鈴木園子はゼロの夢を見るか   作:ルナ子

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書けた……。自分にはこれが精一杯(´ノω;`)
次回、遅れたらごめんなさい(´-ω-)人
いや、まさか、こーゆー展開になるとは思ってなかったので( ̄▽ ̄;)
今回、長いです(なぜこうなった(^_^;)






スプーン一杯の悪意(後編)

《トリアツカイセツメイショ》

 

『キャハハハッ! やっと完成したよ~~!

 

今日はお祭りだね~~!!

 

この子はね、振動センサー、ジャイロセンサー、重量センサー、光センサーが付けられていてね、ようするに少しでも動かしたり、部品を抜いても、インターフェイスカバー(分かるかなあ)を開けても、爆発するからね~~

 

あとねぇ、コンピューターのパスワード出しても無駄だよお。リターンできないからね。

 

ネジ、外してもアウトだからね。

 

ん~、きみたちに分かる注意はこのくらいかなあ。

 

でも、このまま爆発まで待つのはタイクツだよね?

 

きみたちにもできる、とっても簡単な解除方法、教えるからやってみてね~~!(うまくできたら、爆発しないかもよ~~)

 

まず、そこにあるナイフでね、少しずつ掻き出してね~~!(重量センサーあるから、キチンと量るんだよ~~!

 

その後は、取り出した分だけ、小麦粉を乗せてね~~!!

 

あ、そうそう、一応、爆薬の中にも信管入れてあるから気をつけてね~~!! 』

 

 

 

 

 

「作業はどの程度進んでいる?」

「まだ、5分の1ってとこですかね」

「間に合うのか」

「そんなこと言われても、今ひとりなので」

「……どうしてそうなった」

(作業しながら話すのって結構大変なんですけど)

爆薬をスプーンで掬って量る。

「こちらに着いてお手洗いから出たら、カートを押した清掃員のような人がポーチを落としまして。それを拾って追いかけたら、開いているドアから子供の鳴き声が――」

「随分と計画的だな。しかしなぜきみを?」

「多分、犯人は3、4人のグループを狙ったんだと思います」

(よし、5グラム)

「大抵の女性のお手洗いにはパウダールームが付いていて、そこでお化粧直したりするので、同じグループでもない限り、入る時と出る時が一緒、というのは有り得ないんです。確かあたし、お手洗いに入った時に一緒になった子達と、ほとんど同じタイミングで出て来ちゃったんで。多分、そのグループの一員だと思われたかと」

(小麦粉を量って、と)

「なぜ、そんな偶然が……」

「パウダールームにいた時に『早く行こうよ』って声が聞こえて来て。それが、ら……友達の声に聞こえちゃって。思わず、振り返っちゃったんで。そのまま出たので、位置的にそのグループの一員に見えたのかもしれません」

何とも言えない沈黙が落ちた。

(これを乗せて、っと)

「何だか、生理的にいやなんですけど、犯人、見張っていたみたいですね。女子トイレの前」

とたんに電話の向こうが騒然となり、指示を飛ばす声が聞こえて来る。

「きみはそのまま作業を続けていろ」

「いいですけど、この犯人って捕まえられるんですか?

「何が言いたい?」

あたしはスプーンを動かしながら答えた。

「他のところは知りませんけど、手の込んだことしてますよね、この犯人」

ここへ誘い込んだ手口とか、爆薬のセンサー類も凄いし、不気味な人形まであるし。

そう続けると、戸惑っているような気配がした。

「人形とは何のことだ?」

「言ってませんでしたっけ?ちょうど子供くらいの大きさの、腹話術に使うような人形が壁際に寄り掛かっていて、子供の泣き声とか犯行声明はそこから流れたんです」

「聞いてないぞ」

「忙しくて話す暇なかったかも、ですね。すみません」

(えっと、スプーンで……ゆっくりゆっくり)

「どこまで話しましたっけ?ここまで用意周到で、人を喰ったような演出をするような相手なら、とうぜん逃走経路も確保していると思われますが、手がない訳ではないですよね?」

あたしは少し息を付いた。

(多分、これはあたしから言い出した方がいいはず)

