A's編開始です。
ちょっと駆け足になるかもです。
戦闘開始! たまにはシリアスもいいよね、と言う話。
呪われた魔導書よ、心せよ。
汝が立ち向かうは、あまねく魔導が王者なり。
時は11月中旬頃。
人々は息が白くなり始める時期に冬の訪れを予感する頃。
テスタロッサ家はそれぞれの交流が盛んになり、家族全員で過ごすよりも友人同士で過ごす時間の方が多くなりつつあった。
最も、それが我慢ならない者もいるのだが。
「レクター! アリシア! フェイト! お願い! クリスマスの夜は家族皆家で一緒に過ごしましょうっ!? この通りよ!」
「か、母さん・・・」
目眩さえ感じる光景に、レクターは思わず頭を抑えていた。
1ヶ月近くも後の一日、それもその凡そ1/4の時間の為に、息子と娘達へ対して土下座を敢行する母親がいようとは。
しかもそれが自分達の実母だとすれば、頭も痛くなろうものだ。
「もう、ママったら子煩悩なんだから」
「お姉ちゃん、母さんの気持ちも考えてあげようよ」
どうやらフェイトはプレシア擁護側である模様。
「プレシア、本気過ぎです。 そこまでやると、流石にドン引きですよ・・・」
「まあまあ、それだけ本気だと言う事です。 涙ぐましいじゃないですか、私は素晴らしいと思います。 どちらか一方を依怙贔屓する訳にもいきませんし、生温かい目を贈ってあげましょう」
「分かった。 じー」
「こらアルフ、お止めなさい」
執事と家政婦とペットは傍観を貫くことにしたようだ。
プレシアは相変わらずフローリングに顔を向けて懇願しているし、レクターの頭痛の種は消えない。
それに、今の内にプレシアが自分達にこれ程頼み込んでいるのは、ある理由がある。
レクターにはその理由を痛い程よく分かっている。
結論から言うならば、クリスマスケーキの為だ。
今年、プレシアが注文したのは『翠屋』のクリスマスケーキ、その最大サイズ。
既に発注(因みに今年一番だった)しており、キャンセルしたくない、翠屋もキャンセルして欲しくない注文だと言う事は知っている。
何分、レクターが夏休みの時から始めたバイトが翠屋の店員なものだから、そう言う内情はよく知っている訳で。
「あー、俺は当日のバイトに出た後すぐに帰ってくる、それでいいなら・・・」
「うーん、私は大丈夫だけど・・・フェイトがお友達ん家でクリスマスパーティーやろうって話になるんじゃないかな?」
「・・・そう、なの?」
漸く顔を上げたプレシアだが、その顔は色々と複雑そうだった。
無理も無い、家族一緒に過ごそうと言うのはプレシア自身の願いであり、かと言って子供達同士の交流を邪魔してまで実現するべき事では無いこと位、プレシアにだって分かっている。
「え、えっと・・・そ、そうだ! 皆を家に呼んでクリスマスパーティーすればいいんじゃないかなっ!?」
やっぱりその結論に行き着くよな、レクターの脳裏を過ぎったのはそんな言葉だった。
ありきたりだと思われるアイディアだったのだが、プレシアの反応は劇的だった。
「そうね! そうすれば良かったのよね! あぁ、なんて賢い子なんでしょう、凄いわフェイト! 流石は私とレイリーの娘ね! 天才よ!」
「ひゃっ、ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
急に抱き締められた上に、頬擦りをされれば悲鳴を上げるのも已む無しだろう。
「お兄ちゃん、カードゲームしない?」
「おい、あっちの惨状は無視か」
「ママが満足したら終わるから、ほっといていいでしょ。 何やる? 遊戯王? デュエマ? バトスピでもヴァンガでもいいよ」
「・・・ヴァンガりたい気分だ」
「オッケー、んじゃ地下行こ!」
どうやら、諦めたらしい。
「た、助けて・・・・・・」
「あぁもー、可愛いんだからもー!」
諦められたらしい。
「あれ? そー言えばレイリーどこ?」
「アルフ、朝レイリーが出かける時に言っていたでしょう? 今日からミッドチルダの友人と泊まりがけの仕事になるので一週間ほど留守にする、と。 急だったので覚えていないのかもしれませんが」
「そーだったっけ? 全然覚えてないや」
「ふむ、それは的外れな言葉ですね、リニス。 アルフはレイリーが出かけた時には寝ていたのだから、覚えている・いない、の問題の前に、そもそも知らないのですよ」
「何だ、あたしが寝てる時の話だったのか! なら知らなくて当然だね!」
「・・・もういいです」
