僕らのヒーローアカデミア ~ミラージュたちを添えて~ 作:名無しの百号
黒板
出口
No.17 葉 隠 No.12 障 子 No.07 上 鳴 No.01 青 山
No.18 爆 豪 No.13 耳 郎 No.08 切 島 No.02 芦 戸
No.19 緑 谷 No.14 瀬 呂 No.09 口 田 No.03 蛙 吹
No.20 峰 田 No.15 常 闇 No.10 砂 糖 No.04 飯 田
No.21 八百万 No.16 轟 No.11 沙 門 No.05 麗 日
No.06 尾 白
出口
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――そして、知る。
『因縁』を。
雄英高校からの通知が来た。
結果は合格。
筆記も基準を超え、実技の順位は三位。
両親は勿論喜んでくれた。
……まさかオールマイトが投影されるとは思わなかったけどな。
まあ、疑問ではあったんだ。
幾ら怪我しているとは言っても、ヒーロー事務所畳んでここら辺にいる理由は聞いてなかったしな。
まさか来年度から教師として雄英に赴任するとは。
まァたマスコミが騒ぐぞこれ。
……これ、『野郎』がちょっかい掛けるのに十分な理由じゃねぇか?
俺の情報は出ていないにしても、あの致命傷を食らわせたオールマイトの所在が解るんだ。どう考えても何かあるだろうな。
覚えはないけど、二度目の高校生活。
絶っっ対、波乱に満ちたものになるだろうな。
そう思って動くべきだ。
雄英の教師や生徒、他の誰がそう思わなくとも俺だけは。
緑谷と爆豪にもその点は伝えておかないとな。
備えは大事だ。
例え無用の備えだったとしても、これは命に関係してくる。
俺の命だけじゃない。
父ちゃんや母ちゃんの命だってそうだ。
護らにゃならん。
例え真っ当なヒーローになるつもりがなくとも。
せめて肉親くらいは、な。
……そういや、父ちゃんが何か変な事言ってたな。
俺が雄英に進学するって言ったら、『合格したら話がある』って。
――蓮羅、お前にこの話をするつもりは無かった。でも、ヒーロー育成校に進学するなら教えておかなきゃいけない。
あの穏やかな父ちゃんが、凄い深刻な顔でそう言っていた。
正直、訊くのがかなり怖い。
「で、一体全体どうしたんだよ父ちゃん」
「うん。まあ座りなさい」
眼鏡を掛けた視線が下を向いている。
「あれ? 母ちゃんは?」
「母さんはいないよ。今は買い物に出掛けてる」
「あ、そうなの」
言われた通りに父ちゃんの向かい側に座る。
「……まず、確認しておきたいんだけど、蓮羅は、ヒーローになるんだよね?」
「んー、『雄英のヒーロー科に受かっといて何様だ』って言われそうだけども、ヒーロー一辺倒で行く気はないな」
「……そっか。でも、ヒーローや探偵になりたいのなら、この話は聞いておくべきだね」
「どんな?」
「蓮羅は……父さんの家系がどんなものか、知ってる?」
「どこにでもいる一般家庭じゃねぇのか? 祖父ちゃんや祖母ちゃんもそう言ってたけど」
「そう、確かに一般家庭だ。でも、
「ある人物?」
「その人は、超常黎明期、いち早く人々を纏め上げた」
……どっかで聞いたような話だな。
「『彼』は、当時異能と呼ばれた個性を奪い、与える能力を持っていた」
待て。
待て待て待て。
「……そんな『彼』にも家族があった。両親がいて、弟がいた」
「それマジか!? あのピンボール野郎に家族がいるってか!?」
てっきり孤児とかだと思ってた。
「ピンボール? ……ともかく、ウチの家系はその血を引いてる。誰の子供なのかは解らないけどね」
「……なんで、血縁だって解ったんだ?」
「その子供であった人の遺言と、その人の子に何かを他者に与える個性や、何かを奪う個性を持った人間が生まれたからさ」
父ちゃんの話では、その子供は正義にも悪にも与せず、国外へと逃げたらしい。
折しも『野郎』が勢力を伸ばしていた時代、疎開する人間や外国へ逃亡する人間も少なくなかったそうだ。
そして、その人は顔と名前を捨てて「別人」となった。
後は期を見て帰国し、無個性と偽って暮らしたそうだ。
