僕らのヒーローアカデミア ~ミラージュたちを添えて~ 作:名無しの百号
身長:189センチ ※まだまだ伸びるぞ!
誕生日:9月15日
趣味:グリモワル散策/ノセノセの組み合わせ/読書(私立探偵モノや冒険活劇)/料理
好きな物:甘い物(洋菓子和菓子問わず)、カッコいいモノ全般
個性:ミラージュ (発動型召喚系)
※生前彼が遊んでいたゲームに登場したモンスターの総称だ。全部で200体以上いるぞ! 身体の中にミラージュたちが住む異世界『グリモワル』を内包し、そこへ行く事も出来るぞ!!
おっす、オラ転生者。
まあ、よくネット小説界隈で有名な、死んで異世界へGOを現在進行形でやってる。
死因は覚えてないけど、事故や殺人とかじゃないっぽい。神様に出会ったそんな記憶もない。
つーか、前世の記憶だって個人的な思い出とかは残ってないし、あるのは自分が見たであろう様々な作品群の情報や前世の常識くらいだ。
ただ、なんとなく『
そんな俺が暮らすこの日本、どうやら漫画かアニメが原作のようだ。
過去に中国で光る赤ん坊が生まれてから徐々に、超常の力――『個性』を持った人間が産まれて、今では人口の八割を占めるようになったんだとか。
……どっかでそんな漫画かアニメがあったような気もするが、どうにも覚えていない。
まあ、見てなかったんだろう。
そんな異能が社会的ステータスになるような社会において、前世と明確な差異がある。
それが、ヒーローと
そこまで興味のない俺はよく知らんのだが、今では犯罪者は殆どがヴィランと呼ばれ、それを取り締まる免許を持った存在がヒーローなんだそうだ。
それ故に、その捕物劇は文字通り劇的で派手だ。
昔の動画にも、未だに人々の記憶から色褪せない超人が色々いた。
中でも一際なのが、オールマイトだろう。
オールマイト。
日本におけるNO.1ヒーロー。
超人的な肉体のみで並居る有名ヒーローを置いて最強と、『平和の象徴』と讃えられた男だ。俺みたいにヒーローに疎いヤツでも知ってるくらいだからな。
筋骨隆々とした巨体と人を安心させるような溌剌とした笑顔が特徴の金髪の男ってのが外見だ。……前世で言うところの、超能力の無いスーパーマンだろうか。
そんなオールマイトを筆頭に様々なヒーローが活躍する昨今、ヒーローを目指す子供は必然的に多くなった。俺の世代でも、オールマイトは人気だ。ヒーロー育成校への進学を決める人間だって多い。
強い個性を持っているのならヒーロー科を受験するのは当然だった。
そう、隣のクラスの爆豪勝己のように。
ヤツはどうやら、ヒーロー育成校でもトップクラスと名高い雄英高校に進学するつもりらしい。
まあそれ自体はどうでもいいんだ。
ただ、問題は、その高校に無個性の緑谷も進学の意志を持っている事だろうか。
緑谷出久。
一言で言えばヒーローオタク。
二人とは中一の時に同じクラスだったんだが、爆豪はその頃から糞ナードだのなんだのと緑谷を苛めていた。
……つーかナードってなんぞや、と思い調べてみればアメリカのスクールカーストにおけるオタクへの蔑称だった。
まだギークと呼べばいいだろうに。そっちには肯定的な意味合いもあるみたいだし。
正直、アイツにヒーローが務まるとは全然思えないんだがなぁ。
アイツが緑谷にしてる事、幼馴染ってのを抜きにしても、相当歪んでるし。
イジメなんぞするような小者がヒーロー目指そうなんざちゃんちゃらおかしいっつーの。
「――い」
大体、他人の人生になんでそこまで干渉すんのか理解不能だ。
相手は無個性で、モヤシの代名詞みたいな緑谷。
どんな人生プラン掲げてんのか知らんが、思う通りにいかないのが人生だろうに。まったく、あの爆発坊やは人生の愉しみ方を解っちゃいない。
こんなご時世だ。
時には嫌な連中だって救けるのがヒーローなんだろうに。弱いヤツをイジメるような性根の貧しい腐った蜜柑がヒーローになった所でオールマイトの足元にも及ばんだろうさ。
「――おい」
そもそも――
「おいっつってんだろうがクソモブがっ!!」
爆発音。
それを認識した瞬間――“連中”は動いた。
「――っが!?」
首を掴まれ、宙吊りにされて呻く爆豪。
更にヤツを複数が取り囲む。
どうやら俺に向かって言っていたようだ。
「……何の用だ爆発坊や」
手で放してやれ、と指示すると首を掴んでいたヤツが手を放し、座り込んで咳込む。
涙目でこちらを睨む爆豪に、俺は冷めた眼で見下ろす。
「……あ、あのさ、
「おお、緑谷か。どうした?」