「あたしを囮にして下さい」

「なっ、」

「犯人はここにグループの女の子達を招き入れたかったはずです。それが今ここにいるのはあたしひとり。とっくにやきもきしていると思いますけど。報道機関に、『女の子がひとりで閉じ込められ、爆弾の解体をさせられているが、彼女はすっかりパニックになって何もできないでいる』とでも流して下さい」

でも、この方法で捕まえるのはちょっと難しいかもしれませんね。

「そう思うなら作業に――」

あたしはその声をキレイさっぱり無視して続けた。

「だってこれ、人員がある程度要りますよ。恐らく犯人はこのばかげた作業をギリギリまでさせるつもりだと思います。だから、接触してくるハズですし。恐らくこの仙台駅が見えて、公衆電話も近くにある場所にいる可能性が高いと思います。最近は何でしたっけ、身元の分からない携帯とかもありますけど、携帯はアクシデントありますからね」

「きみって子は……」

「ですから、仙台駅が見えて近くに公衆電話があり、一定のプライバシーが保てる場所に絞って貰えればいいんですけど、……無理でしょうね」

何かで読んだことがある。

刑事と公安は仲が良くない、って。

――仕方のないことだと思うのだけど。

刑事と公安ではゴールそのものが違う。

刑事事件では犯人確保が主な目的だけれど、公安は国を脅かすテロ、つまり組織を突き止め、事前にできるだけ情報を集めなくてはならない。

だから、『尾行』ひとつとっても刑事の場合は万が一それがバレても犯人確保へ繋がればそれでよし、というような風潮があるのに対し、公安のそれは相手には絶対に気取られてはいけない類いのもので、ほんの少しでも相手に気付かれた、と思えば即座に中止しなければならない。

そして、公安は自らの捜査内容を絶対に漏らさない。また、権限も上であるため、刑事達が苦労して確保した被疑者をふいに現れて、かっさらって行くケースも多々あり、それが余計に両者の間に溝を作っていた。

「――と、こんな感じですかね」

(秤に乗せて、っと)

「今回も、そちらの捜査本部、微妙な空気になっていませんか?」

本来なら地元警察が治める案件に、公安が問答無用で乗り込んで来て指揮を取る。

「今言ったような捜査だと、どうしてもこの仙台の地理に詳しい刑事さん達の協力が必要だと思うんですけど、大丈夫ですか?」

「どういう意味だ?」

「ですから皆さんのやる気です。ソリの合わない、警察庁の公安が来て指揮を取っているし」

そこであたしは言葉を切った。

「人質になっているのは、その『公安』の知り合いらしい、とくれば、やる気も失せるでしょうね」

(この辺りは周知の事実みたいだから、言ってもいいよね)

これだけ長い間話していて誰も何も言って来ないのはおかしいと思うし。

そう思っていると違う声がした。

「ちょっといいかな」

「はい?」

「宮城県警の青葉だ。お嬢さん、随分と勉強しているようだが、我々も勿論、公安の方も犯罪を許すないという点では一致しているからそんなに心配しなくとも、大丈夫だ」

(ビミョーな言い回し、ありがとうございます)

「でしたら、お願いがあるんですが」

(量って、乗せて、と)

「何かな」

「爆破時刻の5分、いえ10分前になったら、ドアの前にいる人達を退避させて下さい」

「何を言っているんだ、きみは!!」

「何かイヤな感じがするんですよ。爆弾のことなんか何にも知らない子達に解体作業をさせようとしたりして。あと、いろいろ準備しすぎだと思いませんか?これ、もしかしたら遠隔操作式かもしれないですし」

1分前にスイッチを押す、とか有り得そうなので避難して下さい、と続けると怒号が響き渡った。

「何を考えているッ!!」

「そうだ!!一般市民を残すだなんてバカなーー」

そう伝えたのにはきちんと意図があったので、あたしも負けじと怒鳴り返した。

「バカはどっちですかっ!!警察官だって待っている人がいるんですよ!!こんなトコで死んだら犬死じゃないですかっ!!世論がどう言おうと生き残って、こんなことした犯人、捕まえて下さいよっ!!」

「だったらきみも生き残れっ!!」

「そうしたいんですけど、今も作業してますが、やっぱりひとり、っていうのがネックですね。それより、さっさと人員配置ってのして、あたしがひとりで怯えて何にもできないでいる、って流して下さいね」

じゃあ、作業するんで一旦切ります。

「ちょっ、」

言うだけ言って通話終了。

(ふう、すっきりした)

きっと電話の向こうでは、あたしに対する反発とかで大変なことになっているだろう。

(これで、安室さんへの反発が収まるなら安いモノだけど)

大体の捜査方針を公安ではなく、あたしが口にしたことで、少しはクッションになるといいんだけど。

そこで、ぴたり、と手が止まる。

(捜査方針、これで良かったんだよね?)

