光と闇は歪に絡み合う   作:シゲキ

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久々の投稿です。
ストック切れたので投稿頻度落ちます。


十一話 わんにゃんショー

 

あれはいつだろう、中学2年時の文化祭あたりか。

文化祭の準備期間。俺に嫌がらせをしてた奴らがいつも以上に浮かれて、昼休みに俺を倉庫に呼び出して五人で囲んだ。

 

 

「あー喧嘩してぇ。比企谷、喧嘩してぇから相手してくんねー?」

 

中一の頃から、殴られたり蹴られたりはしていたが、ここまで露骨に暴力を振るおうとして来たことはない。

 

だが、同時にこれは良い機会だった。

半年前から俺は格闘技を習っている。

今の俺は喧嘩にだって自信がある。

 

これはターニングポイントだ。ここでやられれば俺はこの先こいつらのサンドバッグとしての立場が確立される。

だが、ここでコイツらをぶちのめしたら?どうなる?

もっと大勢で俺を潰しに来るか?

 

関係ない。今はこいつらの流れに飲まれないことが1番大事だ。

 

俺は、目の前で下手くそなシャドーボクシングをしてる同級生の藤井に向かって拳を構える。

 

「おっ、なに比企谷、お前がちでやんの?」

 

「舐めてんな。全員でボコるぞ」

 

「待て、俺一人で十分だ。お前らはこいつが逃げねえようにドアを塞いでろ」

 

 

コイツらのボス格の原田が、藤井を退かして俺の前に立ち構える。

原田は空手をやっていて、中学生フルコン空手の全国出場経験もある実力者だ。

 

俺も半年間格闘技を習ったことで、そこら辺の雑魚なんか簡単に倒せることは分かってる。

多数の相手や、コイツみたいな実力者相手だとどうだろうか。

どうであれ、こうなったらもうやるしかないだろう。

 

 

 

 

 

昼休みが終わり、俺は教室に戻る。

教室に入る前に、水道で汚れた制服を洗うがなかなか汚れは落ちなかった。

5限目のため教室に来た教師が俺の姿を見て唖然とした。

 

 

「ひ、比企谷、お前なんなんだその汚れは……血か?」

 

 

その日、俺は五人の生徒を病院送りにした罪で親と共に校長室に呼び出された。

 

その日を分岐点に、俺と言う人間は明確に変わって行った。

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 

とある休日。

リビングで寛いでいると、ソファに寝転がる俺に小町がくっ付いてきた。

小町は俺へのボディタッチが割と多めでスキンシップが激しい。

 

 

「そう言えばお兄ちゃん、大志くんがお姉ちゃん帰ってくるの早くなったって言ってたよ」

 

「ふーん、良かったな」

 

「小町も、最近お兄ちゃん帰ってきてくれるの早くて嬉しいよ」

 

「やっぱ家にいるのが1番だと思ってな」

 

 

先月までは女に会いに行ったり、売りの仲介に行ったりしてたから夜出歩くことが多かった。小町にはパチンコにハマったと嘘をついていた。

 

 

「うん、その方がお兄ちゃんらしいよ」

 

小町は俺に抱きついたままスマホを弄り始めた。

決して嫌では無い。だが、鬱陶しい。

 

「そういえば、結衣さんのインスタに写真載ってたよ。雪乃さんと結衣さんとお兄ちゃんの写真」

 

「写真?……ああ、大志の姉ちゃんを説得しに行った時のやつか」

 

 

そういえば由比ヶ浜写真撮ってたな。

カクテルの写真も丁寧に撮ってたよ。

インスタ映えか。

 

俺のお腹の上で寝転がってた小町は、急に勢いよく起き上がった。

 

 

「あ!そう言えば今日メッセでワンニャンショーだよ!」

 

ワンニャンショーとは、さまざまな可愛い動物を紹介するイベントである。

年二回行われていて、俺と小町は毎年では無いがよくこのイベントに行く。

 

 

「わざと言わないで居たのに、気付いてしまったか」

 

「うわ、お兄ちゃん意地悪だなぁ。もちろん、行くよね?」

 

「お前が行くっていうなら行かない訳にはいかないだろ」

 

「やたー!お兄ちゃん大好き」

 

「はいはい愛してるよ」

 

 