その人は日本の離島に居を構え、徹底してどの都市部にも近寄らずに生涯を終えた。
「故に僕は、ヒーローにはならなかった。憧れたけども、それ以上にこの社会の裏に潜む
ああ、こういった所は親子だな。
自分を含めた誰かの命の危機に敏感なのは。
「……まあ、結局仕事の都合で本州まで来ちゃったんだけどね」
「儘ならんなァそれ」
「はは、そうだね。でもまあ、そのお陰で母さんに出逢えたんだけどさ」
両親の馴れ初めは兎も角、まさかそんな事実があったとは。
……でも。
「大丈夫だよ、父ちゃん」
「何がだい?」
「覚悟は出来てる」
多分、ずっと前から。
「……僕としては、覚悟したくないなぁ。自分の子供が先祖に殺されるのなんて」
「あ、でもアイツ弱体化してるっぽいぞ。オールマイトにやられてあの野郎、両方の目ン玉無くした挙句ボロッボロだったから」
「ん? ……まるで見てきたみたいに言うね」
「ソイツ、四年前にオールマイトにやられたらしいんだが、しぶとく生き永らえてな。で、ちとミラージュ使って俺が遠出した事あったじゃん。同時期。ガチ泣きで帰ってきて、三ヶ月の外出禁止令が出たアレ」
「あったねェ。ホントに心配したんだからね?」
「母ちゃんも父ちゃんも泣いてたもんな。いや、幼いながらにマジ申し訳なかった。……まあ、そん時に、な」
「…………遭った、って言うのかい?」
「正直、言おうかどうか迷った。でも、ガキながらにヤバい気配を感じたからさ、逃げたよ」
実は逃げる前に野郎をミラージュ使ってピンボールにしました――なんてのは流石に言えねぇが。
「……うん、それは賢明だった。この事は母さんも知らないからね」
そこで父ちゃんは気付いた。
俺の話にオールマイトが出た事に。
実はこの父ちゃん、オールマイトガチ勢だったりする。まあ、二十五年前の災害の被災者で、直接オールマイト救われた千人の内の一人だったらそうもなるわな。
だから父ちゃんの部屋には質の高いオールマイトグッズが並んでいたりする。
ま、そのせいもあるんだよな、俺が緑谷とよく話をしていたのって。
「……えっと? まさかだけど、蓮羅? まさか、オールマイトと、何かあるのかい?」
「…………誰にも言わないでくれよ?」
頷かれる。
「弟子になりました」
沈黙。
「誰が?」
「俺が」
「誰と?」
「オールマイトとその師匠と、サイドキックのサー・ナイトアイ」
父ちゃんの眼ン玉が飛び出た。
椅子を蹴倒して立ち上がる。
「NO.1ヒーローとその関係者!?」
まあ、驚くわなー。
「で、なんか『あの野郎』と因縁があるらしい。そういった縁もあって、俺は弟子になったんだ」
「嘘だろ!? オールマイトと!? な、何か、何か証拠はあるのかい!?」
「えっと……他に弟子になった連中と一緒に撮った記念写真があるけど……」
「見たい!!」
「ええー……まあ、良いけど」
俺は携帯を操作して、去年の四月に緑谷たちと撮った画像を見せた。
「……うぉおおお……ウチの子が、NO.1ヒーローと肩を並べて写ってる……」
「ただいまー」
玄関から声が。
母ちゃんが帰ってきたようだ。
「母さん、おかえり! 蓮羅がっ。オールマイトの弟子だったよ!」
「ちょっと、いきなりどうしたの? そんな有名人がここら辺に来るなんて――」
「ほら!」
「まあ!!」
うわー、写真見ただけでキラキラした顔に。
「まあまあまあ! 凄いわ! テレビで見た顔だわ! 見た笑顔だわ!!」
そして父ちゃんは自室からノートパソコンを持ってきて、俺のケータイを繋げた。
多分、写真をコピーしているんだろう。
こりゃあ拡大印刷の後で、額縁に飾られるんだろうなぁ。
「あ、しかも雄英の教師になるってさ。合格発表のアレで言ってた」
「ホントに!?」
「まあまあまあ!!」
ウチの両親はヒートアップした。
そんなワケで、今日の晩飯は豪勢になった。
まあ、元々雄英の合格祝いも兼ねてたみたいだけどな。
……あ、一応秘密って言っておいた。
『野郎』がどこにいるのか解らないしな。
★☆★
四月。
春。
入学式。
とまあ、そんなワケで俺らは雄英高校へ進学。
緑谷、爆豪共に合格だった。
しかも入試一位は爆豪で、緑谷は二位。
