砂糖は人類の宝? よし、お前は今日からオレの親友だ!   作:みーごれん

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別で書いてる話が遅々として進まないストレスで書いてしまいました。
そっちの方を待ってくださってる方、スミマセン!
ええ、そうです。スランプですこんちくしょう。


みたらし団子と落雁

「副団長~! 何処に居るんですか、副団長ォ~!」

「此処だよ、阿呆」

「痛ッ⁉」

 

 目と指先以外を全て隠した黒装束が大きく仰け反った。声音からそこそこの巨漢であることが分かるが、顎のあたりを擦りながら姿勢を直し、若干涙目になりながら新たな声の方を向く。

 

「いきなり酷いじゃないですか……」

「お前さんが間抜けなのが悪いんだ。んで、何だ?」

「団長がお呼びです」

 

 あからさまに不機嫌になった目の前の男が舌打ちした。切れ長で鋭い目つきが一層険悪に細められ、眉がグッと内に寄る。呼び掛けた男と同じく真っ黒な装束を纏っているが、彼は口元を隠していなかった。また、紙を生やしているものが付けるよう指示される黒布も今は付けておらず、やや長い髪を後ろでまとめて一本刺してある黒い珠簪が覗いている。

 現在どのような状況かというと、男が長椅子に彼愛用の枕を置いてごろりと横になり、その枕元にみたらし団子と熱々のほうじ茶が並んでいた。

 ――要するに休憩中だったのである。なんならこれからひと眠りしようという時に叩き起こされたのだから、不機嫌になるのは当然と言えた。

 

「ダリィな……だがポン太からの呼び出しか……無視するのは不味いし……チッ」

 

 殺気を駄々漏らしつつ彼が起き上がる。そして右手を伸ばし、団子を掴んだ。苛立たしげながらもゆっくりと味わってそれを口に入れ、咀嚼し、ほうじ茶で口の中を仄かな苦みで戻す。しかめっ面が次第に解け、何度もそれを繰り返している彼を見ながら、呼びに来た男が自分も団子が食べたいなと思い始めたころ――

 黒装束は、自分が何故ここにいるのかを思い出した。

 

『早 急 に ! 奴を連れて来い‼ ”一秒でも無駄にしたら殺す”と伝えろ‼』

 

 ダンダン右手を執務室の机に叩きつけていた団長の剣幕を思い出して、彼は身震いした。

 

「……えっと、呼びだしは――ヒィッ⁉」

 

 ビィ……ン……

 

 低い音と共に、彼の顔の真横を細い棒状の何かが通過し、壁に刺さった。恐る恐るそちらに目を向けると、先程副団長が食べ終わったみたらし団子の串が僅かに振動しながら尚も壁に刺さっている。

 

「砂糖食ってるときに仕事の話しすんじゃねえよ」

「い、今はほうじ茶飲んでるじゃないですかヒィィッ‼」

 

 今度は反対側に突き立てられた串を感じながら、彼は沈黙した。次に余計な事を口走れば、確実に三本目が自分の脳天へ直撃する。竹串を壁にめり込ませる力が如何程のモノか彼は知らないが、どうせ殺されるなら強面の副団長より端正な顔立ちの団長が良かった。

 

 ――父上、母上……先立つ不孝をお許しください……

 

 悟りきった微笑みを浮かべて目尻に薄っすら涙を浮かべる彼は、副団長に“え、何泣いてんのお前、キモ”と言われつつ空になった湯呑みを押しつけられて、ちょっと泣いたとか泣いてないとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「入りま~す」

「遅いッ‼」

 

 怒声と共にクナイが彼の方へ飛んできた。その持ち手にある穴に人差し指を突っ込んで止め、くるくると回す。

 

「ドーモ、スミマセンッシタ~」

「貴ッ様ァ……今日という今日は許さんぞッ」

 

 団長がかわいらしい顔に眉間を寄せて口の端をひくつかせながら彼を睨んできた。

 

 彼女の名は砕蜂(ソイフォン)。魂の故郷・尸魂界(ソウル・ソサエティ)に於いて上位に存在する死神や貴族の監視やら処刑(実質暗殺だが)を行う特殊部隊・隠密機動第一分隊、刑軍の統括軍団長様だ。端正でやや幼い顔立ち、黒髪は包帯っぽい何かで二束括られていて、髪の先には金色の輪が結ばれている。あれの意味は未だに不明だ。体系はまあ……彼の好みではない慎まし~い感じだとだけ明言しておく。性格は俗に言うツンデレという奴なんだろうか。部下にも自分にも厳しいが、なんか猫とか動物の前では緩み切った顔を晒していたりする。勿論激写した。高く売れるんだなこれが。八番隊舎に彼女の大ファンがいるので値段は鰻登りだ。

