暑い。
ひどく暑苦しい。
体中がじとじととした汗をかいている。
それが気持ち悪く、眠りから覚めてしまった。
寝起き特有の不機嫌さよりも、暑苦しさに対するイライラでどんどんと悪い方向に頭が覚醒していく。
ダメだ、暑すぎる。せめて汗を拭おう。
「うがぁ」
「……気がついたか」
「ほぁ!?」
暑苦しさによるイライラから謎の唸り声をあげてしまった。まさか人がいるとは、いや、そりゃいるか。何で私は変な声をあげているんだ。
「イ、イシュ! ここはいったい……っていうか暑くないですか!?」
「ここは洞窟の中だ。金剛獣ノ岩窟と言うらしい」
「ほへー」
辺りを見渡せば洞窟内にノアが着地していた。ノアの上方には外が吹雪いているのが見える。天井が丁度ないようだ。
私の隣にはシウアンとウーファンが眠っている。二人とも暑さのせいか、やや表情が魘され気味である。
ウーファンもあの音で倒れていたのだろうか。
というか二人ともコートを着ぱなっしである。白い世界でならともかくこの洞窟内は何故か暑いのだ。このままじゃまずい。
二人の防寒着を脱がす。それだけでだいぶ表情が和らいだ気がする。ここがまだ暑いのには変わりないが。
「あれからどうなったんですか?」
イシュが脱がしてくれてたらと思ったけど、温度には鈍い体質になっている人だ。仕方ないことかもしれない。むしろ私の防寒着を脱がしていたことに驚きだ。
それよりも状況把握のためにあの後のことを尋ねた。
氷竜と鎖の音。
氷竜は飛んでいった。それは覚えている。
その後意識を失った。何故洞窟に入ったのか、タルシスに戻らなかったのか気になるところである。
「汝と巫女だけでなく、ウロビトもノアの中で倒れていた。容態は全員ただ気を失っているだけだったが不自然すぎる。タルシスまでの移動の間、容態が急変してもおかしくないと判断した」
「はぁ……」
それで洞窟へ?
それはそれでまた奇妙な話だ。
「話し声が聞こえるが旅人よ、仲間の意識が戻ったのか?」
突然第三者の声が入ってきた。
他にも人がいたなんて。さっきの私の謎の唸りが聞かれていたのでは、と不安になる。
「うむ。どうやらここの温度は高いようだな」
「だから言ったであろうに……ほれ、綺麗な冷水だ」
その声の主は瓢箪を見せながら近づいてきた。
随分と大きな体の持ち主である。お礼をと思い、顔を見ようとして、
「ひゃあ……」
「おお、驚かせてしまったようだな。拙者は見ての通り、お主らとは違う種族の者よ。よろしく頼む」
声の主の姿に驚きの声が洩れる。
その体は人とは違う姿。ただ肌の色が違うなどではない。毛深い人というわけでもない。獣毛で覆われた体だ。
そして何よりも特徴的なのは、頭部。燃えるような色をした頭髪は逆立っており、それだけでも目立つが大きなねじれた角が二本ある。
右目には古傷のような痕があり、何よりも、どう見ても、
牛の顔である。
牛の頭を持つ人物は、動物の顔でありながら器用に、にっかりと笑いながら挨拶をしてきた。
「ほれ、緋衣草を煎じた水薬だ」
「……あ。ありがとうございます」
「気にするでない。種族は違えど助け合うことができる。それが獣に堕ちぬイクサビトとしての誇りよ」
渡された水薬は少し刺激がある味だ。刺激と言うかこれは……
「熱ぅ!?」
「ほれ、これを飲め」
この反応があるとわかっていたのか、すぐさま蓋を開けた瓢箪が渡される。中にある冷水を勢いよく口に流し込んだ。
……舌がヒリヒリする。
「な、なんですか今の水薬!」
「どうだ旅人よ。拙者の薬学も大したものだろう」
「我の時代の緋衣草とはかなり違うな……」
「場所が変われば物も変わる。適応が大事ということだ!」
「私の話を聞いてー?」
なんでこの牛の人とイシュは普通に打ち解けているのだ。
どういう馴れ初めなんですかもとい本当に色々説明がほしい。
「おお、すまんすまん。今の薬はお主に害を与えるものではない」
「すごく熱かったんですけど」
「説明もなしだったのはすまなかったな。あの薬は……呪いを和らげるための薬だ」
呪い……
…………呪い!?
