鈴木園子はゼロの夢を見るか   作:ルナ子

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遅くなりましたm(_ _)m

まさかの冬の風物詩(!)イン◯ルが来てしまい、なかなかこちらへ来られませんでしたm(_ _)m

ウイル◯除菌グッズで防御する日々を送っておりますm(_ _)m

次回はもう少し早くお目にかかりたいと――(←フラグ?)






お嬢様と『執行人』④

「ぼ、……私が来たから大丈夫。だから、園子お姉さんはここに残って!」

「残念でした!!このブレスレット型パラシュートは、大人用なの!!キミの体重じゃ、開いてくれないからっ!!」

「あー、だったら俺がその子、抱きかかえても」

「却下」

「へ?」

「今、皆川さんに渡した予備のパラシュートも大人用です!基準は成人男性なので、そこにコ……哀ちゃんの体重掛かると、開かなくなる可能性がありますっ!!」

「いやしかし――」

「だめです!三人で行きますっ!!」

 

どうしてこんなに議論が白熱しているのか。

 

それは少し前まで遡る。

 

 

羽場さんも『協力者』だと知り、ショックを受けた様子の境子さん。

「思い上がるな!アンタの協力者になったのも私の判断!アンタを裏切ったのも私の判断!彼を愛したのも私の判断!!私の人生すべてを……アンタ達が操っていたなんて思わないでっ!!」

 

 

(えーと……)

 

悪いけれどあたし的には、『何で?』と疑問に思う台詞だった。

(だって公安の『協力者』だよね?)

ずっと昔、何かで聞いたことがある。

公安の『協力者』って、とっても深い絆で結ばれていて、相棒の公安刑事が他県に異動になってしまい、そこで縁が切れる、と思った協力者は自分の命を絶ってしまったそうだ。

また、『協力者』を得る際も、事前の調査はもちろん、何回も会って話をしたり、自分の家へ招いて奥さんの家庭料理を振る舞ったり、と相手に気付かれないように自分の領域に入れていく、とか聞いた気がしたんだけどなあ。

 

(最近の公安刑事と『協力者』の距離感って……)

 

風見さん、焦ってでもいたんだろうか。

 

この境子さんの台詞を聞く限り、『深い信頼関係』ってのは皆無に聞こえる。

 

――どんなに憎まれようと、最後まで彼女を守れ。それが、

――我々公安です。

 

足音が遠ざかり、風見さんが去ったのだと分かる。

 

(あと、少し)

と気が緩んだのが悪かったかもしれない。

 

――君のお陰でテロリストを逮捕できた。だが――

 

そこで安室さんの声音が変わった。

 

――君は誰かな?

 

「っ、七槻さん!!」

あたしは慌てて叫んだ。

カラン、と何かが落ちる音、一気に遠ざかる気配。駆け出す足音。

――ごめんッ!!

足音と共に七槻さんの声が遠ざかって行く。

(ううん。こちらこそ、ありがとう七槻さん)

ほとんど説明もなしに、あたしの影武者させて。

ゴツッ、とイヤリング型通信機が拾われたような音がした。

 

――それで君は、今どこにいるのかな?園子さん?

 

(お、……怒ってらっしゃる――)

当然だろう。そこにいた『鈴木園子』はニセモノで、更にこれから迎えるクライマックスでは仲間外れにされようとしているのだから。

「いえ、その、えっと――」

――ど・こ・か・な?

(ひいいぃぃぃっ!!)

固まっていると、傍らでどこか飄々とした感じで答えるヒトがいた。

「よお。今いるのは国際会議場近くの、建設中のビルだと」

(まさかの裏切りぃっ!!)

じと目で見上げると、ん?と実にいい笑顔で、

「どうしたのかな?俺が誰の味方かなんて、分かりきっていることだと思うけど?」

……そうでした。

あたしが、がくり、と膝をついていると、

 

――分かった。すぐに着く。

 

(え!?)

唖然としていると、コ――哀ちゃんの声がした。

「何で、身代わりなんてしたの?」

「あ、えっと」

言い淀んでいると、イヤリング型通信機の向こうで安室さんの焦ったような声。

 

――何!?カプセルが!?

