東方水晶録   作:かいせいクリュウ

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お久しぶりです。
自粛にならない職業のため活動が大幅に遅れましたことをお詫び申し上げます。
これからゆっくりと物語が進んでいきますゆえ。
それでは


誤解の婚約

ポツリと立ち尽くす椛

 

なにやらひどく困惑しているようだが、どうかしたのだろうか。

応援してくれていたので、喜んでくれると思ったのだが。

 

いや、こちらから何も言わないのは悪かったか…。改めてお礼を言わなくてはな。

 

 

そよそよと揺れる草をサクサクと踏みしめて椛と文の元へ向かう。

 

海星「椛、ありがとう。君が頑張れと言ってくれたおかげだ。勝てたよ。そしてこうして約束通り無事に君の元へ戻ってこれた。」

 

素直に思ったことを伝える。

 

 

椛「あぅぅ…」なぜか俯いてしまう椛

耳がへにょりとしている。

 

海星「あ、すまない…天狗としては天魔が勝った方が良かったのかもしれないな。」

その通りだ。天狗という種族なのに俺のことを応援する義理はないが…

 

 

その思考は椛の手によって遮られた。

 

椛「い、いえ!あの…やっと来てくれたことがうれしくて…。」

「ほんとに…無事に…。」

 

涙ぐんだ椛が尻尾を振り回しながら両手を握ってくる。

自分のよりも小さな手が包み込んでくる。

慣れていないのか、緊張しているのか椛の手はとても暖かかった。

 

海星「喜んでくれたみたいでなによりだよ。」

そう言って頭を撫でる。

この前撫でた時の肌触りが思いのほか良くて再度触りたくなってしまったことは黙っておく。

 

相変わらずふわふわでこちらも自然と笑顔になってしまう。

 

 

文「おー、おアツいことでして。」

コホンと咳払いをしながら文がこっちを睨んでくる。

なぜ睨まれなくてはならないのか。

鋭い目に思わずどきりとする。

 

文「何はともあれ、海星さんおめでとうございます。天魔様に吹き飛ばされた時は、さすがに天狗としても肝が冷えましたよ。ほんとに無事でよかったです。」

そう言って労いの言葉をかけてくれる。

なんやかんやで、山で道案内をしてくれた最初のほうからずっと心配してくれていたからな。

 

海星「ありがとう、文にも感謝しなくてはいけないな。新たな能力の使用方法も身につけたし、今後の課題も見つかったよ。」

 

そう言って懐から写真を取り出す。

 

海星「ほら、恥ずかしい思いはあるが、これ返すよ。」

文に写真を渡す。

椛と俺の写真だ。

 

文「あ、返していただけるんですね!」

そう言って腕を伸ばす。

 

こいつめ…反省の顔色がない。

受け取る前に一言言わなくてはな。

写真をひょいと手の届かないところに上げながら。

海星「これからはしっかりと確認を撮る事だ。椛も返してしまうが、いいよな?」

 

椛はこくりと頷く。

しっかりと文にマナーについて念押しをしながら写真を返した。

 

 

 

文「ありがとうございます!これ、我ながらいい写真ですねぇ!結婚式の時に飾りますか。」

そう言って文はニヤリとした顔で椛をおちょくるが…。

 

椛「も、もう!文先輩!」あわあわした様子で文に怒る。椛が目上の人に対して怒りの感情をあらわにするなんて珍しいようだが。

そんな嫌だったのか。

 

海星「おれと椛?

嫁入り前の女の子にそんな滅多なこと言うもんじゃないぞ。椛にも迷惑だろうが。」

やれやれという顔をするが…。

 

 

椛・文「「え?」」

椛がびっくりしたような顔で、文はキョトンとした顔で同時に固まる。

 

 

海星「…どうした?」

思わず聞くと。

 

文「海星さん、椛と結婚したかったんじゃないんですか??

そのためにあんなに傷だらけになって戦ったのでは…。」

文がなにやら早口で質問してくる。

しかしその質問の内容はとんちんかんで。

 

椛「あ…。え?かいせ…いさん?」

椛に関しては何やらひどく絶望したような顔でオロオロしている。

何を勘違いしたのか。

 

海星「そんな話、いつ出たんだ?

俺は人間との共存について天狗に協力してもらう交渉に来ただけなんだが…。」

少なくとも自分は1度も『結婚』なんて単語は言っていないはずだ。

そもそも出会ってまだ数日の椛との結婚なんて椛が許してくれるわけないのだから。

 

 

文「そ、そんな…。確かに話が噛み合わないことが何回かありましたが…。

…ん。ということは。」

文はなにか真顔で思考を進める。

 

 

椛「そんな…勘違いだったなんて…?早とちりしてしまったのでしょうか?

