テラーストーリー・オブ・ナイト 作:バルバロッサ・バグラチオン
でも、夏に投稿できたのは良かったと思います。
ご都合主義ともいえる場面があるかもしてませんが、それでも良ければどうぞ。
とある地方の市。人口は2万人弱で、農業が基幹業だが近年の不況も相まって過疎化による衰退が激しい地域である。
そこに住んでいる中学2年の少年、石川修也は家族を夕食を食べた後、飼い猫である福丸を探しに外出していた。
福丸。白黒のオス猫で、修也が小3の時に学校からの帰り道の途中に段ボールの中に鳴いてたのを見かけてのをついつい家へと持ち帰ってしまった。
元々ペットを飼うのに猛反対してた両親に対して必死に自分が責任持って飼うと必死に説得した結果、何とか許しを乞うて飼う事を得た。
修也本人によって名付けられた福丸というオス猫はとことんやんちゃであった。
両親には噛みつく、家の中を走り回るという、正に利かん坊そのものであった。
この日も餌を与えた後、網戸をまたもや爪で引き裂いて外へと脱走してしまった。
既に夕暮れ時であり、早めに見つけなければと焦燥感に駆られた修也は自宅近辺を捜索していた。
(もう、アイツどこに行ったやら・・ 早めに捕まえないと。)
そうしてるうちに、雑木林にたどり着く。
周りに民家は無く道路は舗装されてなくより一層、寂しさを醸し出す。
「取り敢えず、探してみるか?」
なんて独り言を呟きながら、入っていきしばらくして(明らかにいないな、他の所にでも行こう。)
と思って引き返そうとすると、
ザザザ・・・
と草木が揺れる音がした。風ではない、誰かがいるのだ。
恐い気持ちがしたが、振り返ると黒のワンピースを着た女性が後ろ向きにうずくまっている。
「どうかしましたか?」修也はおそるおそる尋ねる。次の瞬間、身の毛もよだつ光景が湧き上がってきた。
女性は回転斬りをする様に体を半回転させる。左右の両手を思いきりふり上半身だけをまず回し、次に下半身を動かす歪な動き方で。
髪は長く顔色は薄い灰色で、唇は異常な程潤い、口端を釣り上げている吊り上げている。
目は焦点があっておらず、半分白目。明らかに人間ではない。
「ぎゃあああっ!」
悲鳴を上げ、逃げ出す修也。
「オホホホホ…… 待てぇ~。」
女性は不気味な声を出して追いかけてくる。
全力で逃げだす。捕まったら最後だ。
「待てぇ~。」
逃げてる途中もひっきりなしに声が聞こえてくる。
追いかけてくる! 必ず逃げ切ってやる!
修也は正に命がけだった。
道が次第に舗装路に変わっていく。
農道の様な場所だったので、この時間なら誰かいるかもしれないという希望を抱く。
と、その時
「捕まえた~。」
肩をガシッと思いっきり掴まえられる。
振り向くと、あの女が不気味な笑みを浮かべている。
絶望と恐怖でへたり込んでしまい、涙が溢れてしまう。
「ふふっ、これでお前は私の物だ~。」
もう駄目だ。これから死んじゃうのかと絶望した修也。
すると、どこからか「ニャーーッ!!」と叫び声と共に福丸が女の顔に飛び掛かる。
いつもとは違い、激しい怒りを感じる福丸が爪で引っかき時には激しく噛みつく。
「この野郎!!」
女は力ずくで福丸を引き離すと思いっきり投げ飛ばす。
「福丸!」
修也は駆けつける。幸い傷は深くなく多少の出血はあるものの、じきに止まりそうである。
何とか女から逃げ切る事に成功し、雑木林から脱出したのちに行きつけの駄菓子屋がまだ明かりが点いてるのを確認すると救いを求めて、必死に戸を叩く。
「どうしたの~? 猫抱えちゃって。」
心配そうな顔つきで修也と懇意の仲である駄菓子屋のおばさんは尋ねる。
修也は話した。
特に女性の容姿、そして福丸を傷つけられた事を話すと
おばさんは血相を変えて、
「修くん、今から知り合いのお寺に連れて行くわ! お父さんとお母さんには後で説明しとくから。ね!」
かなり強い口調で、目が本気である事からただ事ではない。
おばさんの車に乗せられて、しばらく経つと寺に着いた。
住職が迎えに来て、本堂に案内させられ、今までの事をありのままに話す。
怪訝な顔をする住職。そして、口を開く
「君が見た女の人は、この辺にいる、いわば怨霊そのものだ。彼女に見つかったら確実に行方不明になるんだ。」
住職の表情は真剣である。
「ま、まさか…」
恐怖に囚われる修也。抱えている福丸は落ち着いているのかゴロゴロと鳴らす。
「いわば、この世から消え去る。たまたま逃れられた人もいたのだが、数日後にいなくなった。執念深いんだよアイツは。」
「そ、そんな……」
「きっと大丈夫だから。出来る限りの事は尽くす。念の為、お経は唱えておく。」
お経を唱えたのちに、連絡を受けた両親が本堂に行き、涙を堪えながら住職の話を聞いている。
「修也君はこちらで預からせてください。ここなら、あの女の怨霊も手を出しにくいでしょう。良いね修也くん。」
両親と正にお願いしますと頭を下げる。
「出来れば、その猫もお預かりしてもらえないでしょうか?猫は魔除けになると言われてますし、何らかの力にもなるかもしれません。」
両親は少し困った顔を見せたものの、渋々承諾した。
それから、猫用キャリーバッグとトイレを用意させ、餌やりは修也に任せた。
「女の怨霊による被害者が失踪するのは、早くて2日後、遅くて4日後です。彼を護る為に、敢えて1週間はこちらで様子を見てきます。」
