読みたくて探してもあの作品は見つからなくて自分で似た話を書くことにしました。
幼い頃の記憶。俺はあの日、あの人と約束をした。
「お姉ちゃん。ぼく、お姉ちゃんと結婚したい」
「え〜?……じゃあ、君が私の隣に立つに相応しい人になれたら、いいよ」
あの約束を、俺はまだ覚えている。
あの人はどうだろうか?
ーーー
春に入り風もほのかに暖かくなってきた四月中旬。
職員室の空き空間に設けられた、しきりで区切られた程度の小さな生徒指導室。
室と呼べるかも分からないその場所で、ソファに腰掛けながら空を舞う桜の花びらを目で追っていると、目の前にいる人物の咳払いが耳に入ったので花びらからその人物へと視線を移した。
「人の話を聞いているのか比企谷」
白衣を羽織った、比較的若いと言える女教師平塚静が俺に問いかける。
スタイルも良く結構綺麗で人望も厚いため生徒からの人気が高い。
おそらくこの学校で、生徒から最も信頼されてる教師だろう。
「聞いてませんでした」
「はぁ……まったく。君の不真面目さにはつくづく呆れるよ。お前がツイッターを使って援助交際行為……オフパコをしていた事の話だ」
「はい」
「はい、じゃない!大人しい優等生かと思っていれば、ろくでなしのジゴロだったとわな。くっ、女の敵め!」
平塚先生は怨みったらしく俺を睨みつけてくる。
俺は平塚先生が言う通り、ツイッターを使い所謂裏垢を使用してオフパコをしたりしてお金をもらったり、ハメ撮りをネットに上げて小遣い稼ぎをしていた。
まさかバレるとは思わなかったが、誰かからのリークがあったらしい。
幸いに動画販売の事実はバレなかったが……もしバレれば間違い無く児童ポルノで捕まってしまう。
こんな事をしてるなんて誰にも話して無かったが、心当たりはあった。
「そんな目の敵みたいにされても困りますよ……なんか男に怨みでもあるんですか、平塚先生?」
「いや、怨みというか……数年前付き合っていた彼氏が居たんだが、所謂ヒモでな。それでも好きになった相手だから面倒見てやってたんだが、ある日突然、私の家の家具を全部持って消えやがったんだあの野郎……っておい!どさくさに紛れて人の過去を聞き出そうとするな!そうやって女の弱みに付け込んで手玉に取るんだろう!」
そんなつもりで聞いたわけでは無かったが、俺を完全にクズ男と認識している平塚先生はまた俺を睨みつけてきた。
美人で、それでいて公務員なんだからいくらでも良い相手が見つかりそうな気がするけどな。
まあとんでもなく男運が悪いんだろう。
「ともかく、お前がSNSを通じてこのような事をしていた事実が判明した以上見過ごすわけにはいかん。最悪、SNSの使用を禁止する校則が作られる可能性もある。もちろんお前には相応の罰則をかせるつもりだ」
「停学ですか?」
「そうしたいところだが……いやしかし……う〜ん……」
なにやら平塚先生は悩み始める。
停学にしたいなら停学にすればいいじゃないか……。
「とりあえず、付いて来い」
そう言って立ち上がった平塚先生の後を、言われた通りに追いかけた。
ーーー
職員室から出て、特別棟へと向かった平塚先生。後ろを付ける俺を気にした様子でチラチラ見てくる。
おそらく後ろからの、俺の視線を気にしてるんだろう。
気を利かせて隣を歩いてやると、平塚先生はよそよそしく距離を取る。
「先生、流石に先生のことそういう目で見ないんで……」
「若い女にしか興味ないってか!?つくづく女の敵だお前は!」
「いや、俺は年上好きですよ。さっきのは教師相手にそんな気は起こさないって意味で言ったんです」
「年上好き?本当か……少しは見直したぞ比企谷」
感心したように頷く平塚先生。年上好きなだけで見直すとか基準緩すぎだろ……こんなんだからダメ男に引っかかるんじゃないのかこの人。
「年上好きってより好きな人が年上なだけなんですけどね」
「なんだ、お前あんな事をしておいて、好きな人がいるのか。どうせ、アイドルとか女優だろ?」
「いえ、小さい頃に面倒見てくれた人がいて。今でもずっとその人のこと好きなんですよ」
……余計なこと言ったな。
自分の話をするなんて柄でも無いのに。
「あんな事をしておきながら純粋じゃないか……ちなみに比企谷、その相手はいくつ歳上なんだ」
「彼女は俺より3つ上なんで今は19歳ですね。今年二十歳になりますよ」
「なにが年上好きだ、その女も十分若いじゃないか!……そうか、19か。おい、付いたぞ比企谷、ここだ」
そう言って平塚先生は空き教室の前で足を止めた。
只でさえ空き教室だらけでガラガラである特別棟の、一番奥にあるこんな教室になにがあるってんだ。
そう思ってるうちに平塚先生がドアを開けて教室に入って行った。
「雪ノ下、ちょっといいか?」
