テラーストーリー・オブ・ナイト 作:バルバロッサ・バグラチオン
それでは、どうぞ!
東京の繁華街の中心地ー新宿。
駅前にて、社会人三年目になった「木下尚樹」は久しぶりの親友との卒業以来の再会に待ちわびていた。
大学卒業以来、東京のとある会社に就職してからは社会人として日々を送っていた。
朝早く満員電車に揺られながら、膨大な業務量におわれながら夜遅くまで働き続け、時には苦手な飲み会に参加させられ、心身共に疲弊していた。
(入社した時は、頑張るぞって意気込んでたのに…。もう、地元に帰りたい…。)
大都会東京での、想像とは違った生活に尚樹はノイローゼになりかけていた。
そんな彼にその鬱屈した空気を吹き飛ばす様なニュースが飛び込んできた。
何と、卒業して以来、連絡が取れなかった親友である「徳松幸輔」から久しぶりに尚樹に会いたいとメールが来たのだ。
とある地方都市の大学のゼミを通じて仲良くなった二人は、一緒のサークルに参加したり、飲み歩きしたりと親睦を深めていった。
時には、貧乏旅行と称して沖縄に行ったのは二人にとって刺激的なイベントになった。野宿・ヒッチハイク・ナンパに失敗と、彼らには楽しいイベントとなった。
就活も無事に終了し、遂に卒業の時が近づいた。
「尚樹!お前、東京行くんかい。いいじゃん、友達いっぱい出来そうで!」
「幸輔だって大阪行く事になったやん!お好み焼き、串カツ、たこ焼きと美味しいグルメ食い放題じゃん。」
尚樹は東京に、幸輔は大阪に就職する事となり離ればなれになる事となった。
お互いに時間があったら、再び会おうと誓い二人は無事に大学を卒業した。
(やっと幸輔に出会える。アイツ、どんな感じだろうな)
ウキウキした気分になり、笑顔が戻ってきた尚樹に、「おーい、尚樹!久しぶり。元気にしてた?」
懐かしさ溢れる声を聞いて、思わず振り向くと、ブランド物のスーツを嫌みなく着こなし、清潔感が感じられる垢抜けた雰囲気を放つ幸輔だった。
「幸輔、東京へようこそ!あの日から変わってるな」
「そういうお前こそ、東京に引っ越して変わってるんじゃねえか? 都会は刺激的だと思うが」
「アハハッ、そうじゃないよ。もう生活に疲れて地元に帰りたいよ~。」
3年ぶりの再会に会話弾む二人。
「そういえば、お前トントン拍子になってるって。」
問いかける尚樹。
「そうだよね~。大規模なプロジェクトのリーダーに選定されたし、上司に気に入れて近々昇進が決定。おまけに可愛い彼女が出来た。」
スマホを取り出すと、画面には本人と上品さが漂う女性とのツーショットが映っていた。
「資産家の一人娘。そろそろ婚約を決めようかと思っている。」
自慢気に話す幸輔。
「ええなあ、俺、東京に住んで3年間だが、未だに彼女いないんだよ。」
落ち込む尚樹。
「元気出せよ。お前らしくないぞ。いつか出会えるって。」
励ます幸輔。そして、
「まあ、半年前のある出来事以来、運命が変わったんだよ。」
「半年前?」
「ああ、あの日から。」
幸輔は遂に語り出した。
半年前のある日
「ったく、どうして俺がこんな目に。」
幸輔は車を走らせながら、四国の山奥へと向かっていた。
大阪のとある会社で営業マンとして頑張っていた幸輔は、出張の為、四国を訪れていた。
どうせ俺は若いから使い捨ての駒と利用されている。
不満が溜まっていく。
出張とはいえ、不景気の影響で自己負担なのである。
当初は充実した社会人を送るつもりが、まさかの予想外れに幸輔は苛立ちを隠せない。
事を済ませた後は、さっさとグルメと観光を楽しみ、目的地である旅館に向かった。
その旅館は、ネットで「泊まると幸運が訪れる」との評判を聞いて、予約したつもりが、何らかの手違いにより
満室状態になっていた。
どうやら旅館がミスをして、駆け込み客を優先したらしい。
とはいえ、近辺の旅館もほぼ満室であり、日も暮れている。
幸輔が声荒げて抗議してると、「仕方ないですね。」
旅館の女将が本館からかなり離れた小高い丘に建てられた別館へと案内した。
その時の不気味ともいえる女将の笑顔に幸輔は嫌な予感がした。
本館から別館に移動する。別館は若干真新しさを感じられる。
最近建てられた様であり、二階建てで、見ばらしは良さそうである。