まあ、同率三位の俺も含めればオールマイトの弟子が上位を独占した事になる。
……まあこれは偏に、オールマイトの指導が巧いと言うよりも、グラントリノやナイトアイの修正が効いたって事なんだろうけどな。
基本あの人、感覚派な部分が多くてよくグラントリノにシバかれてたし。
で、教室に入ったらいるわいるわ見知った顔が。
爆豪がなんぞ眼鏡のヤツと言い合いしてやがった。
で、そこに緑谷が女子と同伴で登校。
話を聞けばなんでも試験会場が同じだったらしい。
で、コノ野郎は禁止されてた100パーセントを使用して、腕を壊したとか。
「お師匠方から言われてンの忘れたのか緑谷ァ?」
「あ、あはは……」
「やっぱ、地力上げるように筋トレメニュー組み直して貰うか(ナイトアイに)」
取り合えずは報告だな。
多分オールマイト、二人に情報共有してないだろうし。
更に爆豪と言い争いをしていた眼鏡――飯田がこっちに来た。何やら緑谷に用があったようで話が弾んでいる。で、当然のように爆豪もこっちに来た。
そんな時だ。
「お友達ごっこがしたいのなら余所に行け。ここは、ヒーロー科だぞ」
「あ」
「「「ん?」」」
「うひょお!?」
飛び退る女子――麗日。
まあそうなるわな。
床に寝袋入った人がいたら誰でもそうなる。
無論俺たちも距離を取った。
「気配、解ったか?」
「う、ううん」
「……実戦だったらソッコーでヤられてたな」
「一体、誰なんだ……?」
しかしその人はそんな俺らの態度など気にせずに席に着けと言ってきた。
え、この人教師なの?
確か雄英高校ってヒーローが先生とかだった気が。
混乱しながらも俺たちが席に座ると、
「はい、キミらが静かになるまで七秒、いや八秒かかりました。合理性に欠けるね」
そんな事を言った。
「……廊下に寝るのは!?」
つい、そう突っ込んでしまう。
「寝袋着てたから良いんだよ」
「確かにそういう(野外で寝る)用途だけども!」
だからと言って廊下で寝るってのはどうなんだ。
「取り合えず自己紹介。1年A組担任の相澤消太だ、宜しくね」
マジかい。
「早速だけどコレ着て外のグラウンド集合な」
先生らしき人が寝袋から取り出したのは、体操服。
言われるままに俺たちは着替えてグラウンドにやって来た。
で、言われたのが。
『『『個性把握テストォ!?』』』
普通に授業だった。
「え、入学式は? ガイダンスは!?」
「ヒーローになるんなら、悠長にそんなの出る時間は無いよ」
確かにパンフにゃ自由な校風がウリつってたけど、ここまで自由なのか。
ソフトボール投げ。
立ち幅跳び。
50メートル走。
持久走。
握力。
反復横跳び。
上体起こし。
長座体前屈。
この八種目をやるみたいだな。
相澤先生は爆豪にソフトボール投げの円に入るように指示を出した。
「爆豪、中学ん時のソフトボール投げ、何メートルだった?」
「69メートル」
中学三年の時の最大が確かそれだったな。
「んじゃ、今回は個性使っていいからやってみろ。円の中なら何してもいい。早よ」
そう促された爆豪は、球威に爆風を乗せて――740メートルという記録を出した。(尚、小数点切り下げ)
相澤先生曰く、個性を使った上での限界値を把握しろって事らしい。
ただ、誰かが『面白そう』なんて言ったせいで先生の逆鱗に触れたらしくて――成績最下位は除籍処分になると言い出した。
幾ら校訓が『Plus Ultra』で、絶え間無く壁を用意するから乗り越えろって言われても、初っ端から除籍とは。
で、緊張した面持ちの緑谷を見る。
爆豪が近寄ってきて、俺たちは小声で話す。
「……(おいデク、お前、許容上限は?)」
「……(この前、9パーセントまで行けた)」
「……(前に12パーでやれてなかったか?)」
「……(無茶言わないでよ。10パーセント以上使ったら身体にダメージ残るんだから)」
で、そんな俺らを見ていた相澤先生が言った。主に俺に。
「沙門」
「あ、はい」
「お前、回復系は自分以外には使うなよ」
その言葉で合点がいった。
「あー、緑谷っスか?」
「そうだ。緑谷、お前も入試みたいな事したら容赦無く止めるからな」
「は、はい」
どうやら緑谷のフルパワーを見てたみたいだな。