俺は話し掛けてきた緑谷に向き直る。
「う、うん。さっきのキミの独り言をかっちゃんが聞いてたんだ。それで怒ったかっちゃんが」
「俺を追ってきた、と。……暇なのかこの爆発坊やは」
俺は基本こういった他人を踏み躙るような言動をする野郎に容赦はしない。
どう考えても個性がヒーロー向きのコイツのやってる事はヴィランそのものだ。
こんなゴミムシがヒーローになれるのなら、随分とヒーロー業界は人手不足なんだろうな。
「他人の人生口出しするくらいなら、もっと自分を追い込んで鍛え上げろよ馬鹿が。路傍の石扱いすんなら視線を向けんな矛盾してんだよ言動が」
前々から言いたかった事をこの際だから言ってやろう。
「テメェがずっと緑谷に突っ掛かるのを中一の時から見てたけどよ……お前、本当は緑谷が怖いんだろ?」
「え?」
「――っ!?」
驚く緑谷に、動揺する爆豪。
「なんでずっとイジメるんだ? なんで将来を気にするんだ? お前、本当に路傍の石扱いするヤツの名前すら覚えねぇだろ」
幼馴染だから特別だとか言うのなら余計猶更気持ち悪いわ。
コイツら両方とも男だぞ。
ホモかよ。
「どんな理由あろうとも、お前は最低のゴミムシだ。少なくとも、俺はそう思う。他人を踏みにじるようなクソ野郎が俺同じ空気を吸ってるってだけで不快だ。消えろ失せろ二度とそのツラ見せんな馬鹿が」
「さ、沙門くん……」
ついでだから緑谷にも言っとくか。
「お前もお前だ緑谷」
「え?」
「なんでこの馬鹿矯正しなかった。幾らでも手段はあった筈だぞ。コイツの親に話すなりお前の親に泣きつくなり、それこそ警察や教師に相談するなり――立ち向かうなり出来たんじゃねぇのか?」
コイツは、ヒーローに憧れる余り、大事な事を忘れてるような気がする。
「お前さ、中一の時に俺に言ったろ? ヒーローになりたいって。なら成れよ。ゴミムシなんざ踏み潰して蹴散らせや。お前の人生の障害なんぞに関わる暇があったら逃げるなり立ち向かうなりさっさと決めろ」
誰か救けたい、そう願うのは悪い事じゃない。それがヒーローに対する憧れからだとしてもだ。
誰だって最初は憧れから始まるもんだしな。
「で、でも僕は無個性だし……」
「それがお前の人生の目標を諦める理由になんのか?」
眼に涙を溜めて『無個性だし』と否定の言葉を吐く緑谷。
「つーかそれだわお前。まず無個性だしっつーのを止めろ」
「え?」
「無個性を逃げ道にすんな。まずヒーローになりたいなら努力しろよ。身体鍛えろ知識を溜め込め誰かを救ける為に行動しろや。それをしてない時点でお前はそこのゴミムシに数段遅れてんだからな。……まあ、それでイジメるのは論外だが」
まず行動。
転生してから俺が心に決めてる第一原則だ。
行動してから後悔した方が身になりやすい。
それに、『しなかった』って後悔は、かなり心を苛む。ともすれば、『した』後の後悔よりも。
だからこのお節介も俺がしたいからやっている。
「なら! キミは僕がヒーローになれるって言うのかよ!? 無個性の僕が!!」
「知らんわボケェ!!」
ついそう言い返す。
「「…………」」
唖然とする緑谷と爆豪。
ここで俺が無責任に『ヒーローになれる』とでも宣うと思っているのだろうか。
ンなワケがあるか。
「いいか? 決めるのはお前だ緑谷。ヒーローに成るのを諦めるのか、それとも諦めないのかを他人に求めてどうすんだ」
結局はそこだ。
自分の人生において、自分の意志こそが全てにおいて優先される。
誰かに決められた道は、人生の純度を濁らせるだけだ。
責任は自分で持たないといけない。
それに、どんな凄い個性を持っていようと殉職する人だっているのがヒーローだぞ。
「僕が、決める……」
「……まあ、ンな事言っても、ずっと否定されてばっかのお前じゃすぐ決めるのは難しいわな」
そこで、煽る。
二人共を。
「だったら、期限を決めるといい。それこそ雄英の進学が出来るかどうかでな」
二人が顔を見合わせる。
「もし、無個性の緑谷が努力して雄英に受かったんなら、コイツにはヒーローを目指す資格があると、プロのヒーローが認めたって事だ」
審判をどちらの贔屓もしない第三者に委ねりゃ、不正は難しくなる。
「別に今から殴り合って勝敗を決めろと言ってねぇんだ。やれる事を全力でこなして、それでも無理だったんなら諦めも付くだろ」
どういった結果になろうとも、受け入れる事は出来る――と思う。そっから先は知らん。
「いいぜ。乗ってやろうじゃねぇか
