自分より強い兄に反抗したくなっちゃう鎬昂昇みたいなエボルトが見れたりするんですかね
上下左右、全てが血の色に染った世界で
ラウラ・ボーデヴィッヒは膝を抱えて蹲っていた。
その目にはいつもの冷たさも鋭さもなく、ただただ怯えの色だけが浮かんでいる。
(私は…………)
いつからか、ドンドン!ドンドン!とまるでドアを乱暴に叩いているかのような音が何も無い世界に響いている。
(私は誰だ……?)
その音に気がつく様子もなく、ラウラの意識はさらに深い「赤」の中へゆっくりと沈んで行った。
蹂躙。その光景はまさにその一言で表せた。先ほどまでのラウラと一海の激突が武道の達人が素人を圧倒するようなものだとすれば、今目の前で繰り広げられるこの戦いは人間が兵器に生身で勝負を挑んでいるかのような、そんな感覚。
赤と金の仮面ライダーが拳を振るうと同時に、紫色の仮面ライダーが吹き飛ばされ、アリーナの障壁に叩きつけられる。脚を振り上げると、金色の仮面ライダーの体が空高く打ち上げられそのまま地面へと転がった。
「ぐっ……」
「畜生……強ぇ……」
呻きながら、二人の戦士はそれでも立ち上がる。「エボル」はそれを見て楽しそうな笑い声を上げた。
「そうだ……!まだ終わってくれるなよ?」
「舐めてんじゃ……ねぇぞコラァァァァッ!!」
一海が叫びながら地を蹴る。空中で拳を振り上げるその体はエボルが掌を向けた瞬間凍りついたかのように停止した。
「ボーデヴィッヒのAIC……!?」
「
エボルの振り抜いた裏拳が一海を吹き飛ばす。その体はアリーナの障壁すら突き破り観客席へ叩きつけられた。
「ォォォォォォォォッ!!!」
「ハッハッハッハッハ!外見だけ真似したに過ぎない体だが……やっぱりしっくり来るなぁ!」
殴りかかった幻徳の拳をいなし、カウンターの肘を叩き込む。大きくよろめいたその体へエボルの後ろ回し蹴りが炸裂した。
ベキベキと何かが砕けるような不快な音が体の中に響き渡るのを感じながら幻徳の体はアリーナの地面を転がった。
「……さぁて、『準備運動』は終わりだ。……そろそろ本気を出すとするか」
楽しそうな声を突然冷たい無感情な物へと変え、エボルは両手を広げた。その全身から赤い炎のようなオーラが噴き出す。
アリーナに倒れ伏す幻徳へ向けて1歩踏み出した時、エボルの頭部が爆発を起こした。
「ンン?……なんだァ?」
黒煙の中から現れたその姿にダメージを負った様子はない。エボルはゆっくりと周囲を見回し─────そして破壊された障壁の穴から大型の銃をこちらへ向けて構えるシャルルの姿を視界に捉えた。
「デュ……ノア!よせ…逃げろ!」
「氷室くんから離れろ!」
「ほぉ……どうやら、死にたいらしいなァ……」
幻徳の呼び掛けに応じず、エボルを挑発するシャルル。それに反応したエボルは目標を幻徳からシャルルへと変え、そちらへ向けて歩き出した。
「うおおおおおっ!!」
勇ましく叫びながら、構えた銃を連射するシャルル。弾切れを起こすとそれを捨て、今度は別の武器を手元に呼び出した。
五九口径重機関銃《デザート・フォックス》。両手に一丁ずつ握られたその巨大な銃身が回転し、目の前の敵へ弾丸の嵐を撃ち出した。
エボルはそれを回避する素振りも見せず、自らへ向けて放たれた弾丸を全て体で弾いてみせる。やがて鬱陶しそうに掌をシャルルへと向けた。
「この程度の攻撃で俺を止めるつもりだったのか?」
その瞬間、降り注ぐ弾丸の雨が全てビデオの停止ボタンを押したかのように空中で静止した。シャルルの顔が驚愕で歪む。
エボルは足を止める。気がつけばもうシャルルの目の前に立っていた。鈍器代わりに振り回された機関銃は軽々と受け止められ、そのまま握りつぶされてしまう。エボルはただの鉄くずになったそれをつまらなそうに放り投げた。
「じゃあな」
丸腰になったシャルルの前で手刀が振り上げられる。その姿を見ながらシャルルは思わず目を閉じた。
そして次の瞬間、背後から一夏が振り下ろした近接ブレード《雪片弐型》の光る刃がエボルの背中を斬り裂いた。
「─────なにっ!?」
その声に初めて動揺の色が浮かぶ。一夏は素早くシャルルを抱えるとそのままスラスターを噴かせてエボルから距離をとった。
