鈴木園子はゼロの夢を見るか   作:ルナ子

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前後編になってしまいました、すみませんm(_ _)m







スプーン一杯の悪意(前編)

「何か、すみません」

結局、何で皆があんなに騒いでいたのかは分からなかった。

(何だったんだろう)

「大丈夫ですよ。ちょうど帰るところでしたし」

(ハイ、営業スマイル、いただきました!)

その時、あたしは圧迫感を覚えた。

「すみません、少し、窓開けてもいいですか?」

快諾してくれたので、窓を少しだけ開ける。

「もしかして閉所恐怖症ですか?」

「いえ、そういうのではなくて。こないだの『風邪』で余計な記憶、蘇ったみたいで」

(どうせ、調べれば分かることだし)

「あたし、昔、誘拐されたことあるんで、って前!!」

(幾ら驚いたからって、こっち見ないで下さいよ)

「元から暗いとことか、苦手だったんですけど、それ以降、こうゆう車の中とか、窓開けてないと落ち着かないというか」

(あ、そうだ)

「安室さんは調べれば分かるヒトだから話しましたけど、オフレコでお願いしますね。蘭にも話してないので」

(犯人が犯人だから、できるだけ内々で済ませたんだよなあ。だから、本当は自首なんてしなくて良かったのに、じいや)

途端に『園子』の記憶が押し寄せてきたので、窓の外を見るふりをしながら、思いをはせた。

(ずっとお祖母様の面影を追っていたんだよね。じいや。それで一番その『お祖母様』に似ていたあたしにもそうなって欲しくて、って幾らなんでも暴走しすぎだと思うけど)

園子の記憶にある『じいや』はとても優しく、時には少し厳しく、今から思い返してみると、それらは全て園子のための忠告ばかりだった。

(なのに何してんのよ、子供のころの園子)

大人からみれば『忠告』でも、子供の目線からすれば『お小言』としか映らない。

まだ本当に小さいころは良かった。

なんだかんだ言いながらも、いうことを聞いていたと思う。

だけど、だんだん小学校の学年が上がり、周囲の思惑が分かる年頃になってくると、全てに反抗するようになった。

『あたしはお祖母様の代わりじゃないよ!じいや!』

たぶん、この台詞が引き金になったのだろう。

『園子』の、あたしの不注意な言動が、お祖母様の代から仕えてくれていたじいやを凶行に走らせた。

後になって理由を知った両親も、もちろんあたしもなかったことにしたかったのだけれど、じいやだけは違った。

『私がお嬢様を誘拐しました』

あの時のじいやの顔は忘れない。

そう思ってきたはずだった。

 

 

「着きましたよ」

安室さんは黙ったままだった。

(気を悪くしちゃったかな)

「ありがとうございました」

お礼を言って降りようてすると、

「そういった事情があるのでしたら、車は止めた方がいいですね。今度はバイクにしましょうか?」

「はい?」

いえ、いっそ自転車の方が……と続けるのが聞こえて、あたしは思わず吹き出してしまった。

「何ですか、それ。窓開けておけば車で大丈夫ですよ」

「やっと笑ったね。それじゃ、また今度」

安室さんの車が去ってから、ふっと気がついた。

(あれ、『また今度』って何!?あたし、また安室さんの車に乗るのおっ!?)

なぜ頷いてしまったんだ自分、と軽くorzりながら帰宅。

「ただいま、笠井。今日も変わりはない?」

いつも通りに声をかけると、

「お嬢様、実は先ほどから京極様がお待ちにございます」

(……ハイ?)

 

 

「すみませんでしたっ!!」

(え、と何かなこれ)

急いで着替えて京極さんを待たせている部屋に入るなり『これ』である。

(突然、土下座されても……)

「あの、ひとまず顔を上げて下さい」

「いえ、ですが」

渋る京極さんを宥めて何とかソファへ。

「「……」」

座ったはいいけど、今度は沈黙がイタイ。

「すみません。あの後、蘭さん達から事情を聞きました。ひどい高熱だったとか」

「……ええ、まあ」

言ってくださってたら、すぐに帰国したのに。

呟くように言われた台詞に、ティーカップを持ちながら硬直してしまった。

(それが嫌だから、ううん、邪魔したくないから黙ってて、皆に頼んだんだっけ)

京極さんは根っからの武道家で、強い相手と対戦するのを何よりも望んでいる。

そのことを知っているから、邪魔してはいけない、と遠慮してしまうことが多かった。

(言えば、良かったのかな)

「ごめんなさい。何か邪魔しちゃいけない気がして。あの、蘭達に聞いたと思うんですけど、あたし、その時に少し、記憶なくしちゃったみたいで。そのこともあってか、与える印象違うと思うんですけど」

(聞かなくちゃ)

「京極さんはどうしてあんなことを言ったんですか?