「かっちゃん……」
「デクが雄英に受かったんなら、俺だって認めてやらぁ。だけどよぉ、それをテメェに言われんのは腹立つ」
……まあ、な。所詮俺は部外者だしな。
要らんお節介を焼いてる自信はある。
「そう言えば、沙門くんは進学どうするの?」
「ん? ヒーロー科。在学中に免許が欲しいワケじゃねぇから適当なトコ受けるつもり」
「沙門くんもヒーロー目指してるんだね」
「いや?」
「え?」
何故二人共キョトン顔をするかね。
「俺は別にヒーローやるつもりはねぇぞ。俺が成りたいのは個性が使える探偵だからな」
「「探偵(だぁ)?」」
個性は使いたい。
しかしヒーローは趣味じゃない。
探偵の名を借りた『なんでも屋』に俺は成りたいのだ。
「……イマイチ解んねぇけどよ、テメェがヒーロー科に進学するのは解った。なら、テメェも雄英受けろ」
「は?」
「見届けろ。俺が正しいのか、デクが正しいのか」
俺はイジメの段階で爆豪が悪いと思っちゃあいるが、世間一般では緑谷の方が叩かれるのが普通だ。
何事も個性ありきだからな。
個人の性根は後回しにされる事が多い。
……しかし、雄英か。まあ、偏差値は多分大丈夫だろうけども。
「だったら今後みみっちぃイジメなんかすんなや。それだけでテメェの評価は俺ぁマイナスなんだからな」
「……解った」
これでこの阿呆もちったぁマシな顔になるだろう。ヒーロー目指すような人間が、イジメなんざしちゃあいけねぇからな。
「んじゃ、緑谷。家に帰って荷物置いたら折寺公園に集合な」
「なんで?」
「まずそのモヤシみてぇな身体を鍛えんだよ。肉体こそ資本だろうが」
「それは解るけど、どうして……」
「ここまで関わったんだ。身体出来上がるまで付き合ってやんだよ」
……なんで泣くかねぇこん位で。
「だって……僕、今まで……」
「あーもー泣くなよ。これからヒーロー目指そうってヤツが泣いてばっかじゃ、救けられる方も気が滅入るわ。オールマイトみてぇにとは言わんけども、笑ってるヤツに救けられる方がいいだろ」
「……うん、そうだね」
「よし、んじゃあ一時間後に折寺公園に集合な。動きやすい汚れても良い服で来いよ」
「解ったよ」
さて、そんじゃあ俺も帰って準備するかね。
★☆★
「
ふよふよと宙に浮かんでいる狐っぽいマスコットが俺に話し掛ける。
「なんだタマ?」
「どうしてあのモジャモジャくんに手を貸すですか?」
「そうだなぁ」
俺が話す前に別の妖精っぽいマスコットが話し出す。
「それよりもあっちの爆発さんですよ。ああいう人、蓮羅は嫌いじゃありませんでした?」
「……まあ、両方に言える事ではあるんだがな、勿体無いって思ったんだよ」
「「勿体無い(です)?」」
「どっちもヒーローに成りたいと思ってるのに、やってる事が余りに外れてる。端から見てたら歯痒く思えてな。知ってるだけに、お節介を焼きたくなったのさ」
そう言うと二匹はジト目で、
「そういうトコロがお爺さんっぽいって言われるんですよ?」
「普通、ライバルを育てようとか考えませんよ」
「何言ってんだ。俺は何でも屋、あっちはヒーロー。ライバルにはならんだろ」
おい、何故お前ら揃って溜息を吐く。
「もういいです。それより、遅れちゃモジャモジャくんが可哀想です」
「そですね。着替え終わったのならさっさと行きましょう」
さて改めて説明するまでもないが、こいつらが俺の『個性』だ。
『ミラージュ』。
それが俺の個性の名前だ。
『WoFF』にて、ガーデンジェムと呼ばれる立方体の宝石に宿るモンスターや召喚獣の総称であるミラージュを、身体の『中』に宿しているのである。敵側の勢力である魔震とよばれるロボ勢も、ミラージュとして中の世界『グリモワル』に存在しているので、原作で使えたミラージュは全部呼び出せる。
狐と妖精のマスコットの名前は、《タマ》と《セラフィ》。
俺が初めて召喚したミラージュで、ナビゲーター役を務めて貰っている。代役もいるが、基本この二匹がデフォルトだな。
さて、そんじゃ公園までダッシュで行こうか。
「で、なんで爆豪までいんだよ」
「うるせぇ、俺の勝手だろうが」
「ま、まぁまぁ二人共」
一触即発の雰囲気になりかけるが、今はそんな事は重要じゃないと思い直す。
「受験まで一年無いからな。かなりスパルタで逝くぞ」
「う、うん」
「カッ。途中でヘバったら容赦なく爆殺すんぞ。俺にあんだけ啖呵切ったんだ。半端は許さねぇ」
なんか爆豪のヤツ、この一時間の間にキャラ変わってねぇか?