 

「どうした?」

「安室さん!?」

「あー。たぶん、カプセルがまた軌道を変えたんだと思う。……カジノタワーの方へ」

 

何とも言えない沈黙が落ちた。

 

「マジかよ……」

天を見上げて手で顔を覆っている皆川さん。

(これ、後で尋問タイム来そうだわ)

そっと遠い目をしていると、

「で、何で園子姉ちゃんだけ、ここに来たの?」

(コナンくん。その声で口調だけ戻すのやめて)

「ええっとね、あのままあの場にいたら、当然、安室さんの車に乗るよね。で、ここへ来るまでの道のりで、モノレールの前を走ったり、並走したり、その下の走行路に着地して――」

「「……もういいです」」

(うん。そーゆーの、分かっていたら、先回りしちゃうよね)

「ちなみに今はモノレール、止めてあるから、そこまではならないと思うけど」

「園子ちゃん、まさか――」

「ん?もちろん、モノレールもウチの所有です」

にっこり笑ってあげると、皆川さんの肩が、がっくりと音が聞こえて来そうな勢いで落ちるのが分かった。

コ――哀ちゃんの方からは、乾いた笑いが聞こえてくる。

「はは……で、どうするの?安室さんも参加するんでしょ?」

それを聞いたあたしは、イヤリング型通信機の通話をオフにした。

「まさか。ここまで来て悪いけど、ここはあたし達だけでやりましょう」

タイミング的にも、コナンくんが安室さんの車に乗り込んでいる時間はないだろうし。

そう続けると、なぜかふたり共、すっぱいものでも呑み込んだような表情をした。

(何で?)

「ここまで来てそうなのか」

「園子姉ちゃん、エグいよ」

(もしもーしコナンくん?隠す気ないのかな?)

「あ、コ――。メガネある?」

「え?」

「あるけど?」

「悪いけど、それでカプセルの細かい軌道、計算してくれる?それから――」

タイムリミットが近いので、些か強引に話を変えてあたし達はアルファロメオへ乗り込んだ。

 

 

「いいのかい?」

「……何がですか?」

カプセルの軌道も捕らえて、コナンくんのカウントを待つだけ、となったとき、皆川さんが問い掛けてきた。

「本当に、俺達だけで行くのか?」

「さっきも言いましたよね。皆川さんが運転して、カプセルの近くまでジャンプ。コナンくんがボールを蹴ったら、あたしがコナンくんを回収して、パラシュートで降りる。ここまでは?」

(安室さんがいないことを除けば、ほとんど原作通りの流れだから大丈夫だと思うのだけれど)

あたしが答えると、なぜか皆川さんが頭を抱えた。

「……?」

「園子ちゃん、もう一度だけ言うよ。考え直す気は?」

「ないです」

「そっか。それじゃあ、仕方がない。――襟の裏、何かないか?」

(え?)

一瞬、固まった後、慌てて探ると、……出て来ました、カメオブローチ型通信機。

「何で、こんなところに」

「でさ、それ、誰が受信してると思う?」

あたしと、なぜかコナンくんまで、ぴきっ、と固まった。

「まさか……」

「そのまさか、おいっ!」

あたしは急いでコナンくんごとシートベルトをした。

 

「皆川さんっ!!すぐに出られるようにして下さいッ!!」

 

 

そして、冒頭に戻る。

 

 

 

 

「いやいやいや!!園子ちゃんは残ってなって!!」

「イヤですっ!!さっきも言ったように、パラシュートの都合上、あたしも行きます!!」

ある意味、カオスになりかかっていると、遠くから、ゴツッ、ガツッ!などと、あまり聞いたことのない音と、エンジン音が聞こえてきた。

「あれって……」

「コナンくん!!カウントッ!!」

「あと少し!!」

「皆川さん!!このアルファロメオ!!ちょっとクセついてるそうです!!ギアはセカンド飛ばしてサードに入れたら、すぐにトップにして下さいっ!!」

「はあっ!?何、その仕様!?」

一体どんな奴がハンドル握ってたんだよ!?

皆川さんのほとんど悲鳴に近い叫びが響き渡る。

 

下の方からガコン、ガコンとエレベーターが上がってくるような音が近付いてきた。

「コナンくんっ!!」

あたしまで悲鳴のような声音になってしまったのは、しょうがないだろう。

「……三、二」

車の管理人してる、竹中じいちゃんの顔がよぎる。

(ごめんなさい。このアルファロメオ、今日が命日だわ)

「いち、」

ガコン、とエレベーターが到着したような音がした。

 

「「「ゼローー!!」」」

 

 

 

解き放たれたアルファロメオがフロアを突き進んだ。

その時、ふいにあたしはある事を思い出した。

「コナンくん、高さは!?」

「――十分!!」

(え?)

コナンくんがキック力増強シューズのスイッチを入れる気配がしたので、あたしは慌ててシートベルトを外し、コナンくんの手に握らせた。

意図を解したコナンくんがそれを手首に巻き付けた。

と同時にアルファロメオが飛び出す。

車外に飛び出したコナンくんがシートベルトを命綱に、反対の手で射出ボタンを押した。

 

「行っけぇぇぇっっ!!」

(――蘭っ!!)

 

 

負荷を掛けすぎたのか、空中でアルファロメオが爆発し、飛び出したサッカーボールがカプセルに迫る。

あたしは落ちていくコナンくんを全力で掴んで抱き締めた。

 

「園子っ!?」

(あっ、パラシュート!)