普段使われていない為か、一階の玄関は陰気臭かったが、二階の部屋は綺麗に感じた。
だが、部屋を見渡した途端、四隅に盛り塩があったのを
幸輔は嫌な予感がした。
けど、行く宛はないし一晩我慢するしかない。
別館に行く際、女将に「夜中は物騒なんで、鍵をかけて外出は控えてください。」と注意されたのに引っ掛かりを感じる。
気分を紛らわす為に、予めコンビニで買ってきた弁当とビールを食べた後、タバコを一服して、眠りに着いた。
異変は夜中12時に起きた。
「……。何だよ…、うるせえ」
外からの騒がしい音に叩き起こされた幸輔は、障子を少し開けて様子を伺う。
暗くてよく分からないが、どうやら野良犬同士がケンカをしてるようだ。
「バウ!バウ!バウ!」「ワワワーン!」
お互いとも唸り声を上げて威嚇している。
(チッ、うるせーな。こんな時間帯に。目が覚めちまったじゃないか。)
苛立ちを始めた幸輔に、ある物が目に入った。
二匹の野良犬の側に、明らかに一回り、いや二回り大きい狐が近づく。
月明かりに照らされた狐は普通の見た目ではない。
白い体には赤い斑模様が刻まれ、9つの尾を立てている。金色の眼を持つ鋭い目付きは、野良犬を狙いに定める。
そして、大きく口を開けた狐は素早く野良犬の一匹に噛みつく。野良犬は激しく抵抗したが、虚しく狐に飲み込まれてしまう。
おそれをなしたのか、もう一匹の野良犬は逃げるが、あっという間に狐に追いつかれ、同じ運命を辿った。
(な、何だよ、あれ…。普通じゃない。)
生まれて以来、かつてない事態に襲われた幸輔に更なる恐怖がふりかかる。
ガタン!と後方から音がしたので振り返ると、額縁が落ちていた。
慌てる幸輔が、向きを直すと今度は狐と目が合ってしまう。
心臓が止まるかのパニック状態になり、慌てて障子を締める。
(ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!)
ひたすら狐が去るのを願う。たが、その願いを打ち砕くかの様に、足音は確実に別館に近づいてくる。
その足音は、入り口を探してるかの如く別館の周りをうろつく。
幸輔は布団の中に潜り込んで、怯える。
と、その時
ガシャーン!
玄関を破壊した音が響きわたる。そう入ってきたのだ。
(来ないで!来ないで!)
備え付けの電話やスマホで連絡すればいいのだが、パニック状態に固まった状態ではどうする事も出来なかった。
そうしてる内に、ドン!と凄まじき音が扉から響いた。
ドン!ドン!
ガリガリガリガリッ!
依然として、音が鳴り止まない。
当然の如く、獲物を狙って部屋に入ろうとしている。
追い討ちかけるかの如く、四隅に置かれていた盛り塩がボンっと爆発するかの様に飛び散る。
その後は、シンと音が止まる。
(助かったのか?)
ホッと安堵したその瞬間、バタン!と扉が倒れた音がした。
部屋に侵入してきたのだ。
またもや、恐怖に支配された幸輔。全身から汗が滝みたいに吹き出す。音が出さない為に、息を殺す。
端から視れば滑稽な光景であろう。だがそうするしかない。
布団の周りを狐は徘徊している。そして、
コツッ。
背中の辺りを押し始める。
2度、3度と段々と勢いが強くなっていく。
そして、掛け布団が引き離され、またもや目が合った。
「やだあああっ!」
悲鳴をあげる幸輔。
部屋中に獣臭さが漂う。狐は唸り声をあげながら、口から出た舌を気味悪く出す。
匂いを嗅がれ、口から出た涎が体にかかる。
(もう、喰われる…。)
絶望感が染み渡る中、狐がフッと笑った。それは女将が浮かべた不気味な笑みと一緒で。
そして、瞬間的に右手首をガバッと噛まれ、どこかに連れて行こうとする。
血が滲み、痛みだって相当だ。それよりも、さっきの野良犬共らと同じく喰われてしまうのかという恐怖感が勝る。
そこで記憶は途絶えた。
ふと目が覚めると、見知らぬ森の中にいた。
近くには祠がある。
アイツはいないだろうなあ。幸輔は付近をキョロキョロしながら見渡す。
そして、無事に生きてる事を思い、安堵感を得た。
右手首には噛み傷があり、服はボロボロ、身体中擦り傷だらけだった。
付近を探索してみると、旅館の本館が見えたので、裸足で向かう。
本館に着くと、フロントにあの女将がいた。