「それは」

そういえば以前、怪盗キッドにお願いして『園子』に化けて貰ったことあったっけ。

(あの時は、恋の力できっと真さんが見抜いてくれる、とか何とか、……気持ちは分かるけどね)

確かあの時は指の長さが違う、ってことでキッドを見抜いたんだっけ。

(指の長さって……)

固唾を飲んで待っていると、

「……歩き方が」

「はい?」

「以前と歩き方が違っているように思えて。それから内から滲み出る雰囲気といいますか」

非常に言いにくそうに京極さんが答えてくれた。

(歩き方、ですか)

それはまあ、今のあたしは『園子』ともうひとりの女性の記憶が交ざった状態なのだから、考え方はもちろん、所作も違っていると思う。

(まさか、『歩き方』とは……)

これまで誰も指摘しなかったことだけに軽くショックを受けた。

「園子さん」

何か言いかけた京極さんを遮るように、

「京極さん、私達、少し距離をおいた方がいいのかもしれませんね」

 

 

 

私に、京極さんはもったいない。

あの真っすぐな眼差しに耐えられる程、あたしは『白い』存在ではない。

跡継ぎは断るにしても、『鈴木財閥』の一端を担う、と決めた時から、覚悟はしていた。

きっとこの先、私の方が彼にそぐわなくなる。

『大切なもの』を守るための力が欲しかっただけなのに。

一番好きな人の眼差しに耐えられなくなるなんて。

(どこで間違えてしまったのだろう)

 

 

 

そんな感傷に浸っていたころもありました。

鈴木園子、ただ今、仙台駅(某所)におります。

なぜか目の前にはタイマー付きの、いろんな装置がついた……誰がどう見ても『爆弾』ですね。

 

 

(ドウシテコウナッタ?)

 

 

確か、あの後、仙台へいわゆる『傷心旅行』へ行こうと思ったんだっけ。

『傷心旅行』なんだからやっぱりひとりで行きたいよね。

だから、ちょっといろいろやっちゃいました。

まず、約束していた安室さんには、鈴木財閥独自の情報網から入手した、都内にいると思われるある種の団体の怪しい動向を、こっそり公安のデータベースに入れて貰って。

「済まないが明日の仙台は無理だ。急に仕事が入って――」

「あ、大丈夫です。蘭達と行きますから」

「え、」

サクッと通話終了。

そして蘭には――

「あのね、明日、仙台に行きたいんだけど蘭もどう?

「え、いいな、行き……」

「できれば新幹線で行きたいんだけど」

「……え」

「やっぱり新幹線から見る景色っていいよね。いつも車だからアレだけど、せっかくの『杜の都』なんだから、やっぱ仙台駅から……」

「園子、ごめん、ちょっと……」

「わかった、じゃあ世良さんに電話してみるね」

(知ってマス。蘭は背伸びしない子だ、ってことくらい。これであたしが『交通費』奢るから、何て言っちゃったら友情、壊れちゃうものね)

蘭の心情を逆手に取るなんて、

(黒いなあ、自分)

 

些か自己嫌悪に陥りながら、支度を整え、いざ出発。

(世良さん?もちろん連絡しないよ)

切符を買って新幹線に乗り込みながら、ふっ、と思った。

(帰ったら、世良さんにコロされるかも)

軽く頭を振って妄想を弾き出す。

京極さんとのことで気になっていたことは、他にもあった。

『鈴木園子』には姉がいる。

最近になって姉が他家へ嫁(か)すことになり、園子に注目が集まってきたけれど、それまでは完全に姉の『スペア』扱いだった。

(跡継ぎは姉の子を養子に、って言う『園子』の気持ちも分かるけれど)

