ーーー「なんですか...これは...」---
どさりと本が落ちた。
私はこの本を買いに隣の町まで出かけていた。
隣といっても私の村は四方が山に囲まれていて、いちいちこの山を越えなければならない。
そうまでして本を買いに行く物好きは私くらいだった。
そんな不便な村だが私は好きだった。
しかし、今目の前に広がるのはそんな大好きな村の凄惨な姿だった。
家は形を残し消し炭になり、至る所から炎と煙が立ち上っている。
非力な私にできることは何もない。
しかし、なにかをしようと足を動かそうとしたとき、
『ほう、まだ生き残りがいたとはな。』
おおよそ人とは思えない酷い声が聞こえた。
それもそうだろう。なぜなら私が見た声の虫は異形なる存在だったのだから。
骸骨のような頭、醜く崩れた肉体、おぞましい形状の羽、まさしく悪魔と呼ぶに相応しい出で立ちだった。
『貴様もあいつらの所へ送ってやるよ』
そういうと悪魔は私の方へと手を伸ばしてきた。次の瞬間、私は光を失った。
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次に私が光を取り戻したのは白い無機質な部屋だった。
天井につけられたライトが目を刺激する。私は思わず腕で目を覆った。
「おお、起きたか。」
静寂を破ったのは若い男性の声だった。
体を起こし、聞き覚えの無い声のする方に顔を向けるとそこには人によく似た人ならざ姿があった。
首から下は普通の人間である。
しかし、あの頭はどうみてもローマ字の[P]である。
あれを人と呼ぶわけにはいかなかった。
「ああ、すまない、私の見た目は気にしないでくれ。それに私は君に危害を加えるつもりもない。」
いったいあの頭をのどこから声をだしているのだろうか、そんなことを気にしていると不意に頭の中にノイズが紛れ込む。
「はっ、そうだ、私…!」
燃える村、異形の悪魔、そして伸ばされた手、そんな光景を思いだし、息が荒くなり、心臓が跳ね動く。
「落ち着くんだ、とりあえず水でも飲みなさい。」
私は差し出された水を勢いよく飲みこんだ。
しかし水は身体に入ることはなく、私は水を吐き出しながら咳き込んだ。
息を荒く2、3回吐き出し、もう一度水を飲んだ。
「少しは落ち着いたかな?」
そんな言葉をかけてくる人?に私は問いかけた。
「村は……どうなったんですか…あの悪魔はなんなんですか…あなたはいったい…誰なんですか!」
私の口から言葉が出る度に勢いが増していく。
しかしそんなことはきにも止めない様子で
「そんなに一度に質問しないでくれよ、ええと、そうだな。あの村の火は鎮火し、生存者がいないか捜索した。しかし残念ながらいなかった。」
「……!」
言葉は出なかった。
村にいた伯父さん、私の読み聞かせを楽しそうに聴いてくれた子供たち、彼らが皆…!想像しただけで胸が締め付けられ、胃から何かがこみあげてくる。
必死の思いでそれらを堪え、再び水を口にする。
「大丈夫か?」
これが大丈夫に見えているのか、あなたの目は飾りですか、と心の中で毒づいたが、そもそも彼には目どころか顔すらなかった。
再び静寂が訪れようとしたとき、「コンコン」
とノックの音と共に、勢いよく少女が入ってきた。
「プロデューサーさん!そろそろお時間です!」と言い終わるのが先か、彼女は部屋を出て何処かに走っていってしまった。
[プロデューサー]
聞き覚えの無いその言葉の意味を考えていると、
「おお、もうそんな時間か、じゃあ行こうか。」
と声をかけられた。
「え、あの、行くって何処に?」
うろたえながら返事をすると、
「残りの質問の答えを教えに。」
と返され、彼は部屋の外に出ていった。