他にもやりたいことはあるので別にこれで終わるとかそういう訳じゃないです
よろしくお願いします
「どういうことだ……」
「ん?」
トーナメントを来週に控えたある日の昼休み、一海達いつものメンバーにシャルルを加えた一行は屋上で弁当を広げていた。
復帰したのかそこにはセシリアと鈴の姿もある。
「天気がいいから屋上で食べるって話だったろ?せっかくだからみんなで食おうと思ってな」
「それはそうだが…」
悔しそうに拳をにぎりしめる箒。一海とセシリアは呆れたような目で一夏を見た。いきなり屋上で飯を食おうと言い出した時は何事かと思ったが─────成程、箒の誘いだったか。なんでコイツここまで鈍いんだろう。一海は思わずにはいられなかった。
「僕も参加しちゃっていいのかな?」
「いや、大丈夫だぞ、デュノア。せっかくクラスメイトになったんだ。遠慮することは無い」
申し訳なさそうなシャルルに優しく言って、そのまま自分の頭を抱える箒。セシリアがその背中を慰めるように優しく撫でた。
「はい。一夏、アンタの分」
「アンタの分?わっ!弁当箱を投げるな!」
鈴がタッパーを放り投げる。慌ててキャッチし、蓋を開けた一夏はおお!と声を上げた。
「酢豚だ!うまそうだな!」
「そ。今朝作ったのよ。約束だったでしょ、あたしの料理が上手くなったら食べてもらうって」
嬉しそうな一夏の横で弁当箱を開く箒が不機嫌そうな顔をする。─────そこで、箒は一海と幻徳も手作りの弁当を持ってきていることに気がついた。
「そういえば、氷室と一海も弁当なのだな」
「ん?ああ、俺元々農家やってたから自分で作物を料理するのもそれなりに好きでよ。たまにこうやって作ってんだ。ついでにこいつの分も。腕にはそれなりに自信があるぜ?」
一海の言葉にへぇー、と女子勢が感心したような声を漏らす。そして一海が開いた弁当箱を見てわぁ!と声を上げた。
唐揚げ、焼き鮭、卵焼き、スパゲッティ……入っている内容はオーソドックスな物だが、一目見るだけで美味しそうと思えるような弁当だった。
「氷室は?お前も料理するのか?」
「出入り禁止」
「?」
一夏の質問に、目を逸らしながら謎の返答をした幻徳に首を傾げる一同。代わりに一海が苦笑しながら答えた。
「コイツ寮のキッチンで揚げ物油に水ぶち込んで出入り禁止喰らってんだ」
「えぇ……」
気まずそうにする幻徳に隣のセシリアが大きなバスケットを差し出す。
「幻徳さん、わたくしが作ったサンドイッチはいかがですか?わたくしも料理にはそれなりに自信がありましてよ?」
「いただこう」
中に入っていた色とりどりのサンドイッチから、BLTサンドを取り出し口に運ぶ幻徳。次の瞬間、その顔が歪んだ。
「がふっ…………」
呻きながら口の中のものを飲み込み、そしてそのまま倒れこむ幻徳。一海はバスケットの中のサンドイッチと得意げなセシリアの顔を何度も見比べた。
「……オルコットさん。今ヒゲが食べたBLTサンド……何が入ってるんですか?」
「B(ぶぶ漬け)L(ロブスター)T(タバ「あ、やっぱいいわ」
冷や汗ダラダラで一海はバスケットに詰められた暗黒物質サンドイッチを眺める。なんてことだ。キッチンを出入り禁止にするべき悪魔の調理人がもう1人いたとは。
「セシリア……今度ヒゲの好物教えてやるついでに料理も教えてやるよ……」
「まあ本当ですの?楽しみにしていますわ!」
嬉しそうに笑うセシリア。一海は、横で白目を向いて倒れている屍に静かに合掌した。
「えーと、緑茶と、烏龍茶と……紅茶…………」
昼休みももうすぐ終わりという時刻、ジャンケンで負けた一海は全員分の飲み物を買いに購買を訪れていた。
「コーラに、水……ヒゲは……コーヒーでいいか。それと───」
自分の分の飲み物を探そうとして、横に立っていた人物に気がつく。その人物を見て一海のその整った顔が怒りで歪んだ。
「ラウラ……ボーデヴィッヒィ……!」
「……猿渡一海か」
怒りを剥き出しにする一海を気にする様子もなく、ラウラは購買でパンを購入する。そして、一海が持っている飲料が入ったカゴを見てフッと笑った。
「パシリか。極東の雑魚にはお似合いの仕事だな」
「はっ。友達もいなさそうなドイツ軍人様には理解出来ねぇみたいだな?」
睨み合う2人。そしてラウラが一海に仕掛けようとしたその時
「やめろバカ共」
スパパーン!といい音を立てながら2人の頭へ千冬のチョップが炸裂した。痛みで思わず蹲る一海。気がつけば目の前のラウラも同じような状態になっていた。
「元気がいいのは結構だが、それを発散する場くらい弁えろ。他の客に迷惑だ。それにラウラ、私からすればお前らはまだ全員等しく雑魚だ。調子に乗るのはいいが、追いつかれないように気を抜くなよ」
言いながら缶コーヒーの会計を済ませ、蹲る2人を見下ろす千冬。
「ですが教官……」
「織斑先生だ」
バシン!と再びチョップが炸裂。先ほどよりも大きな音を立てたその一撃はラウラの意識を刈り取った。
ぐったりとするラウラの小柄な体を軽々と担ぎあげ、千冬は一海に視線を向ける。
「お前もだ猿渡。男女仲が良いのはいい事だが人前で盛るな」
「はぁ!?俺とそいつはそんな関係じゃ───」
バシンッ!