 ついでに言うとその団長殿の招集を半ば無視してダラダラ執務室に顔を出した男の名は――

 

躑躅守(ツツガモリ)! 貴様これで何度目の遅刻だ⁉ いい加減に――」

「三千弱っすね」

「ッ~~‼」

「あ、正確な数字っスか? 二千九百二十二回です。スゲー、丸八年じゃん。精進しよ」

 

 今度は何の突っ込みも無くクナイが飛んできた。殺す気満々の其れを、躑躅守は先程GETしたクナイでペンペンっと弾く。ダルそうに欠伸を噛み殺す彼に、休憩時間を返上して仕事をしていた彼女の机の上に合ったものを掴んで放った。

 一応擁護しておくと、砕蜂が昼休憩を返上して仕事をしていたのは彼女が仕事のできない女だからではない。彼女は護廷十三隊という、尸魂界に於ける最大の軍隊ともいえる集団の二番隊隊長――つまり頂点の内の一人を兼ねている。そして刑軍軍団長とは即ち隠密機動総司令も兼ねた激務であったから、任務開け&隊長職&隠密機動職の三コンボによって今日は徹夜コースだっただけなのである。

 そんな中、ついさっき部下が茶を入れてくれていた。こっそり茶菓子を出し、躑躅守(大馬鹿者)に指示だけ伝えてこっそりあるものを食べようとしていた。

 

「あっ」

「‼」

 

 そして先程の状況を思い出してほしい。懸命な読者諸君ならこの振りでお分かりだろう。彼女はうっかり、その()()()()()()()()()()()()()()を皿ごと躑躅守に放り投げてしまったのである。ほぼ直線の軌道を描いて、それ――落雁が宙を駆けた。

 

「ああっ!」

 

 ぱくっ

 

 そしてあろうことか、目の前のやる気ないだらけきった男の口に入ってしまった。落雁がクナイであれば即死であったが、現実とは残酷である。数瞬の沈黙の後、気まずそうに男が口を開く。

 

「スンマセン、団長……」

 

 何とも申し訳なさそうな顔だ。

 そんな顔が出来るなら遅刻の時点でやれと思いつつ、幾らか機嫌を直した彼女は溜息を吐きつつ答える。

 

「何だ貴様、やっと素直に謝る気に――」

「砂糖に申し訳ないっスけど、オレ、此処の店の落雁あんま好きじゃねえんスよね」

「~~~ッ、コロス‼」

 

 折角のお楽しみをそんな風に浪費してしまえば誰だってそうなる。

 でもこれだけは言わせてほしい。

 食べ物を粗末にしかけた時点で、彼女が悪いのだ。

 

 

 

 

 

 肩で息をしている砕蜂をめんどくさそうに躑躅守が眺めていた。

 

「で、要件って何スか? 一秒すら惜しんで来いとか言っておきながら、態々来たオレをこんな茶番に付き合わせてまで引き留めた要件って何ですか?」

「貴様、そこまで聞いておきながら遅刻してきたのか⁉ 万死にあた」

「いえ、どーせ団長ならそういう言い方するだろうなと思っただけっス。毎度毎度飽きませんねえ。真面目過ぎると胃かどっかに余計な穴が二つ三つ増えますよ? ただでさえ女は男より一個多いのに」

 

 顔を真っ赤にしてポン太が睨む。因みに“ポン太”とは躑躅守が勝手に付けた砕蜂の渾名だ。砕蜂(そいぽん)だからポン太。ポン太のポンは、ポンコツのポンだ。ぴったりだと思うのだが、本人の前でそう呼んだら螫殺されかけたので今は本人の居ない時にしか使っていない。

 

「~~~ッ、貴様ッ、後で覚えておけよッ‼」

「はーい。後で思い出すかもしれないんで今は忘れまーす。てか何を覚えるのかわかんねーや。あ、そうそう、落雁は寺島屋がお勧めっス。砂糖の上質さもさることながら、型がキレーなんですよね。適度な硬さで食べやすいし」

「何の話だッ⁉」

 

 閑話休題

 

