ドルヲタと悪党とインフィニット・ストラトス   作:ミュラー

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タイトルと本文を何ヶ所か修正と追加しました。よろしくお願いします。


青春のリプレイ

「氷室幻徳に猿渡一海。二人とも住所不明、身分証も無し、所持金も無し……それに別の世界から来ただと?」

 

目の前に座り書類を確認している女性、織斑千冬は鋭い目を幻徳と一海の2人へ向ける。

IS─────女性のみが使用できる「兵器」。世の中の男女のパワーバランスを大きく変えたその兵器を千冬の目の前で起動して見せた2人の男はその後あっという間に拘束され、このIS学園の応接室に押し込まれていた。

 

 

 

「いや、信じてもらえないかもしれないスけど本当なんスよ!工作員とかじゃないんです!見てくださいコイツの顔!工作員とか無理ですって!!」

「…………」

 

一海の必死な弁明と幻徳の恐怖すら感じるような笑顔を、千冬はくだらんと一蹴した。

 

「口ではなんとでも言える。それに……29歳と35歳だと?ふん、大人ぶるのは結構だが自分の年齢も把握できてないのか?」

 

千冬の言葉に「は?」と一海と幻徳は呆けたような反応をする。そのまま一海は隣に座る幻徳の方へ顔を向けた。

 

「いや若く見られるのは嬉しいけどよ……っておいヒゲ。お前なんか若返ってないか?」

 

一海の言葉に幻徳は怪訝そうな顔をする。が一海の顔を見て幻徳は首をかしげた。

 

「そういうお前も肌のツヤが増してないか?」

 

顔立ちは変わっていない。だが明るいところで改めて向き合ってみると肌の質感等が明らかに以前より若くなっていた。

 

「……まさか。」

 

「ネビュラガスの影響で若返ったとでも言うのか……!?」

 

何やら衝撃を受けている2人を無視して千冬は自分と彼らの間にあるテーブルへと目を向ける。

 

テーブルの上には、スクラッシュドライバーや2人が所持しているフルボトルが並べられていた。

 

「それで、これはなんだ。」

 

千冬が尋ねるが、2人は向かい合ったまま衝撃を受けていて反応しない。

 

「これはなんだァッ!!!」

 

再び、今度は強めの語気で尋ねると2人は飛び上がりこちらへ顔を向けた。

 

 

「…………」

「…………」

「なんだ、説明出来んのか?」

 

2人はしばらく無言でチラチラとお互いの顔を確認し合っていたが、やがて射抜くような千冬の目線に耐えきれなくなったのか一海がため息をついて立ち上がった。

 

「わかりました。見せますよ。でもこのままじゃ難しいんでこれ、取っていいすか」

 

両手を前に向ける。一海と幻徳は千冬に叩きのめされたあと両手を金属製の手錠で拘束されていた。

 

「あぁ、待ってろ。今鍵を……」

「ふんッ!!」

 

一海が力任せに手錠を引っ張ると手錠の鎖部分はバキンという音と共に砕けてしまった。

そのままテーブルの上のスクラッシュドライバーを手に取ると自分の腰に押し付ける。千冬は呆気に取られていたが、数秒後学園内に侵入した不審者が拘束を破壊したという事実を把握し立ち上がった。

 

「っ……貴様!」

 

一海に詰め寄ろうとした千冬を幻徳の腕が制止させる。気がつけばこの男も手錠の鎖を引きちぎっていた。

 

「離れた方がいいですよ。……危ないですから」

「何だと……?」

 

幻徳の言葉に千冬が眉をひそめると同時に、一海はテーブルの上に置かれていたロボットゼリーをドライバーに装填した。

 

「────変身!!」

 

一海の周囲を巨大なビーカーのようなものが包み込み、その内部を黒い液体が満たしていく。液体はやがて一海の体へまとわりつくと黄金のアーマーへと姿を変えた。そのアーマーへ更に液体が追加の装備を形成していく。

 

驚愕の表情を浮かべる千冬の前で猿渡一海は『仮面ライダーグリス』への変身を完了させた。

 

「これはライダーシステム。俺達がいた前の世界で愛と平和の為に一人の天才が完成させた『力』です。」

 

「IS……いや、ライダーシステムだと?それに天才……?」

 

千冬はその言葉に1人の友人を思い浮かべる。彼女なら確かにこんな物も作ってみせても驚かない。だが「愛と平和」の部分でその可能性を打ち消した。アレは、そんな事を言うような存在ではない。しかし、彼女以外にこういったものを作れる存在に心当たりがあるか、と言われると答えはNOだ。

千冬が考え込んでいると

 

「失礼します」

 

そこでドアが開き、他の教員が千冬に追加の資料を届けに来た。

 