何故呪いのことを知って、もしかして見られた? でも服は着ているし、ウロビトの時と同じで何かの気配?
「汝の発汗がひどかった。ゆえに服を脱がした時、その者と遭遇した。その者の里には汝と同じく呪いに蝕まれている者が多くいるそうだ」
「脱が……」
「拙者は里で薬師をしておる。薬草を求めて里から離れていたところをお主らと会ったのだ」
「脱がしたって……」
「うむ? ああ、汝の体を布もなく岩窟につければ火傷すると止められた。そのため、服はまた着せたのだ」
「そっすか……」
年齢四桁の人だ。まぁ他意は一切なさそうだ。
牛の人も種族の違いのせいか、特に何も気にしていないようだ。なんだか疲れた気になって、おざなりな返事になってしまった。恥ずかしがるのが馬鹿らしい。
「っていうか!!」
「む?」「おお?」
「この土地の現地民の人じゃないですか!!」
「う、うむ」
ウロビトの時のような拉致誘拐はしていない、よし。
向こうの態度は友好的、よし。
イシュがもめ事を起こしていない、最高によし。
「えと……私はタルシスと言う街から来た者です! タルシスでは世界樹に辿りつくため多くの冒険者がいて、えっと最近この地に来ました!」
「存じているとも。朝から何組もの人間が里に訪れたからな」
「あ、私たちが最初の遭遇ってわけじゃないんですね」
じゃあ他の人が辺境伯に報告してくれるか。
「そこの二人も気が付いたらイクサビトの里を訪ねるといい。皆気のいい連中ばかりだ」
牛の人はそう言いながら瓢箪を手に持ち直した。
「この岩窟は魔物も蔓延る危険な場所だが、お主ら冒険者とやらなら大丈夫だろう。里までの道は岩窟の壁に示しておく。では、拙者はこれにて」
「え、あ、はい」
「急に現れただけでなく、急に去るようで申し訳ないが拙者の帰りを待つ者たちがおるのでな。里に来た時、改めて歓迎しようぞ」
去って行く後姿をぼへーっと眺めながら思った。
怖そうな見た目なのに、ものすごく好印象な人である。心優しい戦士、みたいな。
背中に背負っている金棒には血がこびりついている点が怖いけど、魔物が出る場所なら普通である。
それにしても……
「世界樹に近づいているからですかね……あの人の里に呪いを受けている人がいるって」
脱がせた云々に意識を持っていかれた件を、掘り返すようにイシュに言った。
「そうかもしれぬな。タルシスとは違い、ここでは何人もが呪いにやられているそうだ」
「……」
呪いを和らげる薬を牛の人は煎じてくれた。あくまで和らげる、だ。治す方法を牛の人の種族も見つけていないのだろう。
和らげる薬、シウアンの祈祷、この二つを受けた身としては、やはり世界樹の巫女であるシウアンの効能のほうが強い。今の薬は本当に、気休め程度のものだった。
その気休めにも縋らないといけない状況……
「あ、そういえば名前聞くの忘れてた……」
仕方ない。しばらくは暫定的に牛の人だ。
あ、でも種族が違うんだから、他の人も牛頭だったらどうしよう。いや、次からは名前を聞こう。
「それよりも、意識を失った理由はわかるか」
「ほへ?」
「汝らが意識を失った理由だ。汝と巫女だけならば、氷竜との遭遇によるものと考えられるがウロビトは違う。わかる範囲でいい、答えよ」
この様子だとイシュは鎖の音が聞こえなかったようだ。
ワールウィンドさんや辺境伯と同じだ。聞こえた者と聞こえなかった者。何か条件があるはずだ。
「奇妙な音が聞こえたんです……氷竜が飛んでいく前に」
「音?」
「前も同じことがあったんですけど、聞こえる人と聞こえない人がいるみたいで、聞こえる人は頭痛が起きたり気を失ったりしてて……原因は音なんですけど、何の音かは……」
あの時はウロビトの里で聞こえた。