もし、見当違いなら目も当てられない。

(何でこの事件、『コナン』に無いのよ)

 

 

 

掻き出して、量って又、量って乗せて。

(残り1時間40分か)

爆薬はまだ半分以上残っている。

(ちょっとマズイかも……)

一先ず、鳴りっ放しのスマホをONにする。

「もしも……」

「言いたいことは多々あるが。後回しだ。犯人から接触があった。そこにキーボードのようなものはあるか?

かなり硬い声で、怒りを抑えているのが丸分かりだった。

あたしは素早く辺りをチェックし、手帳サイズのキーボードを見つけた。

「ありました」

「どの辺りまで進んだ?」

「すみません、まだ半分以上あります」

「……何をやっているんだ。犯人の音声を再生するぞ。『キャハハハッ!!なーんか大変そうだねぇ。仕方ないからもっと簡単な解除方法ーーは、ふたり以上いないと難しいか。今回は特別に時間、延ばしてあげようか?クイズだよ。答えを入力できたら、時間のびるけど、もし間違えたら一気に1時間、減るから気をつけてね。いくよぉ~~。答えはカンタンだよ。きみたちの好きな果物の名前は?もう一度言うけど、答えはカンタンだよ~~。じゃあね~~』……ということだが、分かるか?

あたしは作業を続けながら答えた。

「まず、始めにそれ、問題文がおかしいですね。こっちはひとり、って伝えてあるのに『きみたち』って。それに人の好みなんて人それぞれだから、ひとつになんて纏まる訳ないですし。となると答えはひとつですけど――」

「一応、確認しておく。分かったんだな」

「この流れだと、答えは『カンタン』それしかないですね」

作業を中断してパスワードを打ち込む。

「入れましたけど、確かリターンはできな……あっ」

「どうしたっ!!」

「パスワード入力しただけで、1時間、増えました」

電話の向こうでは歓声が上がっているようだけれど、

(これでもギリギリな気がする)

「それで、犯人はどうなったんです?

何となく、分かっていることを聞いてみた。

「すまない。逃げられたよ。向こうも分かっていたらしい。公衆電話に再生機をセットした時点で逃走された」

「そうですか」

(そんな気はしていたけれど)

ずっと作業をしていたせいで、腰とか太ももとか痛くなってきた。

(しびれる)

立ち上がって伸びをする。

(何でこんなことになっちゃったんだろ)

少しの間、ひとりで考えたかっただけなのに。

「できそうか?」

「分かりません。でもやるしかないですし」

それじゃあ、と切ろうとすると電話の向こうから慌てたような声がした。

「だから待ちなさい!!どうしてさっきから切ろうとするんだっ!!」

「だいたいの状況は把握できましたし、そろそろスマホの電池が少なくなってしましたし、これ以上話していたら、ゼロのお兄さんにお説教、貰いそうなので」

「なっ、」

「じゃ、失礼します」

通話終了。

 

 

 

(悪いことした気もしないでもないけれど、こんな時にまともなテンション保てる人がいたら、見てみたい)

ふう、と息をついて作業開始。

量って乗せて、掻き出して……

(――ん?)

何かが、心の琴線に触れた。

(何?この既視感?)

どこか、遠い過去でこれと同じような場面を見たような気がした。

でも、それは具体的な形にはならなかった。なぜなら、

(うわ、手が震えてきた。何、これ)

同時にお腹に力が入らなくなり、倒れそうになる。

(マズくないかな、これ)

鳴りっ放しのスマホを再びON

「できる限り通話は――」

「えっとすみません。急に手が震えてきて」

「――ちょっと待て。きみ、お昼は食べたのか?」

「食べ、ないです。だって電車降り、た」

「新幹線じゃないのかっ!?」

「途中、乗り換え、て」

「低血糖だっ!!何か口にできるものは、聞こえているか!!