「あ、あぁ、すまない。」

 

少し困惑した様子で資料を受け取った千冬はそれに目を通す。

目の前に座る2人の人間のデータとそれを世界中の人間のデータを照合したものだった。目を引くのは明らかに人間離れした身体能力のデータ。だが千冬はそれよりも照合の結果のページを見つめていた。

 

「二人とも……名前、指紋、遺伝子情報……一致無しだと?どういうことだ…本当にこの世界の人間じゃないのか?」

 

「最初っからそう言ってるじゃないすか!! 」

「……(コクコク)」

 

変身を解除して文句を言う一海とそれに同調する幻徳をガン無視して、千冬は資料を読み進めていき───最後のページで動きを止めた。

 

「…………猿渡一海、氷室幻徳 両名を世界2例目、3例目のIS男性適合者として認定し…当校で保護するものとする……」

 

「え、なんすか…?」

「どういうことだ…………?」

 

千冬の言葉に2人は首をかしげた。男性適合者?認定?保護?

話を完全に理解するにはまだ情報が足らなすぎる。

そんな2人の様子を見ながら千冬は大きなため息をついた。

 

「わかりやすく言ってやる。貴様ら2人には学生としてこの学園で生活してもらうということだ。」

 

「は!?」

「何?」

 

戸惑いつつも立ち上がった2人の肩を千冬は万力のような力で掴みそのまま無理やりソファに座らせる。「ちょっ、いた、痛い痛い痛い!?」「ぬおおおぁぁぁ!?」と痛みのあまり叫ぶ2人を無視して千冬はふぅと息を吐いた。

 

「取り敢えず貴様らが別の世界の住人だ。というのは信じてやろう。その代わりその身体能力やライダーシステムについて、洗いざらい話をしてもらおう。安心しろ、入学式は2週間後だ。時間はたっぷりあるぞ それと並列して入学の為にISに関しての基礎知識も勉強してもらうぞ……!」

 

「ぐぁぁぁあぁっ!!分かったから頼む!手を離し……離してください!!」

「潰れる!溢れる!流れ出るぅぅぅ!!」

 

こうして、一海と幻徳は2度目の高校生活を送ることが決定したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員揃ってますねー。じゃあSHR始めますよー」

 

黒板の前で副担任の山田先生が微笑んだ。しかし教室内は謎の緊張感に包まれており、反応する生徒はいない。

 

「え、えっと…皆さん1年間よろしくお願いしますね」

「「「「「………………」」」」」

 

ちょっとうろたえる先生が可哀想だが、無理もないのだろう。幻徳は教室の中央の最後列の席からクラス全体の様子を見ていた。自分の前の席には猿渡一海、そしてこの列の先頭の席に自分と一海以外の唯一の男のIS適合者───織斑一夏。クラス全体の注目がこの3つの席に集まっているのが分かった。

 

クラスどころか、学園内でたった3人の男。一海という友人が目の前にいる自分と違いたった一人というのは不安なのだろう。織斑一夏は先ほどからキョロキョロと辺りを見回していた。

 

そうこうしているうちに自己紹介の順番が回ってきたのか織斑一夏が前に歩み出る。

 

「えー……っと、織斑一夏です。よろしくお願いします」

 

シンプルな挨拶と会釈。だが教室内には不満そうな空気が流れていた。女子達の視線が一夏へと突き刺さる。

困惑しながらも席に戻れずにいる一夏に同情しながら幻徳は無表情を保ち続けながら自分の自己紹介の時にするTシャツ芸を考えていた。

 

「あー……猿渡一海だ。ここらへんじゃぁねえけど元々は遠くの方で仲間と農家やってた。まぁよろしくな」

 

いつの間にか目の前の席の一海が自己紹介を終えていた。女子からの反応は上々だ。「かっこいい…」「爽やかな一夏くんもいいけど、頼りがいのある猿渡くんもいいよね…!」等周囲から聞こえて来た。一海はその反応を見て上機嫌で席に戻る。

 

「えっと…次は氷室くんだね!自己紹介お願いします」

 

山田先生に呼ばれ、幻徳は軽く頷くとクラスの前に立った。「足長っ…」「スタイルいい…」と誰かが呟く。

 

「氷室、幻徳だ。」

 

幻徳はクラス全体を見回しながら名乗る。そして勢いよくジャケットを開き中に来ていたTシャツを見せつけた。

 

『夜露死九』

 

「よろしく頼む」

 

静寂が教室を包み込む。一海が「やりやがった」と頭を抱えるのが見える。だが幻徳は自分のファッションセンスに絶対の自信を持っていた。

2秒たち、3秒たち……そして、教室は笑い声に包まれた。

 

「氷室くん何それーー!」「顔怖いけど結構ノリいい人なのかなー」「ヒゲが素敵!」

 

笑顔の教室を見渡しながら幻徳は満足そうな笑みを浮かべ───────

 

パァン!!