落ちる、というより、ぐんっ、と地面に向かって引っ張られるような感覚に酔いそうになりながら、パラシュートのスイッチを押す。

「――ッ!?」

「園子!?」

――……開かない。

「ま、うそ、残りの三十パーセントッ!?」

げっ、と腕の中でうめき声が聞こえてきた。

(どうしよう!?)

こんなところで、主人公を喪う訳には行かない。

背後から強い風が吹き、何かがぶつかってきた。

「――ッ!」

「そのままでいろ!!」

(……へ?)

「――安室さん!」

(う、そ)

あたしとコナンくんを抱えたまま、その一方の手にある拳銃が、国際会議場の大屋根を囲むガラスにヒビを入れる。

その勢いのまま、あたし達はそこへ突っ込んだ。

 

 

「――ぐっ!」

(今の、声)

映画のシーンが蘇る。

何かの破片が飛び、安室さんの腕に刺さって――

 

 

「……っ!」

転がりながら何とか落ち着いて身を起こすと、視界の隅でコナンくんがメガネを調整している様子があった。

あたしもすぐに視線をカジノタワーに向けた。

(……よかった。蘭)

 

力が、抜ける。

(あ。安室さん!)

ぐるり、と首を巡らせると、少し離れたところにいた。

左腕を押さえて――。

(ケガ、させちゃった……)

知っていたはずなのに。

こうなることくらい、分かっていたはずなのに。

「園子姉ちゃん!ケガは?」

「ん、あたしは大丈夫……それより」

ウェストポーチに入れていた消毒液と包帯をコナンくんに渡す。

「これ、安室さんに渡してくれる?」

「分かった」

コナンくん――今は哀ちゃんか――が安室さんのところへ向かうのを見ていると、ふいに血が下がる感じがした。

(あ、れ)

既視感を覚えながらも、安室さんが手早く止血している様子を、ぼぅっと見ているうち、がくん、と膝から崩れ落ちてしまった。

「園子姉ちゃん!」

駆け寄って来る足音に、何でもない、と答えようとして指が震えていることに気付いた。

「……園子さん、夕食は?」

低い声に、別の意味で震えそうになりながらも正直に答えた。

「え、と。朝は、食べました」

またか、と天を仰ぐ安室さんに、

「園子姉ちゃん……」

コナンくんの呆れたような声を聞きながら、あたしはウェストポーチを探って、非常食替わりのチョコを出そうとした。

「今、チョコ出します、から」

「かしなさい」

震える手では心もとないと思われてしまったのか、安室さんがさっさとチョコを出してしまった。

そこまではいいのだけれど――。

「「……」」

(ナゼに包装紙を外して、そのままクチへ運ぶんですか?安室さん?)

目で問うと、

「君、手が震えているじゃないか」

「……すみませ、っ」

口を開きかけた途端、一口サイズのチョコが放りまれた。

「……」

無言のまま、口へ運ばれるチョコ。

(コナンくん、体ごと明後日の方向、向くのやめてほしいんですけど)

何とも言い難い沈黙の後、チョコの在庫が尽きた。

「……アリガトウゴザイマシタ」

「後はこちらで何とかするから、君たちは帰りなさい」

「うん。安室さんもお疲れ様」

あたしは無言で頷いた。

 

 

 

「園子姉ちゃん、無茶しすぎ」

帰りの車(皆川さんが来てくれました。そちらのパラシュートは大丈夫だったんですね、よかった)でコナンくんにお説教されています。鈴木園子です。

(小学校にお説教される高校生って)

「……ごめんね」

「ほんとーに反省してるの!?」

「すみませんでした。――ねえ、ずっと気になってたんだけれど、コナンくん、今までどうしてたの?」

見た目は哀ちゃんだけど、変声器付きマスクはなくしたのか、声はコナンくんになっていた。

(凄い違和感。あ、でも何かカッコいい哀ちゃん、って、感じ?)

「今、何か違うこと考えてなかった?」

「ううん。何にも!」

それにしても、と運転していた皆川さんが話に入ってきた。

「一体どこまで知っていたのかなあ?見ている限りだと、この一連の流れを全部知っていたかのような行動なんだけれど?」

「そう、でしたっけ?」

「そうだよ!!さっきの国際会議場、モノレールまで!!土地、建物の売買って、時間かかるんじゃないのっ!?」

いつからそんな根回ししてたのさ!?

「あー。その辺りはごり押しで済ませたから」

ごまかすように笑って答えると、沈黙が落ちた。

(うん。あたしもここまで『鈴木財閥』の力が凄いとは思わなかったわ)

遠い目をしていると、

「ねえ」

真剣な眼差しのコナンくんと目があった。

「ん?」

(この口調、この雰囲気、もしかして――)

脳裏で、嫌味な位高い笑い声を再生していると、

 

「セラフィム、って聞いたことある?」

 

 

 

(――……はい?)

 

 

 

 

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