砂糖は人類の宝? よし、お前は今日からオレの親友だ! 作:みーごれん
任務を請けて現世にやってきた
尸魂界から追われる身である浦原喜助とその一派に接触し戦闘に。ちょっと戦ってすぐに躑躅守が降参したぞ!
大変長らくお待たせいたしましたm(_ _)m
亀更新になっていきますが、何卒御容赦を!
「さっきのは何なんだ? 分身の術? 変わり身の術?」
「変わり身の術っスかねえ。義骸の応用版です」
霊力を封じる手錠をガチャガチャ言わせながら呑気に喜助に話しかけている
――そうじゃった。昔からこ奴はこういう奴じゃったのう……
遡ること百数十年。
隠密機動総司令として最初に行う仕事の一つが、自身の護衛隊を選ぶことだった。と言っても大半は前総司令の引継ぎであり、自身で選ぶのはほんの何名か。はてさてどう選んだものかと思っていた時に喜助が推薦したうちの一人が躑躅守だった。
「よう来たのう躑躅守。此度お主を呼んだのは、お主の力を見込んでの事じゃ。護衛隊の任、受けてくれるかのう?」
「光栄の極みです、団長閣下。しかしそのような大役、私の様な若輩には分不相応です。お断りさせてください」
「そう謙遜することはない。お主の働きは儂がしかと見ておる」
“夜一様の御裁量が間違っているとでもいうつもりか貴様⁉”と食って掛かっている砕蜂を宥めながら夜一が言うと、徐に喜助が躑躅守に耳打ちした。
途端に顔を上げて喜助を見ながら何事か納得したように呟いた奴は、再度深々と頭を下げた。曰く、着任を承諾する、と。
結局あの時、喜助は何と言ったのだろうとぼんやりしながらおもっていると、急に喜助が夜一に話題を振った。
「ビックリっスねえ、夜一サン!」
「何じゃ? 聞いとらんかったわ」
「団長、酷いっスよ~! オレが刑軍副団長になったって話っス!」
聞くところによると本人はそんな重役をやる気はサラサラ無かったらしいのだが、古参の実力者がこの百年でバタバタ倒れ、繰り上がり式に躑躅守が副団長に据えられたらしい。隠密機動の刑軍ともなればよくあることだ。
「総司令は今、誰がやっとるんじゃ?」
実は聞かずとも知ってはいるのだが、話の流れと言うのもあるし躑躅守が真実を言っているのかを確認する意味も込めて夜一は問うた。最高責任者の名前は周知の事実だからか、彼はあっさり答える。
「ポン太っス」
一瞬の沈黙。
喜助に至っては腹を抱えて苦しそうにしている。それを横目に見て苦笑しつつ、夜一は溜息を吐いた。
「……誰じゃ」
「あ、そっか団長はオレが付けた渾名知らないんでしたね。砕蜂っスよ、砕蜂!」
――現総司令は副団長に嘗められ放題のようじゃな……ん? ちょっと待て。砕蜂、まさかお主……この百年で
「躑躅守、その後砕蜂とはどうじゃ?」
「どーもこーも、相変わらずあの人が上司なんでそのままっスよ。ぽぽぽぽーんです」
「…………」
躑躅守の反応に最早溜息しか出ない。深々と息を吐いて、ふと先程奴に言われた言葉を思い出した。
“勘が鈍った”? それは貴方の方でしょ?
