ですがまだ回収してないのも当然あります。
(その辺りについて、万が一、書かれてもお答えできませんので(^_^;)念のためm(_ _)m
――数日前。
幾つかあるセーフティハウスの一つで俺は懐かしい相手と話をしていた。
「だから、そうなんだ」
――冗談だろ。『彼女』はもうーー。
「知っているさ。俺達も確認したんだから」
――だったらそんな世迷い言は……。
「彼女は『あの事件』を知っていたんだ」
――何!?
「そうだ。『あの事件』は起きた場所が場所だけに、詳しい真相はそれこそ当事者でもないと分からない」
――……まさか。
「それとな」
脳裏に浮かぶ光景に浸りたくなる誘惑をはね除けながら、俺は続けた。
「あの曲も彼女は弾ける」
電話の向こうで息を呑んだ気配がした。
「途中で止めてしまったから、一部分だが、『あの曲』だったらそれで十分だろう」
『あの曲』は彼女が作ったオリジナル曲だ。
音楽室で一心不乱に弾いていたのを見て、聞き出しら『何となく浮かんだメロディー』と答えたのをよく覚えている。
「彼女を説き伏せて、俺達も覚えたよな」
――ああ。
『彼女』が『鈴木園子』にピアノを教えていたのか。
思わず呟いていたらしい。
――それはないだろう。『彼女』の家庭環境からして――
「ああ。『彼女』が音楽の道へ進むことはあり得ない」
ましてや、相手は『財閥』のご令嬢。
そんな相手へレッスンを施すのであれば、実力はもとより、きちんとした身元保証人やら、様々なチェックが入るに決まっている。
(……『財閥』か)
最初に車へ連れ込んでしまった際も、後から考えると冷や汗ものだったかもしれない。
当人は気付いていないようだが、『お嬢様』を守るように複数の『気配』があった。
(確か、あの時は七徹だったか)
仕事が重なっていたのと、他にもタイミングが悪い案件が積み重なってしまった。
(あそこのガードは実にいい仕事をしていたな)
離島へ行った際もそうだ。
皆の荷物にさりげなく金属探知機を通していたな。
(俺の場合、身分がバレてるのもあってか、『できればほどほどでお願いします』と言われて得物を返されたが)
その際、聞いた限りでは例の『越水七槻』は、本物の銃は持っていなかったらしい。
その代わりに改造モデルガン、という却って危ない玩具を持っていたらしいが。
(暴発したら、一番ヤバい代物じゃないか)
というか、暴発する未来しか見えない。
途中で落としてくれて助かった、というのが、正直な話だ、
――聞いてるか?
「ああ。大丈夫だ」
――怪しいな。今日で何徹だよ?
「まだ、三徹――」
そこまで答えたところで、ダンッ!と音が響いた。
――……俺も行く。
「は?」
――俺もそっち行って確かめる。
「ちょっと待てっ!!お前、今――」
――少しは手伝わせろよ。
本当ならすぐに断らなければならない場面だ。だがその口調に含まれたものが、そうするのを躊躇わせた。
「……ちょうど、『鈴木園子』のガード役が欲しいところだった」
――任せとけ!
通話を終えた俺は、まだ話していなかった『彼女』との共通点を思い返した。
『彼女』はトンネルの事故で亡くなっていた。
そして、急にトンネルが苦手になった『鈴木園子』。
仙台から帰る途中、トンネル内で見せたあの動作。
片手は顔を押さえていたが、もう一方の手は――
トンネル事故に遭った彼女は即死ではなかった。
ほとんど身動きの取れなくなった車内で、家の鍵を握りしめたその手を、窓ガラスに何度も打ちつけていたらしい。
途中からは、モールス信号を打つように小さく何度も叩いていたようだ。
――トンネル内で顔を伏せていた『鈴木園子』の手は、何かを握りしめ、車のドアを何度も叩いているようにも見えたのだ。
「どうかしてるな」
もし、『鈴木園子』が『彼女』の生まれ変わりだとしたら、年齢が合わない。
『彼女』が亡くなったのは、五年は前のことだし、生きていれば俺達と同い年のはず。
それに――
「なら、どうして俺のことを思い出さない」
思わず漏れた言葉に苦笑した。
「少し、休むか」
スマホのタイマーを二十分にセットして、俺はその場で楽な姿勢を取った。
懐かしい面々と夢で会うのも悪くない、と思いながら――
――ある『転生者』の日記(※原文のまま)――
△月×日 曇り
転入した学校に『彼ら』がいた。
え!?ええっ!?まさかここ、『―――』の世界なのっ!?
嘘でしょうっ!?
幾ら私が『前世』持ち、と言ってもまさかの『―――』の世界!!
