テラーストーリー・オブ・ナイト   作:バルバロッサ・バグラチオン

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お久しぶりです。今回は読んでくれた方に石を投げつけられるかもと覚悟してます。
それでもよければ(汗)


第十話 青龍さんと共に

長野のとある山奥の村。そこは自然豊かな場所であったが、閉鎖的な土地柄であった。そして、その地ではある宗教の教えが盛んであった。

 

 

 

常に人間の心は汚く、淀んでる部分があり、それを浄化しなければならない。そうしないと死後の世界で苦しむ事になる。だが、青龍さんの儀式に参加すれば救われるのだと。

 

 

「ありがたや、ありがたや。今日も青龍さんのおかげで幸せな日々を送れてます。」

 

12歳の少年、橘恭太は居間の片隅に置かれてるある像に対して拝んでいる祖父の雷蔵と祖母のウメを眺めていた。

その像とは青い鱗、威圧感のある角、ギラリとした眼、鋭い爪。すなわち龍の姿である。

祖父母らはじめ、この村の全ての住民は家に像を置いて「青龍さん」と呼んで、毎日拝んていた。

 

閉鎖的な土地柄とも相まって「青龍さん」に対する村民の信仰心は異常な程厚かった。すなわち信仰心の薄い者やそぐわない者は敵とみなされた。

 

そんな熱心に拝んでいる祖父母をよそに恭太の母親である由紀恵は冷ややかな視線を注いでいた。

由紀恵はいわば横浜から嫁いでいた外部者であり、病気にかかり他界してしまった恭太の父親とは信仰の薄さの原因により、度々ケンカをしていた。

 

当然父親が死去した後、より一層祖父母と仲が悪くなった挙句に他の村民らにも邪見の如く扱われ、四面楚歌の状態になっていた。

 

 

 

そんな蒸し暑さ真っ盛りの8月のある日。恭太は趣味のスケッチを兼ねて村の近郊に湖を訪れていた。

その湖にはあの青龍が住んでいるという言い伝えがあった。

そんな言い伝えはどうでもいいと気にしなかった恭太はトンボや蝶といった昆虫や植物の絵を描いて楽しんでいる。

 

異変が起きたのは数十分後。

 

何かに見られてるような視線を感じて湖の方を見ると真ん中辺りが波打ってる。

 

(何だ…あれ?)

 

凝視してると、段々と激しくなり、やがて大きな影が現れたのだ。

赤いギラリとした眼、まさに「青龍さん」とそっくりであった。

一気に恐怖感が増し、全力で家に帰ってきた恭太は、一部始終を祖父母らに話すのだった。

 

 

「おおっ、それは本当か!目出度い事じゃ。こんなに早く青龍さんに浄化できるとは。運がええな、お前は。」

 

雷蔵は喜びの表情に満ちている。

 

「何するんですか。まさか恭太を……。」

 

「黙らっしゃい!由紀恵さん!これでより一層、恭太は青龍さんに近づく事は嬉しくてたまらん!」

 

青ざめる由紀恵を叱責してウメも祝福に満ちた表情である。

その後、祖父母と由紀恵の激しい口論が起きてしまい恭太はゲンナリするのだった。

 

 

その日の夜、二階の部屋で寝ていた恭太は静かに由紀恵に起こされる。

 

「しっ、恭太。静かに聞いて。パジャマの姿でいいから。声を一切出さずに家から出るわよ。」

 

もう由紀恵にとっては我慢の限界だったのだろう。恭太は薄々分かっていた。この村から出る事なのだと。

一緒に車に乗り、10分くらいたった。もうそろそろ村を出る予定である。

 

と思ったその矢先。車のブレーキがかかり急停止した。ウトウトいていた恭太は一気に目が覚める。

前の方を見ると、数人の村人が立ちふさがる。当然雷蔵とウメもいる。それぞれが懐中電灯を持っていたが、中にはナタや鍬を持っている者がいる。

おそらく家から出るところを祖父母にうっかりバレてしまったのだ。

 

「何勝手に村から出ようとしとるのだー!お前らは!」

 

「とにかく車から出やがれ!」

 

村人らは強引に車の扉を開け、由紀恵と恭太を引きずり出す。

二人は離れ離れになり、恭太は別の車に乗せられる。頭に袋を被せられ不安感が増す。

 

(お母さんは一体どこに? 僕は一体に何処に連れていかれるのだろう?)

 

次第に泣き出すも、誰も無反応である。

 

連れて来られた場所は、トイレ、布団、数日分の食料しかない殺風景な部屋。扉は固く閉ざされており、陽の光が僅かにしか入ってこない。

 

3日後、寝ている所を男らに起こされ手錠をかけられ、逃げられない様にか四方を囲まれながら歩いて行く。

 

「母さんは大丈夫?」

 

「一体僕は何をされるのですか?」

 

恭太が質問しても一切無視されるのだった。

 

着いた先はあの龍を見かけた湖。そこには沢山の大人が何かを唱えていた。深夜という事あろうか周りは静まり返った様子だ。

 

恭太自身はこれから何が起きるのかと不安になった。湖の前には怪しげな小屋が建てられていた。

高さは2メートル程で入口のドアには何らかの呪文が書かれて、気味悪さを醸し出す。

 

手錠を外され、ドアの前に立たされる恭太。すると隣にいた男が話す。

 

「これからはお前の心の中にある穢れと戦って、綺麗にしてこい。」

 