「……(おい、緑谷。俺と離れて何があったよ?)」
「……(そ、それが、僕がまたかっちゃんと言い合いになって『例え何があろうとも絶対にヒーローになる』って宣言したら)」
「……ああなった、と」
頷かれる。
幼馴染だからか、どうにも俺には解らん仲だ。
まあいい、邪魔しないのなら。
「んじゃあ、出てこい《タマ》、《セラフィ》」
ポンっと小さな光のエフェクトと共に二匹が召喚される。
「はーい、タマなのです」
「はいはーい、セラフィちゃんですよー」
小さいマスコット二匹の出現する。
「何度見ても凄いなぁ。召喚系の個性ってかなりレアだもの」
「まあ、な。ただ、使いこなすにゃ相応の努力がいる。どんな個性にも言えるけどな」
「ケッ」
さて、二匹を召喚したのには勿論理由がある。
空を飛べる小さい体を活かしての先行役と誘導役だ。
「んじゃあ、トレーニングその一。コイツらに追い付くように走る」
「え、それだけ?」
「それだけ」
タマたちに『GO!』と号令をかけると、それなりの速度で飛んでいく。
「速い!?」
「ほれほれ、見失うぞー」
「あ、待って!!」
とまあ、そんな感じでトレーニングは始まった。
付かず離れずと絶妙な距離で飛ぶタマたちに追い縋る緑谷。俺や爆豪はまだ余力はあるが、トレーニングを始めてばっかのコイツにはキツい筈だ。
走ってばっかで一時間。結構なスピードで飛ばしてたからヘロヘロになった緑谷が、ちと失速した――その時だった。
「……Mサイズの、隠れミノ」
ヘドロの個性を持った男が、緑谷に襲い掛かったのだ。
「爆豪!」
「解っとるわ!!」
タマの〈狐火〉とセラフィの〈エアロ〉、そし爆豪の爆破が ヘドロ男に炸裂する。
「あっちぃいいいいい!?」
熱に悶えるヘドロ男。
多分コイツ、ヴィランだろ。
「セラフィ、吹き飛ばせ」
「はいはーい。そんじゃ行きますよー」
再度、セラフィの〈エアロ〉によってヘドロ男は、緑谷から剥がされた。
その隙を見逃す爆豪ではなく、更に駄目押しの連続爆破。
ドドド、と連続した爆発音に混じって、誰かの足音が聴こえた。
そして、感じる圧力に総毛立った。
「爆豪、引けっ!!」
「っ!?」
俺の切羽詰まった声に、思わずと言った様子で爆豪は飛び退いた。
それと交代するように、金髪の巨漢が躍り出る。
……おい、なんでアンタがここにいるんだよ。
オールマイト。
豪腕が唸り、至極あっさりとヴィランはペットボトルに納まった。
なんつー力業。
「HAHAHAHA!! 怪我はないかい少年たち!」
「ええ、まあ。その……助かりました」
「いいともいいとも! それよりもヴィランに取り込まれていた少年はどうだい? 無事?」
「まあ、息はしてるし、オールマイトがソッコーで救けてくれたから大丈夫だとは思いますが」
「Hmm。一度病院で検査をする事をお勧めするよ。何かあってからじゃ遅いからね」
「はい、そうします」
さっきから俺だけしか喋っていないが、それには理由がある。
緑谷もそうだが、実は爆豪もこう見えて『オールマイトガチ勢』の一人だからだ。
呆然となっている爆豪を尻目に、俺は緑谷を起こす。
「……う、ううん……」
「お、起きたか?」
「沙門くん……? っ!? そうだ、ヴィランは」
「オールマイトが捕縛したぞ」
「うぇええええええええええええええええっ!?」
飛び起きた緑谷の前にはラフな格好のオールマイト。
オールマイトガチ勢の緑谷としては、望外の喜びと衝撃だろう。
「な、なんでここに……じゃない! さ、サインを……」
「書くもんなんざ持ってねぇだろ」
今はトレーニング中で、メモ帳すら緑谷は持ってなかった。
「んー、俺、ケータイ持ってるけど、なんなら写真撮ろうか?」
「ええっ!? いいの? でもオールマイトが何て言うか」
「いいよ!」
「いいんだっ!?」
テンション高ぇなぁ。
まあガチ勢の前にその対象が現れたらこうなるか。
「そこの爆発の少年も一緒にどうだい?」
「……っ。いいんスか?」
おいおい、内心の喜びが隠しきれてねぇな。
「んじゃあ、撮るぞーっておい」
そんな俺からタマがケータイを奪い取った。
「蓮羅も一緒に入るです。こういう時に仲間外れは駄目なのですよ」
「そですね。さっさと動く動く」
で、パシャリと一枚。
オールマイトに肩を抱かれた緑谷と爆豪とその横に立つ俺という構図で写真を撮られたのだった。
「それでは私はこれで失礼するよ。じゃあね!!」
その言葉と共に、超が付くような大跳躍で消えるオールマイト。ガチのエンターテイナーは去り際も派手だ。
さて、トレーニングの続き続き――って、あれ?
二人ともどこ行った?