俺は30分ほどで支度を済ませたが、肝心の小町がシャワーを浴びて着替えてなんやかんやしてるうちに2時間近く経ってしまった。

 

お昼過ぎ、1番混む時間帯に俺と小町は電車でメッセに向かう。

 

着くと、当然人盛りだ。

休日のお昼時だから当たり前なのだが。

 

 

「お兄ちゃん、行くよ」

 

小町に手を引かれてワンニャンショーの会場へと向かう。

会場に着くと、今年もやはり可愛い動物がたくさんだが、何回も来てるから俺は飽きてしまっている。

 

このイベントではペットの販売もしていて、気に入った子がいればその場で買って帰れる。

ちなみに今比企谷家にいる愛猫のカマクラはここワンニャンショーで買い取った猫ちゃんだ。

 

 

「お兄ちゃん!ペンギンだ!」

 

「もう動物園で良いじゃん……」

 

 

俺と小町は、鳥類コーナーで足を止めた。小町はインコ、俺はフクロウの籠の前で足を止める。

最近は鳥類の飼育がブームらしい。

 

 

「最近小鳥にも興味あるんだよね。動画とか見てると結構懐いて可愛いんだよ」

 

「鳥は、人間が思ってたより賢いことが近年明らかになったからな。だからと言って無条件に懐くわけじゃないからただ育てれば良いってもんじゃ無い」

 

「分かってるって。ただ、可愛いなって話だよ」

 

「そうか」

 

俺が見てるのは、手のひらほどのサイズのフクロウだ。フクロウはその習性から動きが独特で可笑しい。

そこがまた不思議で可愛らしい。

 

 

「鳥は飼えないな、うちにはカマクラがいるから」

 

「だね。かーくんと喧嘩しちゃう」

 

 

喧嘩というか、もはや食われる。

不謹慎だがこのタイミングで腹が減って来た。俺と小町はどこか食べに向かうことにした。

 

 

「あっ、雪乃さんだ」

 

駅への道中、小町が指差す方を見ると、雪乃がパンフレット片手に壁際でなにやら周りをうろちょろ見ている。

待ち合わせと言うよりは何かを探している様だ。

 

 

「何してんだ」

 

「ひゃっ!……脅かさないで、比企谷くん」

 

「脅かしたつもりはないけど」

 

 

一瞬驚いた雪乃だが、声をかけて来たのが俺と小町だとわかると安心したように肩を下ろした。

 

 

「今歩いていたら偶然雪乃さんのこと見かけたので」

 

「そうだったのね。二人はどうしてここに?」

 

「今日ここで開かれてたワンニャンショーを見に来てたんですよ」

 

「ワンニャンショー……!」

 

 

よく見ると、雪乃が持っているのはワンニャンショーのパンフレットだった。

こいつ、ワンニャンショー見たくて来たのか。こういう人混み苦手だろうに、ましてや一人で。

 

 

「ワンニャンショー見に来たんだろ?俺と小町が一緒に回ってやるよ」

 

「そうだね、一緒に行きましょ!」

 

「ありがとう。」

 

 

放っておく訳にもいかず、俺と小町は再びワンニャンショーの会場へと向かう。

ワンニャンショーの会場に到着した雪乃は、猫好きであるため様々な種類の猫を見て興奮気味である。

 

 

「かわいい。」

 

「雪乃さん猫好きだもんね」

 

「触れ合いコーナーもあるから、触って見るか」

 

 

スタッフに声を掛けて、子猫と遊ばせてもらう。

雪乃は、自分の周りに集まって来る子猫をどの様に触ればいいか分からなくてあたふたしていた。

 

「猫はこうやって手のひらで掬い上げるように抱き上げるんだ」

 

「ごめんなさい……その、力の加減とか分からなくて。怪我させてしまったら大変だし……」

 

「大丈夫ですよ雪乃さん、よっぽど乱暴にしない限りそう易々と怪我しませんから。」

 

 

雪乃は猫を一通り触り終えて、猫の写真も撮れて満足した様だ。

 

俺たちはワンニャンショーの会場を後にする。

 

 

「あれ?雪乃ちゃん?それに比企谷くんも」

 

よく知った声に振り向くと、そこには複数の友人を連れた陽乃さんがいた。

 

 

「ごめん、みんな先行ってて」

 

陽乃さんは一緒にいた友人たちにそう言って、俺たちの方によって来た。

陽乃さんを含めて男四人女三人……あの中に陽乃さんの彼氏はいるのか?