「悪い、遅れたな氷室。一海。中々助けに入るタイミングが掴めなくてさ。シャルルに頼んで隙を作ってもらったんだ」
シャルルを下ろし、刀を構え直す。その背後には幻徳に敗れアリーナの隅で倒れ込んでいたはずの箒が横たわっていた。幻徳は脇腹に走る激痛に顔を顰めながら、しかしその口元には笑みを浮かべる。
「お前達は……馬鹿野郎だな。皆と一緒に避難すれば良かったんだ」
「目の前でダチがやられてるの見て無視できるかよ」
「そうだよ、それにあの中には……ボーデヴィッヒさんが居るんでしょ?放っておけないよ」
一夏とシャルルの顔を見ながら、幻徳は全身に力を入れた。悲鳴をあげる全身を無理やり動かし、立ち上がる。
「千冬姉も先生達も……理由はわからないけどこっちへ来れないみたいだ。……俺たちだけでやるしかねぇみたいだな」
「一夏……簡単に言うけど、アレ相当固いよ。半端な攻撃じゃ弾かれちゃう──────」
3人はエボルへ視線を向ける。見れば体を覆う装甲の表面が切り裂かれ、僅かに少女の体が覗いていた。だがその傷はみるみる間に修復され、ラウラも再びエボルの体の中に飲み込まれてしまう。それを見て幻徳は気がついた。
「どうやら……織斑のエネルギー無効化攻撃ならあいつの装甲を切り裂けるみたいだな……」
「ああ。でも俺の《零落白夜》はエネルギー消費が激しい。連発は出来ねぇぞ」
「俺と、ポテトでなんとかあいつの動きを止める。デュノアは援護を。織斑はタイミングを見てその剣で攻撃してくれ」
幻徳は仮面の下を激痛で歪ませながら、それを感じさせないようにエボルの前へ歩みでる。心配そうにシャルルが声を掛けた。
「ポテ……一海って……動けるの?」
一海が吹き飛ばされた観客席の方へ目を向けるシャルルに、幻徳は即答する。
「動くさ。あいつなら必ず」
白煙に包まれる観客席、そこで──────青と金の雷が迸った。
また、負けるのか。
よろよろと立ち上がる。見ればアリーナでは幻徳と、乱入した一夏とシャルルがエボルと向かい合っている。
いっそのこと逃げちまおうかと自嘲気味に笑いながら再び戦場へと向かおうとする一海。
思い出してみると、敗北してばかりだ。東都との戦いでも、西都との戦いも、難波重工との戦いも、エボルトとの戦いも。
猿渡一海は、ずっと負けてきた。
それでも逃げ出さなかったのは、「アイツら」が慕った「カシラ」を、「アイツら」が信頼した「猿渡一海」を裏切りたくなかったからだ。
でも、この世界には「アイツら」はヒゲ以外誰もいない。それなのに。
(なんで、俺はこんなムキになってんだ。この世界にはもうみーたんも、アイツらもいねぇのに)
朦朧とする意識で、ふとそんなことを考える一海。
その時、少女の小さな声が聞こえた。
「たす……けて…………」
視線を向けると、逃げ遅れたらしい眼鏡をかけた気弱そうな少女が観客席の隅でカタカタと震えていた。その涙で濡れた瞳が、金色の戦士を写す。
「たすけて……ヒーロー…………」
その、小さな声。助けを求める声を聞いた時、一海は……ゆっくりと天を仰ぎ、そして自分の顔を思い切り殴った。戸惑う少女の前で、一海の中でその心の火が勢い良く燃え盛る。
「……そうだよなぁ」
「……え?」
「俺は、《仮面ライダー》なんだよな。助けを求める奴がいて、守るべき場所がある……戦う理由なんて、そんなもんで充分だよなぁ」
ダン!と、地面をふみしめる一海。顔だけ少女へ向け、その仮面の下で笑った。
「待ってろ。俺が、俺達が。ぜってぇ助けてやる。お前も、あそこの馬鹿野郎も」
取り出した「ドラゴンゼリー」をドライバーへ装填し、レンチを捻る。青い炎が一海の全身を駆け巡り、その右手に2つ目の《ツインブレイカー》が形成された。
「力を貸してくれよ……龍我!」
『シングル!シングルブレイク!』
『シングル!シングルフィニッシュ!』
左右で違う音声を響かせながら構える一海。その体の周囲を青い炎の龍が取り巻く。跳躍した一海の《ツインブレイカー》から撃ち出された黄金のエネルギー弾が叩きつけられた瞬間、アリーナの障壁がまるでガラスが割れるように全て砕け散った。
その轟音と、凄まじいエネルギーにエボルは思わずそちらへ顔を向ける。
「なに─────────」