「蓮羅、蓮羅」
「なんだ?」
「あの二人、あのオジさんにしがみついてたですよ?」
「マジ?」
「マジですよ。追います?」
「そうすっか。……よし、召喚・《フェニックス》」
俺のコールのよって、俺の『グリモワル』より赤い巨大な鳥が召喚される。
火と回復に特化したLサイズのミラージュだ。
俺程度なら背中に乗せても余裕で飛べる。
「んじゃタマ、セラフィ。案内頼む」
「「はーい」」
つまりガキ二人抱えてもあの跳躍ってか。
大災害時に一人で千人救けるのは伊達じゃねぇな。
「で、どういう状況だこれは」
煙を立ち上らせるガリガリの男がそこにはいた。
服装がさっきのオールマイトと被ってはいるが、まさか……
「オールマイトだ」
「マジか」
爆豪の断言に俺も驚いた。
「つまり、それがオールマイトの『個性』なんですか?」
戦闘時に筋肉が隆起する個性とかなんだろうか。
「いいや、これは個性じゃないよ」
「違うの!?」
「プールで腹筋締める人いるでしょ? アレだよ」
「ンな馬鹿な」
つまりこの人、マッスルコントロールだけであの量の筋肉を出し入れしてるって事になる。
正直それだけでも化け物だが。
何かを察したオールマイトに促され、緑谷が真剣な顔で訊ねた。
無個性でも、ヒーローになれますかって。
正直、訊く人間を間違えてる気もしないではない。
相手はオールマイトだぞ。
謎ではあるが個性を持ってる。
寧ろ戦闘特化していないヒーローに訊くべき事なんじゃねぇかな。
そう思っていたら、オールマイトは座り込み、Tシャツを捲った。
そこには、夥しい戦傷と手術痕があった。
聞けば、呼吸器はボロボロで胃は全摘出、他の内臓にも少なくないダメージが入っているんだとか。
五年前この傷を負ったと言っていたが、当時オールマイトが戦った有名なヴィランは『毒々チェーンソー』ぐらいだ。この傷を負わせたのはソイツじゃないらしいが。
つまりそれは、報道出来ないレベルの悪党がいるという証明。
それが、緑谷と爆豪が進もうとしている道の先にいる。
例えオールマイトをここまで追い込んだ野郎がもういないにしても、これから先もっと凶悪強大なヴィランが現れないとは限らない。
「夢を見るのは良いが、現実も見据えなくては」
オールマイトの言葉は、どこまでも厳しく正しい。
その言葉に、緑谷と爆豪は打ちのめされた様子だった。
★☆★
(Shit! 私は何を言っているんだ?)
無個性だという少年が、自分もヒーローになれるか等と訊かれていつになくシリアスになってしまった。
何故態々隠しておくべき傷を見せた。
これでは少年たちに落胆と失望を抱かせるだけだろうに。
下手をすればヒーローに対して忌避感を抱かせるかもしれない。
(いや、違う。そうか……私は、この少年を
嘗ての己とダブる少年。
無個性でありながら、師に恵まれ、人に恵まれ、そして危機に恵まれた。
人並みの幸せなど皆無。
恩師を奪った仇敵への復讐、平和を脅かすヴィランの確保に尽力し、それだけに人生の大半を費やした。
この手から溢れたモノは数知れず、有り得たかもしれない己の幸福な未来は、軒並み全て平和の篝火への燃料とした。
――頑張ろうな、俊典。
恩師の言葉が甦る。
眼や喉の奥に熱いモノが込み上げてきた。
(お師匠……私は、『
笑顔の裏に苦悩や恐怖、葛藤を隠し、覆う。
そうやって生きてきた。
今回だって笑顔でお茶を濁すくらい出来ただろう。
なのに、出来ていない。
それはつまり己が、この無個性の少年を、後継者にしたいと思っている証左。
だがしかし、それはこの少年の幸福な未来を奪うのと同じだ。
認める事は断じて出来ない。
だから、厳しい言葉で突き放すしかなかった。
「……お話は解りました」
眼に涙を浮かべ、しかし少年は、
(笑った……!?)
「でも僕は、ヒーローを目指します。誰に何を言われようと、憧れた貴方に厳しい現実を突き付けられようと……僕はヒーローに成ります」
その宣言に、オールマイト――いや、
無個性であるという事は、この超人社会においてかなりのディスアドバンテージだ。如何に日常生活では個性の使用が禁じられているとは言え、無個性であるだけで息苦しい思いはするだろう。
師に出逢う前の己でさえそうだったのだから。
今の世代ならばそれがどれ程か想像すら出来ない。
恐らくこの少年は、悪意と善意両方から『ヒーローに成れない』と言われてきたのだろう。
鍛えられていない身体を見れば、憧れているだけの普通の少年だと自分には解る。
そんな少年が、諦めずにヒーローを目指すと言う。
「それは、厳しいと言わざるを得ないよ」
「はい。でも、もう約束したんです」
「誰と?」
「かっちゃんと沙門くん……彼と、彼にです。何があってもヒーローになるって」
友との約束の為に。
「二人共、凄いんです。無個性の僕が並び立とうなんて思うのが恥ずかしくなるくらい。……でも、そんな二人が、僕に手を貸してくれたんです。今日から僕、雄英に受験する為に鍛え始めたんですよ。それに二人は付き合ってくれてる」
ヴィランに邪魔されましたけどね、と苦笑する。
「だから僕は、待っててくれる二人に早く追い付かなきゃいけないんです。個性のある無しなんて知ったことじゃない」
「その通りだよオールマイトぉ」
ボンッと掌を爆発させながら、話を聞いていた別の少年が進み出る。