ウロビトの多くも音が聞こえてパニックになったらしいけど、そういえば今の牛の人はなんともなかったようだ。イシュ、牛の人、ワールウィンドさんに辺境伯。わかっている範囲で聞こえていない人たちはこれだけ。
「……もしかしたらですけど」
「む?」
「……あの黒い依頼書かもしれません」
「黒い依頼書? 酒場のか」
「はい」
ウロビトの里では鎖の音の後、雷竜の起こす雷鳴が轟いていた。
今回も鎖の音の後、氷竜が一目散に飛んでいった。
石柱に何かがあったのかもしれない。イシュが石柱を破壊したとき、竜はすぐに戻ってきたと報告の時に言っていた。壊すたびに鎖の音が鳴るのであれば、あの依頼書と何らかの関係がある。
もしも石柱が壊れているとしたら、今頃孔雀亭の黒い依頼書は一枚になっているはずだ。
「黒い依頼書に音か。我には聞こえなかったところを見るに、実際に音を発生させていたわけではあるまい。今の時代特有の術とやらか何かだろう」
「術……」
イシュには印術などがさっぱりだった。
ウィラフさんもそういえば印術を魔法みたいだと言っていた。印術が使えない人から見たらそうなのかもしれない。ワールウィンドさんも同じなのかもしれない。
ひょっとして、と鎖の音による共通点を浮かべ想像する。
わかっている範囲で音が聞こえたのは、私、シウアン、ウーファン、ウロビトの多く。
ウロビトは方陣師、術師の才が高いらしい。
私は印術師だ。シウアンは術師ではないが、キルヨネンさんが誘っていたあたり、術師としての才もあるのだろう。
術師にのみ影響を及ぼしている?
狙ってのものなのか、術師だから知覚できただけのものなのか、そのあたりは不明だ。
「う……ここ、は……」
背後から起き上がる音が聞こえた。
ウーファンが先に目覚めたようだ。じきにシウアンも目を覚ますだろう。状況説明は、二人が起きた時一緒にじゃダメかなあ……
「イクサビト……伝承で聞いたことのある種族だな」
シウアンも目を覚まし、先の出来事を話したところウーファンの台詞である。
「伝承でってことは、実際に会ったことはないんですね」
「ああ。聖樹の護りにおいて、共に戦った種族らしい」
「……」
聖樹の護り。タルシスには伝えられていない戦い。
その戦いにおいて、人間は逃げだした。だからウロビトは人間への当たりが強かった。
そう考えるとイクサビトからも人間は歓迎されない気がするけども、あの牛の人はすごく友好的だった。
「もっとも、それ以上のことは知らないがな」
「とにかく聖樹の護りに関係する種族なんですね」
イクサビトの里についたら突然襲われる、なんてないと思いたい。
とても優しい人だったからそんなことはないはず……
このまま里に行くべきか不安になってしまった。
「イクサビトの人たちも呪いで苦しめられているんだよね? それなら早く行こう。ほっとけないよ」
「シウアン……」
そうだ。
私と同じ呪いに苦しめられているんだ。悩んでいる間にも辛い思いをさせてしまう。
「イクサビトが呪いを受けていることも気になるが、ここは石盤がある岩窟。なんであれ里に行くことは必要事項だ」
シウアンは助けるためにも行こうと言ったが、イシュは石盤のためにも行くべきだと言う。
まぁどちらにしろ行くことは決定である。
「ノアはここに置いておいて大丈夫でしょうか。他の気球艇は見当たらないんですけど」
出発しそうな雰囲気の中、気になったので聞いてみた。
あの牛の人がいうには他の冒険者が来ているようだけど、ここにはノアしかない。どこか別の入り口があるのだろう。そっちへ気球艇を動かしたほうがいいのではないかと思ったのだ。
「問題ない。見境なく暴れる魔物がいたとしても、気球艇をどうにかできるような大きさの魔物がここにいるとは考えにくい」
そういうものなのか。