確かにあの時、夜一は僅かばかり油断していた。この距離ならば、“瞬神”たる自分は後れを取らない、と。その慢心があのザマだ。機動力を奪われ、為す術も無く地に伏した。喜助は機転を利かせて拘束されなかったが、あのまま戦闘が続いていたらどうなったかは分からなかった。
百年の長きにわたるブランク――認めざるを得なかった。躑躅守は今回、大した戦闘をしていない。鬼道で鉄斎を拘束し、喜助の紅姫を止め、夜一の白打を躱したくらいだ。前線で闘い続け、副団長までになった男がどれ程の力を持つのか……もっと言えば、その上の総司令たる砕蜂がどれ程の力を付けているのか。中身は全くと言っていいほど変わっていないようだが、戦闘力に関しては”楽しみだ”、などと余裕をかましている場合ではないかもしれない。
夜一が眉を寄せている間に、喜助が躑躅守の方へ向き直る。
「さて、躑躅守サン。我々がいまだに貴方を拘束している理由はお分かりっスよね?」
「色々あるだろーな。お前らが此処に居るのが尸魂界にバレたらマズイ、あと喜助の反応から察するに、元死神代行の生存報告をされるとマズイ、なんなら代行とお前らの関係がバレるとマズイ」
欠伸をしながら首を鳴らす躑躅守は、“だが”、と言葉を繋いだ。
「言ったよな? オレは任務で此処に来た。そんで地位は刑軍副団長――例えオレを軟禁しようが殺そうが、霊圧消失時間に比例して増援が来る。んで結局バレる。なら……すべきことは一つだよなァ、喜助?」
不敵に、そして挑発的に笑みを浮かべる躑躅守。やはり穏便には済まんかと夜一が身構えた直後喜助がゆらりと部屋を出た。
ガチャッ
ゴソゴソ
バタン……
これから何が始まるのか、九割の興味と一割の恐怖を以て身構えた夜一は、再び部屋に帰ってきた喜助を見て瞠目した。
なん……じゃと……
喜助が何故
「躑躅守サン、これで如何でしょう」
「これは?」
「儂が大事にとっておいたアイスを何故お主が持ってくるのじゃ⁉ 隠しておいたじゃろ⁉」
「甘いっスよ夜一サン。あの程度、隠したうちに入りません」
風呂上がりにこっそり食べようと思っていたL〇TTEの爽が躑躅守に差し出された。
扇子で口元を隠し、“ふふふ”と厭らしい笑みを浮かべた喜助を蹴り飛ばしてアイスの方を見ると……躑躅守が泣いていた。
「あいす……尸魂界では見ることさえ適わなかった幻の甘味……‼」
震える手が夜一のアイスに伸びる。咄嗟に爽を夜一がとると、“あっ……”という小さな声と共に夜一に視線が刺さった。恐る恐る躑躅守の方を見ると、絶望一色に染まった奴の顔。
――そうじゃった……こやつ甘味に命をかけとるんじゃったッ……
余りの表情に夜一の動きが止まる。その隙に背後から喜助の手が伸び、ひょいとアイスを奪って片手に乗せた。
「躑躅守サン。貴方が我々の要求を二つ呑んでくださるなら、これを差し上げます。一つは先程のアタシらの不都合な事実を隠蔽すること。もう一つは、これからアタシらが話す内容に耳を傾けることっス」
「とける……」
「勿論、話が終わるまで責任を持って冷やしておきます。如何でしょう?」
「……交渉とか、後にして良いか。アイスが気になって集中できねえ」
「……いいでしょう」
――儂への交渉は一切無いんじゃな。喜助は後で殴る。
夜一の冷ややかな殺気に、喜助が震えたとか震えてないとか。
二十分ほどしてその話は終わった。
その内容と言うのも、百一年前に起きた”隊長格が軒並み虚化されて浦原たちが追い出された事件”の真相だった。
――へー。そんな感じだったんだ。
事件の内容を聞いた躑躅守は素直に聞き入った。
当時から彼は藍染の協力者だったが、まだその関係になってからの日が浅かったため、今ほどホイホイ呼びだしを食らったりしなかった。従って事件も、完全にというと語弊があるが、躑躅守は部外者と言って良かった。
「……ちゃんと聞いてました?」
あまりに怒涛の展開だったため、口が半開きになっていた。アホの子のような様相に、躑躅守が集中できていないのではと浦原に思われたらしい。失敬な。
要約するとこうだ。
百一年前。
事の発端は流魂街の魂魄喪失事件の多発。
或る時を境に、流魂街の住人が消失する事件が発生するようになった。死亡または蒸発ならば残る筈の無い、帯を着けたままの衣服などが発見され、魂魄が人の形を保てなくなっているとの仮定が出される。