「このボケが決めたんだ。無個性で、臆病で、泣き虫で、俺が散々に扱き下ろしても、足蹴にしても、それでも最後までやるって決めたんだぞ!」
青く、若い。
しかしその熱量は本物だ。
この少年は、無個性の少年がヒーローになれると、そう思っているようだ。
「個性なんざどうとでもなるって言えないのも解ります。大人ですもんね。無責任な発言なんか出来るワケがない」
小さいマスコットを連れた少年が言う。
「でも、『それでも』って言うんですよコイツ。諦めるのなんて死んでから出来る。なら――死ぬ迄諦めないヤツですよ、この緑谷出久は」
どこか呆れたような表情で、しかしその裏には彼の少年への信頼が見て取れた。
「そう、か」
諦めるなんて死んでから出来る、か。
まったく、極まった言葉だ。
だけど、それを実践してきた自分がいる。
こうして、八木は三人の少年と別れた。
本来ならばそれでお仕舞い。
オールマイトと彼らの道は交わらず、彼らは独自の道を邁進するだろう。
だが、運命の輪は廻る。
切っ掛けはヘドロのヴィランだった。
ヤツが、また四人を引き合わせる。
「さて、と……じゃあこのヴィランを警察に――って無い!?」
★☆★
意気消沈する緑谷。
まあ、それも仕方ないか。
憧れのオールマイトに、「ヒーローは無理だ」って言われたようなもんだしな。
しかし、あそこでああいった啖呵を切るとは思わなかった。
「なあ爆豪」
「あ?」
「あれか? 緑谷の怖い所って」
そう訊くと、爆豪は渋い顔をした。
「……ガキの頃からそうだ。デクの野郎は、無個性の癖にいっつも俺と張り合いやがってな」
「……それは」
なんつー無謀な。
だが、
「本人はそんなつもりはなさそうだがな」
「ああ、だから余計に腹が立つんだよ。……まあ、それでもオールマイトにまで啖呵切りやがったあの根性だけは、認めてやらんでもない」
「向こう見ずってワケじゃねぇんだろうがなぁ。目の前に困ってるヤツがいたら気にかけるのが緑谷だもんな」
それなのに無個性のせいでワリを食ってるのが現状だ。
よくまあ捻くれずにここまで来たもんだよ。
「取り敢えず、あそこまで言った以上は雄英には死んでも合格して貰わねぇとな」
「おう、絶対にヒーロー科に受からせてやろう――――沙門っ!?」
咄嗟だった。
爆豪の死角から、ヘドロ男が襲い掛かってきた。
だから俺は、爆豪を突き飛ばし――ヘドロに呑まれた。
『ひゃははははっはーっ!! なんだよなんだよ、当たり中の大当たりじゃねーかっ!!』
耳障りな声が反響する。
『スゲェな! 色々あんじゃん! これならオールマイトにも負けねぇ!!』
身体の、個性の支配が奪われる。
『ありがとう! キミは俺のヒーローだ!!』
――それを、努力と気合いと根性で、堪える。
さあ、腹から声を出せ。
意志を示せ。
『俺たち』は、こんな野郎なんぞに敗けない、と。
「舐め、ん、な――――ゴラァアアアアアアアアアアア――――――っ!!」
そして、
『究極』が。
『竜王』が。
『悪魔王』が。
『騎士王』が。
『蛇王』が。
『炎王』が。
『氷王』が。
『雷王』が。
召喚される。
出現は一瞬。
しかしその負荷は凄まじく、ヘドロ男は支配しようと体力を消耗するだろう。
その隙を突いて脱出する。
冷静に。
慎重に。
恐怖に呑まれず。
混乱せず。
楽観せず。
悲観せず。
自分の出来るベストを尽くせ。
苦しい。
辛い。
痛い。
それがどうした。
俺は探偵に、『なんでも屋』になるって決めたんだろうが。
ヘドロに呑まれたのは俺が間抜けだったからだ。
あの一瞬で爆豪を突き飛ばすと同時にミラージュを召喚、もしくはタマたちに指示が出来れば――タマ?
そうだよ、タマとセラフィがいるじゃねぇか。
あの二匹を「 」させられれば。
「……お、た……せ……」
駄目だ、喋れない。召喚した『竜王』たちの出し入れでかなり体力を消耗したみたいだ。
ヘドロ男の体力を削ったは良いが、俺はそれ以上に削られたらしい。
その時だ。
「……沙門くんっ!!」
「勝手に救けてんじゃねぇぞ沙門!」
二人の声が聴こえた。
緑谷と爆豪だ。
連続する爆発音と共に、緑谷が何かを差し出した。
指先に、タマとセラフィの手が触れる。
「さっさとやるですよ蓮羅」
「早く終わらせて帰りますよ」
おう、『ヘンシンカ』――《たまもひめ》・《ラ・セラフィ》。
★☆★
沙門くんがヘドロのヴィランに呑まれた。
僕は、その時前を向いているせいで気が付かなかった。
かっちゃんの切羽詰まった声に肌が粟立つのを感じ、振り返ると――そこには、ヘドロに呑み込まれる沙門くんの腕が見えた。
沙門くんの両腕には紋様がある。刺青ではなく、個性が発現した時に腕に浮かんできたんだそうだ。
そして、その腕から『ミラージュ』と呼ばれるモンスターを召喚している、と話してくれた。
その腕が、ヘドロの中でもがいている。
諦めてない。
沙門くんは、こんな状況でも諦めていなかった。
ヘドロの体積が大きくなる。内包している沙門くん以外に、異物が現れているみたいだ。
その度に、巨大化したヘドロのヴィランが暴れる。周辺に被害が出てるけどまだヒーローは到着していない。
なら、今動けるのは僕たちだけだ。
なら考えろ。
どうすれば沙門くんをあのヴィランから引き剥がせる?