「さっさと起きやがれラウラァァァァァァァァッ!!!」
青い炎の一撃が、エボルの胸を叩く。これまで全くダメージを受ける様子のなかったその体が大きく仰け反った。
一海は再び拳を振り上げる。その右腕のツインブレイカーがゼリー状のエネルギーへと変化し、拳を覆う。
エボルも体勢を直しながらその拳へ赤いエネルギーを集中させる。二人の仮面ライダーはお互いの拳をお互いの顔面へと叩きつけた。
「…………何の用だ」
血の色で染められた世界で蹲っていたラウラは、自分の右隣に腰を下ろした一海へ眼帯で覆われていない方の目を向ける。
「あれだけ偉そうにしてたくせに不様に負けたドイツ軍人様の顔を拝んでやろうと思ってよ」
その挑発的な言葉に言い返す気力もなく、ラウラは自身の膝に額を押し当てた。冗談だ、と一海は呟く。
無言、静寂が2人を包み込む。やがてラウラは少し頭を上げて一海の顔を見つめた。
「1つ聞かせろ猿渡一海。お前は……なぜあんなにも強い」
「強くねぇよ」
ラウラの問いを遮るような勢いで一海は答える。無表情だったラウラが驚愕するのを横目で見ながら、一海は笑った。
「俺は負けてばっかりだ。強さで言えば多分ヒゲにも勝てねぇよ…………けど、だからって立ち止まってなんかいらんねぇんだ」
「なぜ」
なぜそこまでして戦う。ラウラは理解できなかった。その視線を受けた一海は照れくさそうに頬をかいた。
「別に大した理由はねぇよ。……まあそうだな、言ってみりゃ愛と平和の為……ラブアンドピースって奴だな」
なんだそれは、とラウラは思わず笑った。
「この世界に傷つけられる奴がいて、傷つける奴がいる以上俺達は戦い続ける。それが──────」
仮面ライダーだ。一海のその言葉に、ラウラは胸に手を当てぎゅっと握りしめた。
自分の小ささを恥じて、そして目の前の猿渡一海という男に魅了され、ラウラはその白い顔を赤くした。
「……猿渡一海……私は……お前が好きになったかもしれん」
唐突な告白。一海は目を丸くして驚いていたが───やがて首を横に振った。
「悪ぃな。気持ちは嬉しいけどよ、俺にはみーたんって心に決めた相手がいるんだ」
「そうか。お前ほどの男がそう言うんだ。……きっと、魅力的な女性なのだろうな」
「あぁ。この世で1番、いや全宇宙で1番と言っても過言じゃねえぞ」
言って、2人は同時に笑う。失恋したというのに、ラウラの心は何故か晴れやかだった。
「なら、私を弟子にしてくれないか」
「弟子?……いや、悪ぃけどそんなガラじゃねえ。けど─────」
妹分ならいいぜ。一海のその言葉に、ラウラは嬉しそうに頷いた。
「私は……まだ何も知らない。お前のことも、それに私自身のことも。だから今は無理でもいつか、いつかきっとお前を振り向かせて見せるぞ」
「上等だ、全部受け止めて、その上で俺のみーたんへの愛を証明してやる」
立ち上がった一海は手を差し伸べる。その大きな掌を握り返し、ラウラも立ち上がった。
「行こうぜラウラ。あんな野郎に飲まれるほど、お前は弱くねぇだろ」
「当然だ」
体が、ふわりと浮き上がる。赤い世界の上方から光が差し込んでくる。2人はその光へと吸い込まれるように消えていった。
「なんだと……!?」
一海の拳を受けたエボルが膝をつく。その声に再び動揺の色が浮かんだ。信じられないといった様子で己の掌を見つめる。
「へっ……どうした…………まだ終わってねぇぞ!」
一海が地を蹴って殴り掛かる。その拳をかわしながら、エボルは明らかに困惑していた。
「どういう事だ……!?ラウラ・ボーデヴィッヒの意識は完全に封印したはず…」
拳を振りかぶる一海へ掌を向ける。AICがその黄金の戦士を凍りつかせる─────ことはなく、再びエボルの頭部が衝撃で揺さぶられた。
「何だか分かんねぇけど……チャンスだ!シャルル!氷室!」
「うん!」
「ああ」
エボルへ猛攻をかける一海、そこへ幻徳も加わり、悪の仮面ライダーは完全に劣勢になっていた。
同時に放たれた金と紫の拳がその体を吹き飛ばす。
「ぐぅっ……人間……風情がァァッ!!!」
空中で体勢を直し、着地しながら怒りのあまり叫ぶエボル。次の瞬間その上半身を爆炎が飲み込んだ。
「一夏ーーーーーっ!!」
