光と闇は歪に絡み合う   作:シゲキ

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三話 逆境の先に成長がある

 

 

自分で言うのもなんだが、俺は昔から優秀だった。小学校のテストでは百点以外とったことがない。

中学の成績は全学期通してオール5。

テストの成績も常に学年一位。

運動でも、サッカー、野球、バスケ……100mは11秒で走るし、英語弁論大会では県代表に選ばれた。

何をやっても1番だった。

 

 

だが、俺には大きく足りないものが一つあった。

それは人望だ。俺にはそれが大きく欠落していた。

大半の人間は、俺をスカしてるだの調子乗ってるだの難癖をつけて排除しようとして来た。

小学生のうちはまだ良かったが、中学になると暴力を振るってくるやつもいた。

 

 

「調子乗んなよ比企谷、カッコつけてんじゃねえぞ」

 

「なに勘違いしてんの?誰もあんたに興味ないから」

 

様々な罵倒や屈辱を受けた。

潰れそうにもなった。

だが、俺にはそれを覆せる能力があった。

 

格闘技を習ったり、人気のある女を俺に惚れさせたり、破壊工作をしてクラスのグループを崩壊させたり。

そうこうしてるうちに、中学三年に上がる頃には誰も俺に逆らわなくなっていた。

 

みんな俺を恐れて、関わらない。

俺に命令されれば、逆らえない。

 

まるで、王様になった気分だった。

 

 

ある日のこと。とある公園でタイマンを張れと喧嘩を売って来た他校の不良をシメている時のことだった。

なんでもコイツは俺と同じクラスにいる女子の彼氏らしく、俺の噂を聞きつけて潰しにきたらしい。

 

 

「二度と俺に刃向かうなよ」

「ご、ごめんなさい!比企谷くん!もう調子乗らないんで勘弁してください!」

 

 

金属バットで殴りつけて来やがったが、俺はそれをスウェー躱し、ローキックから右ストレートを当てた。

たった2発で膝をついたそいつの首を鷲掴みにすると、すぐに降参した。

 

俺に刃向かったことを心の底から後悔させる必要がある。

俺は降参する不良の顔面を膝で蹴り飛ばした。

鼻を折られた不良は、顔を押さえながら逃げて行った。

 

 

 

夕暮れ、日が沈み街灯の明かりだけに照らされてる公園。

言い様のない虚しさに黄昏て、ブランコに座り空を眺めていた俺を、誰かが灯したライトが照らした。

 

 

「そんな所で満足してるようじゃ、とても私の隣に相応しい人にはなれないよ。比企谷くん」

 

光の方へ目を向けると、憧れのあの人がそこに立っていた。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

2-F組、俺が所属するクラスだ。

この学年の中で比較的活発なクラスで、それは葉山を中心としたグループがいる事が理由だろう。

五月蝿いから普段は屋上など外で昼飯を食べているが、今日は生憎の雨で教室で食べることとなった。

 

 

「でさー、今日みんなでサーティーワン行かない?なんかアイス食べたい気分だし」

 

「おー、いいね優美子。私はいいよ」

 

「隼人は?」

 

「今日は雨だから部活も休みだろうし、大丈夫だと思うよ」

 

「よっしゃ。じゃあ今日決まりね」

 

 

葉山グループのナンバー2、三浦優美子がアイスを食べるだのなんだのテンション高めだ。実質三浦が葉山グループのボスといっても過言ではない。

 

 

「あ、あの優美子、あたしちょっと用事あるから……」

 

「え、なに?じゃあついでに飲み物買って来てくんない?午後ティーね」

 

「その、昼休み中はずっとって言うか、戻ってこれないと言うか……」

 

「あ?……てか結衣、あんた最近付き合い悪いよね?何してんの?」

 

「私事で恐縮ですと言うか……」

 

「だからなんの理由があってあーしの言うこと断ってんのって聞いてんだけど」

 

「あう……ごめんなさい……」

 

「だからぁ、そのはっきりしない態度じゃなんもわかんないってば!」

 

 

ピリピリした空気が流れ出し、教室にいる連中が廊下へと避難していく。

中には面白がって見物しようとしている奴らもいたが、葉山に睨まれてそういった奴らも教室から出て行った。

俺は関係ないから気にしない。ほかに何処で弁当を食えって言うんだ、便所でなんか汚くて食えたもんじゃない。

 

ふと三浦と由比ヶ浜の方に目を向けると、由比ヶ浜と目があった。

涙目で、一瞬だけ俺に助けを求めるような視線を向けたがすぐに目をそらした。

助けて欲しいけど、やはり部外者の俺に頼るわけにはいかないと思ったのだろう。

 

