東方水晶録   作:かいせいクリュウ

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さて、投稿遅れました!
書き終えた瞬間にスマホが落ちて原稿が吹き飛んだので
ふて寝してました笑
悔しさをバネに5倍くらい書いてやりしたよ…
では!


天狗との鬼ごっこ

 

 

天狗たちから離れた広場の端っこに紫と移動する。

作戦会議というか、最終確認みたいなもんだ。

 

移動するや否や、紫が真剣な顔で話しかけてくる。

 

 

紫「海星様…この天狗との闘いに全てがかかっておりますわ。お手を煩わせて申し訳ありませんがよろしくお願いします。」

 

 

紫にとってこの天狗との交渉は夢に向かっての自分の力で紡いだ第1歩なのだからな。

 

 

それくらい俺もちゃんと分かっている。

 

海星「ああ、大丈夫だ。紫、君の夢の実現に協力すると言っただろう。安心して待ってろ。」

 

紫に優しくも、力強く伝える。

天狗との闘いは楽しみではあるが、ちゃんと紫のことを第1に考えている。

自分の大切な夢について、俺を頼ってくれたならもちろん全力で応えるつもりだ。

 

 

紫「恩に着りますわ。」

そう言って頭を深く下げた。

 

海星「これから上に立つものがそう簡単に頭を下げるものじゃないぞ。

紫、それに俺らは友達なんだ。ありがとうでいいんだよ。」

 

そう注意しつつも笑顔で返す。

 

紫「海星様…ありがとうございます。」

ハッとしたように紫も笑顔になる

 

紫の将来をすこし想像してみようとするが、まったく分からない。

ここから長い年月をどれだけかけてもいいのだ。

まったく想像できない明るい未来に自分も立ち会えることを嬉しく思う。

人間を辞めたことに、最初こそ後悔していたが、考え方を変えるだけで、こうも人生が明るくなるとは知らなかった。

 

 

そうこうしているうちに

 

 

 

紫が提案した

最終準備の10分が終わろうとしている。

 

紫にそろそろ戻ろうと声をかけようとするが

 

海星「ん?」

何やら視線を感じ、天狗たちの方を振り向く。

すると、椛がこちらをじっと見ていた。

 

振り向くと椛は少しびっくりしたように、

しかし嬉しそうにこっそりと口を動かした。

 

「が ん ば れ。」

 

 

 

海星「ふふ。」

その健気な可愛さに思わず笑ってしまい

 

「ま か せ と け。」

 

と、こっそり口を動かして伝えてやる。

 

ぴくっと動いたあと椛の尻尾がひらひらと振れる。

 

 

 

 

 

海星「さて、そろそろ行こうか、紫。」

 

紫「えぇ。行きましょうか。」

 

2人は広場の先程の場所に向かってゆっくりと歩く。

 

 

 

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

にゅん…。

 

黒と赤の鞍馬館を背に

再度、紫が大きなスキマを2つ展開させる。

 

右には海星の背中が、左には文の背中が映っている。

まるでゲームのTPS画面のようだ。

 

 

天狗たちは再び現れたそれを不思議そうに興味深く見つめる。

 

 

天魔「さて、10分経過したな。早く始めよう。」

 

天魔もわくわくを隠しきれていないのか

急かすように話を進める。

 

 

紫「そうですね。それでは逃げる方の射命丸文が先行で出発してもらいます。

その3分後、東方海星の出発となります。

1時間経ったあとに、お宝を所有していた方が勝者となります。

これが私の考えたルールとなりますが、異論は。」

 

 

文「はい、このルールを聞くに、仮にお宝を取られた後に、わたしが取り返せばまだ勝てるということでよろしいですかねぇ?」

 

文は顎に手を当てながら、紫に問いかける。

なるほど。

鬼ごっこというからには、タッチして終わりではないようだ。相手がまた鬼となり(この場合は逆だが。)試合は続くということだろう。

 

 