こっちも諦めた様だ。
―――時は移り、登場人物も移る。
逢魔が時、一日が終わりを告げる頃。
ビルの屋上に一人の赤い少女と、青い狼の姿があった。
少女は歳の程は若く見え、非常に可愛らしい。
赤いワンピースを着、のろいうさぎと呼ばれるゆるキャラがデザインされた帽子を被っており、その姿は見た目の良さと相俟って、祖父母に猫可愛がりされそうな印象を受ける。
だがしかし、その雰囲気は苛烈の一言。
何かに追い詰められていて、必死に抗おうとしている、その様な悲壮感と焦燥感を感じさせる。
「・・・・・・くそっ! さっきから巨大な反応が出たり消えたりで分かりづれえ! ここんとこ何時もこうだ! 時間がねーってのに!」
「落ち着けヴィータ。 焦る気持ちは分かる、だが焦りが過ぎれば絶好の機会さえ棒に振るぞ」
傍らに控える青い体毛をした狼が喋る。
それがさも当然と言わんばかりに、ヴィータと呼ばれた少女は応えた。
「分かってる、ザフィーラ。 でも、この街にいるは何でかでっかい魔力を持った奴がちらほらいるし、中でもあの桁外れに巨大な魔力をした奴を完全に蒐集出来れば、それだけで400ページは硬いんだ。 まだ150ページ位しかない『闇の書』だって、一気に埋まる」
「あぁ、主の為にも必ず『闇の書』を完成させねばならん今、この地に巨大な魔力を持った者達が集っているのは非常に都合が良い・・・むっ!」
「! かかったのか!?」
「あぁ、主と同じ年頃かと思われる娘が二人、無防備だ」
「はやてと同じ位、か。 気は進まねーが、人助けと思って諦めてもらうしかねーな。 はやてを助けた後、全力で謝りに行こうぜ」
「うむ、欺瞞だが我々には時間が無い。 手段を選ぶ余裕も無い。 ならば、汚名全てを我等が背負うしかあるまい」
「あぁ・・・うし! 行くぜぇっ!!」
「応!!」
一人と一匹はビルから同時に飛び降りる。
一見すれば投身自殺に見えなくもないが、途中で二者とも宙へ舞い上がる。
飛行魔法を発動し、飛んでいる。
ただそれだけの事だ。
向かう先には、二人の莫大な魔力を持つ少女達。
―Side Change
謎の少女と狼に狙われているとは露も知らぬ二人の少女、その内の片方であるフェイトは、学校から帰宅する途中なのはから誘われ、夕食を翠屋で兄のレクターと一緒に食べる事になっていた。
因みにアリシアは、プレシアが泣いて落ち込みそうなので先に家に帰った。
転校初日に出来た親友と他愛のない話で盛り上がりながら、歩いている最中に気付く。
「(人気が、少な過ぎる・・・?)」
「どうしたの、フェイトちゃん?」
「あ、ううん、ちょっと気になった事があっただけで(さっきから、誰も近くを通らない。 夕方だから、とかそんな話じゃない。 それに、以前にこの時間帯にこの辺りを通った時には人がいた! 夕刊配達の人が! これはまさか・・・!)」
「ふぇ、フェイトちゃん? 顔が怖いよ? それに何か周りも変な感じが」
「!? 避けて、なのは!!」
「へっ?」
フェイトがなのはを抱き抱えてその場から飛び退く。
地面に倒れ込む直前に、自分の身体が下敷きになるようにしながら。
直後、先程までなのはの頭があった位置を銀色に光る鉄球が通過する。
鉄球はそのまま地面に命中、数メートルに渡ってアスファルトを削り飛ばす。
「いたた・・・あっ、フェイトちゃん大丈夫!?」
「う、うん、大丈夫。 私、結構鍛えてるから」
フェイトの強がりに、なのはは不安そうな顔を見せるがそれを一旦無視し、フェイトは立ち上がり空中へと怒りの籠った視線を飛ばす。
「(感じる、こっちへ向けて一直線に飛んで来るのを。 さっきの鉄球を放った魔導師が。 いや、魔法を使えるだけの卑怯者が!)」
爪が掌に食い込む程に強く拳を握り締める。
奴等は事もあろうか、戦う力を持つ自分ではなく、戦う為の力を全く持たないなのはを狙った。
例え自分に力がある事が分かっていなかろうが、自分達を狙ったと言う事実、それだけで敵を卑怯者と断定するのに遠慮は無かった。
ちらり、と一度だけなのはの方へ視線を向ける。
彼女は未だ現状把握がし切れていない様で、あたふたと混乱を顕わにしていた。
その姿を愛しく思いつつ、フェイトは制服のポケットの更に内ポケットに入れておいた黄金の三角形を取り出し掲げる。
父親から「いざと言う時には衆目気にせず、自分の信念に従って使え」と言われていた力だ。
今が「いざと言う時」でなくて何だと言うのか!
