鈴木園子はゼロの夢を見るか   作:ルナ子

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一応、原作チェックはしてますが、越水さんの設定、原作だけでは分からない箇所がありまして、……捏造タグ入れました。
今回の注意――女子高のノリが入ってます。ある人が若返り(この表現でいいのか?)ます。そういうのが苦手な方はブラウザバックをおすすめしますm(_ _)m
注※表記について『警告』が来たので、該当すると思われる箇所を修正しましたm(_ _)m内容は、ほぼ同じですのでご注意をm(_ _)m





南の女子『高校生』探偵

「まったく、何がごくろうさん、なんだか」

ぶつぶつ言いながら上がり框に醤油のボトルが数本入った袋を置く。

(やっぱり残りは宅配にしておいて良かった)

ところ変われば品変わる。

「まさか東都(こっち)と博多(あっち)でこんなに味が変わるとはなあ」

今回思わぬ里帰りをすることになったのは、こちらへ来たばかりの後輩が、あまりの味の違いにテンパっていたのを見かねて分けてあげて、ついでに何品か作ってあげていたら、あっという間に在庫が尽きてしまったのだった。

(こっちの醤油がこんなにからいとはなあ)

故郷では柔らかい味付けが主だったため、はっきりした味の料理は違和感があった。

しかし流石にそれを言うとカドが立つので、当初の予定よりも自炊が増えてしまった。

(料理の腕は上達したと思うけど、何か違う)

 

ワンルームの程よい位に片付いていて、棚やローテーブルにある教科書等が、大学生であることを思わせる以外は、これといった特徴のない部屋だった。

(醤油、買いすぎちゃったかな)

もうすぐ実行するある『計画』のことを思うと、どう見ても過剰だった。

(でも里帰りまでしてこれだけ、というのも怪しまれるし)

ふっ、と博多駅で会った刑事を思い浮かべる。

(何ていったっけ?ああ、そうだ、吉永さんだ。あのヒトだったら、分からないよなあ)

先日、博多駅で起きた『爆弾』騒ぎのことを思い起こす。

全国4か所同時に起きた『爆弾』事件は世間の耳目を大いに集めていた。

もちろん、博多駅にも警察はもとより報道陣も大勢押し寄せていた。

そんな彼らが目にしたのは、少しばかり異様な光景だった。

「何かね、あれ」

「パフォーマンス?」

「あほぬかせ、ダイナマイト、体に巻き付けたパフォーマンスがあるものかっ!!

新幹線改札口の前に奇妙な風体の七人の男達がいた。

彼らは皆、帽子、サングラス、マスク、手袋で身体の特徴を隠し、服も黒の上下で統一、体には前述のとおりダイナマイトを巻き付け、各々が1枚ずつ違う、記号のようなモノが描かれたスケッチブックを持っていた。

彼らがそこへ並ぶのとほとんど同時になされた犯行声明はこうだ。

『我々、シリウスの御使いは、この国のリセットを望む。まずは交通網を遮断し、それぞれの地方産物はそれぞれの地方で全て消費すること。人材もしかり。次は空を狙う。

二時間後に爆破させる。

だが、我々とて人死は望まない。

避難させるなら今のうちだ。

それともうひとつ、これだけでは不公平だろうからヒントをやろう。

我々の中にいるリーダーを見つけられたら、今回だけは見逃してやるとしよう。

三回、チャンスをやろう。

だだし、間違える度に爆破予定時間を30分繰り上げるものとする』

記号は、太陽、月、火、水、木、金、土を表すものだった。

そして、馬鹿にしたように彼らはパフォーマンスを始めた。

刑事さん達は戸惑っていたようだが、先の記号が『天体』を示すものだと気づけば結論は早かった。

(これ、『日食』と『月食』だよ)

吉永刑事にそう伝えると、『よっしゃ、やったるわ!』と意気込んだのはいいけど、なぜか『太陽』の人に話しかけてしまった。

(ちょっ、それ違っ、)

ひと足遅く、30分のペナルティ。

「……吉永刑事。シリウスはギリシャ神話ですよ。つまり、この場合の『リーダー』は、全能神ゼウスを表す『ジュピター』――木星です」

私がそう告げると、『木』を持っていた男が逃走を始めた。

(え?犯行声明は?)