調査の指名を受けた九番隊が調査班を出し、同隊隊長及び副隊長、席官数名がそれに続いた。
調査班は全滅。死神も消失したことにより、急遽選抜された隊長格が事態の収拾に向かった。
ここまでは資料通り。
浦原によれば、その全てが当時副隊長だった藍染惣右介と、同隊三席市丸ギン、九番隊五席東仙要によって起こされていた。崩玉によって隊長格を虚化する実験を真に行っていたのは藍染なのだが、止めに入った浦原と握菱鉄斎に罪が擦り付けられ、
「そんな彼らが今や隊長か。四十六室は今も昔もぱっぱらぱーだな。
――あ、正確には”ちょっと前の”四十六室か。“今の”って言ったら東仙隊長に睨まれる。
そんな事を躑躅守が思っているとは露知らず、浦原と団長が顔を引き締めた。
「本当なら、っスか。信じてもらえないんスか?」
「当然。この期に及んで被害に合った隊長格が悉く顔を見せない時点で、口封じの為に殺されたって普通は見るだろ」
「お主がこんなタイミングで来るとは思わなんでな。彼奴等は生きておるが、此処からはちと離れた位置を居城としておるのじゃ。すぐお主に引き合わせることは出来ん」
ふーん。
ま、知ってたけど。
この様子だと、死神代行が尸魂界に喧嘩売りに来る時に彼らが来る可能性は低そうだな。ってことは、同伴する元死神は最大四人。浦原、団長、鉄斎、あとは志波一心。圧倒的火力不足。
人間の兵隊を何人集めるのか知らないけど、浦原の奴、何人殺す気なんだろ。オレには関係ないことだがな。
「加えて、オレら刑軍が“私はやってない!”とか“あの人は嵌められたんです!”なんて言葉をどんだけ聞き飽きてるか知ってんだろ? その手の発言は逆効果だぜ」
「手厳しいっスね。かつての同僚まで信じていただけないとは」
「ハッ! 随分と
一応浦原は護廷十三隊の方に重きを置いてたからそういう指導をされたかは知らないが、団長には知らんとは言わせんぞ。反論は案の定無し。
ってことは、結局この百年チョイで藍染隊長の計画を暴く為の材料を集めることは叶わなかったって事か。つまんね。あの人が動くのを止めたうえで、宿敵とガチンコ対決とかちょっと期待したんだけどな~。
躑躅守は溜息を押し殺しつつ再び口を開く。
「……それが仮に本当だったとしても、さっきの条件の一つ――死神代行の生死確認だけは報告しないわけにはいかねえ」
団長の視線に促されるまま、言葉を繋ぐ。
「取り敢えず言っておきたいのは、尸魂界というか護廷十三隊的には、死神代行が生存している方が望ましいと思ってるってことだ」
過去にたった一人だけ現れ、姿を消した、死神の力を得た人間――死神代行。
その名を銀城空吾。
彼の現状はおろか、生死すらも不明の人物。
分かっていることはただ一つ。
もし彼が生きていれば、同じ境遇の代行(今回に関しては代行証が与えられてはいなかったが、見方によっては良いように死神に使われていた)に接触してくるだろうと総隊長は踏んだ。されば、揃って潰せば済む、と。
「ならば何故、白哉坊はいち……死神代行に手を挙げたのじゃ?」
「一杯一杯だったんじゃないっスか?」
嘆息しながら躑躅守が言うと、団長は僅かに眉を寄せて沈黙した。
そうか。ここ五十年ほどの話だから団長たちは知らないのか。
「朽木ルキアは朽木白哉の死んだ奥方の妹なんス」
「⁉」
「ついでに言うと、朽木隊長に同行してた阿散井恋次は彼女の幼馴染だそうですよ。泣けますねえ」
ホント泣かせる。
そんなゴリゴリの関係者を拘束に仕向ければ、死神代行に対して加減出来なくなるに決まってる。鎖結と魄睡をプチってしたくなるに決まってる。
そんでプチってされた代行を見れば、朽木ルキアは彼を救うために自らを差し出すだろう。結果、囚われの姫を助けんと勇者が立ち上がるわけだ。
にしても喜助の反応が無い。
成程、彼女の人間関係を知っていたらしい。
そして朽木家の人間なら、なんやかんや彼女は護られる――それは甘い。
この百年の差がココで出たな。彼女は死ぬ。朽木白哉は彼女を殺す。
「もう瀞霊廷中に広まってることなんで言っちゃいますけど、彼女の処刑が決まりましたよ」
「!」「処刑⁉ そんな罪状では無かろう!」
「普通はそうっス。けど流魂街出身の大貴族なんて、方々から疎まれて当然でしょう。二十五日しか猶予期間が無い上に双極まで使うってんですから、こっちもてんやわんやですよ」
そろそろアイスくれても良いんじゃね?
