ドルヲタと悪党とインフィニット・ストラトス   作:ミュラー

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転校生はブロンド貴公子

謎のISと侵入者の乱入によって中止になったクラス対抗戦から2週間。

 

一夏と鈴があの正体不明のISとの戦闘で負った傷も回復し、学園はようやく元の日常を取り戻しつつあった。

 

だが、あの事件による傷痕は目に見えるところ以外にも存在している。

 

その1つが中国代表候補生、凰鈴音の変化である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜、げんげんにカズミンだ〜。やっほー」

 

夜、食堂へ向かって廊下を歩いていた幻徳と一海にのんびりとした声が掛けられた。パジャマ姿のクラスメイトの布仏本音、通称のほほんさんだ。その横の女子生徒は「ええっ!猿渡くんと氷室くん!?」と何やら慌てている。ラフな格好を見られたのが恥ずかしかったのだろうか。

 

「おす、のほほんさん。なんか用か?」

「あのさー、私たちと一緒にご飯食べよーよ」

 

特に断る理由もないので了承しようとする一海。その横をふらふらと体をよろめかせながら一人の少女が通り過ぎた。

 

「……あ、よう。鈴。体の調子はどうだ?」

 

一海の声を聞いて鈴はのろりとそちらへ顔を向ける。2人と、居合わせたのほほんさんとその友人はその顔を見て思わずギョッとした。そこにあの自信に満ち溢れた凰鈴音はなく、目の下に隈をつくりげっそりとした表情をしている。

 

「……ああ、一海ね。ごめん、ボーッとしてたわ」

 

自分の頬をピシャリと叩き背筋をピンと伸ばす鈴。だがその足取りはおぼつかなかった。再びノロノロとどこかへ向かおうとする。一海はひとまずのほほんさんからの誘いを断った。彼女は気にした様子もなく「またこんどね〜」と友人を連れて食堂へ向かっていく。

 

「大丈夫か凰、部屋まで送るぞ。ポテトが」

 

その様子を見て心配したのか幻徳が声を掛ける。なんで俺なんだよ!と一海は反発するが、鈴を心配する気持ちは一緒だった。

 

「これくらい平気、それにアタシには休んでる暇なんてないのよ……!」

 

そこで幻徳は鈴が向かおうとしている方向に気がついた。食堂とは逆方向、この先にあるのは寮の入り口と今2人が使用してきた階移動用のエレベーターだけだ。そして寮の入口から1度出てすぐの所にはIS訓練用のアリーナがある。鈴の言動から2人はなんとなく彼女がどちらへ向かっているの察する。

 

「まさか凰、その状態で特訓するつもりか?」

 

辞めておけ、と咎めるようにいう幻徳に鈴は思わず叫んだ。

 

「アンタ達には関係ないでしょ!アタシは強くならなくちゃいけないの!今のままで、いる訳にはいかないのよ……弱いままの自分を、許せない、から……」

 

感情をぶちまける鈴の目から大粒の涙がこぼれる。その言葉に対して、幻徳と一海は何も言い返せなくなっていた。その思いは、自分の弱さを許せないという怒りは、彼ら自身よく知っていたからだ。

 

戸惑う2人の前で鈴はゆっくりと顔を上げながら袖で自分の目元をこする。そしてまだ少し赤い目で2人を見つめて困ったような顔で笑った。

 

「……アハハ、ごめん。アタシ余裕無さすぎだよね、少し頭冷やしてくる。……今日は、休むよ」

 

ふらついた足取りのまま、今度は寮の入口ではなく階移動用のエレベーターの方へ向かっていく鈴。二人はその小さな背中にどう声をかけていいのかも分からず、ただ見送ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、俺のところに相談に来たのか?」

 

翌朝、一夏は自分の座る机の前に立つ二人の男を不思議そうな顔で見上げた。一海から昨夜のやり取りの話を聞いた一夏はうーんと首をひねる。

 

「ああ。アイツと1番付き合い長いのはお前だろ?」

「まあ、そうだけど……うーん、確かに俺も気になってはいたんだよなあ。でも最近は話しかけてもいつもよそよそしいっていうか、なんて言うか……」

 