哀れだ。派閥なんて作っても、得するのは上に立つ人間だけだからな。

下に立つ人間は、ああなる。

上の人間に逆らえず、言われるがままだ。

 

 

「で、まさか今日も放課後用事あるとか言わないよね?」

 

「その……ごめん……」

 

「だから、言いたいことあるならはっきり言えって言ってるでしょ!?」

 

「おい」

 

 

俺の声に、三浦たちの視線が俺に集まる。

呆気にとられたような三浦だったが、三浦はすぐ俺を睨みつけて来た。

 

 

「なに?なんか文句あんの?」

 

「五月蝿いから、少し黙ってろ」

 

「は、はぁ!?」

 

面を食らった様子の三浦。

空かさず、三浦の取り巻きの戸部、大岡、大和が俺の方へ向かって来た。

 

だが、葉山がそれを静止した。

 

 

「待て、落ち着けよお前ら。ヒキタニくんも、その言い方は良くないと思うよ」

 

 

葉山はイケメンでスポーツ万能で学業優秀な人気者だ。

人気者な点を除けば完全な俺の劣化版である。

 

……負け惜しみ感ハンパないな。

 

 

「ヒキタニって誰?お前学年3位の成績でおきながら、去年新入生代表でスピーチした俺の名前知らないの?」

 

「いや、その時教頭先生が君の名前をヒキタニと呼んでたから……ごめん」

 

「そ、そうか……」

 

 

なんとも微妙な空気になってしまった。

緊張感のある、ピリついたシリアスな空気から、俺と葉山の間で急に気の抜けた緩い空気が流れ出す。

しかし、三浦の怒りは当然まだ治っていないようだ。

 

 

「あんた、誰に刃向かってっか分かってんの?」

 

「お前、自分が何様だと思ってんの」

 

 

俺の挑発に耐えきれなくなった三浦が勢いよく立ち上がったその時、同時にドアが開かれた。

目を向けると、そこに立っていたのは雪ノ下雪乃だ。

 

 

「由比ヶ浜さん、人と約束しておきながら待たせるとはどう言う事かしら」

 

「ゆ、ゆきのん!」

 

「なんで雪ノ下さんがここに来るわけ?」

 

 

突如現れた雪乃に、三浦は敵対心むき出しだ。当然といえば当然か。

雪乃はこの学校で最も容姿が良くて優秀な女子だ。

同性なら無意識に敵意を持つだろう。

 

 

「どうしても何も、そこにいる由比ヶ浜さんとお昼を一緒に食べる約束をしていたから迎えに来たのよ」

 

「結衣、あんたどーいう事?」

 

 

露骨に慌て出す由比ヶ浜。

由比ヶ浜は三浦に隠れて雪乃と絡んでたんだろうが、無理があったな。

どちらかを優先できない奴はどっちも失うことになる。

 

 

「由比ヶ浜、自分の口でしっかり言わないと相手には伝わらないぞ」

 

「!?」

 

ちょうど弁当を食い終えた俺は、それだけを言って廊下に出る。

雪乃とすれ違うときに、小声で耳打ちをした。

 

 

「あとは由比ヶ浜本人に任せよう」

 

 

俺の言葉に、雪乃は無言で頷いた。

過保護になりすぎても良くない。それこそ、由比ヶ浜と三浦の対立をより助長させるだけだろう。

あまり助けすぎると、由比ヶ浜は明確に雪乃側の派閥の人間と認識されてしまう。

 

「由比ヶ浜さん、部室で待っているからあまり遅くならないでね」

 

 

雪ノ下はそう言って奉仕部の部室へと帰っていった。

廊下で教室内の声を聞いていると、由比ヶ浜が自分で説明し始めていた。

 

 

「あのね、優美子。あたし部活に入る事にしたんだ。優美子ともちゃんと遊ぶし、このグループから抜けるつもりはないけど、でも、やりたい事があるから」

 

「……」

 

「だから、たまにこうして居なくなる事を許して欲しいな」

 

「……あっそ。……好きにすれば」

 

「うん、ありがとう優美子」

 

 

教室から出て来た由比ヶ浜と、目が合う。

 

 

「え、ヒッキー!聞いてたの?」

 

「いや、聞いてない」

 

「嘘つき!変態!……助けてくれてありがとね、ヒッキー」

 

「助けたつもりは無ぇよ。……早く行かないと、雪乃…ちゃんが待ってるぞ」

 

「うん!」

 

 

由比ヶ浜は元気よく走り去っていくが、途中出くわした教師に廊下を走るなと叱られて居た。

なんともアホというか天然というか。

 

クッキーの件以降、由比ヶ浜はこうして雪乃と交友があるようだ。

 

 

よかったな雪乃、良い友達ができそうで。

 

 

 




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