陽乃さんを狙ってる人間は?

 

陽乃さんと一緒にいた男どもを観察していると、後頭部に軽い衝撃が疾る。

 

 

「いでっ」

 

「こら、比企谷くん。人の友達を睨みつけないの」

 

「すみません」

 

いや、しかし。陽乃さんに雪乃に小町。

俺にとっては揃って欲しくないメンツが揃ってしまった。

 

 

「へぇー、雪乃ちゃんと比企谷くんで遊んでたんだ」

 

「別に、遊びというか……ワンニャンショーを見に来ていただけよ」

 

「ふーん」

 

「小町と来てたんですけど、たまたま雪乃と会ったので一緒に行動してたんですよ」

 

「なるほどね。久しぶり、小町ちゃん」

 

「お久しぶりです」

 

 

言葉にこそ出してないが、緊張感が尋常じゃない。ここら一体の空気がピリピリしている。

陽乃さんと、小町と雪乃。

この3人の関係は少し複雑だ。

 

 

「今からご飯を食べに行くところだから、邪魔しないでちょうだい。姉さん」

 

「邪魔?酷いなー、お姉ちゃんも一緒に食べたいなぁ。ねえ比企谷くん、私邪魔?」

 

「そんな事ないですよ」

 

俺が陽乃さんにそう答えると、雪乃は見るからに不機嫌になった。

あからさまに妬いているのが分かる。

それを見て、陽乃さんはクスッと笑う。

 

 

「冗談だよ、私がいたら比企谷くん独り占めになっちゃうもんね。今日はみんなで楽しんでおいで」

 

 

そう言い残して、陽乃さんは友人が待つであろう方向に去って行った。

 

 

小町と雪乃から、なんとも言えない、気不味い空気を感じる。

原因は当然陽乃さんだろう。

ああやって、人を引っ掻き回すのが昔から好きな人だ。

 

駅に向かって歩いていると、前方から小型犬がこちらに向かって走って来る。

それに気付いた雪乃が俺の陰に隠れた。

こいつ、犬が苦手だったっけか。

 

しゃがんで手を振ると、犬は尻尾を振りながら俺の前までやって来て腹を見せて寝転がった。

 

ダックスフンド。

ずいぶん人懐っこいな。

 

 

「こんな人混みでリード外しちゃ危ないよ」

 

 

小町の言う通りだ。この人だかりじゃ何かの拍子で踏まれる危険性もある。

 

「すみませーん!うちのサブレが……って、ヒッキー!?それにゆきのんと小町ちゃんも!」

 

「あら、由比ヶ浜さん」

 

「まさかの結衣さん登場!」

 

 

由比ヶ浜は、犬を抱き上げるとぎゅっと抱きしめた。

 

 

「もぉー、勝手に走って行っちゃダメって言ったでしょ!」

 

この光景、どこかで見たことあるな。

巨乳の少女に抱き抱えられたダックスフンド。

 

……思い出した、去年の入学式の朝に助けた犬とその飼い主だ。

まあ気付いたからと言って態々言う必要もないか。なんか、恩着せがましいし。

 

 

「それより!みんなずるいよ、あたしだけ呼ばないで遊ぶなんて!」

 

「違ぇよ、偶然会ったから一緒に飯でも食いに行くかってなっただけだ。お前は何してたんだよ」

 

「むぅー。ずるい。」

 

 

人の話を聞けよ。

ふと由比ヶ浜と犬を見ていると、リードと首輪を繋ぐ部分が外れているのが分かった。リードが壊れてたのか。

 

 

「サブレのトリミングに来てたんだ。今帰るとこだよ」

 

「良かったら結衣さんも一緒にご飯いいきませんか?」

 

「うん、いきたい!……でもサブレいるから、外で待たせるの可哀想だし……」

 

「一度、その子を家に置いてくればいいじゃない」

 

「え、待っててくれるの?」

 

「そのくらい、構わないわ」

 

「ありがと!」

 

 

由比ヶ浜はサブレを家に置いて来て、俺たちは昼食を摂った。

雪乃は乗り気ではなかったが、いきなりステーキで食べた。

 

 

 

 

 

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