話しかけないで、というオーラを剥き出しにされている。一夏はため息をついた。

 

「あいつ昔はケンカとかしてもそんな引きずるタイプじゃなかったんだけどなあ。お互い謝ったら、はい!この件はお終い!みたいな」

 

 一夏はおそらくクラス対抗戦前のいざこざをまだ引きずっていると思っているのだろう。一海は思わずはぁ、と呆れたようにため息をつく。

 

「いいか、鈴はな─────」

「SHRの時間だ。とっとと席につけ」

 

教室に入ってきた千冬の姿を見た瞬間、一海はすぐさま自分の席へ向かい背筋をピンと伸ばして着席した。どうやら先日の尋問の件は一海の中でトラウマになっているようだ。幻徳も仕方なく一夏に「後でな」と声を掛け、自分の席に戻っていく。

 

 

 

……近くの席で友人と談笑しながら、3人の会話にこっそり耳を傾けていたセシリアは、ぎゅっと握りしめられた自分の白い手を見つめながら何かを思案していた。

 

 

 

 

「今日から本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。それぞれのISスーツが届くまでは学校指定のものを────」

 

教壇の前に立つ千冬の言葉を、一海はほとんど聞いていなかった。無論、制裁を回避するために姿勢だけは良くして顔はしっかり教壇へと向けている。だがその鼓膜は殆ど機能しておらず、一海の頭の中は鈴についてで埋め尽くされていた。

それは別に恋愛だとかそういうものではない。単純な心配だ。

 

「ええとですね、今日はなんと転校生を紹介します!しかも2名です!」

 

「「「えええええっ!!?」」」

 

いつの間にか千冬の話は終わり、山田先生にバトンタッチしていた。そして山田先生の言葉にクラスがざわめいているのに気づき、周りを見回す。

 

(なんだ?転校生……?ついこないだ鈴が来たばっかりだろ)

 

一海は疑問を浮かべるがここが世界中から人間が集まる特殊な学校であることを思い出し、すぐにそれを払拭した。国も、人種も、皆集まるのだ。そういうことくらいあるだろう。

教室のドアが開く。それと同時にクラスのざわめきが一瞬で止まった。

 

歩いて入ってきた2人の転校生。その姿を見た一海も少なからず驚いていた。なぜならそのうちの一人は────本来ここに存在しないはずの男子だったのだから。

 

 

 

 

 

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れな事も多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします」

 

転校生の一人、シャルルはにこやかな顔でそう告げて一礼する。あっけに取られた様子のクラスメイト達を教室の最後列から眺めていた幻徳は首をかしげた。

 

「お、男?」

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方々がいると聞いて本国より転入してきました。」

 

誰かの呟きにシャルルはにこやかに反応する。そう、シャルルは制服のスカートではなくズボンを履いていたのだ。一見礼儀のいい立ち振る舞いに、中性的に整った顔立ち。髪はセシリアのような綺麗な金髪で、それを首の後ろで丁寧に束ねている。体は小柄で華奢に思えるほどスマートで、スラリと伸びた長い脚が目を引いた。

なるほど、男と言われれば誰もがそう思うだろう。貴公子という言葉がぴったりだ。だが幻徳だけは違う。

まるで後から男性的な立ち振る舞いを仕込まれているかのような違和感、立ち振る舞いや仕草の中にある「演技臭さ」を幻徳は完全に見抜いていた。

幻徳はゆっくりと手を挙げ、シャルルの「嘘」を指摘しようとして───動きを止める。

 

(……最近はLGBTとか話題になってるし、デュノアのもそういうやつかもしれない)

 

静かに手を下ろす幻徳。山田先生がその行動に気づき声をかけようとした瞬間、教室は歓声に包み込まれていた。

 

「きゃーーーー!!!男子!しかも4人目!!」

「4人もいて全員違うタイプって凄くない?」

「よりどりみどり!!」

「ヤベーーーーイ!!」

 

