久々の投稿ですが読んでいただけると嬉しいです。
お気に入り等ありがとうございます。
「むぅ…」
頬を左腕にのせた状態で、利き手に持ったままのシャーペンの先っぽをリンクで演技するフィギュアスケート選手のようにくるくる動かす。
芯を出したままにしているとノートが悲惨なことになってしまうので芯は最初から出していない。
一応補足しておくけどノートを取る気がないなんてことないからね。
先輩との連絡先交換から1週間経つものの未だメッセージ(寝起きで送ったメッセージは含まない)を送る勇気がでず、行動を起こすことから逃げている少女漫画の奥手な主人公系女子の私なのだが…。
そういえば話題になったドラマでは逃げることは恥だけど役に立つとか言ってたから問題ないし。ただ私は恥をかいてないのでちょっと違うかも。
そういえば最近の少女漫画ってどんな感じなのだろう。中学生までは読んでいたものの現在は触れておらず、ふと疑問に思った。今日の帰りに書店に行ってみようかなぁ…とふわふわとした思考へと脳内が移ってしまう。こういう本題から関係ない内容のことばかり考えてしまうところが行動を起こせない理由と言えるかもしれない…いや言えるなぁ…反省せねば。
「川嶋さん聞いてますか?」
「え?」
「25ページの2行目を訳してください、とさっき言ったんですけど…」
「…すいません」
現在は古典の授業真っ只中だということを思い出す。授業中にぼーっとしているときに限って当てられるのはなぜなのか…。というか寝てる人いるんだからそっちを当ててくれてもいいじゃないかよ。
問題自体はさほど難しい訳でもなかったのでしっかりと答えた。
「訳は正解です。けれども先生の授業をちゃんと聞いてくれていなくて悲しかったです。ということでこのセットを次の授業の教室まで持っていってくださいね」
「…はい」
持っていってくれる?じゃなくてくださいね(強要)されたら断れないじゃないか。私のきゃっきゃうふふな休み時間が潰れたじゃないか。
「どんまな」
「どんまいみたいに言わないで」
声をかけてきたのはクラスメイトの笹木七海。一応、放課後に一緒に遊びに行ったり互いの家で勉強したりするので友だちと言ってもいいかもしれない。
「笹木、持っていってよ」
「先生の話聞いてなかった茉菜が悪いんです」
「いや、笹木寝てたよね?私より授業態度悪いんだから持ってて」
「今から寝るから無理。おやすみ」
雑な感じで会話を切られてしまった。先ほどきゃっきゃうふふな休み時間とか言ってたけどもきゃっきゃうふふな要素ないね。
これも全部ディ〇イドのせいだよ。
事ある毎にディケ〇ドのせいにすればいいってクラスの男子が言ってたからと理由を付けて責任転嫁しておこう。
先生のもとへ寄り渡された教科書のセットを持ち渋々、階段を登っていった。無駄に重いなこれ…。ちらちらと背後を見て誰か代わってくれないかと淡い期待を抱いていたものの誰もこない。もちろん笹木は寝てた。
ほら、少女漫画とかだとイケメンのクラスメイトが「重くない?もっていくから貸して」とか言って駆け寄ってくるはずなんだけどなぁ。もしくはこの先の階段でごっつんこしたり?なんで最近こんなことばかり考えてるんだか。
…くだらないこと考えてないでさっさと持っていこう…。
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「…カノッサの屈辱とは…」
あの後輩からゲーセンへ連れてけと言われ早1週間が経過したものの何のイベントも発生せず…今現在、教室にて世界史の授業に至る。
同じ学校だから顔を見かける可能性もあるだろうなと踏んでいたがあの後輩を全く見かけなかった。都会の学校なら何千人もの生徒がいるだろうが、そこまで生徒数が多くないこの学校で見かけないものだろうか…。
それにしてもあいつのこと全然知らないな…。出会って1ヵ月だし当然といえば当然なんだが。印象深い絡みがあるせいで麻痺してるんだろうな。
この前連絡先を交換したものの、仮にこっちから連絡して「何連絡してきてるんですか?今度どこか行こうとか発言って社交辞令ですよ(笑)」みたいな返信きたら赤点とったときの美紅みたいに落ち込みそう。ブロックされてても悲しいので連絡はしない。
