光と闇は歪に絡み合う   作:シゲキ

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九話 葉山のグループ

 

 

戸塚の依頼を解決してから1週間ほど経ったある日。いつものように、以来の来ない奉仕部の部活で本を読んでいると。

珍しくドアがノックされた。

 

 

「あ、お客さん!どうぞー!」

 

由比ヶ浜がそう声をかけると、ドアが開かれて、訪れたのは葉山隼人だった。

 

 

「依頼を頼みたいんだけど、いいかな?」

 

「……断るわ」

 

「え、ゆきのん?」

 

「雪乃ちゃん……」

 

「気安く名前で呼ばないでくれるかしら葉山くん」

 

「ご、ごめん。雪ノ下さん」

 

 

おいおい、穏やかじゃないな……。

葉山隼人。確かこいつ、雪ノ下家の専属弁護士の息子だろ。

それで陽乃さんと雪乃と、子供の頃から交友あるって昔聞いたな。

何にしても、雪乃とこいつの間で何かあったことは明白だ。

 

 

「話くらい聞いてやってもいいんじゃないか?」

 

「誰にでも、関わりたくない人の一人くらいいるでしょう。こちらにも相談者を選ぶ権利があるはずよ」

 

「言っちゃ悪いが雪乃、お前が人のこと言えた事じゃないぞ」

 

 

雪乃は俺が奉仕部に入った経緯を思い出したようで、少し不貞腐れているが葉山の相談を聞くことにしたようだ。

 

 

「実は最近、クラス内で悪い噂が回ってるんだ」

 

「あ〜……」

 

同じクラスの由比ヶ浜は、葉山の話にすぐ勘付いたようだ。

ちなみに俺も同じクラスだが、なんの話だか全くわからん。

 

 

「そう。その噂の内容というのは?まさか比企谷くんが女癖の悪いスケコマシだという話じゃないでしょ?」

 

「それもあるんだけど、今回はまた別の噂なんだよ。俺の友人の戸部と大岡と大和に関する噂がツイッターとかラインで拡散されてて、この噂を止める方法を一緒に考えて欲しいんだ」

 

「簡単じゃない、噂の出所を特定して潰せばいいだけよ」

 

「いや、そうじゃなくて……」

 

「そうじゃなくて、なに?噂の根源が無くならない以上、止むはずないでしょ」

 

雪乃に押されて言葉をかき消されてしまう葉山。由比ヶ浜もどこか表情が暗い。

自分たちのグループの話だ、あまりいい気分はしないだろう。

まあ雪乃の言ってることは正しいんだけどな。

 

 

「葉山は噂を流してる大元を特定した時の事を危惧してんだよ。もし噂を流してる奴がこいつの取り巻きの一人だったとしたら?それこそコイツのグループは崩壊する」

 

「ありがとうヒキタニくん、彼のいう通りなんだ雪ノ下さん。」

 

「それにしてもヒッキー、よくそんな事が分かったね」

 

「俺も昔、同じ様な事をして邪魔なグループを潰した事があるからな」

 

「ヒッキー……」

 

由比ヶ浜がドン引きした表情で、ジト目で俺を睨む。

 

 

「けれど、犯人を特定する以外に噂を止める方法なんてあるのかしら」

 

「とりあえず、俺と由比ヶ浜でクラスの様子を観察してみるわ」

 

「ええ、それが良いわね。

じゃあ明日から早速はじめましょう」

 

「ありがとう、よろしく頼むよ」

 

 

こうして、葉山グループの観察をすることになった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

次の日、早速俺と由比ヶ浜はそれぞれ葉山の取り巻きの観察を始めた。

普段通り誰かの恋愛事情だのなんだので盛り上がる葉山と、戸部と大岡と大和。

 

……まあ、犯人は大和だろうな。

大岡ってやつは五月蝿いし、ずる賢そうに見えるが実際はただのバカだろう。

戸部は生粋の葉山信者だからグループの崩壊は望んでいない筈だ。

 

そして大和。コイツの噂の内容は三股の女誑し。コイツの噂は俺の噂と微妙に被っているからインパクトが薄い。

それでいて男にとっては複数の女を侍らす事はステータスだ。

 

こいつは口下手だから、お喋りな戸部と大岡の中では霞んでしまう。

その事から、どちらかをグループ内から排除して自分の立場を確保したかった。

 

そんな所だろう。

 

……が、今回の依頼は平和な解決だ。

犯人を吊るし上げる事が目的じゃ無い。

 

 

「じゃあちょっと俺、職員室に用があるから」

 

そう言っては葉山は、俺と目を合わせて廊下に出て行く。

葉山の取り巻きたちの様子は……ああ、なるほどね。

 

 

「なんか分かったか?ヒキタニくん」

 

「ああ、だいたいはな。犯人と、平和な解決方法までなら」

 

「平和な方を教えてほしいな」

 

 

廊下を歩きながら話していると、後ろから由比ヶ浜も追ってきた。

 

 

「やっぱり二人で話してたんだ。ごめん、あたしじゃ何も分からなかったよ」

 

「いや、俺がもう解決策を考えたから大丈夫だ」

 

 

クラスから離れた廊下の窓際で、俺たち3人は足を止める。

 

 

「まあ単純に言えば、あいつらは葉山のグループって事だ」

 

「……うん、そうだな」

 

「何当たり前のこと言ってるのヒッキー……」

 

「はぁ。だから、アイツらは葉山ありきのグループなんだよ。

葉山がいる時こそ楽しそうに喋りはするが、葉山がいない時のあいつらは会話一つ無い様子だった。

あの3人自体は仲良くないってことだ」

 

 

俺がそういうと、由比ヶ浜は納得した様で、頷いた。

 

