俺が連れてこられたのは旧校舎だ。うん、いいねまさにオカルト研究部という名にふさわしい雰囲気じゃないか。木々に囲まれた薄暗くもどこか優雅さと華やかさの合体技すんばらしい!
おっと、いかんいかん。つい来れたことによる嬉しさでテンションが上がってしまったようだ。外観が木造だけど中は最新式な感じだし趣深いものがあるね。
これもグレモリー家の家風とかなのかな?「原作」流し読みであんまり知らないからこれでいいいよね!
「部長連れてきました」
木場きゅん、おっと女子生徒の呼び方をついしてしまったな。それにしても木場っちが握る手の強さがなんか怖いんだけどなんで?
まあいいや、俺は室内を見て少々驚く。至る所に不思議な文字が刻んであるんだもん。床、壁、天井という必要ないと思われるところにまで刻み込まれている。
だがもっとも眼を惹いたのが中央の魔方陣だ。教室の大半を占める大きさはかなり大きい部類に入ると思われる。
さらに視線を移動させるとソファーやデスクがいくつか並んでおりそこには羊羹を爪楊枝で器用に食べている女子生徒が1人いる。
1年生の塔城小猫ちゃんだ。一部の男子から熱狂的に支持され、女子生徒からも「可愛い、マスコットにしたい」と言われるほど大人気な子だ。
「こちら兵藤一誠くんだよ」
「よろしくね」
「…羊羹好きですか?」
あれ?「原作」だったらぺこりと頭を下げるだけじゃなかったっけ?まあ、いいや。仲良く出来ることに越したことはないからね。
「いいの?じゃあ一切れもらおうかな」
小猫ちゃんがもう一本の爪楊枝を出して何故かあ~んをしてくれる。大人気女子生徒にあ~んしてもらえるとはなんと光栄なことか!
咀嚼していると木場っちが何故か若干嫉妬している視線を向けてきた。
「何かな木場っち?」
「僕もあ~んしていいかな?」
「させるかんなもん!」
今ので確信した!こいつ「原作」と違ってBLッチクになってやがる!俺の貞操は守らなければ死守せねばこいつに奪われてたまるか!
すると奥から聞こえていたシャワー音が消えてバスローブを巻いたリアス先輩が出てきた。
「あら、この姿を見てもなんとも思わないのね」
「朝のあれがありますから」
「それもそうね」
朝の一件を知らない2人は首をかしげているが話す必要は無いだろう。もしかしたら木場っちが紛れ込んでくるかもしれないかね!
「粗茶です」
「ありがとうございます」
ソファーに座った俺に姫島先輩がお茶を出してくれたのでありがたく頂くことにした。一口すするとほのかな甘みと苦みが口内に広がり心が安らぐ。
「美味しいですね、これはリアス先輩のお好みですか?」
「あらあら。そうですよ、日替わりではありますけどね」
「ここに来てもらった理由を話すから朱乃も座って頂戴」
制服に着替えたリアス先輩がそう言いテーブルを囲んで全員がソファーに座る。
「単刀直入に言うわ。私達は悪魔なの」
「…でしょうね。昨日のあの男を見たんですから言われたら信用せざる終えません」
「理解が早くて助かるわ。あの男は堕天使、邪な感情を抱いて堕落した天使の成れの果てというところね。悪魔と堕天使は地獄の覇権を太古から争っているわ。天使はどちらも見境無く始末するつもりだからゲームで例えればバトルロイヤル、三すくみ。いつまで続くのかそれは誰にもわからないわ」
「悪魔が負けるか堕天使が負けるかはたまた天使が負けるか。さもなくばどの勢力も衰退するというところでしょうか?」
それだけの話でここに辿り着いた俺の思考に全員が驚いている。仕方ないよね「原作知識」あるんだもん記憶違いあるかもだけど仕方なし、うん。