紫「そうなりますわ。どちらにも平等にチャンスがあるようにそうさせていただきますわ。」

紫は扇子を口元に当てながら答える。

なるほど、なにか考えがあるようだ。

 

文「なるほど…。わかりました!異論は無しです!」

文は少し考えたあとすぐに返事をする。

まあ最後まで逃げ切り、負けないと踏んでいるからだろうが。

 

海星「能力は有りなんだろう?おれも異論は無しだ。」

1時間というのもちょうどいいな。

 

 

両者が合意したので

 

紫「ええ、能力の使用は許可します。

両者握手を。」

 

お互いスキマの下に立ち。握手をする。

 

海星「正々堂々いい戦いをしよう。」

笑顔でそう伝えると。

 

文「えぇ、手加減は無しです。」

キリッと真剣な顔で返してくる。

これは手強そうだ。

 

「文!!がんばれ~!」

「射命丸!!頼んだぞー!!」

 

天狗たちのボルテージも最高潮だ。

 

 

紫「それでは、天魔が天狗側の開始の合図をお願いしますわ。」

そう言って隣で居る天魔に主導権を渡す。

 

 

 

天魔「承った。」

紫の隣でキセルを咥えていた天魔が声を上げる。

 

 

さく…さく…。

 

文の前まで歩いていく。

草原の草が不自然に風に揺られ、天魔の通る道を創っていく。

 

 

天魔「それでは、鴉天狗。射命丸文よ

全力で闘ってこい。

天狗として産まれたからには、我の元でその使命を全うせよ…。」

 

先程とは、打って変わった声色で口上を述べていく。

 

天魔として、天狗という種族の長として、1人の天狗の士気を上げる。

大したカリスマ性だな。まったく読めない女だ…。

 

海星はさらにこの天魔の認識を変える。

 

 

 

 

 

 

文「はっ!!仰せのままに!」

 

文も最大限の力を発揮する。

溢れんばかりの妖力が文から出ているのが感じ取れる。

 

 

ヒュン!!

キセルを持った手を

力強く横薙ぎ一閃。

 

文の足元に風が巻き起こる。

それと同時に

 

天魔「開始ッ!!!」

 

 

 

文「ハァッ!」

びゅん。というよりかはギュンという擬音に近いだろう。

 

 

 

天魔の合図の瞬間に文は遥か彼方まで飛んで行っていた。

 

 

海星「速いな…。」

 

天狗たち「やっぱ文さんが最速だな。」

 

そういいながら天狗たちはうんうんと頷く。

 

 

ちらりと左のスキマを見ると

目にも止まらぬ速さで木々や景色が流れて行っている。

現代で言う新幹線のようだ。

妖怪はほんとに身体の造りが人間とは違うことをまじまじと理解させられる。

 

 

「あの兄ちゃんは大丈夫なのかぁ?」

「へっ、ただの人間に見えるけどな。」

心配そうに、はたまた馬鹿にしたようなヤジが聞こえる。

 

椛「きっと海星さんには考えがあるんですよ!頑張ってください!」

椛も心配になりながらも女の子の白狼天狗たちの群れから応援の声を上げてくれる。

 

椛の性格からして、みんなの前で声を上げるなんて恥ずかしいだろうに、ほんとに優しい子だ。

てかなんだあの可愛い群れは。

 

 

「あれが…椛ちゃんの未来の旦那さんか~」

「かっこいい人だね!椛ちゃん!」

「や、やめて…」

椛が顔を真っ赤にして頬に手を当てブンブンしている。

なにやら白狼天狗たちの群れがガヤガヤしてきたが、距離があり聞こえない。

 

 

紫「さて、そろそろ3分後です。海星様」

紫が呼びかけてくる。

 

海星「はいよ。楽しみだな…。」

呼びかけに応じて紫の方を向く。

 

 

 

天魔「私達も楽しみだ。期待に答えてくれよ、東方海星とやら。」

 