うぅ…恥ずかしいです…。それに…それに…。」

 

ポロリ。

 

 

椛「あ…れ?…なんででしょうか?…こんな…こんな…。」

 

1粒の涙が椛の頬を伝ったと思ったら、堰を切ったように涙が溢れ出す。

 

海星「お、おい。椛、大丈夫か?」

慌てて親指で涙をぬぐってやる。

 

椛「ぐすっ…ぐすっ…。…うぅっ。」

それでも尚溢れ出す涙に親指だけではどうすることも出来ずに、そのまま裾の端を当ててやる。

 

文「…椛。落ち着いてください、海星さんも困ってしまってますよ。」

文が椛をゆっくりと優しい口調でなだめる。

 

海星「椛、大丈夫だ。落ち着いて。良ければゆっくり説明してくれ。」

そう優しく空いた手で頭を撫でながら問いかけてやると。

 

椛「すみません…。ぐすん…。あの海星さんと結婚する、いや、出来ることになって驚いてたんですけど、それが突然無くなって…なんか…うぅっ…ごめんなさい…自分でも今の心が全然わかんなくて…。」

そう言って落ち着いてきたが再びポロリと涙を落とす。

 

海星「そうだよな。椛は試合中も気が気じゃなかっただろうな。

ずっと大変だったよな。でも良かったじゃないか、勘違いだったんだから。」

そう、結論は結婚はしないのだ。

唐突に何処の馬の骨かもわからない奴と結婚しろなんて言われたら泣いてしまうだろう。

そう優しく椛に声をかけてやる。

 

海星「だから大丈夫だか」

 

椛「違うんです!」

突然焦ったように大きな声をだす。

 

椛「ち、違うんですよぉ…。わかんないんですけど。すごくぽかぽかした気持ちになれたんです!!だから…だから…勘違いで良かったんじゃないんです…。」

そう言って肩を小さく揺らしながら俯く。

 

 

文が耳元に顔を近づけささやく。

 

文「海星さん。椛は試合中すごく期待の目であなたを見ていたらしいのです。それが何を意味するか、もうお分かりですよね?」(小声)

 

文が椛に気づかれないような小声で伝えてくる。だが、もうお分かりですよね?と言われてもだな…

期待…期待…。

 

一か八かの大勝負に出てみる。

 

海星「椛。聞いてくれるか?」

そう言って椛の俯く先の手を握る。

 

椛「は、はい…。」なにか伝えたい気持ちを受け取ったのか。自分にとって大切な話がくることを察したのか、うなだれるのが少し止まった。

 

海星「椛。まずはありがとう。こんな出会ったばかりの俺のことをそんなに信頼してくれているとは思っていなかった。結婚…。結婚まで考えていてくれたのは驚いたが…。椛を惑わせてしまって、申し訳なかった。落ち込んでいるということは、悲しませてしまったのだろう。」

 

 

椛は涙ぐんだままこちらを見つめる。

自分の言葉を一言一句聞き逃さないように。

 

 

 

 

海星「椛とはまだ出会って数日だ。お互いのことを知らない。君のような素敵な女性の人生を安易な気持ちで踏みにじる事は出来ない。

だから…君のことをこれから教えてくれないか?」

 

まあ、踏みにじる気なんてないがな。と笑って付け加える。

 

 

 

椛もすこし俯いたあと、大きくうなずく。

椛「はい!そう言ったからには、海星さんのことたくさん教えてくださいね?約束ですよ?」

そう言って、右手を前に出して握手を求めてくる。

 

海星「ああ、約束だ。」

そう笑顔で握手に応じる。

 

 

 

ぐいっ。

 

すこし引っ張られて、

 

椛「私のこともたくさん知ってくださいね?

私、こう見えて諦めが悪いんですよ?」

 

そう涙目ながらも、悪戯っぽい顔を浮かべて小声で呟く。

 

 

 

いつもと違う椛に呆気に取られる。

海星「ふふ、すでに新しい一面が見れたようだ。」

 

 

 

 

文「なーんだ。明日の結婚の大スクープを独占するつもりでしたが、とんでもない勘違いだったんですね。

まあ、明日の記事には困りませんが。

では、おとなしく自宅に戻り、宴会の準備でもしますか。」

 

 

そう言ってこちらをチラリと見てから。文は飛んで行った。

その横顔は何故か嬉しそうで。

 

 

 

天魔「なかなか面白いことになっていたようじゃの〜。ではまた後での。いくぞ椛。」

 

椛「はっ!」

そう言って2人も飛び去っていった。

 

紫と2人残される。

ひと段落して一息つけると思っ

 

 

紫「海星様は女性の方に人気でございますね。」

そう言いながらこちらを見てくる。

一息つけそうな話題ではないな。

疲れたので逃げさせてもらおう。

 

 

海星「ははは、そんなことはないさ。」そう手をひらひらさせながら歩き出す。

 

海星「ほら、紫。いくよ」

そう言いながら鞍馬館の方へ歩いていく。

 

 

紫「…ええ。そうしましょうか。」

半歩後ろから静々とついて歩き出す。

 

 

 

皆の様々な想いを乗せた風が止むことはなく。

そよそよと背中を撫でていく。

 




これから更新スピードを徐々に上げていきます
ご感想あればモチベーションにもなりますので、感染症に負けないように皆さんで頑張りましょう!
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