かっちゃんの爆破?
多分それだけじゃ足りない。
考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ――――っ!!
自分に道を示してくれた、気付かせてくれた恩人のピンチだ。
無個性であろうとも、ヒーローになれると教えてくれた彼の危機に、動けなくて何がヒーローだ。
(……待てよ。どうして暴れてるんだ?)
思考が回転する。
口からも漏れているようだが気にしない。
……多分、複数を取り込むのは難しいんだと思う。苦しんでいるのがその証拠だ。連続の召喚は疲労が凄いって言ってたっけ。多分、あれは不完全にしか支配出来ていないから、強制的にキャンセルされているんだ。なら内側ではミラージュが暴れているようなものか。それの制御に掛かり切りなんだ。でも、タマやセラフィなら既に召喚済みでここにいる。慌てている二匹だが、使えるのは炎と風。こちらも一手足りない。
……いや、
手はある。
「タマ、セラフィ!」
中学一年の頃、話してくれた「ヘンシンカ」と呼ばれるミラージュの進化技。これなら行ける。
二匹を掴み、走る。
隣を見れば、かっちゃんも走っていた。
「……沙門くんっ!!」
「勝手に救けてんじゃねぇぞ沙門!」
かっちゃんの爆破がヘドロを吹き飛ばす。
中に、沙門くんの腕が見えた。
その指先に、掴んでいたタマとセラフィを触れさせる。
眩しい光が生まれ――神々しい二体の神獣が出現した。
一体は、八つの剣を尾に纏わせた巨大な狐。
一体は、ハープを持った二対四翼の美女。
さっきまでの印象とまるで違う。
その二体が、動いた。
神話にあるセイレーンの姿となったセラフィが、ハープを持たない手をヴィランに向け、さっきよりも強い風を放った。
巨大な狐となったタマは、その風で露わになった沙門くんの周囲のヘドロを尻尾にある剣で斬り刻んで拘束を緩ませた。
そして僕とかっちゃんは、捕まっている沙門くんを無理矢理ヘドロの中から引き剥がした。
「――ッゲホッ。ガハッ……!?」
咽る沙門くん。
何度も咳込み、大きく深呼吸を繰り返した。
「……いや悪いマジで。ほんと救かったっ。ありがとな緑谷、爆豪……っ」
「いいよ、お相子だって」
「……借りは返す。そんだけだ」
かっちゃんは、それだけを言うとヴィランの前に進み出た。
タマやセラフィが牽制している間を通り抜け、ヴィランの前に立つ。
「テメェ……舐めた真似し腐りやがって――覚悟は出来てんだろうなぁあああああああああっ!!」
かっちゃんの個性は、爆破。
掌の汗腺からニトロのようなモノを出し、それを自由に着火・爆破が出来る。
さっきからの連続した爆発音の正体は、多分汗腺へのダメージを少なくして、でも高威力になるように改良した新技だと思う。
イメージとしては、指を一本一本時間差で爆破させてるようなものだろうか。
かっちゃんが右手を大きく振り被る。
――しかしそれよりも先に、ヒーローが到着した。
「よくやった。ここからは我らに任せるが良い!!」
シンリンカムイ。
デステゴロ。
バックドラフト。
マウントレディ。
様々なヒーローが、通報を受けた警察と共にヴィランに向かっていった。
人質のいないただ流動体のヴィランは、多分すぐに鎮圧されるだろう。
「…………チッ」
舌打ちを一つし、かっちゃんは踵を返した。
今の僕たちはただの中学生。
ヒーローじゃない以上、これ以上の無茶は出来ない。
案の定、直ぐにヴィランはヘドロを凝固されて拘束された。
「……通報を受けて来たんだけど、捕まってたのって君か?」
デステゴロが沙門くんに問いかける。
「……ええ、まあ」
沙門くんはヒーローが来ると、即座にタマとセラフィを送還していた。
だからどんな個性なのかは解らない筈だ。
デステゴロは頭を掻きながら、
「……本当なら、君たちの蛮勇に怒らなきゃいけないのが俺たちなんだがなぁ」
「然り。我らが遅れたせいで、貴君らに要らぬ重荷を背負わせた。ヒーローとしてありながら恥ずべき行為だ」
シンリンカムイもまた頭を下げてきた。
現役のヒーローに頭を下げられる。
それだけでも僕は委縮してしまうけど、二人はやっぱり格が違った。
「チッ」
「……ええ、気にしてません。ダチに救けて貰いましたし」
「誰がダチだ!?」
「えー。んじゃあ……ライバル?」
「……それでいい」
「いいんだ!?」
そんなコミカルな遣り取りが、どうしてだかツボに入った。