キョトンとなり困惑してしまう。

 

「では、橘恭太君。小屋の中に入り、自分の心の中の穢れと対峙し、青龍さんの所へ近づくのだ。」

 

言われるがままに、おそるおそる小屋の中に入る。

 

バン!と扉は閉まり、ビックリして後ろを見ると、さっきの扉が無い。

 

あるのは自宅の廊下と恭太の部屋へと繋ぐ戸だけだ。部屋に行き周りを見渡すと外から蒸し暑い太陽の日差しが差し込んでくる。

 

頭が混乱してくる。現在は真夜中のはずである。窓を開けようとするがおかしい。全く開けれないのだ。頑丈にロックしてる様でビクともしない。

 

廊下に戻ろうと思い、戸を開ける。やはりそこは自宅の家の廊下だった。

 

「お母さん!おじいちゃん!おばあちゃん!」と叫ぶ恭太。

 

すると座敷の方からゴソッゴソッと音がしたのである。何だと思い、こっそりと廊下を歩き襖に手をかけ、スーっと戸を引く。

 

そこには、湖で見たあの青龍がいたのだった。

 

目が合うやいなや、「ウゥ~~」と唸り声を挙げて近づいてくる。

敵対心むき出しにして恭太を睨み付け、鼻息を荒げている。

 

悲鳴を上げ逃げ出す恭太。絶対に食われてしまう。そういう恐怖感がこみ上げてくる。

 

本能だろうか。玄関に置かれてた青龍の像を発見すると、前に座り込み頭を下げる。

 

「助けてください!許してください!大変申し訳ございませんでした」と泣き喚いた。

 

すると後ろから追いかけた青龍が恭太の全身に絡みついてきた。ぬめりとした感触が伝わってきて、息が苦しくなってくる。

 

(もう、ダメか僕…)

 

そう思ってると、小屋の前にいた。元の世界に戻れたのだ。

村人たちの視線をたくさん浴び、混乱している。

すると、事前に話しかけてきた男が手を差し伸べて、

 

「おめでとう。お前はよくやったぞ。」

 

と先程とは違う優しい声を掛けてくれたのを皮切りに多数の村民らが大歓声をあげた。

 

「えっ?何ですか?つまり僕は。」と言葉が見つからない恭太に対し、男は

 

「この儀式によりお前の心は無事に浄化された。安心したまえ。」と答えた。

 

すると疲労感からか、強烈な眠気に襲われ、その場にへたりこんでしまった。

 

 

 

気付いた時は自分の部屋で起きたので、(また、あの世界に戻ってしまったのか!)と驚いたが、横には雷蔵とウメがいたので、安堵する。

 

あの儀式は一体何のかと問うと、雷蔵が答える。

 

いわば地元の守護神的存在である青龍への信仰心を試し、それを証明する事で、青龍によって対象となった者の心の穢れた部分を浄化してもらう儀式だと。

 

青龍は恭太を最初は信仰心が無いため喰らおうとしたが、最後で青龍さんの像へ敬う姿を見た為、認められ心を浄化してもらったのだと。

 

あの小屋の中は、自分の心の中の世界を繋ぐものだと、ウメが教えてくれた。

 

(僕の心の世界は家一軒か。狭いものか。)と思う恭太。

 

最後に気掛かりな事が。

 

「おじいちゃん、おばあちゃん。お母さんはどこにいる?」

 

あの夜の出来事での以降、全然会えてないので心細いのだ。

 

雷蔵が一呼吸置いた後、口を開く。

 

「母さんは青龍さんを侮蔑したのだから、裁きを受けた。お前はアイツを忘れるんだ。この先、会うことはないのだからな。心が綺麗になった分、また元通りになったらどうすんねん。」

 

この瞬間から、恭太から祖父母に対する情愛の念が砕け散り、そして村民らにも関わりたくないと思いを抱くのだった。

 

 

高校を卒業した後、恭太は東京へと脱出した。

村を出る時に雷蔵に「やっぱり、よそ者の子はロクなもんじゃねえ。」とネチネチ嫌味言われたが、別に気にもしなかった。

 

安定した職につき、結婚もして最愛の娘も生まれて充実した日々を送っていた。

 

ところがある日の事。状況が一転する。

恭太の住所に手紙が来たのだ。差出人は母親である由紀恵だ。

 

驚きと感動を抑えながら、内容を読むと8月中に村に帰省してもらいたいというのだった。それと結婚してる妻と娘にも会わせてほしいと書かれていた。

 

ここで疑問が生じる。なぜ教えてないのに自分の所在が分かったのか? 仮に興信所などで分かったとしても、どうしてこの先会えないと言われた母から手紙が届くのか?

確かに筆跡は母そのものである。

 

もしかしたら、祖父母らが母を装って村を招こうとしてるかもしれない。愛する妻と娘に手出ししたら許さない。

恭太は怒りに震えそうになる。

 

でも、本当に母が書いたのだったら会いたい。ジレンマが生まれる。

 

封筒には手紙の他に長野行きの高速バスのチラシが添えられていた。

 

 

 




いかがでしょうか。
この後の展開は読者の想像に委ねます(土下座)

すいません。リドルストーリーを書きたい憧れがありまして、思い浮かんだのが、この話であります(恐縮)

もしかしたら、今年度の投稿はこれで終わりかもしれません(恐縮)
時間があったら新作を投稿するかも。
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