あっけに取られたのが悪かったのかもしれない。

それとも屈強な刑事さん達の間で小柄な、どうにでもできそうな風に見えたのだろう。

こちらへ一直線に向かって来たので合気道で一気に沈めてやった。

「確保――!!」

男が何が喚いているが、うーん、小物感。

 

その後の取り調べで、シリウスの御使いなどというグループは存在せず、ただ、チャットで知り合った仲間て盛り上がって、『同時にやったら面白いじゃん』という、ただそれだけのためにこんな人騒がせな事件を起こしたらしい。

(人間、クサってる)

ダイナマイトは偽物だった。

何か違和感を感じていたからそうじゃないかと思ってたんだけど、さすがに危険物を持った相手を投げるのは考えが足りないとかお小言を食らってしまった。

(大丈夫だと思ったんだけど。ダイナマイトって割には彼らの所作に余裕があったから)

普通、そんなものを体に巻いていたら、もっとぴりぴりした雰囲気になるだろうし、もしうっかり爆発させてしまったら、という焦燥感とかも感じられないのは不自然だった。

これがひとりやふたりならまだいいが、七人が七人とも、大分時間が経過しても、余裕がある、というのはどう考えてもおかしい。

さすがにそこまで話してしまったら、今度はお小言どころでは済まなくなるので黙っておいたが。

 

 

(――愛理)

高卒で就職した友人は、すぐに県外へ行ってしまったけれど、

『見て見て!このメイド服、かわいいでしょう!』

と、すぐに写メを送ってくれた。

始めは、住み込みの仕事なんて内気なあの子に勤まるのかと思っていたけれど、周りの人達とも良好な関係を築いているようで、安心していたのに。

『変な喋り方の高校生探偵に疑われているの!助けて!七槻!』

その言葉が最期だった。

彼女が仕えていたお嬢様は半年前に自殺していた。

それが『自殺』に間違いないことは私も確認していたのに、

(警察の取り調べ!?『密室殺人』を暴いた高校生探偵ですって!?)

四国の通称『ラベンダー屋敷』と呼ばれるそこへ駆けつけ、状況を確認すると以前にはなかった『細工』が見つかった。

『窓枠』があたかもネジできっちり留められているかのように見せかけた仕掛けが。

(嘘だ。私が前に調べた時にはこんなモノはなかった)

話を聞くと、すでに自殺で済んでいたこの一件を、ふらりと現れた高校生探偵が『密室殺人だ』と騒ぎ立てたという。

普通なら警察がこんな一介の高校生の言葉を真に受けるはずがなかった。

が、困ったことに彼には実績とコネがあったようで、あれよあれよという間に、たまたまお嬢様の近くにいた愛理に殺人容疑が掛けられ――

 

(何で、自殺なんてしたの)

その前にもう少し相談してくれたら。

(どうして、私を待てなかったの)

幾つもの想いが捩れて絡まり、やがてどす黒い塊になった。

それは決して探偵を名乗る者が持つべきものではなかったが、もう、止められなかった。

気がついたら、貯金を全て下ろし、離れ小島のコテージを借り入れ、愛理を苦しめた『高校生探偵』を誘き寄せるエサ、『探偵甲子園』の筋書きを描いていた。

(後は、東、西、北の『高校生探偵』達に招待状を出して……他にも、まだいたわね)

もしかしたら愛理を助けることができたかもしれない人。

当時、屋敷にいた執事。

彼はお嬢様が情緒不安定で何度も自殺未遂を起こしていたことを知っていたはずだ。

(どうして、愛理を助けてくれなかった!?)

彼がそのことを証言すれば、愛理は助かったかもしれない。

そして、もうひとり。

私が調査を終えて帰った後に、清掃業者を装ってやって来た男。

この男がよりにもよって、お嬢様が自殺した部屋の窓におかしな細工をしたことで話がややこしくなってしまった。

後で調べたらこの男には何件か窃盗の前科があり、その経緯から、きっと後日、この屋敷へ盗みに入ろうと目論んでいたに違いない。

 

『変な喋り方をする高校生探偵』

『お嬢様の自殺未遂を隠していた執事』

『窓に細工をした窃盗男』

 

(許さない!絶対に!)

 

だが、私がこれらのことを公表したとして、彼らはそう大した罪には問われないだろう。

高校生探偵は、間違った推理、ということで多少、プライドが傷つくだろうが、おそらく叱責程度で終わるだろうし、残りのふたりもそうだ。

 

(どうして!?愛理はあなた達のせいで命を落としたのにっ!!)

 

それならば、彼らにもそれなりの責任を取ってもらわねば。

 

(目には目を、……命には命で!!)

 

 

 

(こんなとこかな)

食事の支度が整ったところで、先ほどテーブルに放った郵便物が目に留まった。

(ーーん?)

ひときわ目立つ白い上質紙の封筒。

(何だろう?誰か結婚でもしたのかな)

のんびりした気分は差出人を見た瞬間、吹き飛んだ。

「日売TV『女子高校生探偵選手権』制作委員会!?

