鈴木園子はゼロの夢を見るか   作:ルナ子

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あてんしょん!

園子視点のため、やむなくカットした場面、出番がなくなったキャラがおりますm(_ _)m

それでもよいという方がいらしたら、お願いしますm(_ _)m

誤字報告、ありがとうございますm(__)m修正しましたm(__)m






お嬢様と『執行人』①

「……何で」

 

ポアロの店先。

 

あたしは目の前の光景が信じられなかった。

 

「何で怪我なんてしてるんですか!?」

 

 

 

サミットが行われるという〈エッジ・オブ・オーシャン〉

 

ショッピングモールを中心に道路が放射状に広がり、様々な建物が並ぶ。

周りにある建築中の高層ビルの中でも目を引くのは、巻き貝のような螺旋がモチーフのカジノタワー。

敷地の外周は上下二層構造のモノレールが周回しており、これでもかと先進国の威厳を見せ付けている。

 

 

そして、無人探査機『はくちょう』。

 

このことを知ったあたしはすぐに気がついた。

 

(これって『執行人』じゃない!!)

慌てて日付を確認すると、あと二週間もなかった。

頭の中の『事件簿』を急いでめくる。

確か、爆破事件が起こるのは――

(公安が事前チェックしてて、その時現場に安室さんがっ!!)

あたしはすぐに安室さんに連絡した。

どうやってこの情報を得たのかは伏せ、サミット前、公安のチェックが入っているときに爆破される、と。

(不審がられるのは分かっているけど、確かあの時って、『死傷者が出た』ってニュースでやっていたし)

放ってなんておけなかった。

あたしの話が終わると安室さんはすぐに、必要な手筈を調える、と約束してくれた。

それなのに――

 

 

「どうして」

尚も詰問しかかったあたしを手で制して、『ポアロ』の中へ。

「安室さん、」

朝も早いこの時間、店内にはもちろん誰もいなかった。

「少し落ち着いて」

(全然、落ち着けないんですが!!それに近いしっ!!)

「時間がないから簡単に言う。きみに教えられた時間より早く爆発が起きた」

――……え!?

「それで!」

他にも怪我をした人は!?と聞きかけたあたしに、

「怪我人は出たが、死んだ者はいない」

「……よかった」

(でもどうして、そんなことが――)

「あの、早くってどれ位ですか?」

「二時間程だ」

(そんなに!?)

それはとても誤差で済ませられる範囲ではない。

脳裏に、仙台で聞いたあの声が蘇る。

「まさか」

うっかり声にしてしまい、

「まさか、何だい?」

口調こそ優しげだが、その眼差しはかなり厳しかった。

(今は、まだ言えない)

ここで『ネオ・グリフォン』のことを話したら、あたしが抱えている『事情』も話さなくてはならなくなる。

(それに――)

だから替わりに、

「バタフライ……」

あたしがそう言いかけるとすぐに、

「バタフライ・エフェクトか」

(やっぱり、知っていましたか)

『バタフライ・エフェクト』――起こるべき『未来』を変えてしまった後に起きる歴史の変化。

 

あたしは七槻さんを助けてしまった。

後悔はしていない。

(していないけど……)

「一応、聞いておくが、この後はどうなるんだ?」

あたしはまだ全ての真相を話していなかった。

だって、犯人の動機が、『公安――降谷(安室)さんへの怨み』なんだもの。

これは、かなり言い辛い。

身近な人、ということもあるけど、誰よりもこの国を守りたい、って人が、何万人もの人の命を奪う事件の動機にされてしまうのだから。

そして、ついさっき知ったもう一つの事実があたしを焦らせていた。

(どうしよう)

「園子さん?」

(やっばりダメだ)

あたしは顔を上げ、

「ごめんなさい。少し考えさせて下さい」

それだけを告げ、『ポアロ』のドアを開ける。

「なん、」

とそこで振り返って、

「あと、蘭を泣かせないで下さいね」

歩道に出るとあたしは全力で走り出した。

(ごめんなさい。でも――)

『ポアロ』に来る直前まで考えていたことが蘇る。

 

 

(何でこんな時にコナンくん、風邪でダウンしてるの!?)