そして。
「なのは、出来れば皆には内緒にしてね?」
「え、フェイト、ちゃん?」
一応、親友には釘を刺しておく事を忘れずに。
「バルディッシュ、セーットアーップ!!」
《Yes,sir. Lightning Form Set up》
フェイトの姿が金の光に包まれる。
私立海聖小学校の制服は粒子となって消え、金のコアパーツと黒の装甲が数多虚空から現れる。
その中にある一本の銀の棒状のパーツに、六連リボルバーが接続、周囲を覆うカバーが付く。
そして、黒の装甲がコアを中心に次々に合体を繰り返し、その形は柄の無い手斧の様になって行く。
最後に棒状パーツと手斧が合体し、ハルバードの様な形状になる。
その直後に、フェイト自身にも変化が始まる。
まずは漆黒のオーバーニーソックスとレオタードが身に付けられる。
更に、両足を覆う具足の様な装甲と左手を覆う手甲が装備される。
そして、これまた黒いマントが付き腰回りに巻布が付き、長い金髪をツーテールに分ける様に黒のリボンが結ばれる。
最後に、右手に嵌めたグローブに元の金色の三角形が取り付き、フェイトはハルバードを手に取る。
ここに変身は完了した。
光が晴れる、説明は長々としていたが現実時間では1秒も経ってはいない。
なのはから見れば、フェイトが光に包まれた途端に、今の姿になった様にしか見えないだろう。
余りの事に脳のキャパシティオーバーしたのか、ポカーンと言う擬音が出そうなほど、口を空けて固まってしまっていた。
「はっ、やっぱ魔導師様か。 見間違えの無いミッド式魔法陣。 進歩が足りないんじゃねぇの?」
「そう言うお前は何様のつもりだ。 魔法を満足に扱えない人間を、アスファルトが砕けるような攻撃で不意打ちするなんて、保護者の躾がなっていないんじゃないの?」
「・・・って、テメェ! 今なんつった!?」
「いきなり人を殺傷できる攻撃してきた挙句、逆ギレされたらそう言いたくなるは当然だと思わない? それに、友達が大怪我する所だったんだ・・・私、本気で怒ってるんだからな!」
「っつ!」
痛い所を突かれたとでも言いたげに、ヴィータの表情が歪む。
だがそれも一瞬の事、すぐに冷徹な戦闘者の表情へと変化する。
「アタシはテメェ等と慣れ合うつもりはねぇ」
「奇遇だね、私もだ」
「テメェは潰す。 が、余り怪我はさせたくねぇ・・・」
「先に大怪我確実な不意打ちして来ておいて、よくも言う」
「うるせぇ、だからさっさとやられろよ!」
「やるのは私だ、そしてやられるのはお前だ!」
一触即発、そんな緊迫した雰囲気漂う最中。
「・・・・・・だ」
「「?」」
先程まで呆けていたなのはが何事かを喋った為、ヴィータとフェイトは一瞬そっちを見た、見てしまった。
「魔法少女だーッ!!!」
目をサーチライト並にキラキラさせながら叫ばれたなのはの言葉に、対峙していたヴィータとフェイトのみでなく、隠れて蒐集の機会を窺っていたザフィーラも含め、なのは以外の全員がひっくり返った。
シリアスは闇の書に蒐集されました、以上。
今回読んでみての通りですが、既にバルディッシュはアサルトです、強化イベントなんて無かったんや。
そもそも、リリなの本編でベルカ式が廃れてるとか言われてた割には、普通に流行ってる気がするんですよね。
もしくはマイナーだったけれど、管理局入りしたヴォルケンリッターの活躍で一躍有名になったって事なんでしょうか?
では、ご意見ご感想お待ちしております。