砂糖は人類の宝? よし、お前は今日からオレの親友だ! 作:みーごれん
作者は単純ですので、そういう目に見えるもので凄く元気が出ます!
嬉しいです!
暗い室内に、唯一の光源ともいえるパネルの光が輝いている。それを覗き込む人物が一人と、控えるように後ろに立っている人影が二つ見えた。気配を消してそっと近づくと、パネルを覗いていた人物がこちらに振り向くことなく呟いた。
「何か問題があったのかい、
「いーえ。特には。ってか拠点変えたんなら一言言って下さいよ」
「言う必要は無いと思ってね。現に言わずともここが分かったじゃないか」
闇の中からぬらりと現れたその人物の方へ、後の二人が勢いよく振り返った。
「何や来てたんか。相変わらずいつから居たんか分からん御人やねえ」
「……後ろを取るなど失礼だぞ、躑躅守」
「御二人とも辛辣っスねぇ。オレは筋金入りの隠密機動なんスから、いい加減慣れて下さいって」
クツクツ笑った躑躅守を、一方は相変わらず変わらぬ妖しい笑みで、もう一方は眉を寄せて警戒心剥き出しで、見つめた。いや、一方は盲目だから“見つめた”という表現は正しくないだろう。片方の護廷十三隊三番隊隊長・市丸ギンは、閉じているのか開いているのか分からないが見えている目を躑躅守に向けており、一方の九番隊隊長・東仙要は見えずとも気配と視覚以外の知覚を以て彼の方を睨んでいた。
ピ、とパネルを操作する手を止め、中央の人物――五番隊隊長・藍染惣右介が振り返った。
「それで、何か用があって来たんじゃないのかい?」
「あー、一応確認と、お願いが一個って感じっスね」
「ほう。何かな」
くあっと欠伸をしながら躑躅守がその辺の壁に寄りかかる。藍染に質問されながらそんな態度をとる彼に東仙の殺気が膨らんだが、藍染が軽く東仙の肩を叩いて留めた。
「“白獅子の監視”が
「“一応”、か。君はどちらと受け取ったのかな」
「ま、放っといても良いんじゃないかなと。大したことありませんし」
再度込み上げてきた欠伸を噛み殺しつつ躑躅守が藍染の方を窺うと、彼は暗い笑みを浮かべてただ黙っていた。
――“君の采配に任せるよ”ってか? はいはい、りょーかいっス。
訊きたいことを訊き終えたので、彼は壁から背を放してお願いをするモードに切り替えた。それを察知した藍染が笑みを深める。
タッタッタッ、ガシィッ
「⁉」
躑躅守が東仙に駆け寄り、その手を勢い良く掴んだ。状況が呑み込めない東仙の顔が引き攣ったのもお構いなしで、躑躅守は勢い良く頭を下げた。
「瀞霊廷通信で大人気の“正義のレシピ”を執筆してらっしゃる東仙隊長いえ東仙先生! どうかオレに現世の未知なる甘味“ぷりん”を作ってくださいお願いしますッ‼」
「ッ‼ やっぱりこン人、おもろいわァ」
片手で口元を押さえて市丸が吹きだした。
護廷十三隊の中で文芸担当という謎の役割を担っているのが九番隊だ。“瀞霊廷通信”という名の冊子を月に一度出版しており、隊長格という豪華な面々が各々のコーナーを請け負っている。その編集長たる東仙もまた例外無く記事を書いている。“正義の道”という名の其れはイマイチ躑躅守には理解しがたかったのだが、付属のコーナーである“正義のレシピ”は毎回読んでいる。躑躅守は料理自体に興味があるわけではないのだが、いつか菓子のレシピが載る日を心待ちにしていたのだ。
“正義のレシピ”愛読者曰く、“自分では絶対に辿り着けない美味なレシピだが、何度も作るのはあまりに手間”なのだとか。確かに煮込みの時間とか冷ますのに掛ける手間が多いというか単位間違ってんじゃないかってレベルだったが、だからこそ今回彼に頼んでみたいと躑躅守は思った。
だってそんな大変なレシピを構築する発想力、試作を繰り返す根性と熱意はまさしくプロの職人の其れと躑躅守は見た。彼なら、自分の求める最高の甘味を連れてきてくれる、と。
真摯に頭を下げる躑躅守を見降ろしながら、先程の藍染への態度を思い出して東仙は何とも言えない顔をした。
「ぷりん……? 生憎私は現世の菓子には疎いのだ。お前の期待に応えられるかは……」
「そこをなんとかッ」
「うぐ……」
「大丈夫だよ、要。君の調理に関する熱意とセンスは一級品だ。私が保証しよう」
「藍染様……‼」
という茶番の後、後日作ってもらう事を約束された躑躅守は文字通り飛び上がって喜んだ。そんな様子をちょっと離れた位置から見ていた市丸は、躑躅守が落ち着いた頃に口を開いた。
「しかしえらい唐突な話やねえ。何で急に食べたなったん?」
「いやぁ、伊勢副隊長が女性死神協会で貰ったという話を聞きまして……つい」
カラカラ笑う躑躅守を、藍染が僅かに表情を動かして向いた。
「躑躅守君、君は八番隊舎に行ったのかい?」
「ええ」
「そんな指示はあったかな」
「任務前にちょっと寄ったんですよ。これを売りに。あ、市丸隊長、カメラの性能滅茶苦茶良かったです! ありがとうございました~」