「…すごいわねこれだけでここまで考えがわかるなんて」
「太古から争いが続けばいつかはそうなると思いますよ。それから天野夕麻も堕天使ですよね?羽が似てましたから」
「その通り。貴方に宿る力が危険だと認識したんでしょうね」
「これですよね?」
左腕に魔力を溜めると輝きが放たれ収まった頃には赤色の籠手が現れた。
「…すでに知っていたというの?」
「いつからか自分に普通の人とは違う何かがあることに気付いていました。それに今では使いこなせてますよ」
右手に意識を送ると手の甲の宝石から何かが飛び出し人の形を作っていく。光が消えるとナイスバディの美人お姉さんが現れた。
『あれ?イッセーなんで具現化させたの?』
「自己紹介してほしいから」
『【旦那様】がそう言うなら仕方ないわね。初めまして悪魔と人間、堕天使のハーフさん。私は【二天龍】の1人赤い龍ドライグよ~ん』
「誰が旦那様だこら」
「「「「…ええええええええええ!!!」」」」
そりゃ驚くわな。あの「二天龍」がこんな変人だったら誰でもその反応するよ。「原作」知ってる俺でもこうなんだからね。性別逆転したから俺もびびったよ。
自己紹介して気が済んだのか「ドライグ」は元の場所に戻っていった。
「と、ということで理解できたわ。これから貴方には悪魔家業を行ってもらうわ。といってもここまで実力あればする必要もない気がしてきたのだけどどうしたらいい?」
「悪魔家業をして好感度を上げるんですか?」
「その通り。人間と契約して評価をもらえれば下級悪魔から中級悪魔に昇進可能よ。そしてさらに頑張れば上級あるいは最上級悪魔になれるのだけれどこれは純血悪魔でも一苦労なのが現実。貴方がどうしたいかはわからないから目標を教えてくれないかしら?」
もともと「最上級悪魔」と同程度の実力もらってるからそれほど望んでいないんだけどね。でも悪魔に転生したからには寿命が計り知れないぐらいになってるから目標は必要だ。
「リアス先輩への感謝と自分の『眷属』を持ち誰にも負けないチームを作ることです」
「結構、私のことはこれから部長でもいいわ。これからよろしくね私の眷属兼家族のイッセー」
「はい、よろしくお願いします!」
素晴らしい笑顔で俺を迎え入れてくれたリアス先輩改め部長に尽くすことを決めた瞬間だった。
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それからの数日間、俺は下級悪魔としての生業である悪魔家業を開始した。本当はこんなことしなくても良いんだけどみんなの苦労を知れるし「原作知識曖昧転生者」の俺にはちょうどいいのだから休むわけにもいかない。
悪魔と取引するには命が代償だなんて前世で思っていたんだけど、この世界ではそれ相応の対価で済むらしい。
時には命を対価になることがあるらしいけどそういうことはここ最近ではないらしい。
理由としてはそういう危険な思想や願いを持つ人間に対しては事前に、こういう仕事を統括する仲介役の悪魔たちが代わりに行ってくれているらしい。
若い悪魔にはさばきにくい仕事は大人が代わりを担うらしい。
だから必然的にそれほど困らない仕事が俺たちには与えられる。
なんだかんだで俺は手際が良いらしく契約も順調に増えていき部長も至極満足していたから満足である。まあ、約一名のご指名は精神的にやられたね。
あのミルたんの野郎ぶっ殺したくなったよ。契約破談するって言ったらとんでもない腕力で俺を締め付けてきやがったんだよぉぉぉぉ!