 

 

『コナン不在の執行人』

 

 

そんなことがあっていいのだろうか。

 

一応、登校はしたものの、全然授業なんて聞いてなかった。

『執行人』は『ゼロ』である降谷零とコナンくんが活躍するストーリーだったハズ。

(というか、主人公が不在、ってどんな話よ……)

元々の始まりは、『NAZU不正アクセス事件』。その容疑者が勤務していたゲーム会社に侵入して捕まった人物が、本当は公安検事の『協力者』で、だけど当人は協力者であることを言わず、その後、異例とも言える公安の取り調べの後、自殺。

その時、取り調べをしていた公安というのが、安室さんこと降谷さんで――

犯人はその時のことを怨んで、事件を起こしてしまう。

(確か、最初の爆破事件はガス管にアクセスして、IoT圧力ポットを使って爆破したんだっけ)

何というか、『執行人』は硬派の警察小説を読まされているようで、話が入り組んでいて詳細までは覚えていなかった。

(もう少し、映画観とけば、ってあれ?)

そこで違和感を覚えた。

何となく、本当に何となくだが、おかしな感じがしたのだ。

頭の中の『事件簿』に入っているコナン映画の情報は二十本は軽くある。

(あたし、全部、観に行ったんだっけ?)

一瞬、悪寒に襲われそうになったが、ムリヤリ無視することにした。

(それよりも、一番気になるのは――)

「園子、どうしたの?何か顔色悪くない?」

心配そうに聞いてきた蘭に、

「ごめん、ちょっと早退するね」

「え!?ちょっと園子!?」

そう決めるとあたしは帰り支度をし、先生に断りをいれ、さっさと下校してしまった。

 

 

今回の事件で一番気になるのは、毛利探偵がこの事件の容疑者として起訴までされてしまうことだ。

(蘭の泣き顔なんて見たくないよ……)

でも、と思い直す。

(今回はコナンくん寝込んでるし、毛利探偵を巻き込む理由はないはず)

何故、毛利探偵が巻き込まれたのか。

それは『蘭姉ちゃん』が大好きなコナンくんを奮い起たせるため。

(だったら、きっと大丈夫)

 

そうは思ってもつい心配になり、あたしは毛利探偵事務所へ足を向けた。

 

 

だが、そんなあたしの予測は、外れた。

 

毛利探偵事務所の下の道路には、何台ものパトカー、そして明らかに覆面と分かる乗用車。

(そんな……)

階段を駆け上がり、事務所のドアを開けると、

「だから、知らねえって!」

何人もの刑事が動き回る室内で、異議を唱える毛利探偵の姿があった。

「押収されたあなたのパソコンから出てきましたよ。サミットの予定表、それから爆破された国際会議場の見取り図が」

(風見さん……)

その表情には、こちらの釈明など一切受け付けない、という強い意志が見て取れた。

ここに蘭の姿がないのが却って幸い――あれ?

(映画ではここ、あたしと蘭、それにコナンくんもいなかったっけ?)

「あれ?お前、学校はどーしたんだ?」

毛利探偵に聞かれて、ちょっと早退してきたけれど、たまたま通り掛かったら、パトカーが気になって来たのだと説明しておく。

「おじさまはそんなことできませんよ。パソコンできないですし」

「そうだ!できません!!」

毛利探偵も言うが、風見さんには聞こえていないようだった。

「あの、こんな時に何なんですけど、コナンくん、具合はどんな感じなんですか?」

「ああ。あいつなら、阿笠博士のとこだよ」

「え」

「昨日、博士のとこで遊んでるうちに、熱出しちまってよ。迎えに行くか聞いたんだが、向こうで休ませとくからってさ」

(ん?これってどうゆうこと!?)

考え込みそうになったとき、

「とにかく。詳しい話は警察で聞きます」

風見さんが近づいて来て、毛利探偵の腕をとった。

(あ、これヤバいやつ)

あたしが忠告する間もなく、

「ふざけるな!」

毛利探偵がその手を振りほどいてしまった。

「公安の任意同行なんか知るか!」

「では今の公務執行妨害で逮捕します」

「手を払っただけだろーが!って、おい!!」

風見さんは毛利探偵の腕を掴み、手錠を掛けると時刻を読み上げた。

 

「放せよ!おい!!」

「暴れれば容疑が増えるだけですよ」

毛利探偵の抗議が遠くなるのを聞きながら、あたしの頭の中は疑問符で一杯だった。

 

 

 

(何で!?どうして毛利探偵が!!)