「教師への態度を改めるように」
「はい…………」
あまりにも理不尽。一海は頭部の痛みに涙目になりながら返事をした。
六月の最終週、IS学園は月曜から学年別トーナメント一色に変わる。その慌ただしさは一海たちの予想を越え、1回戦が始まる直前まで生徒も教師も関係なく雑務や会場の整理、来賓の誘導を行っていた。
仕事を終え、試合会場のピットへ向かう一海と幻徳、そしてシャルル。来賓で埋まっているアリーナの観客席を眺めながらため息をついた。
「とんでもねぇ事になってるな」
「3年生には各国からのスカウト、2年生には1年間の成果を確認しに来ているからね。1年生には本来関係ないけど───今年は男性操縦者が3人もいるからそれの観客も多いんじゃないかな?」
「3人?シャルルを入れて4人だろ?」
「あれ?あっ、そっ、そうだね!あは、あははは!」
そんな一海とシャルルのやり取りを、幻徳はヒヤヒヤしながら眺めている。そこへ息を切らしながら一夏が走ってやってきた。
「たっ、大変だ!一海!氷室!」
「どうした一夏。そんなに慌てて」
「こっ、これ!これを見ろ!」
肩で息をする一夏が、手に持っていた紙を一海に見せ付ける。
どうやらトーナメントの対戦表のようだ。その、Aブロックの第一試合の欄、一海と幻徳の名前の横にはラウラと箒の名前が刻まれていた。……なんだか既視感のある状況である。
「クジ運がいいのか悪いのか……」
「いきなり本命か。上等じゃねえか」
げんなりとする幻徳と、やる気満々といった一海。
「あれ?僕と一夏は?」
「俺達は反対側のBブロックだから、一海達と戦うとしたら決勝だな!俺とシャルルのコンビなら負ける気がしねぇ!」
笑顔で言う一夏の顔を、頬を赤らめたシャルルが見つめる。あれ?こいつもしかして……と幻徳は一夏の顔を眺めた。まあ、仮に一夏がシャルルの正体に気がついたとして……性格から考えても特に問題は無いだろう。恋愛関係においてはドがつく程の天然ではあるが、人の不利益になるようなことをする男ではない。と幻徳は特に気にしないことにした。
「とにかく急げ!第一試合もうすぐ始まるぞ!」
「おっと、そんな時間か。じゃあな一夏、シャルル。決勝で会おうぜ」
漫画みたいなセリフを言う一海に一夏とシャルルはクスッと笑った。そしてふたりへ向けて拳を突き出す。
「あぁ!決勝で待ってるぜ!」
「あっ……えっと、待ってるよ!」
仲間の声援に片手を上げて応え、二人の男は試合会場のピットへ向けて走り出した。
「1回戦で当たるとはな。待つ手間が省けたというものだ」
「それはこっちのセリフだドイツ野郎」
アリーナでバチバチと火花を散らす一海とラウラの横で、幻徳と量産型IS「打鉄」を纏った箒は気まずそうに向かい合っていた。
「……もしかして織斑がデュノアと組んだせいで、相手が見つからなくなったのか」
「…………あぁ。……だが、文句を言っても仕方が無い。お前達を倒して、私は一夏を倒してみせるぞ」
こくんと頷く箒。幻徳は内心同情しながら「クロコダイルクラックボトル」を取り出す。
「悪いが俺達にも意地という物がある。篠ノ之、勝たせてもらうぞ」
「あぁ。望むところだ」
近接ブレードを構える箒、その横でラウラがIS「シュヴァルツェア・レーゲン」を展開する。一海はその漆黒のISを睨みつけながら「ロボットゼリー」を取り出した。
「てめぇは……心火を燃やして……ぶっ潰す!」
『ロボット イン グリス!ブルルァァァ!!』
『クロコダイル イン ローグ!オーウラァ!!』
力強い音声をアリーナに響かせながら、金と紫色の「仮面ライダー」が、2人の少女の前に立った。会場の観客席がどよめく。
「行くぜコラ……ここからが……祭りの始まりだァァァァァァッ!!!!」
試合開始の合図と共に一海が雄叫びを上げ、走り出した。
飛んでくるワイヤーブレードの間をすり抜け、放たれた砲弾を殴って弾き飛ばし、振り抜かれたエネルギー刃を纏った手刀を掌で受止め、そのまま振り回す。
一海の猛攻の前に、ラウラは完全に後手に回っていた。
(なんだこの男は……!以前とは動きが違う!?)