「これを修也に。」
両親は修也にお守りを渡す。
これから正念場。修也は覚悟を決めた。絶対にあの怨霊に勝ってみせる。福丸と共にと。
こうして長いといえる一日が始まった。
1日目。部屋に案内される前に助けてくれた駄菓子屋のおばさんがいた。どうやら住職から色々と事情を聞かされたらしく、修也を激励した。
「大丈夫だって。おばちゃんも応援しとるから。あんな幽霊、追い払っちゃえ!」
肩をポンポンと叩かれ、元気が湧いてくる。
その後、毎晩部屋に入る前には、必ず本堂で経を唱えるから、絶対に来るようにと忠告を受けた。
その日は、おばさんも経を読み終わるまで一緒にいてくれた。
部屋に通される。
部屋は本堂の近くにあり、何の特徴もない5、6畳の殺風景ともいえるものだった。
夜になり、何もやる事がないので取り敢えず布団に横になる。
「福丸、遊ぼうよ。」
福丸をキャリーバッグを取り出すが、いつもとは違う様子。
普段なら大暴れしてはしゃいでいるはずなのに、緊張感からか、威嚇してる様に見える。
(そうか、福丸も感じてるんだ。あの女に)
修也は不安な気持ちになる。その後は福丸を布団の中に入れて夜を過ごした。
2日目。朝ごはんを食べた後、住職に本堂で呼ばれた。
「修也君、2日目は特に気を付けた方がいい。最初に説明したどおり、被害者が消えるのは大体2日目。もし話しかけられても、無視するように。絶対喋るのもダメ。」
と念を押される。
福丸にも感じているのか?と尋ねたところ
「動物はたまにじっと見てたり、唸ったり鳴いたりする。おそらく見えてると思う。」
やはりとうなずくしかない。
夜の時間になる。福丸を布団の中に入れて、両手には両親から貰った御守りを握りしめて。
何故か眠れない。あの女が遂に来るかもしれない。冷汗が流れる。
福丸の方は寝息を立てながら寝ている。
その時、
ミシッ!ミシッ!軋む音が聞こえる。
住職が見回りに来たのかなと修也は思う。が、予想は違った。
「オホホホ…… 坊やはどこかな~」
あの女の声だ!あの時の恐怖感が甦る。
「逃げても無駄だから~ 必ず捕まえてやる。」
どうやら女は遠くに行ったり近くに行ったりと、本堂の辺りをウロウロしてるようだ。
探してるんだ、俺を。
体が震えだす。より一層が汗が噴き出る。
女の声が小さくなる。
「どこかな~」
諦めてくれたかとホッとしたの束の間
「ここかあ!」
声が大きくなり部屋に近づいてきた。
するとフーッと歯をむき出して、福丸が布団から飛び出す。
予め部屋にはお札が貼られており、安易には入れないはずだ。
「アハハハハハハ!」
女の甲高い声が響き渡る。一方の福丸も負けていない。「ウォォォォン!」
布団の中にこもりながら必死に耐える修也。両親からの御守りと、そして女に立ち向かっている福丸が支えの存在だ。
数十分たった頃だろうか。
「ギャアアアァ!!」
女の絶叫が聞こえる。耳を澄ますと経が聞こえてくる。住職が読んで加勢しているのだ。
その反面、福丸は決して怯むことなく唸り続ける。
そして、
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」
という叫び声が聞こえた。
「もう大丈夫ですぞ、修也君。もしもの為に隣町から神主さんを呼び寄せました。」
襖が開き、住職と同時に烏帽子を付けた神主が登場してきた。
ゆっくりと布団から起き上がる修也。安心した。脅威は去ったのだ。
福丸は先程とは違い、大人しくなっている。
住職は話しを続ける。
「私の力で札を貼ったりお経を唱えたりしたんだが、ここまで力の強い存在だと思わなかった。だからこそ神主を読んだのです。」
表情は真剣である。
「あの女の霊ですが、あれは凄まじい怨念、もしくは憎悪というか。そういったものの具現化だね。いわば、凄い恨みを持った人間か、生きてる人が羨ましくて手を出した霊だろう。」
神主が話す。
「お祓いをうけましょう。助かって良かった。」
住職の頬には涙が伝わっていた。
神主によるお祓いを受けた後、家へ帰る事を許された。
翌日、福丸と共に帰宅した修也。久しぶりの我が家は安心感にまみれ、疲れを取る為に眠りにつく。
たまに福丸が構ってくれというのだろうか、時たま爪で引っかいたり噛みついたりしてきた。
「もう、何やってんだか。お前は。」
福丸の頭をなでる。ずっと一緒にいたいなと思うのだった。
だが、悲劇は訪れた。
翌年のある日、またもや家から脱走してきた福丸は道路に飛び出し、運悪く車にはねられ即死したのだ。
ショックだった。修也ら家族は泣き続けた。
家の隣にある畑の隅に埋め、墓を建てた。
それから、2年後。高校生になった修也は福丸の命日なので、墓を訪れていた。
花を供え、黙祷してきた。
(あの時は助けてくれてありがとう。ずっと忘れないからな。
黙祷を終え、家に帰ろうとすると、どこからともなくニャーと猫の鳴き声がしてきた。
何だと思ったら、白黒の猫。そう、福丸と瓜二つの子猫がすり寄ってきた。
(お前、また戻ってきたんだな。)
修也は子猫を抱えると帰宅するのだった。
夏といえば怪談ですよね。
動画サイトで、心霊スポット、心霊写真のとかを見ています(笑)
ここんところ、殺伐とした話を投稿していたので、感動できるようなラストを心がけて書きました。