出会った時と同じように期待と興味の目で天魔は見てくる。

 

 

 

海星「あぁ。しっかりと見ててくれや。」

これ以上こいつと話してると調子が狂いそうだ。

なので、早々と森の方を向く。

 

森は、陽の光を浴びていつもより大きく深く美しい緑に見えた。

 

文が向かったであろう地点にとりあえず向かおう。

 

 

確実に勝つなら59分のところで筆を取ってしまえばいいのだが、そんな無粋な真似はしない。

端から全力で向かう。

 

 

紫が扇子を広げて前に出てくる。

 

紫「百鬼夜行の東方海星、私の友人として力を貸してくれたこと、感謝しますわ。貴方を信じているから…貴方も私を信じて、全力を出してくださいませ。」

 

 

紫が、ゆっくり、そしてはっきりと口上を述べる。

百鬼夜行の東方海星か…。

百鬼夜行とは本来、妖怪達の群れのこと言うのだが。

まあ、【全てが俺の中に居る】からあながち間違っていないか…

いいな、気に入ったよ。

 

 

 

海星「久しぶりにカッコつけて見るか…。」

紫にも聞こえない声でぼそりと呟く。

 

にやりと徐々に口角があがってしまうのが

自分でも解る。

 

 

能力発動。

 

 

【水晶を操る程度の能力】

 

 

ピキっ…ピキっ…。

誰も気づかれないほどゆっくりと足元の地面を水晶が侵食する。

 

地面に編み込むイメージで。

 

 

 

 

海星「百鬼夜行。東方海星、参る!」

 

いつも飛翔する際は霊力を使用するが、今日は妖力を足に纏わせる。

 

ズズッ…ズッ…。

 

海星「紫、おれの後ろをスキマで守れ」

 

足元の草が高濃度の妖力に当てられて

黒紫に枯れていく。

 

ざわついていた天狗たちも開始の合図を待つ。

 

 

 

 

 

つかの間の静寂…。

 

正面の森を揺らす風の音のみとなった…。

 

 

 

 

 

紫が開いた扇子をスっと前に向け

パンッ!と開始の快音と共に閉じる。

 

それと同時に

 

紫「開始ッ!」

 

 

 

妖力で人間の域を超え、限界まで強化した脚で、バネのように編み込まれた水晶の足元を踏み込む。

 

海星「疾ッ!!」

 

 

 

 

その瞬間空気が爆ぜた。

 

 

 

 

パァン!!という先程の扇子とは違う音。

それは音速を超える合図。

一瞬にして視界が広場から森へと飛びこむ。

身体強化された身体でも自身がワープしたのかと錯覚するくらいだ。

 

 

そして置き去りにした風が

 

天狗たち「うわぁあぁ!!」

 

天狗たちを襲う。

 

紫「なるほど。こういうことでしたか。」

 

にゅん…!

 

 

紫はスキマを展開し、抉れた地面などから天狗たちを護る。

 

 

天狗たち「ありがとう紫さんとやら…。」

 

天狗たち「なんなんだこれ…。」

 

 

よろよろと立ち上がった天狗たちは

右に写った海星の背中を追いかけるスキマをみて驚きの声を上げる。

 

 

現在、森の上空をまっすぐ飛んでいるようだが全くわからないのだ。

 

大きな木が見えたと思ったら、次の瞬間には遥か後方へ流れて行っている。

 

ここらの地形をよく知っている天狗たちでさえなにがどうなっているのか理解に苦しんでいるようだ。

 

 

そのころの海星と言うと。

 

 

 

海星「空を飛ぶのは好きだが…飛びながらの戦闘はなかなかコツが必要だな…。」

 

今は直線距離を突っ切っているだけなので問題ない。

 

 

 

 

海星「おっ…あれは…。」

彼方に黒い点が見えた。

それが徐々に人影となり形がハッキリとしていく。

 

 

文「全力を出せって言われたので、飛び続けたんですが。

さすがに人間相手に大人気なかったですかね…。」

 

文は速度を落としフワフワしながら悩んでいると。

 

 

ゾクッ…。

 

今までに感じたことの無い悪寒が文を襲う。

 

野生の感。いわゆる本能で前に飛びながら身体を捻る。

 

ヒュッ…!