結構喋ったと思うんだが。
「その言い方だと、貴族云々は躑躅守サンの見解っスか」
「ああ。違うのか?」
隠密機動には規則違反を犯した同族を秘密裏に
建前はこうだ。
真相を知っている躑躅守からすればただの詭弁だが。
押し黙って何事か考え込むような姿勢になっていた喜助が再び口を開いた。
「四十六室から処刑関連の指示は出てるんスか」
「これ以上は二重の意味でオレの首が飛ぶ。だが、良いことを一つ教えといてやる」
躑躅守が声のトーンを落とし、両掌で口元を覆った。喜助と夜一が耳を澄ます。
「現状に不信感を抱いているのは、オレの知る限り八番隊隊長・京楽春水と十三番隊隊長・浮竹十四郎だ。処刑が行くところまで行けば、四楓院団長んちの道具で味方に出来るかも、なんてな」
「「‼」」
ぶっちゃけそうなってくれると藍染隊長たちが動きやすいし。
別に喜助たちだって損じゃないだろ?
どっちが間に合うかって話だ。処刑を止められなければ崩玉ゲット。止めたら止めたで総隊長がおイタの過ぎた二人を“流刃若火ァ!”するだけ。
お~コワ。怖すぎて涙も出ねえ。
その後のアイスは超美味かった。筆舌に尽くしがたい美味さだった。
感想を述べると紙面一杯になりそうなので省略する。
異界へ通じる障子の奥へと消えた男の姿が見えなくなってから、喜助が徐に隣の夜一へ口を開いた。
「……如何でしたか」
「少なくとも、儂が集めた情報に関して嘘はついとらんかった。しかし、最後の発言はちと予想外じゃったのう」
「……っスね」
八、そして十三番隊隊長といえば、かれこれ二百年以上も隊長を務める実力者。しかもよく居る人格破綻者ではなく、確たる思想と行動力を持つ二人だ。彼らが今回の処刑に疑問を持っている――これは有効どころの話ではない。
だが、と喜助は扇子で口元を隠した。
――何かある、と考えた方が良さそうっスね。
悪い方ではあるが、喜助が考えていた幾百の展開のうちの一つだ。対応することは可能。しかし何故だか胸にしこりの様な不安が残る。
――……そういう線もありますよね。はてさて、夜一サンに伝えるべきかどうか。
本人が気づいているかは知らないが、あの時彼は、まるで喜助たちがこの後尸魂界に来ることを知っているかのような口ぶりだった。最初のころに“お前らと死神代行の関係を尸魂界に知られたら不味いんだろ”的な発言をしていたから、ある程度は想像していたのだろうか。にしてはアドバイスが具体的だった。
だとしたらいつから?
どのくらい関わっているのか?
もし喜助の
――違和感を感じた時点でもう少し引き留めておくべきだったっスね……
内心で歯噛みしつつ、喜助は次の一手の為に沈思黙考していくのだった。
ギャグにしたいのに、何故かシリアスな感じになっていくという。
作者には書けないんだと割り切っていくことにしました。
一応追記しておくと、夜一さんの反応は殆ど演技です。
そんなまさか、浦原さんたちが碌に下調べもせずに尸魂界に乗り込もうとするわけないだろうしなという予想の下。演技派女優です。浦原さんは演技するとバレるので(圧倒的胡散臭さが際立っちゃうので)沈黙です。作者の中でそういうイメージなだけです。
それはそうと、アイスの季節からは段々遠退いて来ましたね。そろそろ値段が安くなってくるので、コタツを出したあたりでぬくぬくしながらアイス食べたいなあ……とか思いながら書きました。
某書道家の漫画では、”冬はアイスが溶けないんだから今こそ食べろ”的な事を言われて真冬に外でアイス持たされて食べてたなあ……
アイス事情も色々なんだなと思った記憶があります。
アイスと言えば、作者は棒アイスが苦手です。アイス自体がというより、木の棒があまり好きじゃないんです。同じ理由で割り箸も苦手です。あのザラッとした感じが何とも言えないのですが……今まで誰にも理解してもらえない感覚です。誰か分かってくれる人はいないだろうか……
カップなら、ハーゲンダッツはお高いのでスーパーカップ派です。MOWとかも美味しいですけど、やっぱりお高いので……
スプーンは勿論プラスチックか金属です。
食べたくなってきた……
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!