慌てて封を切り、中に目を通す。

 

 

『日々、ご清栄のことと存じ上げます。

 

さて、この度、日売TVでは『女子高校生探偵選手権』なるものを開催させていただきたく、南の代表には貴女が選ばれましたことをご報告させていただきます。

 

つきましては、別紙の要綱をご確認の上、ぜひともご参加いただきましよう、お願い申し上げます』

 

 

 

(どういうこと!?)

そもそも私は『高校生』ではない。

しかし、読み進めるにつれ、鳥肌がたった。

『女子高校生探偵選手権』――それは名前こそ違えど、件(くだん)の『おかしな喋り方の高校生探偵』を誘き寄せるために、私が画策していた内容と非常によく似ていたからだ。

(私の計画は、離れ小島を舞台にしてラベンダー屋敷の密室トリック(笑わせてくれる)を問題に出してあぶり出す、というものだけど)

まさかそこまでは、と別紙を開いて絶句。

「……なに、これ」

待ち合わせ場所はとある埠頭。

そして問題の舞台は――

「とある小島のコテージ、ってどういうことよっ!?

その時、封筒にまだ何か入っていることに気づいた。

何気なく取り出した『それ』が視界に入った瞬間、私は笑い出してしまった。

「はは、……なによ、これ」

中に入っていたのは――ラベンダーの押し花。

「あはははは!!面白いじゃない!!一体どこの誰がこの私の、愛理への想いを邪魔しようとしているのか!!見に行ってやろうじゃないのっ!!

 

 

『南の女子高校生探偵』越水七槻として。

 

 

 

 

数日後――

 

 

(ここか)

待ち合わせの埠頭に着いた私は辺りを見回していた。

一旦、この大きな客船の前で待ち合わせ、という流れも私自身が立てた計画と酷似していてイヤになる。

(一体、どこの誰よ)

「すみません、『女子高校生探偵選手権』って、あっ」

おどおどした声に振り返ると、ボブカットに黒髪の、カチューシャをした可愛らしい、十代くらいの少女がいた。

(高校生か、ということは――)

この感じだとまた男性に間違われたな、と思う。

背が高いのもあるが、普段からボーイッシュな格好が多いのでこういった反応は慣れていた。

「うん。ここであってるよ。ぼく、一応女子だから」

と、サングラスとヘッドホンを外して笑みを浮かべると、彼女はハッとしたように、

「ごめんなさい。とってもカッコよく……あ、その」

わたわたしている様子は何かの小動物を連想させた。

(こういう子もいるんだよな。神様、どうして私もこんな風に……いっても無駄か)

いもしない神様(もしいたら、あんなコトは起きなかっただろう)に愚痴っていると、彼女が、ん?とこちらを伺った。

「何かな?」

「あ、……もしかして、ピアスですか?」

後半は物凄い小声で言われた。

(いけない。ヘッドホン、直すの忘れてた)

自分がかつて通っていた高校は、規則が厳しく、もちろんピアスも禁止だった。

そこを突っ込まれては敵わないので、大きめのヘッドホンで隠していたのに。

(しくったなあ)

思わず半目になりかけると、

「あの、ちょっといいですか」

「何かな」

すると彼女は内緒話をするようにこちらへ顔を近付けて、

「あの、ピアスの穴って、洋服に付いてるタグの、プラスチックの紐みたいなとこ切ったの、使えば、服装検査のとき、凌げるって聞いたんですけど」

その話って本当ですか?

「はあ!?

(なに、それ)

と返そうとして彼女の顔を見ると、本気で言っているようだ。

「く、あははっ!!きみ、面白いね!!」

(何だろう、頭、なでなでしたい気分だ)

「ふぇっ!?」

「ぼくは越水七槻。よろしくね」

「あたしは……住吉(すみよし)園子です。よろしくお願いします。越水さん」

(ん?今の間は何だ?ま、いいか)

「七槻でいいよ。園子ちゃん」

「え、いえ、その」

(あれ、何、この反応。あんまり人慣れしてないっぽい?女子高なのかな?)

「やっぱり初対面ですし」

「七槻でいいってば」

「あの」

「七槻」

「……七槻さん」

(へえ、これだけで真っ赤って、どこのお嬢様?)

まあ、イヤではないかな、と思っていると、

「やあ、キミ達も名探偵?」

(ん?何か変わったのが来たな)

ショートの黒髪の人物は、パッと見、同じ年頃の少年にしか見えないが、観察すれば分かる。

「こんにちは。その質問にはそうだよ、と答えておくよ。よろしくね。『ライバル』さん」

この歩き方と骨格からして、『彼女』だろう。

「言うねぇ。ボクは瀬野真純。東の代表で選ばれたんだ」

「ぼくは越水七槻。南の代表だよ」

と、そこでふたり分の視線を集めた園子ちゃんが慌てて頭を下げた。

「あたしは北の代表っ、すみません、で来ました。住吉園子です!よろしくお願いします!

