ベルカの魔王   作:ガトリング・ゴードン

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ちょっと遅くなりましたが、私は元気です(挨拶)

かと言って大きく話が動いた訳では無いんですがね。

では、第6話行ってみよう!(ヤケ)



ただの閑話。 始まりそうな前哨戦、と言う話

 

フェイトが襲われた翌朝。

レクターは己を鍛え直す為に自主錬に励み、プレシアとアリシアはフェイトの眠るベッドの近くを離れようとしなかった。

二人の傍には、愛犬アルフの姿もある。

 

 

 

「二人とも、フェイトお嬢様に異常は無いのですから、いい加減朝食を」

 

 

「できないわ、この子を置いていけない。 頭では大丈夫だって分かってるけど、そうしたくないの」

 

 

 

ウォーダンの言葉にプレシアは即答で返した。

 

普段のウザったらしい程元気印なアリシアも、無言のままプレシアの言葉に首肯した。

 

 

 

「分かりました、では此方に食事をお持ちしますので、今朝は此処で朝食としましょう」

 

 

「あ、アタシも手伝うよ」

 

 

 

最も、その返答はウォーダンも予想済みだったらしい。

 

アルフも、二人に気を使った様だ。

 

連れ立って部屋から出て行ったのを確認してから、プレシアはフェイトの手を取り目に怒りを湛え、呟いた。

 

 

 

「フェイト、あなたの痛みのツケは必ずあの女達に払わせるから」

 

 

「ママ、私もヤる。 フェイトをこんなにしたの、絶対に許せない」

 

 

 

今ここに、二人の夜叉が爆誕した。

 

 

 

 

 

 

―――所変わり、人も変わる

 

 

 

 

 

 

二人の夜叉が発生した頃、八神家の庭で早朝鍛錬真っ最中だったヴォルケンリッターの将シグナムの背筋に、唐突に寒い物が奔った。

最もすぐに気の所為だと断じ、鍛錬に戻ったが。

 

今、シグナムは非常に充実した心地を味わっていた。

 

昨晩闘ったレクターとの剣の交わし合いを思い出して気が高揚し、上気した上思わず顔を赤らめ、はやてに「エロいっ!」と突っ込まれ、胸を何時も以上に丹念に揉まれたのさえも気になっていない程に。

 

 

 

「(また、闘いたい・・・奴と交わした86合の剣戟、全ての手応えが未だに腕から離れない。 まだ途上段階にある内にあれとは、将来が楽しみだ)」

 

 

 

そんな風に、レクターの事ばかり考えながら木刀を振る。

 

事情を中途半端に知っている人が見れば、「それって恋じゃないかな?」と突っ込む事間違い無しだろう。

 

それを見物しているヴォルケンリッター各員も、どこか呆れていた。

 

 

 

「シャマルー、アタシ等の将が色惚けてるんだけど、どうすんだ?」

 

 

「そうね、今まで通り無人世界を中心に野生生物達から蒐集しつつ、時折この街にチラホラいる高魔力持ちを狙う、と言った所でしょうね」

 

 

「あぁ、時間が無いのだ。 多少の無茶は致し方あるまい」

 

 

「そうね・・・」

 

 

「ヴィーター! シャマルー! お鍋運ぶの手伝ってえなー!」

 

 

 

突如はやてから声をかけられ、二人はびくりと肩を震わせるが、すぐ何事もなかったかのように取り繕い、はやての所へ向かった。

 

 

 

「・・・主がああして車椅子に乗っていられる時間も、如何程か。 一刻も早く、お前を完成させなくてはな」

 

 

 

ザフィーラの呟きに応える様に、古びた本の表紙の十字が一度光った。

 

 

 

 

 

 

―――更に時間が移る

 

 

 

 

 

 

「へー、アリシアも休みか。 ま、うるさい先輩面がいなくなってせいせいしたわ」

 

 

「もう、そんな事言って。 寂しそうな顔をしてたの、知ってるよ?」

 

 

「んなっ!? だだだだだだだ誰が寂しそうだったってっ!!?」

 

 

 

目の前で親友二人がぎゃーぎゃーコント染みたやり取りをしている間、なのははボーっと窓から外を眺めながら、フェイトの事を思い返していた。

 

 

 

この春、イタリアから転入してきた外国人の女の子。

人見知りな自分では珍しく、転入初日から仲良くなった、親友。

絶世と言えるレベルの美形で我が家の剣術を学べる位強いお兄さんと、騒がしく身体が小さいながらも頭がアリサ以上に良いお姉ちゃんと、家の両親とタメを張る位年齢詐称染みた若々しさをした両親がいる。

