次の日、いつものように仕事をしていると思わぬ客人がやってきた。あのクリーブランドである。突然のことで名前を呼びそうになったがなんとか堪えた。
とりあえず話があるということなので、社員寮に連れて行って二人きりで話すことにした。
「いや〜、まさか指揮官がこんなところで働いてるなんてなぁ」
「もう俺はお前の指揮官じゃないぞ」
「いいじゃないか。こっちの方が呼びやすいんだよ」
「…勝手にしろ。それで、何しに来たんだ?」
「実は深刻な作業員不足なんだ。今二人しかいなくて…」
「二人!?人手不足とは聞いたが…まだ浮気が横行してるしてるのか!?」
「いや、新しい指揮官はいい人だし仲間も少しずつ増えてるよ。…でもまだ一つの艦隊しか運用できない状態で…だから私達が直接こういうとこに出向いて作業員をヘッドハンティングしてるんだ」
「それで偶然うちに来たわけか。しかし二人ってのはいくらなんでも少なすぎだろう。俺が辞めてから一年も経ってるんだぞ」
「面接がすごく厳しいんだよ!でっかい嘘発見器取り付けてさ…ちょっとでも反応したらそこで面接終わっちゃうんだよ」
「厳しくなったとは聞いたがまさかそこまでとは…」
「あんな面接通るの仙人か指揮官ぐらいだよ…」
「…今更俺一人戻ったところで状況は変わらないんじゃないか?」
「そ、それは確かにそうだけど…お願い!今は指揮官だけが頼りなんだ!」
クリーブランドが両手を合わせてねだる。本当は断りたい気持ちでいっぱいだったが、彼女の気持ちを汲んでやることにした。
「仕方ないな。戻ってやるよ」
「本当か!?ありがとう指揮官!」
こうして今度は作業員として再び学園に戻ることになった。面接は難なく通過できたのだが、面接官のあの不思議なものを見るような目は忘れられない。ちなみに俺と一緒に面接を受けた連中は全員弾かれた。
作業員としてしばらく艦船の装備のメンテナンスする仕事を続けてわかったことがある。
この仕事、直接的に全く艦船と関わらない。確かに周りが野郎ばっかりなので溜まるだろうが…一体どうやって今までの作業員は艦船と関係を持ったのだろうか。
しかも俺が入って以降、新しい人員が補充されない。結局運用できる艦隊は一つだけなのであった。
そして遂に事件が起こってしまった。
朝、作業員達の職場に誰も来ない。いつもこの時間には全員集合しているのだが…それに学園全体が不気味なほど静かだ。
何が起きたのかと学園内をうろついてみるも艦船も一人も見つからない。
まさか寝取られた?そんなバカな。艦船は100人近く所属していたのだ。いくらなんでもこの人数が一気にいなくなるのは有り得ない。
「あ!指揮官!良かった、いたのか!」
「クリーブランド!一体どうなっているんだ?誰もいないぞ」
「私にもさっぱりなんだ。新しい指揮官も見つからなくて…」
「執務室には行ったのか?」
「ううん、これから行くところ」
「わかった。俺も行こう」
執務室の扉は開いていたが指揮官の姿はどこにもなかった。綺麗さっぱり、人がいたという痕跡がなくなっている。ある机に置いてあったある一つのものを除いて。
そう。ビデオレターである。
今度は何事かと思い、げんなりしながら再生した。もう二度と見ることはないと思っていたのだが甘かった。
ビデオを再生すると、そこにはここに所属していたであろう沢山の艦船達と指揮官の姿が。どうしてクリーブランドだけハブられたのか。いや、そんなことはどうでもいい。何だこれは。
「私達、指揮官様を寝取っちゃいま〜す♡」
その声明を聞いた瞬間、俺は再生をやめた。もうこの先は見るまでもない。新しいパターンだが大体想像はつく。
「どういうことなんだ」
「俺にもわからん」
人によっては中途半端な終わり方かもしれませんが、これでこのお話は終わりです。今まで沢山の感想ありがとうございました。
いや、正直ここまで話が膨らむ予定はなかったんです。