リスクリターンを考えた行動をとることをモットーにしてるから。
別に好きとかじゃないから、可愛いなとは思ってるけどそんなんじゃないから…誤解しないでよね。そもそも向こうから誘ってこない限り行かないからね。
と需要のないツンデレ男子学生を演じているとポケットに突っ込んでいた、現代を生き抜く中高生には必要不可欠なスマホさんが震えだした。平日のこの時間に連絡してくるやつなんてろくなやつじゃないし無視しとこう、うん。
でももしかしたら後輩かもしれない。学校サボって暇を持て余して連絡してきたみたいなこともあるかもしれないと思うこと数秒。
なかなか震えが止まらないのでこっそりポケットから取り出し誰からのメッセージか確認する。
「赤堀美紅」
お前か。ろくでもないやつと思ったのが幼馴染みで残念だぞ。
斜め前に座っている美紅へ視線を移すとちょくちょくこちらを見ていたせいなのか、目が合った。
仕方なくメッセージ内容を見てみると問題の答えがわからないとのことだった。前回の授業の最後に解いておけと先生に言われたのになぁ…。
どうせなら始まる前に聞いてくれと思ったが、あの幼馴染みのことだし忘れてたのだろう。
ちなみにこの学校、授業中のスマホの使用が見つかった場合、反省文を書かされる上に数日間に及ぶ朝の清掃活動がある。朝はギリギリまで寝ていたいタイプなのでスマホの使用はしたくなかったが。この間にもメッセージを送り続ける美紅が可哀想に思えてきたので見つかったら美紅も道連れにすればいいかと思い、問題文の答えを打ち込む。
世界史の先生である高崎先生は問題は前の席から後ろに順番に当てていく人なので、生徒は自分の当たるところの問題だけ解いておくということが続出している。
なので先生が当てる人を忘れていた場合、前回当たった生徒か当日当たる生徒が名乗りをあげるということが度々ある。解き忘れで注意される生徒がいないのでこのケースは俗に言うやさしい世界というものなのか。
なお美紅を除いてになってしまったが。
返信したら既読がすぐについた。既読スルーせずにありがとうとしっかり返信してくるあたりなかなか肝が据わってるよな。普通見つかるリスクが高まるのでメッセージは送らないだろうに。反省文と清掃活動の存在まで忘れてたりしないよな。
授業終了の鐘が鳴り、購買にパンを買いに行こうと教室を出ようとした。普段ならば授業を終え即座に退出する高崎先生がなぜか俺の前にいた。
頭を下げて横を通ろうとしたら声をかけられた。
「この世界地図、1年2組の教室に持っていてくれない?」
「それって俺に言ってますか?」
「そのとおり」
「今すぐにトイレに行きたいので断ってもいいですか?」
「断りたいの…?」
高崎先生の残念そうな顔を見て引き受けようかと思ったのだが…。
「さっきさぁ…使ってたよね…スマホ。断ってくれてもいいんだけどね、反省文書いたり、掃除したりするのが好きなら」
残念そうな顔は俺を哀れんでたからなのか…。それにしてもなぜ美紅じゃなく俺にだけ言ってきたのだろう。俺だけバレるものなのか?あぁ、あいつ友達と喋ってるから声かけるのが先生は面倒だったんだろうな。あと俺なら断らないだろうみたいに考えてそう。
「喜んで運ばせていただきます」
とりあえず反省文やらは面倒なので購買は諦めて先生の手駒に成り下がった。
「にしても先生がこんなことしていいんですか?」
「生徒は面倒くさいことしなくていいし私も面倒くさいことしなくていいWIN-WINな関係を生徒と築けるからいいじゃないの」
まあ授業だけじゃなくて生徒同士のいざこざとか親からのクレームとか部活動の監督とか色々あるだろうから本当に面倒なんだろうなとは思っている。
「悪っすね」
「もう少し表現をオブラートにね」
「あーくっすねぇえー」
「それはビブラートだから」
ちゃんと突っ込んでくれてありがとうございます。スルーされたら泣いてたよ俺。
「とりあえずありがとうございます。ちゃんと持っていきますから」
世界地図と教科書を預かり階段を降りていく。
カノッサの屈辱という単語だけは何故か覚えてます。