「平塚先生、部屋に入るときはノックをして下さいと言ってるじゃ無いですか」
「君が返事をした試しはないだろう」
「返事をする前に先生が入ってくるんです。ところで、要件と言うのは?……ひ、比企谷くん?」
「雪乃……」
雪ノ下雪乃。俺はこの女を知っている。
と言うか普通に知り合いだ。
決して友達ではないけどな。
彼女は俺と目が合うと、少し面食らったような表情をしてから怪訝な表情を浮かべた。
「なんだ、知り合いか?」
「ええ……少し……」
「実はこの比企谷を新入部員として紹介したいんだが……」
「平塚先生、悪いんですが俺がここに入部するって話は無しにしてもらっていいですか?」
「お前に拒否権などあるわけないだろう比企谷」
「その子と俺、仲悪いんですよ。毎回テストで学年主席を争ってるってのもあるし、性格が合わなくて」
「あぁ、たしかにな……お前のようなゲスを雪ノ下は嫌いそうだ。それに、お前を女子と二人きりにさせるのは流石にまずいよなぁ……学年トップを争う二人を同じ部活に入れて競わせれば面白いと思ったんだが……」
平塚先生はなにやら呟く。
この人は、学年主席を争っている俺と雪乃を同じ場所に集めてなにやらしたかったようだが、とてもじゃないが2人でいれるような関係じゃない。
そもそも、俺がSNSで出会って女に手を出しまくってたのを知ってて女子と2人きりにさせるとか正気かよこの人。
「わたしは構いませんが」
「は?おい何言ってんだ……」
「そうか、雪ノ下が構わないならいいが……いやしかし……おい比企谷、分ってるだろうが変なことは考えるなよ?」
「そもそも、俺をここに入れなければ済む話だと思うんですけど」
「そうなんだよ。くそ、お前がこんなクズ男だとは思っていなかった……」
平塚先生は、前々からこうやって俺たち二人を接触させて何か競わせる機会を伺ってたんだろう。
「比企谷くんが、何かしたんですか?」
「え、いや雪ノ下、別に大したことではないんだが……」
雪ノ下に聞かれて平塚先生は明らかに動揺する。まあこんな話隠せるようなものじゃないだろうし、俺のオフパコ事件が生徒の間で噂になるのも時間の問題だろうな。
その噂が流れた時、俺が停学になっていたら完全に事実だと言うことになる。
……平塚先生は、俺が停学にならないよう別の形での罰則を用意してくれたのかも知れない。俺の中で平塚先生への評価がうなぎ登りだ。
まあだからと言って雪乃に事実を話すわけにもいかない。
適当に嘘をついてごまかすか。
「深夜徘徊で警察に補導されたんだよ俺」
「そうだったのね……確かに校則違反ではありますが、それでクズは言い過ぎじゃないですか?平塚先生。」
「あ、ああ。確かにそうだな……」
平塚先生もうまく話を合わせてくれたようだ。
「それでだ。最初の話に戻るが、校則違反を犯すような比企谷をお前の手で更生して欲しいんだ雪ノ下。頼めるか?」
「私は構いませんが……」
「意外だな、てっきりお前の事だから断ると思っていたんだが」
「いえ……知らない仲じゃないので……」
勝手に話が進んでいく。
このままでは本当に俺はこの部活に入れられてしまいそうだ。
「俺はできれば断りたいんですが」
「お前に拒否権などない!それに、嫌がることをしてこそ罰則の意味があるんじゃないか」
平塚先生は胸を張ってそう言うとニヤッと笑った。
「貴様にもやる気を出してもらうために、私が一つ提案しよう!」
上機嫌で楽しそうに言う平塚先生。
はしゃいで遊ぶ子供みたいだな、まるで大人に見えねえよ。
この人絶対少年漫画好きだ。
「勝った方が負けた方に、一つ何でも命令できる!どうだ、これでやる気が出ただろう!」
相手に何でも命令できるって、男と女だぞ、何考えてるんだ平塚先生……。
それに……。
「いや、そんなルールいらないですよ……」
「なんだ、お前ならなおさら喜んでウケると思ったんだが」
「女子に命令なんてそれこそ危険でしょ。半分犯罪ですよ」
「なんだ、負けるのが怖いのか比企谷?」
「いや全然。俺の負けでいいんでそんなルール無くていいです」
「なっ……くぅ!比企谷!ノリが悪いぞ!」
逆にあんたは何でそんなノリノリなんだよ平塚先生。
「私は構いません、そのルールでも」
「おお、さすが雪ノ下!やはり優等生は言うことが違うなぁ!」
「いやいや……ちょっと待ってくれよ……」
「よし、じゃあルールを説明しよう!君たちにはここで人助けをして競い合ってもらう。勝敗の基準は私の独断と偏見の元で行う。そして勝った方はさっき言った通り、相手に命令できる権利を与える!分かったな!?」
「はい、分かりました」
「よし!じゃあ頑張りたまえ君達!」
そう言って、無理やり話をまとめ上げた平塚先生は逃げるように教室から飛び出して行った。
俺に拒否権はないのか……。
誤字などが有れば報告ください。