あたしは真澄さんに、蘭についていてあげて、とメールを入れると、阿笠博士の家へ向かった。

この逮捕劇は公安主導で行われている。

つまり起訴は不可避。

映画でも毛利探偵は起訴されてしまうが、その後勾留中に爆破事件と同一犯と思われる事件が起き、釈放されたはず。

(でも、そこまで待っていたら、大変なことになってしまう!!)

警視庁に迎えに行った蘭達は、そこで事件に遭ってしまうのだ。

犯人の手によって軌道を変えられた無人探査機『はくちょう』が警視庁目掛けて墜落してくる、という、事件というより、未曾有の大惨事に。

(そんなことになる前に、何とかして止めなくちゃ!!)

しかし、そこであたしの足が止まった。

待って。

この事件の犯人って、公安検事のあの人だよね。

最初の爆破のとき、ちょっとしたミスをしてくれるけれど、今の時点でそこを突っ込んでも、絶対かわされる。

ただの勘違いで済まされてしまう可能性が高かった。

ある程度は原作の通り進めるしかないのか、と重い足取りで辿り着いた阿笠邸のピンポンを押す。

「はい」

「こんにちは。哀ちゃん。コナンくんが寝込んでる、って聞いたんだけど、って哀ちゃん、学校は?」

「いるわよ。上がって。念のため休んだのよ。そういう貴女こそ、どうしたの?」

「お邪魔します。えっと。あ、こんにちは、博士」

「おお、園子君か。はて、今日は半ドンじゃったかの?」

「……半ドン?」

「午前中だけ、ってこと。ちょっと早退してきたんですけど、蘭が大変なことに、って工藤くんは?」

「奥で休ませておるが。新一……」

「待って下さい。博士」

「どうかしたかの?」

「園子さん?」

訝しげなふたりに、あたしはざっと状況を説明した。

 

 

 

それは大変じゃ、と立ち上がりかけた博士に、

「待って下さい。工藤くんの容体はどんな感じなんですか?」

「それはその……」

口ごもる博士に代わって哀ちゃんが答えてくれた。

「あまり良くないわね。中途半端な解毒薬を何度も飲んできた副作用も出てきているようだし」

あたしはこれまでのコナンくん、こと工藤くんがやらかしてくれたあれこれを思い返しながら、

「とても、教えられないわね」

「うむ」

「そうね、あのラブコメバカ探偵のことだから、恋人の父親がそんなことになっている、と分かったら、今すぐ起き上がって、解毒薬要求してくるに違いないわ」

(哀ちゃん、今はっきり、『◯カ』って言いませんでした!?)

「あのー、お疲れなら、ウチから看護師派遣しても――」

「気持ちだけ、受け取っておくわ」

 

その後、このことは工藤くんが回復するまで黙っておくことになり、工藤くんのスマホは哀ちゃんが預かることになった。

「それから、博士」

「何じゃね」

あたしは念のために幾つか発明品を注文することにした。

 

 

 

その後、蘭と真澄さんは蘭のお母さんの法律事務所を訪れ、毛利探偵の弁護を頼んだらしい。

だがやはり、身内の弁護は出来ない、と言われてしまったようだ。

 

(こういう場面、原作にあったなあ)

そんなことを思いながら、あたしは蘭にメールした。

急に具合が悪くなって駆け付けられなくてゴメン、と。

後で毛利探偵が話したらすぐにバレるけど、本当に今は考える時間が欲しかった。

すぐに蘭から返信がきた。

具合は大丈夫か、というのと、工藤くんに連絡したからこっちのことは心配しなくていい、とか。

(いや、工藤くん、今思いきり動けないし)

蘭の気遣いが嬉しくて、……痛い。

あたしは真澄さんに、もう少しの間、蘭を頼む、とメールした。

するとすぐに返信。

見ると、何を考えているのか知らないけど、メドがついたらすぐ蘭に教えるように、とあった。

「……読まれてる」

乾いた笑いしか出ない。

 

 

(でも、本当にどうしよう)

何度も頭の中でシミュレーションしてみたが、やはりコナンくんが動けない、というのが痛かった。

ストーリーの要所要所でコナンくんが動くから、話が進むわけで――

あたしは重い息をついた。

『執行人』のもうひとりの主役――安室さんには、まだ知らせたくなかった。

(コナンくんが具合悪いのって、本当に副作用なんだよね?)