まぁここからイクサビトの里への道はあの牛の人が壁に書いてくれているらしいし、せっかくの厚意を無駄にしないためにもこのままのほうがいいか。
この暑さじゃ防寒着もいらないだろう。ノアの中に置いて、金剛獣ノ岩窟の中を進むことにした。
中に進めば進むほど、熱気をより強く感じる。
洞窟内部だというのに明るい景色は熱源が至る所にあるからだろうか。
「なんでこんなに暑いの……」
「この辺りの地脈は随分と活性化しているな。洞窟全体が熱を伝えているのはそのためかもしれない」
「ウーファンは平気そうですね……」
暑さで汗がだらだらと止まらない私とは反対に、ウーファンは涼しい顔である。良く見れば汗を少しかいているため、暑さを感じていないわけではないようだ。
「確かに暑く感じるが体調を崩すほどのものではない。そもそも貴様は火の印術を扱うのだろう? 何故そんなに暑がりなんだ」
「印術と体は関係ないです……」
地図を描いては汗を拭う。
いっそ腕まくりでもしようか。いや、ここにはタルシスからの人も来ているのだ。ばったり鉢合わせして、体を蝕む呪いを見られるのは避けたい。
ああ、今だけは外の寒気が恋しい。せめて冷たい水でもないだろうか。それで顔を洗いたい。
「あ、水……!」
そんな願いが通じたのか、少しだけ広くなった道の先にはちょっとした池があった。
「待て、愚か者」
「ぐひっ」
駆けだそうとした時、ローブの後ろを引っ張られて少し首がしまった。
いったいなんなのだ。もうちょっと止め方を考えてほしい。
「な、なんですか!」
「魔物もこの水場を使っているのかもしれない。そこの角に魔物が一体だけだがいる」
魔物も生き物。だとすれば水場の近くにいてもおかしくはない。
当たり前のことなのにすっぽりと頭から抜け落ちていた。
「魔物がいるのならば排除すれば良いだけだ」
「魔物を避けて進むという発想は……貴様らに言うだけ無駄か。アルメリア、せめて貴様はイシュより後ろにいろ」
「わ、わかってますよ。さっきは暑さでちょっと頭が回ってなかったんです……」
角を、というより今いる通路を抜けた場所にいざ進めば、草がいた。長い触手のような、腕? 根っこ? とにかく腕っぽい根を水につけている。
「マンドレイク? 少し色が違うかな……」
碧照ノ樹海にいると言われているマンドレイクっぽい魔物だ。マンドレイクとは私自身遭遇したことはないが、その根っこは見たことがある。投げて燃やしたけど。
「こちらにはまだ気づいていないようだな。今ならやり過ごせるが───」
「排除する」
「だろうな……」
ウーファンはあきらめたように呟いた。しかし、一緒に行動するならイシュの過激行動には慣れてもらわないと。この先何度も同じようなことがあるだろうし。
水しか見ていないのか、マンドレイクもどきは近づいていくイシュに全く気づいていない。
そのままファルクスで斬り捨て……
「──────!!」
反射的に耳を抑えてしまうほどの絶叫が洞窟内に響き渡った。
「警鐘を鳴らすタイプの魔物か」
「……っ! 分析している場合か! 今の叫びで魔物が寄ってくるぞ!」
「数はわかるか」
「最低でも八だ! 地面に足をつけている魔物の数だ! それ以上いる可能性がある!」
八体の魔物。前衛ができるのはイシュのみのパーティだ。これは不味い。
「か、壁! イクサビトへの道は、北です! こっち!」
牛の人が残してくれていた道しるべを見つけ、移動先を指さす。がむしゃらに進んで行き止まりなんて最悪だ。
「その方角から魔物は来るか」
「三体だ」
「その程度なら問題ないか」
さすがに数が多いのは面倒なのだろう。先頭をイシュが、その後ろに私、シウアンと続き、最後尾はウーファンで移動することにした。
せっかくの水だったのに、今は我慢するしかないなんて……
「アルメリア、大丈夫?」