女将は幸輔と目が合うと、
「良くぞ無事でいらっしゃいました。」
何食わぬ顔で微笑む。
「冗談じゃねえ!殺されるところだったぞ!」
怒りに震える幸輔をよそに、「まあまあ、落ち着いてください。」と、女将は真相を語り始める。
元々この土地の地主であった旅館の経営者はある事を使って繁盛していた。
汗水垂らしてではなく、呪術を使っていたのである。
いわゆる「狐術」というのである。
その「狐術」は野生の狐を十匹捕まえて蔵に閉じ込める。
あとは、飢えた狐らがお互いに喰らい合い、最後に残った一匹が餓死するまで放っておくのみ。
その後は、最後に残った狐を「狐神様」と崇拝し、ある所に埋める。
すると、その付近は「狐神様」の効果が及び繁栄するのだ。
幸輔はピンときた。朝目覚めた祠がある場所。
そこが「狐神様」を埋めたところだったのだ。
そして、「泊まると幸運が来る」という真相はつまり、
「狐神様」の恩恵を受ける事だったのだ。
だが、狐神様の怨念は凄まじかった。山の中の生き物を貪り始めたのだ。
木、岩にも取りつき、他の生き物を殺した。
付近にも狐神様の念が纏い、いうなれば、影響力が大きくなっていた。
それどころか、目先に眩んだ地主は、狐神様が支配する
小高い丘に別館を建ててしまった。
狐神様の念は勢いを増し、そこに泊まった客まで喰らい始め、仕方なく別館は閉鎖した。
別館の真新しさを考えたら、おそらく建てたのは、目の前にいる女将に間違いない。
頭が沸騰した幸輔は遂に怒りが爆発する。
「貴様!、つまり俺を狐神様に喰わせる為に!」
しかし、女将は飄々として、
「いえいえ、そんなに怒らないでください。狐神様に喰われる事は、ずっと狐神様と共に生きる事なのですから。」
頭おかしいだろと突っ込む幸輔に更に女将は喋り続ける。
「お客様はどうやら運が宜しいようで。どうやら狐神様の恩恵を受けましたね。この後は、様々な幸運が舞い降りてくるでしょう。あ、2ヶ月前に泊まった大学生のお客様が無事に大手企業から内定を貰ったと嬉しそうに連絡してました。」
本当かよと思ったが、もう文句を言う気が無かった。
むしろ、早々とこの場から立ち去りたかった。
最後に帰る時、女将は言った。
「狐神様の御加護があらん事を。」
「っと、こういう事があったのさ。」
幸輔は締めくくる。
「マジかよ~。」
信じようとしない尚樹に幸輔は右手首を見せる。
その生々しい、その噛み傷。尚樹は驚愕する。
「その後、狐神様の恩恵とやら分からんが、あれから何かが変わった。営業成績はグングン伸びて、同期の中ではトップ。皆の前で表彰されたんだぜ。おかげで上司から気に入られて、出世した。まあ、同期から距離を置かれたけど。でも、仕事は楽しくてしょうがない。最近は社運を賭けたプロジェクトのリーダーに選ばれたし、可愛い彼女も出来たし。」
幸輔は笑みを浮かべる。そう、あの不気味な。
「お前、変わったな。あ、美味しいラーメン屋紹介してやるよ。行こう、行こう。」
誘う尚樹だが、その時、幸輔のスマホに着信が入る。
「はい、徳松ですが。」
応じる幸輔。
そして、「ごめん、仕事で急用が出来たから、もう大阪に戻る。じゃあね、機会があったら大阪に来いや。たこ焼き・お好み焼き・串カツとか奢ってやるから。」
残念そうな表情を浮かべる尚樹だが、有給でも取って大阪に行くかと決めると、再び元気な表情になる。
駅に戻る幸輔に対し、笑顔で手を振り続ける尚樹。
たが、その顔は徐々に戦慄におののき始める。
そう、尚樹に「しか」見えなかったのだ。
幸輔に纏わりつく様に、先ほど話に出てきた白い赤い斑模様がクッキリと浮かび、9つの尾を持ち、金色の眼をした「狐神様」が、明らかに敵意を剥き出しするかの様に、尚樹を睨みつけていた。
ひえーっ、予定よりめっちゃ長い文字数になりました。
すみません、やはり前後に分けた方がいいですかね?
感想・アドバイス・指摘あれば嬉しいです。メッセージでも構いません。正し、人格否定・罵詈雑言・暴言は許しません。
重要なお知らせですが、仕事で忙しいのもそうですが、18日にフリューから発売される「CRYSTAR-クライスタ-」を購入してプレイしますんで、若干、投稿ペースが遅くなるかもしれません。
あ~、旅行行きてぇ~。