どうやら使用人のほとんどの者も、そう考えているようだった。

(『園子』が鈴木家のことに不勉強になる訳だわ)

そして『園子』の記憶が朧(おぼろ)な今、『家族』が遠かった。

どうしても、両親や姉とは思えない。

(声掛けるの、迷う時結構あるし)

そして蘭や工藤くんとの関係。

じつは工藤くんは園子の初恋の人だったりする。

『園子』の記憶を持っているあたしが言うのだから、間違いない。

園子達の保育園に工藤くんが転園して来たとき、蘭が泣きながら折り紙でサクラ組の名札を再現しようとしてしたのを、一瞬で見抜いた姿に一目惚れしたらしい。

同時に、工藤くんが蘭に一目惚れしたことにも気がついてしまった。

(儚い初恋だったな)

それからは三人で遊ぶことも増え、蘭と同じく工藤くんの幼なじみの地位を確立したが、工藤くんの『一番』にはなれなかった。

蘭とふたりでいる時もそうだ。

優しくてかわいらしい蘭はその長い髪もあって、異性の目を惹き付ける。

『園子』がどんなにミニスカやキャミでアピールしても無駄だった。

いつでも、自分は二番手。

(だから、『園子』は京極さんに惹かれたのかな)

京極さんの『好き』は本物だから。

自分を『一番』に見てくれる。

(それはとても嬉しいことだけど……)

もし、その立場が反対だったら?

『好き』と告白されたから、『園子』は京極さんを好き、或いは『好き』だと思い込んだ?

ずっと待ち焦がれていた、自分を『一番』に見てくれる相手。

(京極さんでなくても、誰でも良かった?)

もし、そうなら――

 

 

「サイテーだな、自分」

小さい声だが、言葉が口をついて出ていた。

思わず辺りを見回したとき、アナウンスが入った。

「次は福島、福島に停車致します――」

(……降りよう)

何か、思ったより新幹線って早い。

(もっとこう、しんみりと想いに浸っていたかったんですけど)

改札を抜けて時刻表を見上げる。

(ん?快速?)

『快速』の割には仙台まで一時間以上かかるみたいだった。

(うん、これくらいの方がいいかも)

もう一つの思惑もあったので、すぐに決めた。

売店で飲み物を購入して、『快速』に乗り込む。

(うわあ、カーブが緩やか)

のどかな景色を眺めながら、ペットボトルの水をちびりちびりと飲む。

(うん、こういう時間が欲しかったのよ)

さっきまでの鬱々(うつうつ)とした気持ちが、どこかへ消えて行くような気がした。

電車が揺れる、昔ながらの響きにうたた寝をしている人もいるくらいだ。

(あたしは、どうしたかったんだろう)

何度も考えてしまう。

京極さんといた時間はとても楽しいものだった。

それなら、それでいいのだろう。

『快速』が宮城県に入り、乗って来る人もだいぶ増えた頃、あたしはようやくそう思えるようになっていた。

 

 

(やっと着いた仙台)

『快速』でおばあちゃんに貰ったノド飴をバックにしまいながら、ふう、と息をはく。

(もうお昼かあ。んー、お腹空いた。仙台っていったら牛タンだよね。それとも――)

ちょっとお手伝いに寄り、さてランチは、と見回した時だった。

カートを押している人(ツナギ着て帽子も被って……清掃の人?)が、ポーチをぽとん、と落としていったのは。

「あの、落とし……」

(なかなか追い付けないなあ、何で?)

そのうち、人気(ひとけ)のない通路に入り込んでしまった。

(あれ?ここってもしかしてスタッフオンリーっていうの!?)

さすがに引き返そうとした時、ふいにそれが聞こえてきた。

(子供の泣き声!?)

迷子かな、と少しだけ開いているドアを見付けてそこへ入ったのが、いわゆる運の尽きでした。

がらん、とした室内にはむき出しのコンクリの床に何かの装置みたいなモノが置かれていて、壁際には丁度子供の背丈くらいの人形が座った状態で――

ガチャン、と背後のドアが閉まるような音。

そして――

「キャハハハッ!!ようこそきみたち、ボクのテリトリーへ。これから楽しい時間が始まるよ~~」

「ひっ」

思わず悲鳴、上げてしまった。

(これって。その人形が喋った、ってこと?)

