ドルヲタと悪党とインフィニット・ストラトス   作:ミュラー

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多少のガバは見逃してください(全力土下座)




よろしくお願いします


ヘルブロスの決意

「……お前達が交戦していたあの怪人、あれについて知っていることを全部話せ」

 

かつて2人が侵入者として尋問された時と同じ応接室のテーブルの上にアリーナのカメラに捉えられたブラッドスタークの写真が並べられる。幻徳と一海は黙ったままだった。

千冬はため息をつく。

 

「黙っているだけではなにも分からん。……学園の上層部からもお前達とあの怪人の関係を疑う声が上がっているんだ」

「…………知りません」

 

一海の言葉に千冬は舌打ちした。明らかに嘘だ。証拠に目が凄く泳いでいる。千冬は手元に持っていた封筒から新しい写真を取り出し2人に見せつけた。

 

「これはあの赤い怪人の仲間が持っていた武器だ。見覚えがあるだろう」

 

そこには《ネビュラスチームガン》を手にした青い歯車の装飾で半身をおおった怪人の姿。それを見て一海と幻徳は思わず顔を見合わせた。

 

「リモコンブロス……!?まさか」

「鷲尾兄弟、か……」

 

言ってからしまった!と2人は慌てて千冬の方へ顔を向ける。彼女はその反応を見てニヤリと口元に笑みを浮かべた。

 

「ほう、リモコンブロスか……成程。名前まで知っているのか……さて、この怪人たちについて知っていること全部話してもらおうか」

 

千冬はゴキゴキと拳を鳴らしながら立ち上がる。2人は思わず抱き合いながら千冬の姿を見上げた。

 

 

 

 

 

「地球外生命体エボルトに……パンドラボックスに……スカイウォール?すまない、一度整理させてくれ」

 

2人からかつての世界での戦いについての情報を一通り聞いた千冬は眉間を抑えながらソファに座り直した。以前の彼らから聞いた話は、彼らの世界にはライダーシステムという技術があるということ、ネビュラガスという特殊なガスを人間に注入することでその肉体を強化する事が可能であり、2人の体にはそのガスが注入されているという事の二点だけである。突然飛び出してくる彼らが元いた世界の情報と新事実に千冬は軽く目眩を覚えた。それでもすぐに頭の整理を終え冷静な表情に戻る辺り流石は教師と言ったところか。 自分で一海と幻徳の話をまとめた紙に目を向ける。

 

「……成程、お前達の使用するライダーシステムとやらは元々はあのエボルトとやらに対抗する為に造られた物ということか」

 

皮肉なものだな、と千冬は小さく呟く。元々は平和のため、人々のために作られながら兵器として運用される。その経緯はISの成り立ちと非常に似ていた。異なる点はライダーシステムは最終的に元の目的通り平和の為の力として使用されたという所か。ISもいつか元の通り宇宙開発の為の技術として使われる日が来るのだろうか。自らの親友が生み出し、そして自分自身が兵器としての方向性を確定させてしまったIS技術を思い浮かべ、憂鬱そうな表情をした。

 

「……それで、お前達はそのエボルトとの戦いの中で突然こちらの世界に飛んできたという訳か…」

 

一海と幻徳は千冬に全てを語ったわけではなかった。自分たちがかつての世界ではすでに死んだ筈の存在であること、幻徳がかつてブラッドスタークを名乗っていたエボルトと組んでいたこと、ついでにエボルトが従えていた2人の怪人も幻徳の元仲間であること、あと自分たちの本当の年齢。

言ったら色々と面倒なことになりそうな部分は端折ったが千冬は疑問を浮かべる様子もない。受け入れがたそうな表情はしているが。

 

「ふん、これらの存在が知れ渡ったら混乱が起きるから黙ってただと?子供が無駄な気遣いをするな」

「ひゅみまへん(すみません)」

「へもほほまへやるのはひふらなんへもやりふひはほほほひまふ(でもここまでやるのはいくらなんでもやり過ぎだと思います)」

 

千冬の向かい側に座る一海と幻徳の頬は真っ赤に腫れ上がっていた。千冬の脅迫にもめげずに黙秘を貫いた結果、「それなら実力行使だ!」と口を割るまで往復ビンタをされ続けたのだ。グーで殴られなかっただけマシだろうか。

 

「……兎に角、このエボルトとやらの対策はこちらでも考えよう。……それにしてもお前達の話を聞く限りではこの…ブロス?がエボルトに従っているのはおかしな話だな」

 

千冬の言葉に2人は頷く。かつての世界で2人組の歯車の怪人「エンジンブロス」と「リモコンブロス」、そしてそれに変身していた鷲尾兄弟はエボルトへ反旗を翻し、彼の手で消滅させられていたはずだ。いくら蘇ったとしても自分たちを殺した相手(厳密には殺した相手と同じ存在)に従おうとするものだろうか?

