テラーストーリー・オブ・ナイト 作:バルバロッサ・バグラチオン
今回も話が短いですが、それでも宜しければどうぞ。
夏の蒸し暑い日。気温は30℃を超えている。
蝉の鳴き声で、30代半ばの女性である高山梨乃は叩き起こされる様に目が醒めた。
(暑い。だるくてぼんやりしそう)
2階の寝室の窓から、自転車置き場の方へと目を向ける。
「順平、近くの池にでも昆虫採集にでも行ったのかしら。」
一人息子である順平は昆虫が好きなので、夏休みという事もあってどこかに遊びに出かけてる様だ。
(
梨乃の夫である宏司は不動産会社を経営する社長である。彼女とはお見合いパーティーを通じて交際が始まり結婚に至った。
(何てカッコいい男性なんだろ!この人に決めたわ)
宏司をみて一目惚れしてましまい、話をしていく内に梨乃にとって千載一遇のチャンスであった。
彼女の生い立ちは悲惨なもので女好きでギャンブル狂であった父親に見捨てられ、梨乃は母親と貧しい暮らしを強いられた。
ボロアパートの一室で暮らし続け、学校に行けば貧乏さをネタにされイジメの対象にされた。
それでも梨乃は母に迷惑かけまいと、隠し続けて必死に勉強を続け県下で有数の進学校へと進んだ。
(絶対に、いい大学に入って豊かな生活を送りたい!)
心高い目標を掲げて、より一層勉学に励んだ梨乃だったが、高2の時に悲劇が舞い降りてくる。
高2の時に梨乃の母親が病に倒れ帰らぬ人となったのだ。
その影響で泣く泣く高校を中退せざるを得なくなり、働く事となった。
中卒という肩書のせいで周りからバカにされたり、時にはイジメを受ける事もあった。
それでも梨乃は挫けはしなかった。
寝る間も惜しんで資格取得に励みながらレベルを上げる事を惜しまない努力さのおかげで徐々に自信が付く様になってきた。
そんな時に同僚からお見合いパーティーに誘われて宏司と運命の出会いをするのだった。
不動産業の社長と結婚したとあって、今までコケにしてきた連中を見返す事が出来て正に幸せの有頂天。
だが、その幸福は長く続かず軋り始めたのは一人息子の順平を授かってから数年後の事だった。
いつもより宏司の帰りが遅くなってきた。飲み会、接待と言い訳したが何か怪しい。
時々、気付かれぬ様にコソコソと通話してる姿を見て、梨乃はより一層不信感を抱く。
そして隙を伺って宏司のスマホをチェックすると、衝撃の事実が明らかになる。
何と宏司は部下である久野由佳と浮気をしていたのだ。
二人のツーショットの画像を見て怒りを感じた。
離婚を考えたものの、社長夫人の肩書を失う可能性が高い。そしたら、また元の惨めな生活を送るかもしれない。
梨乃はとりあえず我慢する事にした。
(宏司さんは、あの女と一緒にいるのかな?)
ムシャクシャする気持ちが湧き上がると、外で車の音がする。
もしかしたらと思い、北の窓からガレージ方面を覗くと、どうやら宏司の車ではなく近所の住民の高級車だったのでガッカリした。
『梨乃、結婚しよう。君を幸せにする自信はたっぷりある。』
ドライブデートで山頂に行った際に、綺麗な夜景を前にプロポーズされた思い出が蘇る。
(あの頃の宏司さんは素敵だったなあ。あの女狐になんかに惚れちゃって…。腹立つんだから)
3人で家族旅行に行った事を振り返った時、玄関が開けられる音がしたので2階の吹き抜けから見下ろすと5人の小学生が入って来た。
(順平の同級生かしら。)
梨乃は「いらっしゃい。」と言い、1階へ降りようとするが、目が合った一人の女の子が泣き叫んだのを際に全員一斉に家から飛び出して、どこかへと逃げ去っていくのだった。
(挨拶もせずに、私を見るなり逃げるなんて失礼ね。)
ムカッとした梨乃は、夏バテの影響もあってかひと休みしようと寝室へと戻っていく。
梨乃の自宅近くの道で二人の女子高生が歩いてた。
二人とも、この閑静な住宅街に住んでるらしく各々カバンを掲げながら話してた。
「ねえねえ、この近くに曰く付きの豪邸があるの知ってるー?」
金髪のギャル系の容姿をした古市葵は、最近引っ越したばかりの眼鏡をかけた地味な印象を持つ森山俊子に喋りかける。
「えっ、まさか幽霊が出るとか?やだよ、そんなの。」
もともと怖がりな俊子は更に体を震えさせる。
住宅街の中心部にある公園のベンチに座った二人は、ひと段落した後に葵が事の真相を語りだす。
「あの豪邸に住んでいたのはやり手の不動産業をやってた社長が、奥さんと息子と一緒に幸せに暮らしたんだけどー。部下である若い女性社員と浮気に走ってー。」
俊子は固唾を飲む。
「ある日の夜、奥さんに内緒で人気の無い場所に車を停めてイチャイチャしてたところ、運悪く奥さんに見つかってしまい、気が狂ったのか隠し持ってた銃で旦那さんと浮気相手を射殺してしまったんだって。」
「うわー、なんて修羅場!」
動揺する俊子。
「奥さんがどうやら気が動転した様で帰宅した後、息子を風呂場で湯舟に顔を突っ込ませ溺死させたの。
で、自分自身は2階の寝室にて首筋を包丁で切って自殺したわけ。」
「わあー、グロいの超イヤー。」
「アタシが小学5年の時かな。その当時はワイドショーで大騒ぎだった。なにしろ2階の寝室が酷い有様でね。部屋中いっぱい血まみれで、奥さん目がカッと目を開いた凄い形相だったのよ。父さん刑事していて、
その事件を捜査してたから、詳しいの。」
「つまりは事故物件なのね、あの豪邸は。」
梨乃の邸宅へと指さし、俊子は怯えている。
「それからなのよねー。窓から恨めしそうな女の顔が見えたったいう噂が立ちはじめて。あと肝試しを行った小学生達がドアが勝手に開いた、女の声が聞こえた、足音を聞いただの色々と恐怖体験を味わってきたのよ。」
幸せな家庭を築いたはずが、夫が浮気に走ったせいで崩壊して一家もろとも死んでしまった後味悪い話。
「ゴメン、ゴメン。かなり怖がらせちゃったね。後でアタシの家に寄って一緒に海外ドラマ鑑賞して気晴らしよーよ!」
葵はポンポンと俊子の肩を叩くと公園を後にするのだった。
(ああ、暑い。夏は暑くて苦手。順平はまだ出かけてるのね、早く宏司さん帰ってこないかな。
愛しの宏司さん。あんな女と手を切って私の所に帰ってきて。ずっと私はこの家で待ってる。いつまでも。)
今回の話は久しぶりに女性を主人公にしたのがあって、いつもとは違う感じで書いてた様な気がします。
最近はブルーオースをプレーするのがマイブームだったり。
それでは次回の更新はいつになるのか分かりませんが楽しみに!