バズーカ砲を放り、シャルルが叫ぶ。その声に応えるように白いISが光り輝く刀を構えて突進していく。
「うおおおおおおおおおおおおっ!!!」
迎撃しようと振るわれた腕は、幻徳に掴まれて止められる。防御することも叶わずエボルのその体は一夏の《零落白夜》を発動した《雪片弐型》によって斬り裂かれた。
開かれたその胴体から意識を失ったラウラが倒れ込んでくる。その体をしっかりと受け止めて、一海たちはエボルから距離を取った。
「ぐっ……う…………貴様らァ……ッ!!」
ラウラが居なくなったことで出来た空洞を埋めるように中身が流動し、切り開かれた体が修復していく。ラウラの体をそっと地面に寝かせて、一海はドライバーへ再び『ロボットゼリー』
を装填した。
2人の仮面ライダーがレンチを同時に捻る。
「ようやく借りが返せるぜ……エボルト」
「俺達の怒りを……思い知れ!」
『スクラップフィニッシュ!!』
『クラックアップフィニッシュ!!』
全身を循環するエネルギーが右足へと流れ込む。爪先からそれぞれの纏う装甲と同じ色のエネルギーを迸らせながら勢い良く跳躍した2人は空中でエボルへ向けて飛び蹴りの姿勢をとった。
「ふざけるなァァァァッ!!」
2方向から迫り来るライダーキックに対し、エボルは回し蹴りで迎撃しようとする。だが中身を失ったその体は正義の仮面ライダーの蹴りに触れた瞬間弾け飛んだ。
「ぐ──────あぁぁぁぁぁあっ!!!」
二人の蹴りで突き破られたエボルの体がゆっくりと崩れ、やがてその残骸は泥のように溶けていく。
キックの勢いのままアリーナの地面を抉りながら着地した二人の戦士は、お互いの拳を突き合わせた。
「終わったみたいですね」
迫り来るISのブレードを弾きながら、リモコンブロス────鷲尾風は静かに呟いた。その横ではエンジンブロスの鷲尾雷が引きずり回していたISの残骸を放り投げる。
ラウラに異変が起きた後、以前のブラッドスタークの襲撃もあり事前に用意していた学園のIS部隊がすぐにアリーナへ急行しようとした所IS格納庫内でこの2人組の襲撃を受けたのだ。
生身でIS用の大型ブレードを2本振り回しながら千冬は舌打ちした。生半可な腕では返り討ちにあうだけだ。そう判断し周囲のIS部隊を1度下がらせる。
「待て、鷲尾。お前達の目的はなんだ」
「ほお、俺達の名前を知ってるのか。……あぁ。そういえばお前らの所には氷室幻徳と猿渡一海が居るんだったな」
雷が納得したように言いながら手に持った《ネビュラスチームガン》で自分の肩を叩く。腕を組みながらその隣に立っていた風が千冬の問いに答えた。
「……言えませんね。申し訳ありませんがこちらにも事情がある」
「……あのエボルトとやらの目的はこちらも知っている。お前達も、この世界を滅ぼそうと考えているのか?」
「まさか」
風は、腕を組むのを止める。そして改めたように千冬へ向き直った。
「アレとまた共闘するなど、正直死んでも御免こうむりますね」
「ならば何故───────」
身を乗り出す千冬へ雷が銃口を向ける。そこから放たれた煙が2人の体を覆い隠す。千冬の視界が白く染まる中、耳元で風の声が聞こえた。
「私達は、あの人の意志に従うまでです」
晴れる視界、千冬の目の前から2人組の怪人は再び煙のようにその姿を消していた。
翌日、朝のホームルームにはシャルルとラウラの姿がなかった。幻徳も一海も、全身包帯まみれだが一応出席はしている。幻徳に至っては左腕が折れておりギプスをつけて首から腕を吊り下げている状態だ。
この傷のお陰で昨日の夜から解禁された男子の大浴場使用が出来ず幻徳は少し荒れていた。
─────ん?そこで、あることに思い至る。
自分と一海が使用できない以上、大浴場は一夏とシャルルの2人で使用したハズだ。あの二人まさか……
……いや、普通に考えて一緒に入ったりはしないだろう。だが今ここにシャルルの姿がない、という事実が幻徳の不安を加速させる。
やがて、疲れたような顔をして山田先生がやってきた。
「えー……おはようございます……朝のSHRの前に、皆さんに転校生を紹介します。……転校生というか、なんと言っていいか……」
教室がざわめく。この短い期間で3人も転校生が、それも皆同じクラスになるとは。