声が遠くに聞こえる。

(何かあったかな)

力が入らないから、姿勢を変えるだけで精一杯だ。

震える指でバックを開けると、『快速』でおばあちゃんに貰った飴が出てきた。

(力が出ない)

何度も挑戦して飴を取り出し、口に含んだ。

そのまま、床へ倒れ込んでしまう。

(ここまで、かな)

それは少し情けないな、と口のなかで飴を転がしていると、少しずつ感覚が戻ってきた。

「――っ!!」

何とか起き上がってスマホを取る。

(何の騒ぎ?)

「おい!!聞こえているかっ!!」

「聞こえてます。さっき、『快速』でおばあさんに貰った飴嘗めたので、何とかなりそうです」

「そうか」

(何だろう?この疲弊しているような雰囲気)

「それじゃ、作業戻ります」

ありがとうございました、と切ろうとしたら、

「だから、待ちなさい!!」

「なぜですか?ここにはあたしひとりしか居ないんですけど。話している時間も惜しいと思いません?それと早く、ドアの前にいる人達、退避させて下さいね」

「だから、待て!」

「……お説教ですか」

「お説教はナシだから電話を――」

「ホントですか?」

「もちろんだ」

(『公安』さんのもちろん、ってどこまで信じられるんだろう?)

「それじゃあ、何か大切なものに誓って下さい」

それならいいですよ。

と続けると沈黙が落ちた。

(やっぱり無理か)

「……分かったよ。僕の大切なモノは」

(うん、うん)

「――この国さ!!」

(ここできますか、その台詞)

「何ですか、その模範解答」

すると笑みを多分に含んだ声で、

「お気に召したかな」

(分かってて、やってる!!可愛くないっ!!)

「もう!いいです!!集中するから、切りますよっ!!

「あ、こら――」

即座に通話終了(当然です)。

 

 

(せめて愛犬のハロのことでも言うかと思ったのに)

こんな時でも『公安』な安室さんに、何だか悔しいものを感じていると、

「……え?」

なぜか涙が溢れてきた。

(どうして)

心の奥を探して、分かった。

『園子』が泣いている。

あたしの意思とは関係なく言葉が零れ落ちた。

「真、さん」

(ごめん、園子。やっぱり貴女、真さんのこと――」

「ごめん、ね」

涙が、止まらない。

仕方がないので一旦、感情に任せて流れるままにする。

ひとしきり泣いてから、気合いを入れ直し、作業開始。

掻き出して量って、小麦粉を量って乗せて――

そのうち飴の効力が薄れてきたみたいだった。

(マズイな)

もう飴はない。

タイマーは26分。

残りの爆薬は、二〇〇㌘、といったところか。

(確か、人ひとりが吹き飛ぶのは一〇〇㌘だったっけ)

まずいなあ、と目を転じると、『快速』に乗る前に購入した水があった。

(空きっ腹に水、って良くない、って言うけど、この際)

また力が入らなくなってきた指でキャップを開け、持ち上げようとしたところで、それが倒れた。

「――あっ」

幸いなことに解体中の爆弾に直撃はしなかったけれど、『説明書』はぐっしょり濡れてーー

「……え?」

 

 

 

「たった今、もうひとつの解除方法見つけました。これから取り掛かりますが、今度こそ、ドアの前にいる人達、逃がして下さいね。多分、間違ったら爆発すると思うので」

「なんだとっ!?」

「そういう訳なので多少、おかしな音してもドア、開けようとしちゃダメですよ」

「おい!!」

スマホを切って、先ほど見付けた工具箱を開ける。

(何で気が付かなかったんだろう)

クリームの蓋を開けて爆薬の包みの底にすり込む。

(これって昔、読んだ『アレ』だ)

定規を取り出し、包みの下へ滑り込ませる。

ぐっしょりと濡れた『説明書』を確認。

(水に濡れると文字が浮き出てくる、って)

どこのスパイ小説だ、と突っ込みたくなってしまう。

(えと、爆薬を外せば飛び出す、っていうピンは……)

コツン、と何かが定規に当たった。

(これか)