「激情ォ!!」
振り回されながらラウラが咄嗟に空いていた右手を向け、シュヴァルツェア・レーゲンに搭載された第三世代型兵器《
「ぐっ……!なっ!?」
「過熱ッ!!!」
背中から壁に叩きつけられ、全身に響く痛みに顔を歪ませながらも直ぐに前方を確認する。そこには右腕を巨大な機械腕に変化させた一海が拳を振りかぶる姿が。
直後、衝撃がラウラを襲う。脳が揺さぶられ、意識を手放しそうになるのをラウラはギリギリのところで耐えた。
だが、一海の攻撃はまだ完了していない。
「陶酔!!これが……俺のォォ!!力だァァァァァッ!!!」
動けないラウラへ左腕の《ツインブレイカー》の銃口をつきつけ、トドメとばかりに零距離射撃を撃ち込む。数発、撃ち終えたところでラウラの体が倒れ込んだ。一海は勝ち誇ったようにその拳を天に向かって突き上げる。
「足りねぇな……全然足りねぇ!!もっと俺を楽しませろォォォォッ!!!」
再び雄叫びを上げる一海。その姿を見て、幻徳と戦いながら箒は信じられないと言った顔をした。
「まさか……あのボーデヴィッヒをあそこまで一方的に……」
「よそ見をしている場合か?」
幻徳の振り上げた爪先が箒の手を打ちすえ、持っていたブレードを手放させる。他の武装を手元に呼び出すよりも早く、《ネビュラスチームガン》の銃口が向けられた。
『クロコダイル!!ファンキーブレイク!!』
「な────くぅっ!?」
紫色のエネルギー弾が、箒の体を吹き飛ばす。地面を転がったその体から、纏っていたISが光の粒子になって消失した。
「すげぇ……」
観客席からその戦闘を眺めていた一夏は思わず息を呑んだ。横に座るシャルルも頷く。
圧倒的、この戦闘を表すならこの言葉が1番しっくりくる。あのアリーナでの小競り合いとはレベルが違う。殆ど抵抗すら許さずにラウラをアリーナに沈めて見せた一海が、一夏の目にはとてつもなく恐ろしく写った。
「……ボーデヴィッヒさんのシールドエネルギーはまだ残っているみたいだけど……どう考えても勝ち目はないよね」
その通りだ。だが─────
(なんだ……?この胸騒ぎは……)
一夏は自分の胸をぎゅっと抑える。その様子に気がついたシャルルが「どうしたの?」と訪ねようとした時、観客席が再び大きくどよめいた。
二人は視線をアリーナへ向ける。よろよろと立ち上がろうとするラウラの漆黒のISが、赤い光を放った。
(こんな所で……負けるのか…………私は)
フラフラと、立ち上がるラウラ。その目からは闘志は消えておらず、二人の男を睨みつけている。
(いやだ…………また、あんな思いをするのは嫌だ)
ラウラ・ボーデヴィッヒ。彼女には「親」という存在がいない。人口合成された遺伝子から作られ、鉄の子宮から生まれた「戦いの為に誕生させられた生命」。一般的な学問よりも先に、人殺しの技術を叩き込まれた。同じ境遇の子供たちで作られた部隊の中でも自分は最も優秀であったと、彼女は記憶している。ある時までは。
「ヴォーダン・オージェ」。彼女の左目へ埋め込まれた擬似ハイパーセンサーとでも呼ぶべきそれは、その瞳を金色へ染め上げ───そして、その過負荷は彼女を部隊のトップから一気に転落させた。
かつて上に立っていたものが転げ落ちた時、浴びせられるのは嘲笑と侮蔑といった悪意。待っていたのは「出来損ない」の烙印。
ゆっくりと、絶望に染まっていくラウラを救ったのはある日極東からやって来た1人の女性だった。
「ここ最近の成績は振るわないようだが、何心配するな。1ヶ月でその目を使いこなせるようにしてやる。すぐにでも部隊のトップに戻れるさ。なにせ、私が教えるんだ」