「「「……ぷ」」」
爆笑。
三人で笑い転げる。
こんな状況なのに、僕たちは笑っていた。
きっと、三人で乗り越えたからだ。
ヒーローの救けはあったけども、それでも僕たちは自分で身を護る事が出来た。
だから、きっと大丈夫だ。
僕たちは何があっても雄栄高校に進学出来る。
そんな確信が持てた。
★☆★
警察からの聴取と説教が終わり、俺らはトレーニングを再開した。
ランニングをそろそろ切り上げて腹筋や腕立て伏せとかを始めようと、折寺公園に戻ってきた時だ。
オールマイトが現れた。
いつものマッスルフォームじゃない、ガリガリのトゥルーフォームの姿で。
「随分絞られたみたいだね」
笑顔を見せるオールマイト。
「まあ、それがあちらさんの仕事でしょうからね。『お見事』で済ませるにはちとやり過ぎた」
「……キミ、そういう所は老成しているねぇ」
「性分ですんで」
まあ、一番怒られたのは緑谷だ。
俺は被害者だし、爆豪は個性持ち。
マスコミが食いついたのだって爆豪だった。
そういった意味では一番ストレスが溜まったのは爆豪だろうな。
「そっちの爆発の少年もお疲れ。明日の朝刊のトップは間違いなくキミだろうぜ」
「……嬉しくねぇ」
「だろうね。顔に出てる」
緑谷の事を蔑ろにして、自分が主導で俺を救けたなんて嘘書かれて喜べるような頭はしてねぇもんな。
「ま、ヒーロー目指してるんならこういった事もあるって覚えておくといい」
「……うっす」
そして、オールマイトは緑谷に向き直る。
「怒られたね」
「……はい」
「どうしてか、解るかい?」
「僕が、無個性だから、でしょうか……」
「それは違う。だって誰もキミが無個性だなんて知らないからね」
「……」
「まあ、実践出来ていない後輩たちにも問題はあるけども、キミが護られる側の存在であるからだ」
「――あ!?」
「そう、キミたちが大なり小なり怒られた背景はそこにある。本来戦う必要のない少年が立ち向かった。法としても、大人としても、それを肯定するワケにはいかなかった」
「……なら、なんで俺は褒められたんスか」
爆豪は、叱られた後にマスコミやヒーローに称賛を受けた。
恐らく、個性が爆破だと知られた上で俺を救ける為に身体を張ったと見做されたからだろう。
「……非常に心苦しいが、敢えて言おうか。あそこで彼らが褒めたのは、
「――っ!?」
ああ、成程。
つまりあそこで爆豪を褒めた手合いは、コイツの人間性に欠片も興味を持たず、ヒーロー向きの個性のみに注目したのか。
「そりゃあアレか、オールマイト。個性だけで、俺を、見てねぇって事か……」
拳を握り、震える爆豪。
そりゃキレるわ。
「……遺憾ながら、そう言わざるを得ないね。でも、私は見た。キミたちが友を想い、友の為に行動した事を」
活動限界を迎えたせいで、見るだけだったのが悔やまれるけどね、とオールマイトは苦笑を見せた。
「だからこそ、訊きたい。キミたちはどうして動いた?」
その問いに、
「……まあ、咄嗟だったしな」
「……借りを作ったまんまじゃ俺の沽券に関わる」
「……そうしなきゃいけない、と思ったんです」
俺たちはそう答えた。
その答えにオールマイトは心からの笑顔を見せて、
「なら、私が断言する。他の誰でもない、この私が」
言った。
「キミたちは、ヒーローになれる」
その言葉を受けて、緑谷は泣き崩れた。
爆豪も歯を食い縛った。
俺も、衝撃を受けた。
「名前を教えてくれないかい。ヒーローの卵たち」
「爆豪勝己。いずれ、アンタを超えるヒーローになる」
「沙門蓮羅。ヒーローじゃなく私立探偵志望です」
「緑谷、緑谷出久です。ヒーローを目指してます。……貴方みたいな、最高のヒーローに」
これは、オールマイトに認められた俺たち三人の物語だ。
オリ主人公裏話
実はヒーローに憧れている節はあるものの、自分なりの『カッコ良さ』を追及していく内に私立探偵兼なんでも屋になる事を決意したどっかベクトルがズレている少年。
少年と呼ぶには背は高く、筋肉質。未だ成長期。
実はオールマイトのような偉丈夫こそが生前の憧れだったりする。
ある意味、男版「発育の暴力」。
※爆豪、緑谷との関係
実は中一の頃に、爆豪をカッコ悪いヤツだと面と向かって罵倒した事がある。
それから色々あって殴り合いの末に勝利している。
折寺中で唯一爆豪を真正面から叩きのめした怪物と恐れられ、話をする人間は緑谷を初めとした少数。
緑谷とは、将来の夢を語るくらいの仲。