賛否両論あると思います。
学校からの注意が入りSNSで女を使った小遣い稼ぎが出来なくなった。
隠れて新しいアカウントを作れば済む話だが、この稼ぎ方も潮時だったと言うことだろう。
女から小遣いをもらったり、女を他の男に紹介したり、ハメ撮りを売ったり、結構稼ぎは良かったが。
そろそろ新しい金稼ぎを見つけなければならないな。
俺は高校卒業までに五千万程貯めたい。
自分の部屋のベッドの下に隠してあるダンボール。
そこに俺は貯金を蓄えている。
高校入学と同時にお金を貯め始め、今は
一千万円近いの蓄えがある。
10ヶ月程度でこれだけ集める事が出来てたら上出来だろう。
高校を卒業したら起業するつもりだ。
早朝5時。
ジャージに着替えて、家から出る。
登校前に毎朝1時間走るのが俺の日課だ。
いくつか決めてあるコースのうちの一つを走っていると、隣に黒いセダンが並んで来た。
俺が立ち止まると車も止まり、スモークフィルムの窓が開き、中から伸びて来た手が俺の腕を掴んだ。
「ひゃっはろー!おはよう、比企谷くん」
「陽乃さん……!」
まだ20分ほどしか走ってなかったが、陽乃さんに言われて車に乗せられた。
「久しぶりです、陽乃さん」
「久しぶり〜比企谷くん。元気してた?」
「はい。……一年ぶりくらいですね、最後にあったのは去年の入学式の日だったっけな」
「そーだね。寂しかった?」
「はい。……会えて嬉しいです」
「あはは!相変わらず可愛いなぁ君は。お姉ちゃんも寂しかったよ」
十分程車を走らせていると、車が停まった。運転手の都築さんが降りて来て陽乃さん側のドアを開けたため、俺も自分側のドアを開けて降りる。
車から出ると、そこは寿司屋だった。
当然、回らない寿司屋。
ここら辺じゃ1番高い寿司屋だ。
「じゃあ朝御飯にしよっか」
「朝から寿司ですか……」
陽乃さんに連れられて寿司屋に入る。
自動ドアをくぐるとすぐ隣に大きい生簀があり、鯛や蟹が泳いでいる。
「お待ちしておりました、雪ノ下様」
ウェイターに連れられて座敷へと連れられて、俺と陽乃さんは机を挟んだ正面に腰を下ろした。
「こんな急に来なくても、連絡くらいくれれば良かったのに。こんな服装で貴女と外食だなんて」
「いいよ気にしないで、ちょっとしたサプライズだと思ってさ」
「……なんたって急に会いに来たんですか」
「だから言ったでしょ、寂しかったって。なに?嬉しくないの?」
「いや、凄い嬉しいけど……」
「じゃあ良いじゃない。最近どうしてるかなーって思ってさ」
そう言って、陽乃さんは見惚れるような綺麗で愛らしい笑顔で俺の顔を見る。
非の打ち所がない完璧な笑顔だが、俺や陽乃さんを良く知る人には分かる。
それは由比ヶ浜や戸塚のような純粋無垢な笑顔ではなく、不敵で、影のある、それでいて妖艶。
俺の顔を舐め回すような、そんな視線。
この人は、相変わらずのようだ。
予め、全て予約していたようで、大皿いっぱいのフグの刺身と鯛の刺身が運ばれて来た。
「さあさあ、食べようよ」
「じゃあ。……いただきます」
陽乃さんが食べるのを待っていたが、陽乃さんはフグも鯛も一口食べると全部俺の方へよこして来た。
もう食べないんですか?なんて聞くのも野暮だろう。この人は飽き性だからな。
「……いただきます」
「うん、どうぞ。そういえば、雪乃ちゃんと同じ部活に入ったんだって?」
「はい、成り行きで。平塚先生っていう人に強制的に入れられました」
「ふーん、静ちゃんがねぇ。あの人に、君の名前教えてないんだけどな」
「知り合いなんですか?」
「私が総武に通ってた時も居てさ、結構仲良かったんだ。今でも偶にご飯食べたりするよ。それで、雪乃ちゃんはどうだった?」
「どうって……昔と変わってませんよ」
「ふーん、まだあの子も比企谷くんのこと好きなんだ」
次に来た寿司や刺身も、陽乃さんは少し口を付けるとすぐ飽きてしまうようで、残したものを全部俺に押し付けて来る。
気づけば、俺の前には大量の寿司と刺身が並んでいた。
と言うか、もはや机一杯に魚の山。
軽く10人前はあるだろう。
「全部食べて♪」
「本気ですか……」
「うん、食べて」
「……分かりました」
30分ほどかけて、俺は全ての品を食べ終えた。