キャーキャー騒ぐ女子にシャルルは困ったような顔をしながら笑う。その表情がまた、なんというか絵画のような美しさでクラスの歓声が一層大きくなった。

 

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

 

両手をパンッと打ち合わせて教室内の歓声を抑えてから千冬がぼやく。山田先生も慌てたように千冬に続いた。

 

「そうですよっ!皆さんお静かに!まだ自己紹介は終わってないんですから〜」

 

その言葉にクラス皆の視線がもう1人の転校生へと向けられる。まず視界に入ってくるのは長く、綺麗な銀髪。腰近くまで伸びたそれは整えてあるというよりただ伸ばしっぱなしというような印象を受ける。次に、左目を覆う黒眼帯。もう片方の目は先程のクラスのシャルルへの反応も、今自分へ向けられている皆の視線も、全く興味がないとでも言うかのような冷たい目だ。

幻徳が受けた印象は「軍人」。シャルル同様ズボンを履いているが男子の服装、というより完全に軍服のようだ。身長は小柄なシャルルに比べても小さいが、その全身から放たれる冷たく鋭い気配が彼女の体を一回りも2回りも大きく見せていた。

 

「………………」

 

銀髪の転校生は、腕を組んだまま微動だにしない。右目でクラス全体を見回したあと、千冬へと視線を向けた。

 

「……挨拶をしろ、ラウラ」

「はい、教官」

 

ビシッと姿勢を直し、千冬へ敬礼する転校生──ラウラ。その様子にクラスの全員がぽかんとした表情をしていた。千冬は呆れたような顔をする。

 

「ここでは織斑先生と呼べ。それに私はもうお前の教官ではない。ここへ入学した以上お前もお前以外も皆等しく私の教え子でしかないぞ」

「了解しました」

 

敬礼していた手を腰につけ、クラスの皆へ向き直るラウラ。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ、出身はドイツだ」

 

静まり返るクラス。続く言葉を待っているのだがラウラの口はもう既にしっかりと閉じられていた。

 

「あ、あの……以上ですか?」

 

空気に耐えきれなくなったのか、山田先生がラウラへ尋ねる。だがラウラはその言葉に答えず、一夏へ視線を向けるとそちらへ向かって歩み寄った。

 

「えっ?何?何だよ」

 

いきなり近付いてきたラウラに困惑する一夏。だが彼女はそれに答えず黙って腕を振り上げた。

 

「貴様が教官を─────」

 

一夏へ向かって振り下ろされようとした腕、そこへ何かが直撃してその腕を弾く。幻徳の目の前で、座っていた一海が突然立ち上がり自分のペンケースをラウラの腕へ投げてぶつけたのだ。

弾かれた己の腕と、床を転がった一海のペンケースを見比べるラウラ。やがてその表情が怒りで歪む。

 

「なんのつもりだ、貴様」

「それはこっちのセリフだろ眼帯野郎。てめえこそなんのつもりだ」

 

言いながら後ろの席の幻徳のペンケースを手に取る一海。え?俺のも投げるの?という表情をしている幻徳にはお構い無しだ。

 

「貴様の名前はなんだ」

「猿渡一海だ」

「そうか、サワタリ。貴様と、織斑一夏は必ず私が始末してやる」

 

吐き捨てて、空いている席に座るラウラ。一海も舌打ちすると自分の席に座った。

一連の様子を静観していた千冬がわざとらしく咳払いをする。

 

「えー、ゴホンゴホン…これでHRは終わりとする。各人は着替えて第2グラウンドへ集合。今日は2組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」

 

パンパンと手を叩きながら千冬が行動を促す。幻徳は取り敢えず不機嫌そうな顔の一海を連れて教室から出た。このまま教室にいると女子の着替えが始められなくなってしまうのだ。

見ると一夏もシャルルを連れて教室から出てきていた。ふと幻徳はシャルルがどう着替えるつもりなのか気になったが、まあ男性として学園に来ている以上何らかの考えはあるのだろう。とすぐに頭を切り替え、男子用の更衣室へ向かった。

 

 

 

