指揮官を辞めると上に言ったら想像以上にあっさりと受け入れられた。軍人として若い俺が辞めることはあちらにとってもあまりよろしくないことだが、事情が事情なだけに許された。タイミングがいいことに、ちょうど後任の指揮官が入ったという。
半年にも満たない指揮官生活だったが…クリーブランドがいなければもっと早く辞めていただろう。その点では彼女には感謝してもしきれない。
クリーブランドは学園に残るとのこと。後任の指揮官のためにも退役させるわけにもいかなかったのだ。それに彼女の強い要望でもあった。やはり艦船として生きていきたいという。ちなみに寮舎に入り浸っていたので練度は最大。そんじょそこらの指揮官が運用するには惜しい存在だ。
それと唯一残っていたあの作業員は解雇した。流石にあの発言を見過ごすことはできなかった。
「指揮官はこれからどうするんだ?」
「俺か?どっか適当に雇ってくれる所を探すよ」
一生あっても使い切れないほどの慰謝料があるのでもう働く必要はないのだが、こんな金でニートをするというのは気が引ける。正直全額寄付することも考えた。しかし二度目の悲劇が起こったらと思うと…危険な投資はやめておこう。
「そうか…達者でな指揮官」
「お前もな。新しい指揮官ともうまくやれよ」
後任の指揮官のために装備、燃料、資金、食料は用意しておいた。
指揮官を辞めて一年。俺は学園の隣町にある町工場で働いている。辞めた理由や内部事情を聞かれたくないので指揮官をやっていたということは隠しておいた。仕事の大半は装備の作成だったのだが…でもそのおかげで工場長からの評価は高かった。
「お前本当に腕がいいよなぁ。何もこんな小さい工場で働かなくても良かったんじゃないか?」
「いえ…海が見えるこの場所が良かったんです」
「ははは。なんだそりゃ」
今までとは打って変わって男ばかりの職場になったが、安心感が段違いだった。特に変な理由で人が辞めるということもないのがでかい。
「そうだ、お前隣町にある軍港知ってるか?どうだ、あそこで働くの」
「海軍の作業員ですか?あそこ面接厳しいらしいですよ?」
厳しくしたのは実質俺だ。それにしてもあそこで働くか…作業員としての仕事内容は完璧にこなせるが、もう戻りたくないのが正直なところだ。
「そうなのか?なんか人手不足らしくてよ。去年からずーっと作業員募集してるんだよ」
「へー…大変なんですね…」
無関心を装ったものの、内心めちゃくちゃ焦っていた。