超小型で録画もできるカメラの提供主は市丸だった。
何でそんなモノを
サラッと流してしまったが、藍染惣右介を筆頭に市丸ギン、東仙要は現在、尸魂界を飛び出してなんやかんややろうと画策中だ。躑躅守は
今更”人の命は大事”なんて倫理は在りはしないが、陽の光の届かない場所で誰にも弔われずに捨て置かれる遺体の群れには一応、任務完了時と同じく手を合わせておいた。供えた
菓子食べる口実だろって? …………いや、うん、違う違う。違うって。
兎も角、礼を言った躑躅守に対して若干引き気味に市丸が“喜んでもらえて
何か勘違いされているようなので訂正しようと躑躅守が口を開く前に藍染が割り込んだ。
「京楽春水と接触したんだね」
空気が変わる。
緊張を孕んだ空気に市丸と東仙の顔色が変わったが、躑躅守は一人涼しそうな顔のままだった。
「そっス」
「何について」
「……朽木ルキアについて、少し」
「……」「「‼」――何故それを報告しない!」
東仙が怒気を隠すことなく躑躅守にぶつけた。対した彼の方はというと愉快そうに口の端を上げて肩を揺らしている。
京楽春水は今回の計画に於いてそこそこのキーパーソンだ。
護廷十三隊に於いて最も警戒すべきと藍染が考えている数名の内の一人が、護廷十三隊総隊長、山本元柳斎重國だ。千年の長きにわたり総隊長として死神を纏め上げてきた彼の実力は、リーダーシップなどという生半可な言葉には留めえない。常識外れの戦闘力は警戒するに余りある。尸魂界に反旗を翻すなら、一番に対処すべきといっても過言ではない。
そして今回は、彼の愛弟子である京楽春水及び十三番隊隊長・浮竹十四郎をその足止めに使おうというのが藍染の策、というよりかは戯れである。
どこまでも厳格に“中央四十六室”に従うだろう総隊長は、その命に疑問を持つだろう二人と衝突する。実力的に、あっさり二人がやられるということはないだろうから、時間稼ぎができ、うまく行けば護廷十三隊の古参である二人の隊長格を灰に返せる。
今の段階でそれがどこまで実現可能かを知るに当たって、京楽が躑躅守に接触してきたという事実は重要極まる内容だった。
それを、計画の概要しか聞いていないとはいえ隠密機動のナンバーツーが理解できていない筈はない。
「ハハッ! 勘違いされては困りますよ、東仙隊長。オレは別に、貴方と同じように藍染隊長の部下ってわけじゃない。プライベートまで一々報告する義理は無いっス」
「貴ッ様……」
「いいよ、要。確かに彼は協力者という立ち位置だと明言している。だが躑躅守君、今後は計画に関わることはそうやって焦らさず、迅速に教えてくれるよう頼むよ」
ゆったりとした歩調で躑躅守が闇の深い方へ歩いて行く。足首が隠れて見えなくなる辺りで彼は振り返ると、ピースサインを藍染達に向けた。
「了解っス。――オレの事、
物音一つ立てずに、躑躅守は去って行った。
闇に溶ける様に消えた躑躅守の気配を察して、藍染が微笑む。
――京楽春水程でないにしろ、食えない男だ。
躑躅守は此処へ来た時、“一応確認と、お願いが一つ”と言った。この言い方だと、確認とお願いが一つずつなのか、
しかし幾ら能力があろうとも、それを使うものがポンコツでは意味が無い。
「――十番隊では不服だったかな?」
呟いて、ふと足元に四つ折りになった紙を踏んでいることに気が付いた。一見すると紙ゴミだが、掃除されつくした床の上にそんなものが落ちているなど不自然でしかない。
拾い上げ、紙を開くと文字が書いてあった。目を通し、そして目を丸くした。
「藍染隊長? どうしはったんです?」
「……ギン、私も君に同意見だよ」
「何がです?」
威力を弱めた赤火砲でその紙を燃やしながら藍染が眼鏡のブリッジを押さえて位置を整える。
「彼は実に面白い男だ」
黒くなりながら火の粉を散らす紙にはただ一言。
『そういうわけじゃありませんよ』
それだけが綴られていた。
”上手く使って下さいね”とか言わせておきながら、作者が主人公を使いこなせる気がしないという。悲しみ。
救出篇はまあ……適当に書きます。
いや、真面目に書きだしたらギャグに挑戦も何もないか。
話は変わりますが、最近はコンビニとか行ってもプリンの種類が多くてビビります。そして迷うという。選択肢が多すぎるのも困りものですね! 因みに作者は、迷ったら一番リスキーな奴を選ぶのが好きです。コンビニだと失敗とかあまり無いんですけどね。それはそれで面白味が無いんですが。
失敗らしい失敗は、某コンビニチェーンで売っていた杏仁豆腐くらいかもしれません。スイカの何かが乗っていたのですが(その時は杏仁豆腐が食べたかったのでそれしかなかったんです)、そのゼリーっぽい何かの味が無かったんですよ。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!