 ゼーゼー肩で息をしているポン太は、鼻を鳴らしながら席に着いた。腕を組んで苛立たし気にこちらを睨んでくる。躑躅守からしたら、そのポーズはしない方が良いと思っている。だってあのポーズは、巨乳がやるからグッとくるのだ。無い胸を張られてもそそらない。彼に虚乳を愛でる趣味は無かった。

 

「護廷十三隊十三番隊無席、朽木ルキアという名は知っているだろう?」

「はいはい、知ってますよ。現世の呪文かなんかでしょ? ク・チキル・キア的な。そんな趣味あったんスね。オレ、オカルトは詳しくないんですけど」

「だから何の話だ⁉ 知らんのなら知らんと言わんか馬鹿者‼ 四大貴族の一角たる朽木家に養子として迎えられた死神だ! その朽木ルキアの処刑が決まった」

 

 へー。

 また処刑演舞かよ。だる。そんなん下っ端にやらせとけよ。

 ……ん? くちきるきあ……あー、()()

 

「はいはい、今日中で良いんスね。行ってきまーす」

「ちょっと待て。話は最後まで聞け」

「これ以上何スか? オレの昼休憩もう無ぇし、なんなら根回し諸々込みで残業コースなんスけどこれで天風堂のあんみつ食い損ねたら誰を責めればいいんスかこんなタイミングで俺を呼んだ団長か貴族殺す命出した四十六室かそんな事も出来ない部下か」

 

 一息に捲し立てた躑躅守の瞳は闇を写し取ったかのように昏い。一瞬ポン太がそれに怯んだように見えたが、咳を一つ着くと彼女は口を開いた。

 

「処刑は双極の丘にて今日より二十五日の後に実施される。色々と異例づくめだからな。不穏な動きをせぬものが居ないとは限らん。貴様にはその監視をしてもらいたい」

「はあ」

「貴様の担当は十番隊だ。とはいっても、実質見ておくのはそこの隊長及び副隊長で構わん。他はどうとでもなる」

 

 ふーん。

 十番隊って信用無いんだ。まー確かに、あの白い小獅子は直情熱血な感じだし、若気至っちゃいそうな感じするよね。分かる分かる。地下でジジイとババアしかいないと不安になっちゃうの分かるよ。でも何でオレ?

 

「……あ~、もしかしてそれって“二番隊への依頼”だったんじゃないんスか?」

 

 ポン太の眉が一瞬引き攣った。

 はい当たり。図星。墓穴~。

 

 躑躅守は刑軍の副軍団長に当たる。つまりは隠密機動において実質ナンバーツーの実力者であるのだが、それはあまり知られていない。何故なら、現在隠密機動総司令の座についているポン太が護廷十三隊二番隊隊長も兼任しており、且つ副隊長に大前田希千代という成金デブを据えているからである。

 絶対数的にも組織のナンバーワンの実力的にも護廷十三隊の方が上である為、(元々目立つ組織であってはならないのも理由であるが)隠密機動は焦点が当たりにくい。故に躑躅守の名はあまり知られていない。これは、護廷十三隊という組織に彼が名を連ねていないことも理由なのだろう。

 

 だって役職増えると仕事が面倒くなるし。

 今の職場でそこそこ満足してるし。

 

 従って護廷十三隊への依頼は本来躑躅守の請け負う範疇には無かった。当然それをポン太も分かっている。

 

「じゃ、オレが受けること無いんじゃないっスか? それこそ大前田(デブ)にやらしときゃいいじゃないっスか」

「馬鹿者。監視対象が十番隊だけだと思うか。まあ、貴様の言う事にも一理あるのだがな。貴様に関しては四十六室直々に指名が入っている。そうでなければ態々貴様など起用するものか」

 

 へー。四十六室、ねえ?

 

「あい、まむ。じゃ~、任務に行ってきまーす。午後の仕事はおねしゃーす」

「あっ、貴様ッ! それくらい自分で振り分け……躑躅守ィィィィィ‼」

 

 何だかんだ、二番隊舎は今日も平和である。

 

 

 

 




躑躅守(ツツガモリ)は苗字です。長い。
作者恒例の花言葉が由来です。
躑躅(ツツジ)…………”節度”、”慎み”

ええ、勿論!
今回はギャグに挑戦ですよ! ギャグ……であってほしい(泣
クスッと笑ってもらえたら嬉しいです。
されど途中からギャグが消える可能性大という。
というか続けられる……のか……?

分かりませんが兎に角……
最後までお読みいただきありがとうございました!
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