あの後、コナンくんには会っていなかった。

まだ寝ているから、と言われてしまったけど、何か、会わせたくないような雰囲気があったような気がして。

(まさか……ネオ・グリフォン)

あいつが毒でも盛ったのだろうか。

だとしたら、安室さん達にも何か仕掛けてくるのでは、と気になってしまう。

仙台の事件で受けた印象だと、愉快犯を思わせる言動が多々あって、よく七槻さんのとき、邪魔されなかったと思う位だもの。

そして、バタフライ・エフェクトの可能性も捨てきれない。

あたしが未来を変えてしまったことで、『執行人』の世界はどこまで筋書きを変えてしまったのだろう。

脳裏に映画のラストシーンが浮かぶ。

コナンくんが不在だとあの場面、全ての役割を『彼』がひとりでこなさければならなくなって――

 

とんでもない想像をしてしまったあたしは、ある決意を固めた。

 

 

 

 

翌日、あたしはとある屋敷の前にいた。

(ここでダメなら)

「はい」

呼び鈴に応じて現れたのは、大柄で厳つい顔をした執事らしい男の人。

「突然、すみません。あたし、鈴木園子といいます。至急、お話ししたいことがありまして、紅子(あかこ)さんに取り次いで戴けないでしょうか?」

 

あの後、必死に思考を巡らせたあたしは、とある結論に辿り着いた。

 

『コナン』がダメなら、もうひとりの主人公、『キッド』では?

 

作品こそ違えど、『怪盗キッド』は何度か『コナン』に出没している。

(映画だって何度か出てるし、大丈夫よね?)

だが、すぐに怪盗キッドの正体である『黒羽快斗』に接触するわけにはいかなかった。

なぜなら――

「あなたが、鈴木園子さん?」

今、目の前にいる小泉紅子さんは、『怪盗キッド』のコミック『まじっく快斗』に出てくる主要人物のひとり。

(確か、『赤魔術』の正統な後継者で、何度かキッドを助けているんだっけ)

キッドの作品がコミカルな印象が強いため、そんなに凄い人には思えないのだが、彼女の魔女としての実力は侮れないものがあった。

「初めまして。鈴木園子です。急に伺ったのにお会いして下さり、有り難うございます。今日、こちらへ伺ったのは――」

「待ちなさい」

あたしの言葉を遮ると、紅子さんは執事らしい人に水晶玉を用意させた。

「ふう。……あら、あなた、『混ざりもの』なのね」

「え!?」

紅子さんは尚も水晶玉に手を翳しながら、

「複雑に絡まりあっているわね。これは私にも読めな……ああ、『彼』に用があるのね」

(まだ何も言ってないのに!)

やはりこっちを先にして正解だった、と思っていると、

「それでどうして、あの『白き罪人』よりも、私の方を先にしたのかしら?」

(いえその、そういうところなんですけど!)

あたしは、心の中で目一杯叫んだ。

 

 

 

話を聞き終えた紅子さんは、すく、と立ち上がった。

「では、行きましょう」

「えっ」

「今回の件は時間が勝負のようよ。これから、『彼』がいるところまで案内してあげるわ」

足早に部屋を出る紅子さんに付いて行きながら、

「ありがとうございます。でも、どうしてそんなに――」

よくしてくれるんですか、と続けようとしたとき、紅子さんが振り返った。

「あら、恋する乙女に助力するのは当然のことよ」

(へ!?)

――ダレデスカ、アナタ?

(紅子さんってこういうキャラだったっけ?)

あっけに取られるあたしを先導して、紅子さんが連れてきてくれたのは、まだ開店前のバー。

「あの、」

「いいから」

地下への階段を下り、扉を開く。

「いたわね」

紅子さんの声に薄暗い店内を窺うと、カウンターには大分年を召したバーテンらしい男性と、カウンター席の前にひとり、学生服の男の子がいた。

(あれが、寺井さん。そして学生服の彼が、キッドこと黒羽快斗くん、わ、ホントに工藤くんそっくり!!)

そう思って見ていると、黒羽くんがつかつかと近づいてきた。

(あれ、何か怒ってる?)

「あんたが鈴木園子か?」

「そうですけど」

すると黒羽くんは、いきなりあたしの肩を掴んだ。

(何!?)

 

 

「お前、青子をどこにやったっ!?」

 

 

 

 

(……Why?)

 

 

 

 

 

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