この感じだと内蔵マイクか、再生機でも入っているようだ。

(何か、気味悪いんですけど)

腹話術の人形のような造りで、口もとの辺りが、ぱかっ、と開いた状態になっていたり。

(こういう状況ではあんまりお目にかかりたくないなあ)

タチの悪いイタズラだ、と部屋を出ようとしたときだった。

「ああ。ダメダメ。そのドアに取り付けた電子錠ね、開けようとするとこの爆弾がドカンッ!といくからね~~」

(なんですとっ!!)

あまりのことにパニックになりそうだった。

(待って、ってことはさっきのポーチ……)

「ああ、そうそう。大事なこと言うの忘れてた。その『爆弾』はボクの自信作なんだ。でも、きみたち、こんなところで死にたくないでしょうお?だから、唯一の爆弾の解除の仕方、そこの封筒に入れておいたから」

よぉっく、読んでねぇ。

しばらく待っても人形は沈黙したままなので、伝えたいことは終わったようだ。

床に置かれていた封筒を手に取り、タイマーを見ると四時間程あった。

(一応、時間はあるのかな……)

「どうしよう……」

こんな事件、『コナン』にあっただろうか?

ダメ元で頭の中の『事件簿』を探すけれど、やはりというか見つかるはずもなく。

(だって、『仙台』では事件なかったはずだから、ここに決めたんだし)

とりあえず110番、とスマホを取り出しかけて、

(ちょっと待って。その前に知らせるべき相手がいるんじゃ)

何といってもここは『コナン』の世界。

(そうだよね。確か、コナンくん、爆弾の解除とかできるもの)

よし、と早速TEL。

コール音が数回鳴り、留守電になるかと思ったとき、

「あ、コナ……」

「園子か!!悪ィッ!!後にしてくれっ!!オメーも知ってるだろ!!今、東都駅が大変なんだ!!」

それだけ叫んで通話は切れてしまった。

(え、何?)

いやな予感を覚えて検索を入れてみる。

「え、」

『現在、東都駅にダイナマイトを体に巻き付けた男が籠城中!!』

あっけに取られていると、速報が入った。

『京都駅に犯行予告!!爆弾はどこに!?』

さらにもう一件。

『博多駅にも爆弾男!!』

(なに、これ)

あまりのことにスマホを切って座り込む。

(えっと、こうゆうときは……)

あたしは無意識の内に蘭の名前をタッチしていた。

「はい。園子!?今どこ!?」

「あ、えっと……」

「大変なの!!園子も見たでしょ!?今、あちこちで爆弾騒ぎがあって、お父さんも目暮警部と……園子?」

「あ、うん。小五郎のおじさまも大変そうね。こっちは大丈夫だよ。片がついたら帰るから」

「園子?」

「じゃあ、またね」

思わず通話を切ってしまった。

(これ以上、蘭を心配させたくない)

となるとそろそろ110番……

(の前に、連絡しないと怒るだろうなあ)

仕事を増やしてしまった上に、更に厄介事が増えるんだもの。

(でも、後になってから分かるともの凄く怒られそうな気がする)

思い切ってTEL。

「もしも……園子さんか」

「お忙しいところすみません。あの、できれば怒らないで聞いて欲しいんですけど」

「どうかしたのかな?」

「すみません。今、仙台にいて爆弾がある部屋に閉じ――」

「なんだって!!」

「ですから、すみません」

向こうが落ち着くのを待って、ざっと状況を説明した。

「……という訳で、外には出られないみたいです」

「その解除方法は?」

「その、これ本当にできるんですか?『爆薬の包みに脇からナイフで切り込みを入れて、そこからスプーンで少しずつ掻き出す』って」

とたんに沈黙が返ってきた。

「もちろん、その分、ここに用意してある小麦粉を足さないといけないみたいですけど」

「……理論上は可能だよ」

(うわあ、あんまり聞きたくなかった台詞。ということは、これって誰もやったことない、ってことじゃない?)