「改めまして、シャルル・デュノアです。シャルルでいいよ。

よろしくね」

「おう、俺は織斑一夏!一夏でいいぜ」

「氷室幻徳だ」

「……猿渡 一海だ。悪かったな、さっきは騒がしちまって」

 

更衣室について早速自己紹介をし、さらに教室でのラウラとの件をシャルルに謝罪する一海。それを見た一夏は慌てた。

 

「おい一海!あれは俺を助けてくれただけで……」

「うん、ボクも気にしてないから大丈夫だよ」

 

シャルルは微笑む。一海は「サンキュ」と小さく礼を言いながら時計を見て慌てた。

 

「あっ!時間やべえな、急いで着替えるか」

「えっそんな時間か?うおっ本当にやべえ」

 

言いながらバッと上着とシャツを脱ぎ捨てる一海と一夏。その姿を見たシャルルは顔を真っ赤にしながら2人に背を向けた。

 

「わわわわ!急になんで脱いでるのさ!?」

「なんでって……着替えるからだろ?なあ?」

「おう。……急にどうしたんだ?」

 

着替え続けながら不思議そうな顔をシャルルへ向ける2人。幻徳はため息をついた。スーパー朴念仁と29歳までネットアイドルの追っかけをしてた芋農家にそういう気遣いは難しいのだろう。……というか恐らくこの2人はシャルルが女であることに気が付いていない。

 

「何でもいいからさっさと着替えるぞ。先生に叩かれるのはゴメンだ、デュノアもさっさとしろ」

 

幻徳は言いながらさりげなくシャルルと一海らの間に体を割り込ませ、その長身で二人の視界を遮る。その言葉に一海と一夏は千冬の顔を思い浮かべて青ざめた。そして慌てた様子で着替える。シャルルはホッとした表情を見せ、幻徳の背中に隠れながら素早く着替えを済ませた。

シャルルに背を向け自分も着替えながら幻徳は小さくため息をつく。どう考えても無理があるだろ、その設定を押し通し続けるのは。

何やかんやで着替えを終えた4人は再び時計を確認し、大慌てでグラウンドへ向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

「では本日から格闘及び射撃を含む実践訓練を開始する」

「「「はいっ!」」」

 

千冬への返事の声がいつもより大きい。1組と2組の合同実習なので当然だが。

 

「今日は初日だ。まずは戦闘を実演してもらおうか。──オルコット!凰!」

 

千冬に呼ばれた2人がみんなの前に歩み出た。キビキビと歩くセシリアに対し、鈴は足がふらついている。千冬はそれを見て眉をひそめた。

 

「凰、体調不良か?」

「いえ、大丈夫です。問題ありません。……実演の相手は誰ですか?……セシリア?」

 

明らかに顔色が悪い鈴を千冬は眺め回していたが、やがてため息をつく。大丈夫だ、と判断したのだろうか。

 

「いや、違う。お前達2人にはペアを組んでもらう」

「ペア?相手は誰─────」

「私です!」

 

対戦相手を探して周囲を見回した鈴とセシリアの目の前に、上空からISを纏った山田先生が落下してきた。危うく地面にぶつかるかと思われたが、山田先生の体は地表スレスレの所でまるで動画の停止ボタンを押したかのように停止する。

 

「お前達の相手は山田先生だ。こう見えても先生は元日本の代表候補生、ISの操縦技術ならお前たちよりも遥か上を行くぞ」

「む、昔のことですよ。それに皆さんなら私なんてすぐ越えられますから」

 

千冬の解説に山田先生は照れたように頬を赤くした。その前では鈴とセシリアが唖然とした表情をしている。いや、2人だけではなくその場にいた生徒全員が驚いたような顔をしていた。

 

「小娘共、何を惚けている。さっさと実演を始めるぞ」

「え?あの、2対1で……ですの?」

 

戸惑いながらのセシリアの言葉に対し、千冬は口元に笑みを浮かべる。そして2人を挑発するかのように答えた。

 

「安心しろ、今のお前達では山田先生の足元にも及ばん」

「……へぇ…なら、見せてもらおうじゃない!!」

 