織斑千冬。自分を絶望の中から引き上げてくれた唯一の存在。彼女がこんな国で弱い人間に囲まれ、「温くなっていく」のをラウラは許せなかった。自分の力で、あの人をドイツへ連れ戻すと誓った。それなのに
(なぜ、私はこんな所で敗北しようとしている────)
負けられない。負けては行けない。再びあの思いをするのだけは絶対に嫌だ。倒さねば。殺さねば。邪魔をする者を。目の前に立つこの敵を。そのために──────
(力が、欲しい)
ドクン、と。ラウラの心臓の鼓動が響く。その想いに答えるように声が響いた。
『───願うか?汝、自らの変革を望むか?より強い力を欲す──ガが、ザザザザザザ』
無機質な男なのか女なのか分からない声は途中で途切れ、ノイズのような音だけが響く。やがて、困惑するラウラの脳裏に「男の声」が響いた。
『欲しいよなぁ?ラウラ・ボーデヴィッヒ。圧倒的な力が。全てを蹂躙できるような力が』
その声を聞いた瞬間、ラウラは恐怖心に襲われた。その声に従ってはいけない。それを受け入れれば───自分は自分を失う。拒絶の意思を示そうとしたラウラは、しかしその瞬間自分の存在が何かに締め付けられるのを感じた。視線を向けると赤い、血のような色をした蛇が自分の体に巻きついている。
『じゃあなラウラ・ボーデヴィッヒ』
声が再び響くと同時に、意識が遠のいていく。ラウラは、自分が赤い世界に沈んでいくのを感じながら諦めたように目を閉じた。
Damage Level.....Error
Mind Condition.....Error
Certification.....Error
《Val》Error《ky》 Err《rie》or E《Tra》rror Error ErrorErrorErrorEEEEEE《Evolution》
「あぁあああああああぁああああああああああああああああああああぁぁぁッ!!!」
一海と幻徳の目の前で、ラウラが絶叫した。纏っていたシュヴァルツェア・レーゲンの装甲が波打ち、まるで粘土のようにその姿を変えていく。
「おいおいおい、なんだよこりゃあ……」
「何が起きている……!?」
困惑する二人。ラウラは苦痛で顔を歪めながら、両腕を胸の前で交差させた。そして、前方へ腕を突き出す。
「はぁっ……はぁっ…………へん……しん!!!」
泥のような状態で蠢いていたシュヴァルツェア・レーゲンだった塊は、ラウラの声に反応したかのように2つに別れ、その体の前後で何かの形を作り出した。まるで人の半身のような形状になったその2つの塊が、プレスするようにラウラの体を包み込む。
そのシルエットに一海も幻徳も見覚えがあった。
黒一色だったその姿は、やがて光と共に鮮やかに変化する。金色の、まるで天球儀や星座早見盤を全身に散りばめたかのような豪奢な装飾。赤いバイザーから光を放ち、ラウラ・ボーデヴィッヒは、その姿を完全に変化させた。
一海たちが知る姿と比べると腰に《エボルドライバー》を装着していないという違いはあるが、その外見は明らかにかつての世界で暴れ回ったエボルトの姿、「仮面ライダーエボル コブラフォーム」そのものである。
アリーナに降り立った3人目の仮面ライダーは自らの体を確認するような仕草を見せたあと、一海と幻徳へ視線を向けた。
「フェーズ1……とは言えねぇなぁこれじゃ。能力は使えねぇし、再現出来たのは身体スペックだけ。そうだな……さしずめ仮面ライダーエボル フェーズ0って言ったところか」
その声はラウラのものでは無い。2人がよく知るあの赤いコブラ男の物だ。
「エボルト……!!!」
「さぁ、始めようぜ《仮面ライダー》。せっかくの慣らし運転だ。……エンジンがかかる前に、せいぜい壊れてくれるなよ?」
ゆっくりと構えるエボル。
コブラフォーム一番すき