「よろしく、七槻君、園子君。ボクのことは真純でいいよ」

「それじゃあよろしく。真純ちゃん」

「へ?『ちゃん』なの?

こちらから見れば充分『ちゃん』なんだけどなあ。

「そうだよね。園子ちゃん」

わざとらしく同意を求めると、園子ちゃんは難しい顔をしていた。

「園子ちゃん?」

「あ、よろしくお願いします。瀬野さ、」

「真純」

なぜか些か食いぎみに真澄ちゃんが、園子ちゃんに詰め寄った。

「えっ!?えと、あの……」

「だから真純でいいってばッ」

「え、」

「言ってごらん、ま・す・み!」

「うっ、……ま、」

「んん?」

(楽しそうだな、真純ちゃん。それに私のときより悩んでる?園子ちゃん?)

呆気に取られて見ていると、園子ちゃんが泣きついてきた。

「ううっ、七槻さん~~」

「あ、こら!何で七槻君だけ!」

(うーん、女子高のノリだなあ)

後ろに隠れた園子ちゃんを庇うように前へ出る。

「まあまあ。園子ちゃんにはいきなり名前呼びは、ハードル高いみたいだよ」

「じゃあ何で七槻君は違うのさっ!」

(あ、やぶヘビ)

「だいたい園子君もひどいよっ!ボクがど……」

そこまで言って急に咳込んだ。風邪?

「大丈夫?」

「ああ。ボクも真純って呼んでね」

じゃないと承知しないぞ。

(なんで、涙目?)

これがほんとに男と女なら、一目惚れか、と思うところだけど。

いつまでもこちらを睨み付けられていても困るので、

「園子ちゃん、ほら」

できる限り、やさしい声音で促すと、

「うっ、……真純、さん」

下から見上げるように(天然か?)言う姿は小動物を連想させた。

「やったあっ!!」

「ひゃあっ!」

余程嬉しかったのか、園子ちゃんをしっかと抱き締めた。

(うん、女子高だな)

内心頷いていると、埠頭の向こうに人影が見えた。

(ん?いよいよ4番目の名探偵かな)

「え?」

「どしたのさ?」

思わず声が出ていたらしい。

「いや、あれね。どう見ても――」

そう言って向こうを顔で示すと、ふたりもそちらを見て、あれ、という表情になった。

向こうから歩いて来たのは、ブレザーの制服を身に付けた、どうみても男性だったのだから。

「今日、女子高校生だけだよね」

「そう聞いてますけど」

「ボクも」

上背もあるし、骨格や歩き方を見なくとも、充分男性と分かる。

(白っぽい金髪に、眼鏡だからこの距離だと分かり辛いけれど多分、色彩は薄そうだな。そして焼けた肌)

ハーフかクォーターの恩恵か、随分と整った顔立ちをしているようだ。

「この辺りで他の撮影でもあったかな?」

「さあ」

3人で訝しんでいると、話題の人物が目の前に来た。

「こんにちは。日売TVの『女子高校生探偵選手権』の待ち合わせ場所はこちらでよろしいでしょうか?

(ほお。イケメンさんは声もイケメ……じゃなくて、このヒト、今なんて言った?)

「「はぁっ!?」」

「あの、確かにそうですけど」

園子ちゃんはそこまで言ってまた私の後ろに隠れてしまった。

皆の不審そうな視線をまともに集めたイケメンさんは、慌てたように首を振った。

「いえいえ、違いますよ。僕は西の代表の西園沙織さんの助手をしております。安藤透といいます」

そう言って頭を下げた仕草も実に様になっている。

(なんとなく、お嬢様と執事を連想させるな)

「それで肝心のお嬢様はどこさ?」

真純ちゃんが辺りを見回すと、園子ちゃんもそっと顔を覗かせた。

すると安藤さんは申し訳なさそうに、

「それがですね。沙織お嬢様は、急に事件のご依頼がありまして」

来られなくなりました。

「「ええ~~っ!!」」

安藤さんがそう続けるや否やふたりが叫んだ。

(気持ちは分かるけど、驚きすぎじゃないかな)

 

 

 

その後来た日売TVの奥村さんに案内されて島へ向かうことになった。

西の代表が来られなくなり、どうするのかなと思っていたら安藤くんが衛星電話で本人に連絡を取り、それで凌ぐことになったようだ。

「そんなんでいいのかなあ」

真純ちゃんがぼやくと、

「すみません」

安藤くんが頭を下げた。

「あ、いやいや。そういうイミじゃなくてさ」

(しょうがないな)

「いいんじゃない?安藤さんならテレビ受けしそうだしね、園子ちゃん」

そう言いながら隣を見ると、園子ちゃんは何だか、ぼんやりとした表情をしていた。

「園子ちゃん?」

「はいっ!?あ、すみません。何ですか」

「ん、安藤くんはイケメンさんだね、って話してたんだ」

「は?ああ、そうですね」

(ん?何、この反応?まさか、男の子にキョーミないとか?)