 

 

意識が追いついてきて、文は今の状況を理解しようとするが…。

 

文「なっ!?」

 

海星「ん?…躱されたか。」

 

 

文は思わず驚愕の声を上げる。

そこには先程までいた場所に腕を伸ばした海星の姿があった。

 

コンマ1秒反応が遅れていたら筆を盗られるまでとは行かないが後手に回っていただろう。

 

 

文「あややや…海星さん。お早い到着で。」

 

 

海星「文こそ。さすが皆の評価が高いだけある。」

 

 

 

文(あややや…。海星さん。想像以上に速いですね…。)

 

冷や汗が背中を伝う。

先程までの、のんびりした海星の面影は既に無く。

どちらかといえば妖怪達に雰囲気が近い。

 

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

おいおい!!文さんに追いついちまったぞ!

 

あの兄ちゃんどーなってんだ??

 

広場で見ている天狗たちにも文への不安が漂い始める。

 

 

紫「遠隔操作のスキマですら引き離されそうになるなんて…。末恐ろしい方ですわ…。」

 

紫も改めて海星の強さを知る。

 

 

しかし。

 

天魔「文の強さはここからだ。

さて、どうする?東方海星よ。」

 

天魔だけは期待の眼差しでスキマを見つめる。

 

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

文「なるほどなるほど。あの自信の理由が解りましたよ。すこし認識を変えないといけないですね…。」

文の焦りの表情は少し落ち着いてきた。

 

 

海星「…。」

一方、顔には出ていないものの、海星は逆に焦っていた。

 

この一瞬でケリがつかなかったのは、

正直、失態だ。

唯一のアドバンテージが消えたと言っても過言ではない。

 

 

今までは、バネの力と妖力の肉体強化の惰性で飛んでいただけなのだ。

止まってしまった今。文を超える速度を出すことは難しい。

 

 

スタート直後の文が油断している隙に取れれば御の字だったのだが。

 

 

 

逆に警戒されてしまった…。

そして文が次に取る行動は…。

 

文「そのスピード。森の中でも出せますかね?」

にやりと笑った後

 

 

真っ逆さま、森に向かって速度を上げ突っ込む。

 

海星「くっ…させるか!!」

 

 

ピキピキピキ!!

 

 

近くに媒体が無いので

 

腕から水晶を伸ばして捕まえようとするが…。

 

文「あややや。それが能力ですか?やけに焦ってますねぇ…。そんな速度じゃ、可愛い私を捕えられませんよ。」

 

パキパキパキ!!

ヒュッ!ヒュン。

 

縫うようにして水晶を華麗に躱していく。

 

 

文「美しい能力ですねぇ。それでは。」

ザンっ…!

 

水晶から容易く逃げ切った文は森の中へと入って行った。

 

 

 

 

 

海星「…。」

 

ザッ!

 

能力を切り、追うようにして森に入るが…。

 

 

海星「これは…。」

 

森の中は

ブナやクヌギなどの大きな広葉樹林が鬱蒼としており。

光も届かないところが辺りを薄暗く覆う。

 

 

遥か彼方、視界から文のスカートがヒラリと消えた。

 

追いかけようと急いで再び飛ぶが…

 

海星「うおっ…。」

木を避けた先にまた別の木が。

 

枝や木の幹を避けつつ速度を出すことが出来ない。

 

 

 

海星「やられたな…。」

 

 

それを嘲笑うかのように風が海星の頬に伝う冷や汗を撫でて通り過ぎる。




通り名ができましたね!
さて、次回どうなる…
お読みいただきありがとうございます!
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