「これからそちらへ向かうよ」

「え?東都駅の爆弾はいいんですか?それにそこからだと――」

(うん、着く頃には終わってそう)

「今、白石にいるからね」

「えっ」

「急に入った仕事でね、白石に来ているんだ」

すぐに着くよ。

そう言って電話は切れた。

(どうしよう……)

『急に入った仕事』ってあたしがこっそり紛れ込ませたのじゃ。

(内容、確認しておけば良かった)

軽く落ち込みながら110番。

これが堪(こた)えた。

何というか、なかなか信じて貰えなかった。

聞くと、この爆弾騒ぎで虚偽の通報が増えているとのこと。

「だから、イタズラなんかじゃないんですっ!本当に爆弾が――」

「ええと、鈴木さんでしたっけ。少し落ち着いて」

(何か、やる気なさそう)

「……もういいです。あとになって騒いでも知りませんから。それから、公安のお兄さんにも連絡しておいたので、後で話聞いて下さいね」

「え、公――」

通話終了。

(やだな。残り三時間三十五分だって)

手順を何度も確認して作業開始。

これだけ時間あれば大丈夫、と思うかもしれないけど、あたしは人形が喋った『きみたち』という単語を忘れていなかった。

(きみたち、って複数形じゃない。ということは、この作業には最低でも二人以上の人手が要る、ってことだよね)

なぜ、あたしだけがここへ誘い込まれたのかは、何となく予想がつくけど、今はそんなことを考えている場合ではない。

(とにかく今はこの『課題』をこなさないと)

爆弾全体の大きさはA3のダンボール箱くらい。

何かよく分からない装置がついてて、細長い袋がベルト(説明書によると、このベルトを切っても爆発しちゃうんだって)でくくりつけられている。

(これが爆薬。で、脇からナイフで――)

白い粘土のようなそれを小さいスプーンで一杯分、取り出す。

(まさか最初から、ドカン、はないよね)

幸いなことに爆発する気配はなかったので、脇にあった秤の皿に乗せ、もう一方の皿に分銅を入れ、重さを量る。

(……5gか)

これくらいなら重量センサーは反応しない、ってことか。

(これ、2kgはありそうなんですけど)

単純計算で400回。

(行けるかな)

小麦粉を取り出して5g量って、上に取り付けられたボール(ここまで親切だと何か、却って不気味なんですけど)に入れる。

(よし、これをあと399回)

ふう、と息をついて繰り返すこと数十回。

(何か、あちこち痛くなりそう)

爆弾も秤も、床に直置きなので、中腰になったり座ったりでとても疲れる。

(間に合うかなあ)

先ほどからスマホが鳴りっ放しだけど、取る余裕もない。

(会話している時間も惜しいしね)

そんなことを考えながら作業を続けていると、

「そこに居るのか!?」

ドアの向かうから聞いたことのある声がした。

「はい!」

事情を知っているようでさすがにドアは叩かなかったけれど、イラだっているような声だった。

「なぜ、電話に出ない!」

「そんな暇なかったんです!きっと犯人はここに二人以上、閉じ込めたかったんでしょうけど、今ここにはあたしひとりしかいないんですからっ!」

「……きみ、友人達と来ているんじゃないのか?」

(あ、お仕事モードだ。近くに警察の人いるのかな?)

「ごめんなさい。ひとりです」

「……後で話がある」

(イヤ、何この口調っ、恐い!!)

「……丁重にお断りさせていただきます」

「きみ、」

「あ、手もとが狂いそう。何か、ごちゃごちゃ言われるとやる気なくなりそう」

「子供の遊びじゃないんだ!!爆発したら死ぬんだぞ!!」

「……分かってますよ。ゼロのお兄さん(降谷さん、って何か言い辛いし)。それで今回のこれってテロなんですか?」

「現在調査中だ。それより電話を――」

「東都駅と博多駅に爆弾男。京都駅に爆弾予告。そしてこの仙台の爆弾。同じ日に起きた割にはずいぶん手口が違いますね」

「……よく知っているな」

「さっき、検索かけましたから」

「そんな暇があったら」

「何かこれって、チャットとかで知り合った人達が意気投合して犯行に走ったみたいですね」

ドアの向こうでざわつく気配。

(あ、やっぱりいたんだ。警察の人)

「作業が大変なのは分かるが、電話を取ってスピーカーにする時間くらい、あるだろう?」

(この辺で妥協しないと本気で怒るかな)

「はい。分かりました。そうします」

 

 

 





しかし、せっかく仙台きたのに観光してないですね(^_^;)


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