センパイと呼んでくる後輩がカワイイ件   作:椿遊

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お気に入り等ありがとうございます。

この作品を投稿して1年経ち、読んでくださっている方には感謝感激雨霰です。

年内に出来ればあと数話投稿したいと思ってます。


兆候(後編)

 

高崎先生から受け取った授業教材一式を抱え階段を下りる。持っていくように言われた教室は…と、廊下にでて確認してみると…おぉ…。1年の生徒たちが廊下でわいわい喋っていてスペースをふんだんに使っている。もともとそこまで広くない我が校の廊下がさらに狭くなっている。住宅路の隙間を通り抜けるときのように気をつけなければならない。

もし女子生徒にぶつかるようなことがあって「キモ」とか言われたらマジでへこむ。顔見知りとか関係なくへこむ。思春期の男の子なら一般的な考えだと思うんだが。俺だけじゃないよね。

 

そういえば中学時代に他所の中学の女生徒に言われたときのことを思い出しさらに病む。誰かの発言が誰かに深い傷をつくる…その傷がさらに誰かの発言で開く、そういうのってあるよね。

 

 

悩んでいても仕方ないのでぶつからないように配慮しつつ進んでいく。なぜ年上であるはずの俺が気を使っているのかと思わないこともないが…。

幸いにも視線が刺さってこないのでペースを落とさずに歩き教室へとたどり着く。ポケモンの世界なら到着するまでに、チャンピオンロード並みの連戦に次ぐ連戦になってそうだな。あの人たち有無を言わさずバトルしかけてくるからね。目が合ってないのに目が合ったとか押し付けがましい意見を述べる少年少女、おとなのおねえさんが蔓延ってるし。

 

 

 

教室のドアは開いておりそのまま入室する。ドアが閉まっていたら、ガラッと開けた際に一斉に視線を浴びる可能性がある。そして誰だよこいつみたいな目で見られる(可能性がある)のだ。

さっと教卓の上に教材を乗せてそのまま退室。

なんとなく、ちらっと教室内を確認してみる。まあ知っている人はいないから何も生み出さない行動なんだよな。ただしイケメンやらゲームの主人公ならば何らかのイベントが起きてた可能性がある。

 

「あっすんません」

 

廊下に出た時に女生徒にぶつかってしまった。教室へ向かう時は気を張ってたのに、教室から出る時は気が緩んでしまっていた。はぁ…さっきまでの配慮した行動が水の泡になってしまった。

心の傷を抉るような暴言はやめてくださいお願いします。せめて舌打ちくらいに抑えてください。

 

「いえ、こっちこそすみま…」

 

言葉が途中でとぎれてしまった。

すみま…?一応謝ろうと思ったけど途中で何で謝らなきゃいけないのか、ぶつかってきたのはそっちだろみたいな疑問を抱いちゃったのかな?ぶつかったのはこっちなので謝ってもらわなくても大丈夫なんだが、なぜ言葉が途切れたのか。

そんなことを思っても問いただしたりしない。面倒だしさっさと戻ろうと踵を返そうとしたところ、ぶつかった彼女から袖をちょんと掴まれた。

 

 

「て先輩じゃないですか、なんでこんなとこに?」

 

「あ」

 

最近の俺の脳内における考え事にて、ほんの数パーセントを占めている彼女が立っていた。ちなみに脳内の割合では6割は娯楽、3割は学校の課題、5分くらいは家族やら幼馴染やら。つまりほとんどこの後輩については考えてないといえる。先ほどの授業中考えてたのは、暇すぎたゆえに、というわけだからな…全然気にかけてなんかないし。

 

「Youこのクラスなの?」

 

「…なんでアイドル事務所の社長さんみたいな口調なんですかウケる」

 

いや、名前知らないしなぁ…。お前とかいうと舐めてんのかこらみたいな反応されそうだし、「君」はいけ好かないイケメン先輩や偉そうな上司が使ってそうだし、「あなた」はむしろ女性が旦那さんに向けて使うイメージがあるしな…(偏見)。もしかしたら自己紹介されてたのかもしれないけど俺が聞き逃してた可能性もあるので聞くに聞けないのである。

あれ?そういえば俺名前名乗ってなくない?