 

「たしかに、分かるかも」

 

「本当か?結衣」

 

「うん、あたしも昔そういうのあったし……それに隼人くんいない時の3人たしかにテンション低いかも」

 

「そうか……3人にも仲良くなって欲しいんだが……」

 

「それならいっそのことお前からあの3人を一度引き抜けばいい。3人で話すしか無くなればそれなりに仲良くなるだろ」

 

「でも、難しいよね。グループをいきなり抜けるなんて。ましてやリーダー的存在の隼人くんならなおさらだよ」

 

「それは葉山のやる気の問題だ。俺は頼まれた通り、俺なりの解決策を提示しただけだからな」

 

「そうだね。俺も、できるだけの事はしてみるよ」

 

「ああ、頑張れよ。じゃあ先に戻るわ、一緒に教室戻ったら不自然だからな」

 

 

まあ葉山の器量なら上手くやれるだろう。

しかし、本当に大事にしたいグループなら、組織が崩壊する様な事を起こす奴をグループ内においとくべきじゃないと思うけどな。

 

 

 

ーーー

 

 

 

翌日、俺は職員室に呼び出されていた。

もちろん平塚先生に。

いつだかにも来た職員室で、平塚先生の正面に腰を下ろす。

 

 

「それで、職場見学の場所は決まったか?」

 

「いえ」

 

「なんだ、まだ決まらないのか?」

 

「いや、家です」

 

「いえってそっちの家かよ!はぁ、家でどうやって職場見学するというのだ。まさかヒモになりたいからとか言わないだろうな?」

 

「違いますよ。俺は高校卒業したら起業するつもりなので職場見学なんか行くより家で経営学でも学んだ方がよほど有意義です」

 

「ほう、起業か……意外と野心家だなお前は。なら、起業しようと考えてる分野の職場に見学に行けばいいじゃないか」

 

「行ったところでたいした話聞けないでしょ。向こうは未来の労働者としてしかこっちをみてないんだから、足しになる様な話は何も聞けないですよ」

 

「しかし、労働者の心を知らずには良き経営者にはなれないぞ」

 

「いや蛇足でしか無いです、低賃金で数年間を潰したく無い。……それに、俺は何が何でも若いうちに成功者になる必要があるんです。それこそ十年……五年以内に結果を出さなければならない」

「はぁ。……まあお前がどういった野望を持っているのか知らんが、学校側として職場体験に向かわせないわけにはいかないんだ。適当に無難な場所を見繕っておけ」

 

「あぁ、家が良かったのに」

 

「おい、本音が出てるぞ!まったく真剣な表情で語っておいて建前か?」

 

「まさか。本気ですよ」

 

「まあいい。それと、3人一組の班での行動になるからお前も何処か空いてるところに入っておけよ。そもそも、お前が自宅を選択するならお前は同じ班のクラスメイトを連れて家に行くことになるがな」

 

「俺の家は一見さんお断りなので他の二人には帰ってもらうまでです」

 

「この減らず口が。とりあえず、放課後までに決めておいてくれ」

 

「分かりましたよ」

 

 

職員室から出て、俺は教室に向かう。

教室について自分の席に座ると、どうやらもう職場体験の班決めは始まっているようで、葉山グループも何やら話し合っていた。

 

「3人か……」

 

「四人じゃダメなんかな?先生に聞いてみっかな」

 

「えー、俺隼人くんと同じ班がいいぜぇー」

 

葉山の取り巻きの3人は突然、自分がグループから漏れないように必死だろう。

 

「ごめん、俺他に組む人いるんだよね」

 

「え、隼人くん!?」

 

葉山は3人をおいて俺の方に向かってくる。そして俺の前の席に腰かけた。

まあ、ああすれば必然的に、あの3人で班を作ることになる。

葉山なりに考えた結果なのだろう。

 

 

「これでどうだろう、3人で仲良くしてくれるかな」

 

「さあな、分からん」

 

「ところで比企谷、班は決まったか?」

 

「いや、決まってない」

 

「そうか、じゃあ一緒に組もう」

 

「俺とお前が接触するたび、お前のとこの女王様はご機嫌斜めのようだが」

 

三浦の方を見ると、俺と葉山が話しているのを見て明らかに不満げな表情を浮かべていた。

 

 

「ははは、まあ大丈夫だよ」

 

「お前がいいなら良いけどよ」

 

 

葉山グループの3人の方を見ていると、どうやら3人で班を組むことに決めたらしい。

3人が班のメンバーを黒板に書き出しに行ったのを見ていると、それ遮るように誰かが視界に割って入って来た。

 

 

「八幡!」

 

「戸塚、どうした?」

 

 

戸塚彩加。

こいつとは、テニスの練習に協力して以降たまに話をすることがある。

というか戸塚が話しかけてくるから俺はそれに適当な返事をしてるだけだ。

 

 

「八幡、よかったら職場見学で一緒の班になりたいんだけど……もしかして、決まっちゃった?」

 

「いや、俺と葉山で組んでてあと一人空いてたとこだよ」

 

「ほんと?じゃあ混ぜてもらってもいいかな?」

 

「いいぞ」

 

「やった!」

 

「よろしく、戸塚くん」

 

「うん、葉山くんよろしくね。……でも、意外だよ。葉山くんと八幡が班を組むなんて」

 

「逆に俺と組んで、意外って言われない奴なんか居ないよ」

 

「そうでもないだろ。雪ノ下さんや、結衣はヒキタニくんと組んでても違和感ないと思うよ」

 

「たしかに、僕もそう思う。それに、僕だって八幡と友達でしょ?」

 

「友達か。高校生活始めての友達だわ」

 

 

 

 

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