そうじゃなきゃあんな事は言わんだろ。
「これは参考までに訊きたいんだが……緑谷。お前、実技の
「……9、いや10パーセントです」
うわ、1パーセント上乗せしやがった。
出せるだろうけど筋肉痛で悶絶するのは自分だろうに。
「……なら、それ以上を出した、と俺が判断した場合は、解っているな?」
「はい」
緊張した顔の緑谷。
その空気を察したのか飯田が近寄ってくる。
「どうしたんだ? 何か話をしていたようだが……」
「ん、ああ……緑谷が上限超えて身体能力強化したら、ソッコで止めるんだと」
「なんと。まあ、言いたい事は解る。どう考えても一発打ってアレでは緑谷くんの身体も持たないだろうしな。リカバリーガールがいるとしても、無用の怪我は慎むべきだ」
「言われてんぞ」
「あはは……ごめんなさい」
頭を下げたバカにチョップを入れる俺と爆豪。
向こうで散々やらかしてるからな、コイツ。
特に最初の頃。
「ほら、時間は有限だぞ。さっさと動け」
『『『はいっ!』』』
相澤先生に言われ、そんで俺らは体力テストをやり始めた。
「うう……緊張するなぁ。私、生き残れるかなぁ」
で、待ち時間の間、他のクラスメートとも話をしてみた。
何もしないで待つよりかは合理的だと思ったからな。案の定、相澤先生は何も言わなかった。
その会話の中で麗日がそんな弱音を吐いた。
そんな彼女を励まそうと、俺ら三人の中で一番ネガティブメンタルの緑谷が動く。
「う、麗日さん。これ、僕らの師匠たちが言ってたんだけど……」
「へえー、デクくん師匠いるんだー?」
「で、デク!?」
「あれ、でもさっき爆豪くんがそう呼んどったから……」
「一応あれ、ネガティブなアダ名で」
「蔑称か」
まあ、今じゃただのアダ名になったけどな。
「でもね、なんか『頑張れー!』って感じがして、なんか好きだな私」
「デクです」
ノータイムだった。
「おい、緑谷くん! 蔑称だったんだろう? 浅いぞキミ!!」
「……コペルニクス的転回」
「言うとる場合か」
俺の視線の先では爆豪が腕を爆破させてターボとし、50メートル走を高タイムで走り抜けていた。
何やら緑谷が青春しているのと並行して、体力測定は進んでいく。
「えっとね、師匠が言ってたんだ。壁にぶつかったと思ったら、自分の原点と一緒に『何になりたいのか』をきちんと思い出すんだって」
「あー言ってたな。で、『今は何をしなけりゃならんのかをきちんと見据えろ』、だっけか」
「原点、見据える、なりたいもの――か。うん、ありがとう! そうやね、私もこんな所で躓いとられん!」
気合が入ったみたいだな。
……で、俺らは気付いてなかった。
俺らの会話を聞いてたクラスの連中が、そういった事を思い出して奮起し始めたのだから。
その陰で、一人。
酷く深刻そうな顔をしているヤツがいるって事も、俺らは知らなかった。
で、結果として、俺らのやる気を見た先生は除籍を取り消してくれた。
『合理的虚偽』とか言ってたけど、多分あのままだったらガチだったかもな。
★☆★
「あのー、そういや先生ってヒーローなんですよね?」
「ん。ああ」
「お名前を伺っても?」
「イレイザーヘッド」
「抹消ヒーロー『イレイザーヘッド』!?」
「知ってるのか緑谷」
「メディア嫌いで有名なヒーローだよ! 視ただけで個性を消す個性を持ってる!」
「おー、そうなのか」
「アングラ系のヒーローだし。知ってる人も少ないんじゃないかな」
「ま、そういう事だ。俺の事はどうでもいいから教室戻るぞ」
「レッツゴー! なのですー!」
「さあさあ行きましょー」
(((可愛い……)))※女子全員
(相澤くん……除籍、しなかったんだ。良かったぁ)
出逢う二十一人。
三年間共に競い合う仲間たち。
しかしまだまだ手探り状態。
会話をしよう。
言葉を交わそう。
放課後マックで談笑するのは出来なくとも。
トレーニングを通して。
戦いを通して。
勉強を通して。
遊びを通して。
お互いを知っていこう。
それがきっと糧になる。
貪欲でなければきっと、最高のヒーローにはなれないのだから。
次回、『戦闘、訓練、遊戯』
積み重ねる。
時間と会話を、そして拳を。