ただでさえ量が多かったのに生物と来ては更にキツイ。少し吐きそうだ。
「よしよし、良い子だね八幡。じゃあ帰ろっか」
「陽乃さん……少し休ませてください……」
「ヤダ。私は早く帰りたいの、早くして比企谷くん」
「……はい。分かりました」
満腹の腹をさすりながら、俺は陽乃さんに手を引かれて寿司屋を後にする。
前払いなのか付けなのかは分からないが、カウンターで料金を払うことはなかった。
運転手の都築さんが陽乃さんのために後部座席のドアを開ける。
俺はその反対側に回り、陽乃さんの隣に乗った。
「美味しかった?比企谷くん」
「……はい、美味しかったです」
「どのくらい?」
「ここ半年で1番、良いものを食べさせてもらいましたよ」
「そっ、じゃあ良かった」
そう言いながらも、俺の言葉には興味なさそうにスマホをいじる陽乃さん。
「ねえ、これ見て?」
そう言われて、陽乃さんの方をみるとスマホの画面を向けられる。
何かの動画が再生されて、すぐに俺はそれが何の動画か分かった。
「……勘弁してください」
「えー?何が?」
「そんな汚いもの、見ないで下さい」
「良いじゃん別に。女の子だってこう言うのみるんだよ?もしかして比企谷くん童貞だから知らなかった?」
「……許して下さい陽乃さん」
陽乃さんが見せて来た動画、それは俺がSNSで知り合った女と行為をしているその動画の一つだった。
声も、顔も、俺は何一つ俺の手がかりを出してないのに、陽乃さんは俺を特定したらしい。
俺の事を学校にリークしたのは、やはり陽乃さんだったか。
それは何となく察していたが、まさか1週間以上経過したこのタイミングで接触してくるとは思わなかった。
「陽乃さん、俺は……ぐあっ」
陽乃さんの掌が俺の鳩尾に深く突き刺さった。
胃袋の中身が吐き出されないように、俺は必死に堪える。
「私の許可なしに、勝手なことしないで?」
「分かりました、もうしません」
「当たり前でしょ」
もう一度、陽乃さんは俺の胃袋を抉るように指を深く突き刺して来る。
思わず胃の中身を吐き出しそうになり、俺は上を向いて口を塞いで、逆流して来たものを無理やり飲み込む。
「君は、これからどうやって私を楽しませてくれるの?教えて?」
「……貴女が望むなら、俺は……俺は貴女が望むなら、貴女のための国を築きます」
「あはは、何それ」
鼻水とヨダレを垂れ流す俺を、陽乃さんは抱きしめて頭を撫でる。
俺の顔に陽乃さんの髪が触れて、その綺麗な髪が俺の体液で汚れてしまう。
「許してあげる、八幡」
歪な関係だ。こんなの普通じゃない。
けど、心地いい。
俺はこの人のそばにいたい。
俺が陽乃さんを抱きしめ返そうとしたところで、陽乃さんは俺を突き飛ばして離れてしまった。
外を見ると、ちょうど俺の家の前で車が止まった。
「6時30分か……ごめんね、時間取らせちゃって」
「いえ……全然。楽しかったので」
「え、本当に?ドMなの?」
「……陽乃さんがドSなんでしょ」
「あはは、そうかもね。じゃあ、また遊ぼうね比企谷くん」
そう言い残して、陽乃さんは窓を閉める。
そして陽乃さんを乗せた車は走り去っていってしまった。
まさしく、嵐のような人。
その言葉がよく似合う。
玄関脇にある水道で顔を洗い、玄関を開ける。親父とお袋はすでに仕事に向かっていて家にはいないようだ。
ドタドタと走る音が騒がしく聞こえて来て、勢いよくリビングのドアが開くと、パンを片手に持った妹の小町が現れて、出迎えてくれた。
「今日は随分遅かったね、お兄ちゃん」
「ああ、いや……クラスメイトのテニス部のやつから練習に付き合って欲しいと頼まれててな。その為のメニューを試してたら遅れた」
「ふーん。……あ、そういえばなんか手紙届いてたよ?差出人の名前は書いてないけど」
「学校からじゃねぇかな、見せてみろ」
俺は小町から手紙を受け取り、自室へと向かう。
封筒を開けると、其処には一枚の手紙が入っていた。
『女の子を悲しませた罰です。明日までに私の口座に800万円振り込んでね♡
出来なかったら貴方とは縁を切ります』
陽乃さんからの手紙だった。
800万……俺が一年をかけて貯めた金のその大半。
これも、あの人なりのヤキモチか……。
捻デレめ。