転生した際に強靱な肉体を与えられていたからなんともなかったからいいもののなかったら完全にお陀仏だったねあの漢。
仕方なく契約破談を取り消すとご機嫌良くなって朝まで魔法少女の話させられたわ。
いや、「原作」のイッセーくん、君に同情するよ本当。これからできるだけ関わらないようにするよあれは数日分の体力もってかれるからね。
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今日はオカルト研究部がオフなため学校が終わり、帰宅しているところであの美少女に出会う。
「はわう!」
顔から地面に突っ込み両手を広げている転び方は間抜けだ。でももともと、こういう子だから気にする必要はないのだ。
「大丈夫?立てる?」
「転んでしまったみたいですお声をかけて頂きありがとうございます」
うん、可愛いね金髪にグリーン色の瞳の癒やし系という言葉がぴったしな容姿と声音だ。
「えっと、旅行か何かでここに?」
「違いますよ?私今日ここの教会に赴任してきた者です。実はまったく言葉が通じなくて困ってたんです日本語ってかなり難しいですし」
そうだね。前世でも日本語は難しいって言われてたし、日本人も知らない日本語とかイントネーションで言葉の意味変わるから本当に厄介な言語だよ。
悪魔の力の一つに「言語」がある。その人の一番耳慣れた言語として聞き入れるので普通に話しても会話が成立する。
といっても話したり聞いたり出来るだけであるので読み書きは不可能なところが欠点である。というわけで俺は無条件でインターナショナルな高校生である。
「教会なら知ってるよ」
「ありがとうございます!」
近くにさびれた教会があったからそこだろうと思い連れて行ってあげることにした。数日後にアーシアはレイナーレにさらわれるけどそれは「原作通り」のほうがいいだろうと思い、何もせず会話をしながら教会へと向かった。
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その日の夜、部長に結構マジで怒られたけど祈られたり十字架見せられても聖水かけられても問題ないから口と表情だけ申し訳なさそうにしておいた。
だっていざとなれば俺は部長なんて瞬殺できるからね。もちろんしないよだっていなくなったら俺なんもできないもん!
次の日に「はぐれ悪魔」の討伐依頼が届いた。部長の活動領域に逃げ込んだから要請が来たわけなのだが木場っちや小猫ちゃんでも簡単に倒せるのに全員で行くのはどうなのかな。
「はぐれ悪魔」は人間にも害を及ぼすこともあるのだから放って置くわけにもいかない。
目的地に到着すると血の匂いが漂ってきた。悪魔になったから五感は鋭敏になっているからよくいろいろなところに眼がいくことがある。
おそらく住民は手遅れだろうそれだけの濃密な血臭が漂っている。
「イッセー、貴方の実力を見たいからやってみなさい」
「わかりました」
家の中から出てきた「はぐれ悪魔バイザー」と対峙する。女性の上半身と化け物の下半身が混ざった異形の存在。
「醜いな」
それだけを呟いた瞬間、イッセーは既にその場から姿を消してバイザーの目の前に来ていた。
「なっ!」
ポケットに両手を突っ込んだまま右足で蹴り上げる。同じように自分も飛び上がり両足を眼に見えない速度で繰り出しボコボコにしていく。
「てめえなんざ足だけで十分だおらおら!」
言葉通り足で蹴られただけでバイザーは戦意を喪失していた。大きく振りかぶった右足から繰り出された踵落としによってバイザーは地面に叩き付けられた。
「イッセー十分よ。あとは私に任せなさい」
「了解です部長」
大人しく引き下がったイッセーは木場の横に降り立った。それを見たリアスは瓦礫に埋もれているバイザーに近付き手をかざす。
「何か最後に言いたいことは?」
「殺せ」
「じゃあ消えなさい」
部長の低い声音が発せられた後に手の平からどす黒い魔力が放たれた。バイザーを優に超える大きさの魔力がバイザーを包み込み魔力が消えた後には何も残っていなかった。
格好良いよね部長は。俺より力は弱いけど人を引きつけるカリスマ性があるから自ずと集まってくるんだよな~。「原作」のイッセーよ、お前が惚れた理由今ならわかるぜ。
「来るときに話したように『悪魔の駒(イーヴイル・ピース)』はゲーム自体があってそれぞれ『眷属』に駒が与えられるようになっているの。祐斗は『騎士(ナイト)』小猫は『戦車(ルーク)』朱乃は『女王(クイーン)』よ。イッセーは『兵士(ポーン)』下っ端だけど使い方によっては戦況を左右する最強の駒でもあるわ」
部長の言葉に俺は内心やはりと思っていた。じゃないと支障がでるからね。まあ「プロモーション」できるから問題ないしそもそも俺の立ち位置が「兵士」だろうとやること変わらないからいいんだ。
部長は素晴らしい笑顔を俺に向けた後、俺たちを連れて帰っていった。
もうお気づきだろうと思いますが今作はイッセー視点で進んでいきます。違和感あるかも知れませんがよろしくお願いします。