瞬間接着剤で定規を固定。

ドライヤー(ご丁寧にも延長コード付き)で乾かす。

爆薬を固定していたベルトにワニ口クリップのコードを取り付け、ベルトを切断。

(図も描いてあって助かった)

文章だけでは咄嗟にできなかったと思う。

これでベルトが長くなった。

そうっと爆薬の包みを持ち上げる。

(次は信管を……)

きっとこの辺りでもうひとり要る、ということだったのだろう。

あたしは慎重に爆薬の包みを床に置いた。

(コードの長さ、ぎりぎり)

工具箱に入っていた信管を取り付け、マニキュアで絶縁。

(よし、ここまではOK)

後は、こっちのコードを――

もう一度、水浸しの説明書を確認する。

ここまでの工程で爆発しなかったのだから、正しい道のりを来ていると思いたいのだけれど)

(少し、怖い)

今、あたしはひとりだ。

隣りにいて意見を言ってくれる人も、大丈夫だと励ましてくれる人もいない。

タイマーはあと残り3分。

(もしかしたら、これが最後かも)

スマホを通話ONにする。

「あとひとつ、コードを切ればいいみたいですけど、正直どうなるのか、見当もつかないので、皆さんが避難したかどうかだけ、教えて下さい」

「……誰もそこから動いてはいないよ」

(あれ?声が違う)

「青葉刑事さんですか?」

「ああ、そうだ。きみのいうところの『ゼロのお兄さん』は――」

すると、ドアの向こうから怒鳴り声がした。

「きみは一体何を考えているんだっ!!この状況でここを離れる警察官がいるとでもっ!?」

(うわあ、怒り全開、って感じ何ですけど)

「あの、そんなに怒らないでくれませんか」

「怒ってない。呆れているだけだ」

(余計、怖い)

 

「何か、随分ムキになりますね。ひょっとして――」

あたしはわざとらしく間を取った。

「どなたか、こういう状況に追いやられたことでもあるんですか?」

(まあセオリー通りなら、『あたしのこと、好きなんですか?』なんだろうけど、さすがにそれはちょっとなあ)

「……友人がふたり、巻き込まれたよ」

(思い出させてすみません)

「じゃあ、向こうで会ったら、何か伝えておきましょうか?」

「縁起でもないことを言うなっ!!」

タイマーは残り、1分。

あたしはダメ元で外に声を掛けた。

「あの、そろそろ切るので避難――」

「無駄口叩いてないで、さっさとやりなさい」

(分かりましたよ)

あたしは目を瞑って、手に力を込めた。

 

 

 

そぉっと目を開けると、先ほどと変わらない光景が目に入った。

(タイマーは、あ、もう『ゼロ』になってる)

一気に力が抜ける。

(成功、したのかな。実感ないや)

しばらくすると、ドアを激しく叩く音が聞こえてきた。

(え!?ドアがへこんだっ!?)

あっけに取られて見ていると、ドアがひしゃげて外れた。

「生きてるかっ!?」

「あ、は――」

「何でこんな単純な手に引っ掛かるんだっ!?大体、こんな場所で子供の声がするはずないだろう!?」

怒鳴りながら腕、掴むの止めて下さい。

(スイマセン……メッチャ痛いんで離してほしいんですけど、って何か、周りの皆が視線、逸らしているような気がするの、気のせいですか?)

あたしが『ゼロのお兄さん』に抱きかかえられたまま(痛いし、恥ずかしいんで誰か……皆さん、無視ですか、そうですか)そんなことを思っていると、

「キャハハハ、今回はやられちゃったなあ。まさか、『アレ』を知っている子がいるとはね。『砂の薔薇(デザート・ローズ)』知っているんだね。となると、ボクはグリフォンかなあ?でも、グリフォンはやられちゃったしね。よし、今日からボクはネオ・グリフォン、にしよう。よろしくね。かわいい薔薇さん。それから、特別ボーナスだよ。いいこと、教えてあげる。ボクの性別は『男』だよ。そして、とーっても頑張った泣き虫の薔薇さん、大サービスだ。ボクの血液型は『AB』だよ。じゃあ、また、ね~~」

