦「ありがとう。それがあれば例の姿になって現場に入れるから」

 

平塚「だが、むやみやたらにあの姿になるなよ」

 

八幡「分かってます」

 

平塚「それでは解散!」

 

八幡「明日奈、俺たちは中庭にいるから話が終わったら来てくれ」

 

明日奈「うん、終わったらすぐに行くよ」

 

 

平塚先生の解散宣言により明日奈以外は会議室を出て行く。なので明日奈が終わるまで俺たちは中庭に居ることにした。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

《side明日奈》

 

 

 

明日奈「それで、平塚先生。私だけ残したのは?」

 

平塚「比企谷のことだ」

 

明日奈「八幡くんの……?」

 

平塚「君は彼の……比企谷の無意識の右手の震えに気付いていたのだろ?」

 

明日奈「ッ!?はい、気付いていました」

 

平塚「やはりな…………。比企谷は彼女と親友ができても、根本的な部分は変わっていないようだな」

 

明日奈「あれは私たちを危険に巻き込まないように………「それでは比企谷がいつか壊れてしまう」………」

 

平塚「君も分かっているだろ?」

 

明日奈「はい…………」ウツムキ

 

平塚「はぁ~、全く、本当に世話の掛かる」

 

明日奈「先生……私は………彼の……八幡くんの支えに………癒しになってあげられてるでしょうか」

 

平塚「結城………」

 

明日奈「八幡くんが殺した5人の内、4人は私の所為なんです。ラフコフ討伐戦でラフコフのメンバーに麻痺毒で動けなくなったところを殺されそうになった時、八幡くんが私を守るために3人の人間の首を右手で持っていた剣で首を刎ねたんです」

 

平塚「…………」

 

明日奈「最後の一人は私が所属していた、ギルド『血盟騎士団』の団員で名前は『クラディール』。彼はラフコフの残党でした。クラディールは麻痺毒で動けない血盟騎士団の団員を一人殺して、同じ手口で八幡くんも殺そうとしたんです。それを見つけた時、私は怒りで頭がいっぱいになり、クラディールを後一歩のところで殺してしまうところで八幡くんが叫んで止めてくれました」

 

平塚「流石だな」

 

明日奈「殺すのを止めると、八幡くんを殺そうとしたクラディールが命乞いをして『もう、お前たちの前には現れない』と言ったんです。私はそれを聞いて気を抜いてしまった。けれど、それがいけなかった」

 

平塚「まさか!?」

 

明日奈「ええ。クラディールは油断した私の頭を目掛けて剣で刺そうとしてきました。しかし、その剣は私に届くことはなかった。何故なら、八幡くんが左手を犠牲に右手でクラディールの心臓を白い剣で貫いたんです」

 

明日奈「それが終わると彼は私に『ごめん』とだけ言って居なくなったんです。私はその時の彼の顔に恐怖を感じたんです。その顔には、『もう、この世界に生きる意味が無い』とでも言いたげな顔でした。なので、私は仲間に協力を仰ぎ、八幡くんを探すことにしました」

 

明日奈「やっとの思いで八幡くんを見つけると、大量のモンスターに囲まれて死を待つだけで何の抵抗もしていなかったんです。急いで仲間たちとモンスターを倒して八幡くんを救いました」ポロポロ

 

明日奈「そして、私は八幡くんに聞いたんです。『なんで、何の抵抗もしないで死のうとしたの!』と、そしたら彼は『生きる意味が無いし理由もない、何より生きてはいけない。俺はこの手で4人もの人を殺したのだから』と」ポロポロ

 

平塚「比企谷…………お前という奴は」

 

明日奈「だから、私は言いました。『生きる理由がないなら、私が君の生きる理由になる!だから、私のために生きてよ!私と一緒に死ぬその時まで生きて!お願いだから』と、心の底から思いを込めて言いました」ポロポロ

 

平塚「結城、君は強いな。比企谷をそうやって救うことできたんだから」

 

明日奈「でも、本当に救えてるのでしょうか?私、たまに分からないんです。彼が、八幡くんがどんなことを、どんな思いで苦しんでるのか」ポロポロ

 

平塚「大丈夫だ。君は比企谷を救えているよ。安心したまえ。この私が保証する」ギュ

 

明日奈「平塚……先生。ぅぅぅぅ、うわああああ、あああああ!」ポロポロ

 

平塚「君も良く頑張ったよ、結城。今は思う存分泣くといい」サスサス

 

明日奈「ああああ!」ポロポロ

 

 

今回は声を押し殺すことなく、思う存分泣いた。本当、今日の私は泣いてばかりだ。

 

 

 

 

 

 

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