不思議に思う面々の前で、ガラリと教室のドアが開いた。
そこから現れたのは、スカート姿のシャルル・デュノア。呆気に取られた様子の皆の前にたった彼女はニッコリと笑った。
「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めましてよろしくお願いします」
「ええと、というわけでデュノア君はデュノアさんでした……はあ、また寮の部屋割り組み直さなくちゃ……」
ニコニコしているシャルル────いや、シャルロットの横で対照的にズーンと落ち込んでいる山田先生。しばらく呆気に取られていたクラスの女子達も自体が飲み込めたのか再びざわめいた。
「えっ?デュノア君は女の子……?」
「おかしいと思った!あんなに可愛い子が男の子なわけが無い」
「あれ?織斑くんってデュノア君と同室だったよね……」
「待って!確か昨日から男子の大浴場使用が始まったわよね!?」
幻徳の席からでも、一夏の顔がみるみる間に青ざめていくのが見えた。直後、教室のドアが文字通り吹き飛ぶ。
「ぃぃぃぃいい一夏ァーーーーッ!!!」
ISを展開しながらドアを爆破し現れたのは中国代表候補生、凰鈴音。修復していた甲龍も無事に戻ってきたようだ。
一夏へ衝撃砲を向ける鈴の様子を他人事のように眺める幻徳。
やがて一夏が逃げるようにこちらへ向かってきた。
「た、助けてくれ!氷室!一海!」
「ば、バカ一夏!てめぇこっちに来るな!巻き添えになるだろ!!こっちは怪我人だぞ!」
「いいや、一蓮托生死なば諸共!共に逝こう友よ!!」
慌てふためく一海と幻徳にお構い無しに鈴の衝撃砲が火を噴く。
3人の男は諦めたかのように目を閉じた。
轟音が響き渡る。
幻徳はゆっくりと目を開けた。どうやら生きているらしい。これも日頃の行いの成果か。
「…………」
いつの間にか、鈴と幻徳達の間にラウラが立っていた。その体には黒いIS『シュヴァルツェア・レーゲン』を纏っている。
見ればラウラの目の前の空間が歪んでいた。
おそらく衝撃砲をあのAICで止めたのだろう。幻徳たちはホッと息をついた。
「助かったぜラウラ。いや、マジで死ぬかと───────」
礼を言う一海、その首に腕を回しラウラがいきなり自分の唇をその唇に押し当てた。言葉を失う全員の前で、唇を離したラウラが悪戯っぽい笑みを浮かべながら自分の唇をペロリと舐める。
「俺の……ファーストキス……みーたんに捧げるはずの……」
一海は呆然としながら震える指で自分の唇に触れる。なんでお前の方が乙女っぽい反応なんだ。と幻徳は心の中で突っ込んだ。
「カシラが言ったんだぞ。全部受け止めるって。私は本気だからな」
「カシラ?」
ラウラの言葉に一夏は首を傾げる。不思議そうな顔をする彼の前で少女は胸を張って得意げに笑った。
「日本では兄貴分を呼ぶ際に『カシラ』と呼ぶ文化があると聞いた。だからお前は私のカシラだ」
誰に聞いたんだそれ、とクラスのみんなが心の中でツッコミを入れる。
「俺の……俺のファーストキス……うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
一海は、泣きながら教室を走って出ていってしまう。ラウラはISを解除するとその背中を追って走りだした。
「待てカシラ!どこへ行く!妹分である私も同行するぞ!」
そのまま居なくなってしまう二人。暫く呆気に取られていた鈴が、思い出したかのように再び衝撃砲を一夏へ向けた。いつの間にか、その横で箒も日本刀を構えている。
「……一夏、死ねーーーーーーッ!」
「り、鈴!女の子がそんな言葉遣いをするな!」
「うるさいうるさいうるさい!!都合のいい時だけ女の子扱いするなーーーー!!!」
「そうだこの……お前のようなやつはここで1度死ねっ!」
「鈴さん!箒さん!一夏さんはともかく幻徳さんも巻き添えにするならわたくしも黙ってませんわよ!」
「セシリア!ともかくってなんだよ!俺も助けてください!」
「やれやれ……」
呆れたように首を振る幻徳。やがてその口元に笑みを浮かべた。
「まあ、一件落着だな」
(原作2巻)工事完了です……
鷲尾兄弟の口調が安定しないのは許して
リモコンブロスとヘルブロスの変身音すき