そんなバカな……。
誰か嘘だと言って下さい。
とそこで私はある恐ろしい事実に気がついた。
これってまさか、私に彼らを助けろ、ってこと!?
ムリムリムリムリムリッ!!
単なるモブにそれ!!荷がかちすぎてるわ!!
それに、私はもう、誰とも関わりたくないんだから――
( 途中略 )
□月△日 晴れ
明るい――くんと、誰とでも気さくに話す――くんはクラスの人気者だ。
転入して一週間とたたず、『ぼっち』になった私とは大違い。
(どうする?)
もう何度目になるか、分からない問い。
今ならまだ間に合う。
だけど――
「――くんは×年後、――捜査中に―――と疑いを掛けられて、自殺して、――くんは、その――くんのことで――さんのことを凄い恨んで……」
……何、このカオス。
うん、ムリ。
こんな荒唐無稽な話、誰が信じるっていうのだろう。
万が一、信じて貰えたとしても、
『どうしてお前がそんなことを知っているんだ』
と聞かれるのは間違いないし。
だってここ、『―――』の世界だし。
そんなこと答えた日には。
(どーすればいいのよ!!)
あ、でも。
私、そんなに親しくないんだよね。
話す話題もないし。
うん。ただのクラスメイト。
だから、ゴメン。
一介のクラスメイトで、話もしたことないってことで。
( 途中略 )
×月△日 雨
と、思っていたのに。
何でここに――くんが。
そこで私はある『事実』を思い出した。
そう言えば――くんって、バンドやってなかった!?
(遅いわ!自分!!)
……聴かれてた。
第二音楽室の、古ぼけたピアノの音なんて、放っておいてくれたらいいのに。
しかも、これ『―――』の曲で。
え!?教えてくれって!?
うっ、断る理由が……。
それでも反射的に断ろうとしたら、何か捨て犬みたいな顔された。何で?
結局、教えてしまった。え?私もバンドに、って何でっ!?
( 途中略 )
○月□日 快晴
本日、卒業式。
ついに来た、この時が。
これまでの『前世』知識とない知恵振り絞って、彼らの『未来』を変える『ワード』を伝えるのよ!!
頑張れ、自分!!
絶対に――くんの自殺は止めなくちゃ!!
……よくよく考えてみれば、そんなに難しいモノではないはずよね。
現場のシチュエーションからして、ほんの十、ううん、五秒あれば、たぶん大丈夫。
(神様。ほんの少しだけ、――くんに時間を下さいね)
式が終わり、私は――くんを人気のないトコに呼び出し、って何だか告白みたい。違うけど。
――くんの胸を軽く、二回叩く。
「えっ!?」
「どんなことがあっても、『自殺』はだめだよ。『ゼロ』」
そう告げて離れようとしたとき、――くんが来た。
「おい、今のって」
「ちょうどいいから、ふたりで解いてくれる?この『謎』」
「何だよ、それ」
「これ、解けるまで数年はかかる、とっておきの『謎』だから」
意味深に笑ってみせるとふたりが固まった。
これだけではダメ。
もっとインパクトを。
彼らの人生は波乱万丈。
その先にある『あの場面』にまで持っていけるくらいのモノを。
「答えは三つあるからね」
「「えっ!?」」
こめたメッセージは三つ。
ひとつ目、何故、――くんではなく、――くんの方を『ゼロ』と呼んだのか、それが分かるのは数年後。
きっとその時に、この場面を思い出してくれるはず。
そんなことを考えていると、――くんが詰め寄ってきた。
「すっごい気になる。今、教えろよ」
(あーあ。ホントに気が短いんだから)
十年後の君とは大違いだね。『ゼロ』。
絶対に口には出さない彼の名を心の中で呟いて、私は、
「だめだよ」
ふふっ、と笑ってみせる。
「女の子はね、『秘密』がある方がキレイでいられるんだから」
―――――姐さんの名台詞、英文の方、うろ覚え(うっ、エーゴなんて)だったので、和文にしてしまった。
ふたりは、毒気を抜かれたような表情をした。
(やっぱり、私には分不相応、ってのでしたか)
仕方ない。もうひと押しかな。
少しばかり危険な気がしないでもないけど、まだ始まってないし、ということは当然、『彼』は存在しない。
「じゃあ、あとひとつだけ」
掴まれないように(だって何か、――くん近い、ってか、今、肩掴もうとしませんでした?)少しずつ下がりながら、
「……江○川―――、という子で、その名の通りの人物とふたりが出会ったなら、すぐ教えるよ」
(無理だろうな)
有り得ない未来。
だって『―――』くんが生まれる頃、――くんは……。
だから、これは私の願望。
―――くんがいる『未来』でも、そんな風にふたりで一緒に笑い合っていてほしい、と。