「うん、いざってときは水筒あるし……大丈夫だけど……」
でも、冷たい水が恋しかった。水筒の水はもうぬるくなってそうだし。
いや、今は魔物に集中しよう。囲まれる前に抜けないと。前方からの三体を速やかに倒さないとなんだ。
「って、三体じゃないんですけど!」
溶岩のような魔物が二体、コウモリが三匹、蛙が一匹。合計六匹だ。
「飛んでいるやつは感知しづらいんだ」
「なんであれ、排除するのに変わりはない。アルメリア、爆炎でコウモリを一掃するのだ」
「コウモリだけじゃなく、魔物全部巻き込んじゃいそうなんですけど!」
天井がそれほど高くないのだ。
コウモリと蛙は巻き込んでいいとして、あの溶岩みたいな魔物は明らかに火とか意味がなさそうである。意味がないだけならいい、火で強くなったり大きくなったりしないか不安なとこだ。
「構わぬ」
「は、はい!」
地面が光だす。
幽谷で何度も見た方陣だ。敵の移動を阻害するやつだろうか。
飛んでいるコウモリには無意味なようだが、敵の中央にイシュが飛び込んだ。敵の注意を引いてくれているのだろうか。それとも印術起動まで待つのが面倒になったとか。
「もう爆炎出せます!」
「そのまま放て」
「イシュにも当たりますよ!?」
「汝の火力程度であれば問題ない」
それはそれで嫌な話である。
一応爆炎の術式は強力な術なのだ。使い手によって威力が多少変動するとはいえ、その評価はむぅっとなる。
「早く放て」
「と、とおおう!」
魔物たちを夥しい炎が包む。それによって生じる熱風のせいで、頬がチリチリと痛む。
考えたらこの爆炎によってまた魔物が近づいてくる可能性もあるんじゃ……
炎は役目を終えたかのように消え去り、そこに残ったのは焼け落ちて絶命したコウモリたち。
それと、イシュ、溶岩の魔物……と、蛙。
方陣で縛られているから、避けられたわけではない。
まさか蛙にも耐えられてしまうなんて、ショックである。そこは魔物の耐久力と言ったところだろうか。
「凍雨と雨氷」
溶岩の魔物が口から燃えた岩を吐き出すも、冷気を纏うイシュの剣によって岩ごと斬りつけられた。
急速に冷やされたからか、魔物の色は黒く変色して砕け散る。
斬撃でのダメージというより冷気でダメージを受けたかのようだ。
残るもう一体の溶岩の魔物も同じようにして砕いていく。蛙は方陣によって動くことができないのを見るに、肉弾派な魔物なのだろう。
耐久力を見せた蛙も何もできないまま、両断された。
コウモリ掃除はできたが、私の爆炎はひょっとしてここだと役立たない気がしてきた。
金剛獣ノ岩窟に生息する魔物。ここの魔物は炎に強い耐久力を持っているのだろう。熱気に満ちた場所が場所なだけに。
「ここ、私は戦力外な気がしてきました……」
「む?」
「蛙の魔物も倒せてなかったですし……火の印術じゃ……」
前方を進むイシュに少し弱音を吐いてしまう。
最初は何を言いだしたんだと言わんばかりの反応だったが、やがて理解したのか、
「そういうことか。気にする必要はない」
「イシュ……!」
なんて優しい言葉だろうか。
イシュが最近甘くなってきているのを知っていてその言葉を引きだしたけども、それでも嬉しい言葉である。
「今までも、汝を戦力として数えたことはない。たとえコウモリも倒せなかったとしても、汝が気にする必要はない」
「……そうですか」
これでフォローしたつもりなのだろうか。
いや、本気だなこれは。本気で言っているなこれは。
私は冷めた心のままに、岩壁に書かれた道しるべを頼って奥へ奥へと移動していった。
牛の人の設定はゲーム中とかなり変えてます。注意です。
ゲームのままだと、すでに世界樹の呪いの話を出しているため、岩窟がただの通過点になってしまいますので……色々ねつ造されてます。
あ、メリークリスマスです。