そこまで告げると、人形から軽い爆発音がした。

「ひゃっ」

「あ、おいっ!」

どうやらそこまでがあたしの限界だったらしく、あたしはそのまま気絶してしまった。

 

 

 

 

砂の薔薇(デザート・ローズ)

C.A.T(カウンター・アタック・テロリズム)に属する隊員(作品では主に女性の活躍が描かれる)達とテロリスト達との攻防を描いた漫画で、昔、よく読んでいた。

ヒロインのマリーは、空港に仕掛けられた爆弾で夫と子を喪い、胸に薔薇の傷を負う。

アクションシーンはもとより、テロに対抗する手段が実に上手く、例の『爆弾』の処理も何度も唸りながら読んだものだ。

(この内容なら、小説でもいける)

ただ問題は――

この『砂の薔薇』は『コナン』の世界には存在しないはずだ。

(あの『ネオ・グリフォン』って、まさか――)

そこまで思考を巡らせ、ぞくり、としたものを感じたとき、ノックの音がした。

「どうぞ」

病室の引き戸を開けて来たのは、現在最も顔を会わせたくないリスト、ベスト3に入る、『公安のお兄さん』だった。

(こうして、無事に帰って来られたのはいいけど、何か、気まずいんですけど)

爆弾解体中のやり取りのアレとか、ソレとか思い返していると、

「気がついたか」

(平常運転っ!?まさかの平常運転!?)

「残念だが、お説教は後回しだ」

きみには護衛が付くことになった。

「はい?」

「他は片がついたが、今回の犯人は捕まっていないどころか、きみに執着しているようだからな」

そして、『C.A.T』についても教えてくれた。

何と、『C.A.T』は実在するそうだ。

しかも、『マリー』もいるとのこと(!)。

が、『マリー』と『グリフォン』の対決は二十年以上も前のことで、その頃を知る、ほとんどの者は退職してしまっている。

それから、『砂の薔薇』という言葉は『マリー』やC.A.T関連では見つからなかったらしい。

(ということは、やっぱり、その『ネオ・グリフォン』は――あたしと同じ転生者……)

あたしは軽く頭を振って、意識を切り替えた。

「護衛ですか、でもそれ、まだ必要ないかもしれません」

「なぜ、そう思う?」

(うわあ、怒ってらっしゃる)

「この犯人、事前の準備が物凄いですし、やるにしても相当な準備期間があると思います。そう言えば、今回使われた爆薬って盗まれたものなんですか?

あたしの質問のイミを正確に読み取った『ゼロのお兄さん』が答えをくれた。

「火薬工場から盗まれたものらしい。今回使われた量と一致したよ」

「それなら、すぐに次はなさそうですね」

爆薬の管理は大抵どこでもキチンとしているはずなので、盗むにしても相当の手間がかかるはずだ。

と、そこであたしは少し前の台詞に引っ掛かりを覚えた。

「他は、ってことは東都駅や京都駅、博多駅の事件は――」

「どれも爆発せずに済んだよ」

「良かった」

「全く。今回は探偵達が大活躍だな」

「探偵達?」

(あれ、何だかイヤな予感)

「ここ、仙台は『推理クイーン』の園子さ……どうした?」

(いやああああっっ!!!何やってんの、園子~~!!)

そう言えばそんなこともあったわ、と頭の隅っこで冷静な自分が呟いた。

「それ、忘れて下さい」

せっかく点滴で補充した栄養分がなくなるわ……。

「いいのかい?調書にも記入しようかと」

「止めて下さい!」

(ううっ、必死に頼んでるのに、楽しそうな人がいるよ)

「それで、他は」

何とか促すと、

「東都駅は毛利先生とコナンくん、京都駅は西の名探偵こと服部平次くん。そして、博多駅は――」

その名前が聞こえて来たとき、あたしは幻聴かと思った。

「園子さん?」

「すみません。博多駅は誰ですか」

返答が遠く聞こえる。

 

 

『博多駅は、越水七槻――』

 

 

 

 




読了、ありがとうございます\(^o^)/
おかしいな、次は『執行人』のハズだったのに(^_^;)
そう言えばもうすぐですね(^o^)
(恥ずかしくて予約、してないので無事に購入できるか、ちょっと不安。だって、こんな田舎で予約したら、目立つんだよ~~(`;ω;´)


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