クールで寡黙でかっこいい、けど実はすっごく天然で可愛らしい。

そんな感じの子、見た目とか運動神経以外は自分と同じ普通の女の子。

 

そう、一方的に思っていた。

 

昨晩、自分がフェイトに抱いていた人物像は綺麗さっぱり吹き飛んだ。

突如目の前で揮われた超常の力。

 

魔法の、力。

 

あのハンマー少女(名前知らないので)に殴り飛ばされながらも、自分を逃がしてくれた後の事は知らないが、こうして翌日の学校を休んでいる事を考えると、自分がフェイトを置き去りにして逃げた所為なのかもしれないとさえ思える。

 

その思考は、なのはの心に鈍痛を奔らせる。

 

今日、放課後お見舞いに行こう。

そう決意したのは、至極当然の流れであった。

 

 

 

「よし」

 

 

「なぁ~にぃ~がぁ~・・・よし、なのよぉ~?」

 

 

「にゃぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 

今まで思考に没頭していたからか全く気付かなかったが、只今我に返ったなのはが見たのは、視界一杯に怒れるアリサの顔面弩アップと言う腰が抜けそうな光景だった。

 

思わず仰け反り、椅子毎後方へひっくり返ってしまう。

 

 

 

「あいたたたた・・・」

 

 

「もしかしてアタシの所為? ゴメン」

 

 

 

ここでちゃんと謝れる辺り、アリサは大物と言えるだろう。

 

 

 

「それで、何が『よし』、なの? ま、大体は予想付くわ、フェイトのお見舞いでしょ」

 

 

「うん」

 

 

「そっか。 フェイトちゃんきっと喜ぶよ」

 

 

「うん、すずかちゃんとアリサちゃんも一緒に行かない?」

 

 

「あー、私達は行けないわ。 今日は4時からバイオリンの稽古があるのよ」

 

 

「あ、そっか、残念」

 

 

 

本当に残念に思っているからなのか、なのはのツーテールが下がる。

それを見た二人が苦笑するのは仕方ない事だった。

 

 

 

 

 

 

―――あっと言う間に放課後

 

 

 

 

 

 

「えーっと、ここがフェイトちゃん達が暮らしてるマンション?」

 

 

「お、大きいねぇ」

 

 

 

放課後、一度家に帰ってから、母の桃子にお見舞い用に翠屋のケーキ詰め合わせを持たされ、今日同じく高校を休んだらしいレクターの調子を見に来た美由希と連れ立ち、なのははテスタロッサ家へと足を運んでいた。

そして目の前にあるのは、見上げ続けていると首が痛くなりそうなサイズの高層マンションであった。

 

俗に言う、「億ション」と言う奴である。

 

 

 

『Pirrrrrr…..』

 

 

「あれ? 電話? こんな時に」

 

 

 

突然、美由希の携帯電話が鳴り出す。

表示されている番号は、テスタロッサ家の家電だった。

 

 

 

「はい、もしもし」

 

 

『お久し振りです、美由希様、なのは様。 執事のウォーダン・クロスヘイムです、我々の部屋は30‐1になります』

 

 

「あっ、はい」

 

 

『それでは』

 

 

 

そこで切れた。

何故自分達が今どこにいるのかが分かったのか戦慄すら覚えた美由希だったが、なのはがどんどんマンションの入り口へ向かって行くので、慌てて追いかける羽目になった。

 

 

 

 

 

 

―――少し時間が進む

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ、テスタロッサ家へようこそ」

 

 

「は、はぁ・・・」

 

 

「フェイトお嬢様は、此方のお部屋に。 レクターおぼっちゃまも自室にいらっしゃいます」

 

 

 

出迎えたウォーダンのテキパキとした対応に、二人の緊張が少しほぐれる。

 

 

 

「では、ごゆっくりと・・・あぁそうそう、美由希様に言わねばならない事が。 このフロアの部屋は何処も防音性能が優れております」

 

 

「はぁ、それはどうも」

 

 

「ですので、お声を我慢する必要はございません」

 

 

「・・・んん?」

 

 

「それと・・・念の為【ゴム】を使うべきかと・・・・・・お持ちでなければ、私めが一っ走り買って参ります」

 

 

「ちょっ!? なっ、何言ってるんですか貴方はぁぁぁ!?」

 

 

「それは無論」

 

 

 

ウォーダンは片手で丸を作り、そこにもう片方の人差し指を抜き刺すモーションを取る。

なのはには、その意味がまるで分からなかったが、美由希の顔色が段々と赤くなって行くので、自分が知るべき事ではないのだとは思った。

 