それにスカイウォールで三分割された日本でエボルトと手を組み、世界を手中に収めようとした軍事企業「難波重工」 その会長である難波重三郎が設立した孤児院で育てられた子供達、通称「難波チルドレン」の難波への忠誠心は一海も幻徳もよく知っていた。特に幻徳はその忠誠心によって一度命も救われている。だからこそ、その難波チルドレンである鷲尾兄弟が難波会長を殺害したエボルトの側についているのが理解できないのだ。

いや、もしかしたら知らないのかもしれない。幻徳は考えた。よく思い出したら難波重三郎がエボルトに殺害されたのは鷲尾兄弟が殺害された後である。それを知らずにエボルトに協力してる可能性もある。

 

「もひはひはら、ははまにひひほめふはもしれまへん(もしかしたら、仲間に引き込めるかもしれません)」

「なんだ?何を言ってるか全くわからん」

「………………」

 

幻徳の非難するような視線を気にすることなく、千冬は証言をまとめた紙を畳んで封筒にしまうと立ち上がった。

 

「取り敢えずこの情報は上の方でも共有させてもらう。怪我をしている所悪かったな」

「ふひろへははへはへはんでふへど(むしろ怪我させられたんですけど)」

「悪いな。何を言っているのかさっぱりわからん」

 

一海の責めるような目線をかわすように千冬はスタスタと歩いて応接室を出ていってしまった。

2人は赤く腫れ上がった顔を見合わせる。

 

「ほひはく、ほへはひははざーほへへるほはへなひゃな(とにかく、俺達はハザードレベルを上げなきゃな)」

「はは、ははへっひゃひゃひひゃほわへねえ(あぁ、やられっぱなしじゃ終われねぇ)」

 

 

拳を突き合わせる2人。その顔からはいつの間にか医務室での落ち込んだ様子は消え去っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま戻りましたよォっと」

 

世界のどこか、誰も知らない場所に存在するとある研究所。帰還の挨拶をする赤い、血の色のパワードスーツに身を包む存在に労いの言葉をかける人間がいた。この研究所の主、篠ノ之束である。

 

「スターク、回収してきたコアとデータ」

「先生、もっと何かをないのかぁ?頑張ったねーとか、お疲れ様ーとか」

「残念だけどこれが私流の労いの言葉なんだよね」

「全く……」

 

やれやれと肩を竦めながらスタークと呼ばれた存在は束に何かを渡す。その様子を後ろから見ながら「リモコンブロス」の変身者、鷲尾風(わしお ふう)はこの奇妙な天才、篠ノ之束が赤い男「ブラッドスターク」ことエボルトへと向ける言葉の中に含まれる敵意を見抜いていた。無論、自分が気付いているのだからそれを向けられている当事者であるエボルト自身気付いているのだろう。それでも、エボルトが束に対して怒りなどを向ける様子を風は見たことがなかった。

 

(本当にこれがあのエボルトか……?)

 

この世界に来てから共に行動するようになりもう2週間ほど経つ。その期間で風は同じ疑問を何度も浮かべた。

あの、常に人を馬鹿にしているような態度は飾りだ。一見ふざけているように見えてその実プライドはとても高い。それが、かつての世界で風がエボルトに対して抱いた感想である。そのエボルトが、この1人の人間に対し明らかに敵対しないように気を使っている。それはあの世界でのエボルトの味方として戦い、そして最後は敵として戦った鷲尾兄弟にとっておよそありえない光景であった。

 

「あっ!ふーちゃん!らいちゃん!おかえりー!どうだった?前の世界ぶりの日本は!」

 

エボルトへは敵意たっぷりの態度をとっていた束が、背後に控えていた風と、その弟である「エンジンブロス」の変身者(らい)へ花が咲くような笑顔を向ける。雷が「らいちゃん……」と困惑しながら呟くのが聞こえた。エボルトはため息をつくと部屋を出て言ってしまう。風は内心雷の困惑に同調しながら、しかしその表情は変えない。

 

「いえ、同じ国とはいえ我々の過ごした場所とはやはり違いますから」

「んもー無表情だなふーちゃんはー!もっと笑ってほらほら!」

 

顔を近付けた束に頬をむにむにとされる風。されるがままの兄の姿を見て雷は思わず「兄貴……」と声を漏らした。

どうしてこうなったのか。風は数週間前の出来事を思い返していた。

気づけばスカイウォールの見当たらない世界で山の中で弟と倒れていた。再開を喜び、そして困惑しながらも周囲を散策していた所なぜか束と出くわし、腰に下げていた《ネビュラスチームガン》を見られ───紆余曲折あって束の研究対象兼護衛役として束の研究所で生活することになっていた。流石にその研究所にエボルトも居た時は兄弟揃って驚いたが……何故かエボルトは自分たちを見てもなんの反応もしなかったのだ。そこに不気味さは感じるが、今のところ特に問題も起きていない。いや、1度だけあったか。

何かの拍子にエボルトに触れられた際に「このハザードレベルは……!俺の器になれ」とかなんとか言われたことがあった。普通に断ったが。嫌いだし。

あやうく戦闘になりかけたが結局その件は束の「2人に手を出すならドライバーの修復は中止する」という言葉によってエボルトが退いたことで決着したのだ。風はその時のエボルトの「仕方ない、諦めるか」という言葉を聞いた時心臓が止まるかと思った。

 

自分達の知るエボルトとこの世界で邂逅したエボルトの違いに戸惑いながらも、兄弟は警戒だけは解くことがなかった。

人を騙すのはあの宇宙人の十八番であることを2人は十二分に理解していたからだ。

 

(…………もしアイツが本性を表す時が来たら)

 

風は頬をむにむにされながら雷へ視線を向ける。弟は、その視線を受けて頷いた。どうやら思いは同じようだ。

 

(束さんは、俺達が守るんだ)

 

立場上、どこかの国に頼るということができない篠ノ之束。命の恩人である彼女を何があっても守るという決意をしながら、元人間兵器の兄弟は今日も天才の遊び道具にされるのであった。

 





割と細部は忘れてたりしてこれからも細かいミスとかガバ要素はあると思いますがお付き合い頂ければ幸いです。
指摘はもうバッチコイです。直せそうな所は直していきたいです。すんません。

取り敢えず1巻分はこれで完了です。
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