 

「…ちょっと野暮用があったんだよ」

 

適当に誤魔化しとこう。それがいい。

 

 

「あぁ、なるほどです」

 

ひょいと足を横にずらし上半身も少し動かし教室の中を覗き見て、教卓の上にある物を見つけ納得する後輩。

 

「私も運送業務を遂行してきたんですよ」

 

「係か何か?」

 

「いえ、授業中ぼーっとしてたからです」

 

「運が悪かったな」

 

「まったくです。先輩は?」

 

うんうんと頷きながら問い返してくる後輩。

 

「スマホいじってたんだから持ってけと」

 

「まじですか。朝の清掃作業と反省文お疲れ様で〜す」

 

びしっと敬礼のポーズをキメてのお疲れ様ですは並大抵の男性ならコロッと落ちてる。現に俺も落ちた。いや落ちたらダメでしょ。

そういえばクラスの男子が女性警察官の良さを力説してたが、なぜあんなにも熱を出していたのかわかった気がする…。いや、敬礼で落ちかけてしまっただけで女性警察官は関係ないような…てか何故敬礼=警察官のイメージが染み付いているのだろうか。

 

…じゃなくて、ここは一旦落ち着け、餅つけ…一旦calm downしろ…pounding mochi しろ…ルウ大柴みたいになってるが冷静さを取り戻した。英単語や連語を覚える時はルウ大柴みたいに使えば暗記できるよねといった関係ないことを考えられるくらいには思考は正常と化してるから。

 

 

「実はあれ持っていくなら清掃も反省文もなしでいいとだな」

教卓の上のものを指さしながら返答する。

 

「先輩半端ないって!後ろめたい行動しといてめっちゃ堂々としてるもん。そんなんできひんやん普通、そんなのできる?言っといてや、出来るんなら…校内新聞や…全部…」

 

「おれ握手してもらったぞ」

 

 

「ちょっ、入ってくるタイミング早いんですけど、もうちょっと待て」

 

 

「さーせん」

 

 

「「はは」えへへ」

 

急な大〇半端ないってネタをぶっこんできた後輩。それに乗っかった俺。

なお入ってくるタイミングが悪いとタメ口でダメだしを受けた模様。

 

でも、こういう会話が楽しい。

妹や幼馴染みとこういった会話がなかったわけじゃない。むしろ冗談交じりのトークばかりしていると思う。

 

でも2人との会話とは少し違う。ノリが違うとかじゃなくて…もう少し話していたい、そうすれば確信めいたものが掴める…と思う。

 

 

「「あの(さ)」」

 

「「どうぞ」」

 

こっちから話を出そうとしたら被ってしまった。

向こうが両の手のひらを向けこちらへ動かすので、こちらから切り出す。

 

「今日の放課後って何か用事ある?」

 

「…特にないですね」

 

首をかしげ、少し間を空けての返事だった。

 

「それで?」

 

「ん?」

 

「何か用事があるかって聞くから何ですか?ってことです。特に何もないけど聞いてみたとかですか?」

 

「いや、ゲーセン一緒に行かないかなって、この前言ってたから」

 

「あー…そういえば言いましたね。…そんなに私と行きたいんですか?」

 

口元から白い歯を覗かせ、やや上から目線の返しを繰り出してきた。

 

「…そうだな」

 

 

キーンコーンとチャイムが鳴る。まだ先生の姿は見えないがほとんどの生徒は教室内に入っていた。

それにここは1階であり、自分の教室にはもう先生が着いてしまっているかもしれない。

この辺で戻らなくては。

 

「…じゃ決まりです。ホームルーム終わったらメッセージください」

 

「わかった」

 

廊下を駆け足で進み、途中先生とすれ違いながら教室へと戻る。

開いているドアの隙間からささっと教室内に入り込み、何事もなかったように席につく。

 

 

「何か一言ないのか?」

 

「遅れてすみませんでした」

 

 

残念ながら授業が始まっていた。

 

その後、授業の内容があまり頭に入ってこなかったのは多分放課後のことを考えていたせいだな。ゲーセン行く予定なんか本当はなかったんだけどなぁ…お金もないし。

 





平成で無駄にした時間を現在、ロスタイムとして扱ってるのでまだ平成を過ごしていると言っても過言ではないです。
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