 

 

「【ナニ】でございますが?」

 

 

「要りませんっ!」

 

 

「何と! では生で致すと!? 美由希様割とチャレンジャーですね!」

 

 

「だから、そもそもしません! と言うか私とレクターは、そう言う――(超小声)――な関係じゃない・・・んです、から・・・・・・」

 

 

「では冗談はこれ位にしましょう、申し訳ありません。 つい調子に乗ってしまいました」

 

 

 

ちょっと涙ぐみ始めた美由希をまずいと感じたのか、ウォーダンは強制的に今までの美由希イジリを手打ちにする。

美由希にキツく睨まれるが、そこはそう言う見られ方には慣れたもの。

 

 

 

「実は私、これから野暮用がございまして、出かけねばなりません。 後の事はリニスに任せておりますので、何か用がありましたら彼女にお話し下さいませ。 ではごゆっくり」

 

 

「分かりましたっ!」

 

 

 

突き離す様な、拗ねた様な美由希に一度だけ微笑み返すと、ウォーダンは外へ飛び出して行った。

 

美由希は未だに肩を怒らせながらレクターの部屋の方へ向かい、なのはは少しそんな姉を心配しながらも、フェイトの部屋へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

―――そして少し時は進む

 

 

 

 

 

 

現在の八神家に在宅中なのは、はやてとシャマルの二人と、ザフィーラ一頭だけだった。

 

他のヴォルケンリッターのメンバーは外出中だ。

 

シグナムは散歩、ヴィータは町内ゲートボールクラブの集まり。

 

しかしこれ等は完全な建前で、本当は地球以外の管理外世界や無人世界でリンカーコアの蒐集活動を行っている真っ最中だった。

 

はやてを寂しがらせ、蒐集をしないと言う誓いを破ったのは不本意と感じているヴォルケンリッター達だが、それもはやてを救う為には仕方のない事だ、と自分に言い聞かせている。

 

 

 

「シャマル、お鍋の用意出来たから、テーブルのセッティングよろしゅうな」

 

 

「はい! そう言えば、明日でしたよね? すずかちゃんが来るのって」

 

 

「うん、皆を紹介する約束したんよ」

 

 

 

至極嬉しそうに語るはやての笑顔に胸が締め付けられるシャマルだが、顔には出さずこちらも笑顔を顔に張り付ける。

 

すっかり板についてしまった、それは彼女にとってはある種の屈辱と言えた。

 

唐突に、インターフォンが鳴る。

 

思わず首を二人して傾げてしまう。

 

 

 

「んー? 何やろ、新聞の集金か?」

 

 

「それは一昨日来ましたけど」

 

 

「じゃあ、N○Kか?」

 

 

「それに至っては1週間以上前に払いましたよ」

 

 

 

再びインターフォンが鳴った。

 

 

 

「む、待たせたらアカン。 シャマル、こっちはええから先に玄関の方頼むわ」

 

 

「はい。 すいません、お待ち下さ~い!」

 

 

 

ガチャ、と慌てつつも玄関のドアを勢いよく開ける。

 

そして驚く。

 

そこには、色んな意味で周囲には溶け込めそうにない執事服姿の男がいた。

 

 

 

「・・・えっ? 執事?」

 

 

 

はやてが読んでいた漫画等で、一応は執事と言う物を知っていたシャマルだが、何故此処にいて、八神家にやって来たのか、全く見当が付かなかった。

 

 

 

「お初お目にかかります、ヴォルケンリッターが一人『湖の騎士』シャマル。 私、テスタロッサ家執事:ウォーダン・クロスヘイムと申します、以後お見知りおきを」

 

 

「っ!!? クロス、ヘイム・・・!?」

 

 

 

名乗られた名前に驚愕する。

 

その名は、ベルカに関わる者にとって禁忌の名。

 

存在することそのものがあってはならぬとまで言われた、忌むべき『魔王』の名。

 

自分の素姓を言い当てた事と言い、ほぼ確実だろう。

 

可能ならば、有り得ない事とは言え悪夢の様な偶然の一致と思いたかった。

 

だが、そんな逃げは当然通用せず。

 

 

 

「『魔王』クロスヘイムの名、当然ご存じかと」

 

 

 

シャマルは眼の前が真っ暗になった。

 

 

 





シャマルさんは(二次創作的な意味で)不憫(確定事項)。

と言う訳で、ウォーダンが八神家とエンカウントしました。

どうなる次回!?

と、妙に伏線にならないこと言いながら終了します。

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