 

千冬の挑発に反応した鈴がIS「甲龍」をその身に纏い、ゆらりと体を揺らす。次の瞬間、一瞬で加速した鈴が山田先生へ向けて巨大な青龍刀《双天牙月》を振り上げていた。その動きはまるで先程まで体調が悪そうに見えた人間のものとは思えないほど速い。

 

 

瞬間加速(イグニッション・ブースト)!?」

 

一夏は思わず叫ぶ。その加速は、クラス対抗戦で一夏が使用した技能と同じものだった。鈴に勝つために一夏が仲間の協力の元ようやく習得した技能だ。それをクラス対抗戦後からの短期間で習得してみせた鈴と、彼女の努力量に一夏は息を飲む。一夏の努力を知る一海、幻徳、箒もそれぞれ驚愕していた。

だが、山田先生は即座にそれに対応して見せる。

目の前に迫る鈴に対し、右手に呼び出した近接ブレードを突き出す。それを回避しようと上体を反らした鈴へ、左手に呼び出したアサルトライフル《レッドバレット》を突きつけた。その引き金が引かれる寸前、鈴の両肩の《衝撃砲》が迎撃の為に起動するよりも早くセシリアが撃ったレーザー攻撃が山田先生を襲う。近接ブレードを振るってレーザーを弾きながら跳躍して避難する山田先生。1歩遅れて放たれた空気の砲弾はアリーナの障壁を叩いた。

 

「セシリア!邪魔しないで!」

「それはこっちのセリフですわ!1人で突っ込んで勝手にピンチにならないでくださる!?」

 

体勢を直しながら鈴は、今自分を援護したセシリアへ怒りを向ける。セシリアもむきになったように言い返した。そこへ、距離を取った山田先生の放ったアサルトライフルの弾丸が降り注ぐ。

 

「ちっ────このぉ!!」

 

鈴は弾丸の雨を回避しながら手に持った青龍刀2本の柄を連結し、両刃の薙刀のようになった己の武装をアサルトライフルを連射する山田先生へ向けて投擲した。

だが、回転しながら飛んでいくそれと山田先生の間に2機のビット───セシリアのブルーティアーズが割り込んだ。

違う、飛んできた双天牙月を視界に捉えた山田先生が射撃でビットの位置を誘導し、自分との間に「割り込ませた」のだ。そして、同時に誘導していたのは「ビット」だけではなかった。

 

「なっ────きゃっ!?」

「えっ────わっ!!?」

 

そこで鈴は、自分と同じく弾丸の雨をかわしビットを操作していたセシリアに正面からぶつかってしまう。バランスを崩しもつれ合う2人。山田先生は最初からそうなることが分かっていたかのように、得意げな顔で予め手に持っていたグレネードを2人の元へ投擲した。

空中で爆発が巻き起こり、鈴とセシリアの2人はISが解除された状態で地面を転がる。意識はあるようで、悔しそうな顔をしながらすぐによろよろと立ち上がった。

 

「くっ……うぅ、わたくしがこんな無様な……」

「…………」

 

歯噛みするセシリアに対し、鈴は無言だった。やがて小さな声でボソリと呟く。

 

「……まだ、足りないんだ。もっと強くならなくちゃ……」

「……?あの───」

 

その言葉を聞いたセシリアが不安そうな表情で鈴へ声をかけようとする。だがその時千冬の声が響いた。

 

「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。以後は敬意を持って接するように。オルコット、凰。自分たちの列へ戻れ」

 

鈴の肩へ伸ばされたセシリアの腕は空を切る。鈴はセシリアを一瞥もせずに自分が元々座っていた場所へ戻っていく。2組の他の生徒達はその鈴の放つ殺気にも似た怒気に気圧されたのかまるでモーセの海割りのように立ち上がって道を開けた。

 

「…………鈴さん」

 

自分へ背中を向ける少女を見つめるセシリア。やがて、目を閉じて再び開く。鈴を見つめるその目には先程までの不安の色はなく、何かの決意によって満たされていた。

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