訝しんでいると、真純ちゃんが安藤くんに話しかけているのが聞こえた。

「ね、その『お嬢様』ってどんな人なのさ?」

「そうですねぇ。普段はおっとりしているのですが、ひとたびコトを決めると一直線、といいますか」

よく、周りを巻き込むので少々、困るときもありますねぇ。

(ふうん)

聞こえてくる言葉に頷いていると、

「園子ちゃん、どうしたの?具合でも悪い?

「いえ、大丈夫です」

(船酔いかな。やっぱり小型船舶は揺れるから)

 

 

「まだ時間もあることだし、どうかな?ここはお互い解決済みの事件の話をするというのは?」

先ほどから引っ掛かっていたことがある。

(彼らは本当に探偵なのか?)

あまり名を聞いたこともないし、『探偵』にはある程度身を守る術も必要になる。

(なーんか、誰も探偵っぽくないんだよね)

特に園子ちゃん。

彼女からは全く事件の匂いがしない。

(今回の黒幕は何を考えてるんだ?)

こんな素人を入れたら、バレバレじゃないか。

「ああ、もちろんオフレコでね。ここで聞いた話は絶対に漏らさないことが条件だよ」

どうかな、と言ってみるとしばらくの沈黙のあと、

「そうですね、あまり血生臭いモノでなければよしとしましょうか」

「安藤くん、何かそれ、保護者っぽいね」

すると安藤くんは眼鏡を直しながら(ダテ眼鏡かな?ああ、その青い眼を隠すためか)、しれっと答えた。

「お嬢様のお相手をしていると、そんな気分になることがよくあります」

「へえ、そのお嬢様って結構じゃじゃ馬?」

「じゃじゃ馬というか、手のかかるといいますか」

(真純ちゃんと安藤くん、話が弾むなあ)

こういうのをウマが合う、って言うんだろうな、と隣を見ると、何だか園子ちゃんの顔色が悪い。

「園子ちゃん、大丈夫?」

甲板に出てようか、と誘うと、

「大丈夫です。それより、その話、あたしから始めてもいいですか?」

「いいけど」

「園子君、一番でいいの?」

園子ちゃんがこくん、と頷くのを確認して安藤くんが、

「それでは、住吉さんが一番ということでいいですか?

残りの皆が頷き、園子ちゃんが話し出す。

 

「これは、ある女子高で起きた事件で――」

(やっぱり女子高なんだ)

殺害の動機は復讐。犯人は自殺。

重めの事件(事件にそういうのはないけど)だったせいか、場の空気まで重く……ん?

(安藤くん?なんですかね、その厳しい表情。まるで刑事さんみたいですよ)

思わず突っ込みたくなるほど、その身に纏う雰囲気が変わっていた。

彼の視線の先には、俯き加減の園子ちゃん。

(なあるほど)

意図するところが分かり、妙にすっきりした気分になる。

(彼はボディーガードか)

おそらく欠席したという、西の女子高生探偵はダミーでこちらが本物。

あの厳しい表情は、きっと彼女が一番深く関わった事件を話してしまっただからだろう。

(ということは自殺したのは、彼女の親友……ん?)

頭の中でピースが集まって行く。

(自殺した親友。動機は復讐。これは私への警告か!!)

園子ちゃんの顔色は相変わらず、悪い。

(身を切ってこちらを止めに来たか)

 

 

「もうすぐ着きますよ!」

甲板からの声に場はお開きとなった。

早速、上へあがり、景色を見ると島はだいぶ近いところにあった。

「あれかあ」

「やっと着いた」

めいめいに喋りだす皆を余所に、私は今回の黒幕(残念だよ、園子ちゃん)の背に声を出さずに告げた。

 

 

(もう遅い。これ位では私は止められないよ)

 

 

 

 




ご報告――『執行人』ゲット~~\(^o^)/
良かった~~!!こっそり買いに行ったから、目立たな……一番、ですか。そうですか(スルー希望(o;д;)o

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