 

「がぁっ!?」

 

炸裂音が教室内に響きわたり幻徳が前のめりに倒れ込み教卓に突っ伏する。

 

「自己紹介はボケる場ではない。簡潔に済ませろ馬鹿者」

「千冬ね────」

 

パァン!!

 

「グッ……」

「織斑先生だ。」

 

一人の女性が現れると5秒もしないうちに明くなっていた教室の空気が引き締まった。叩かれた幻徳と一夏は失神したのか動く様子がない。一海は先程とは別の理由で頭を抱えていた。

先程の自己紹介の時、山田先生はこう名乗った。「このクラスの副担任」と。

ではまさか…………一海は泣きそうになるのを堪えながら顔を上げた。あの倉庫で捕まってから今日の入学式までの2週間。ずっとISについての基礎知識や現在の世界情勢を叩き込まれていた2人は彼女の恐ろしさを身にしみて実感していた。入学すれば自由だ、そう言い聞かせて頑張ってきたのに……

教卓に突っ伏した幻徳を気にする様子もなく、その女性はクラス全員に名乗る。

 

「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を1年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言うことはよく聞き、よく理解しろ。出来ないものには────────」

 

教卓に立つ織斑千冬の言葉の後半部分は、白目を向いている一海に届くことは無かった。

 

「さあSHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。……それと猿渡。このあと氷室を起こして職員室までこい。……猿渡?」

 

千冬は返事のない一海の様子を確認する。彼は机に座ったまま魂が抜けたかのように白目を剥いて失神していた。

千冬はため息をつくと一海の席まで歩み寄る。クラスの生徒全員がこれから起こることを理解し、一海から目を背ける。

 

───────本日3度目の炸裂音が教室に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

「失礼しまァーす」

「失礼します」

 

ズキズキと痛む頭を抑えながら、一海と幻徳の2人は職員室を訪れていた。

 

「来たか。渡すものがあってな。」

 

千冬は2人の痛みなどまるで気にする様子もなく、机の上に置いてあった2つのケースを手に取る。

 

「お前達の所持していた……スクラッシュドライバー?の解析が完了した。結論から言うとそれは現在の技術で作れる物ではないそうだ。……だがその情報が流出して混乱が起きても困る。そんなことになればお前達の身柄を狙う連中も出てくるだろう。そこでそのライダーシステムを学園では『IS』として扱うことになった。」

 

それを聞いて2人は慌ててケースを受け取ると中身を確認した。壊れた様子などはなく問題なく使えそうだ。

学園への入学を告げられた後、2人が持っていたライダーシステムは全て研究、解析の為に取り上げられていた。絶対に壊したりしない、という約束であったが万が一壊されたりしたらどうしようもなくなるのだ。一海も幻徳も態度には出さないがずっと不安を抱えながら毎日を過ごしていた。

 

「はー良かった……無事で」

「あぁ。」

「今後はお前達の戦闘データを取り、技術の解析を続けるそうだ。……あぁ、そうだ。」

 

 

安堵の表情を浮かべる2人に千冬は問いかける。

 

「どうだ。あのクラスは。やっていけそうか」

「あー、まあ何とか……」

 

曖昧な返事をする一海。

一方幻徳は「無問題」と描かれたシャツを千冬へ見せつけていた。

 

「………………」

 

パァン!!!

 

 

 

「教師への態度は改めろ。分かったな?」

「………肝に銘じておきます」

 

頭にたんこぶを作りながらうつ伏せで倒れる幻徳に苦笑いを浮かべながら一海は職員室から出ようとする。その背中に再び千冬が声を掛けた。

 

「そうだ。そのライダーシステム……お前達の専用ISとして登録する事になるが機体名称はどうするんだ?」

 

千冬の問いに一海はよろよろと立ち上がる幻徳と視線を交わす。幻徳は一海に頷くと千冬の方へと顔を向け、迷う様子も無く答えた。

 

「……仮面ライダーローグ」

 

 

 

『仮面ライダー』。元は兵器として創られた技術、そして地球外生命体の脅威に晒されていたあの世界で愛と平和のために戦った正義の戦士の名。宇宙開発の技術として創られながらも結局は兵器として運用されることになってしまったISとは真逆の経緯をもつ『力』だ。

この世界でもその名を名乗るという事は、「俺達は兵器になるつもりはない」という幻徳なりの意思表示であった。

それを察した一海は笑みを浮かべ千冬へと視線を向ける。

 

「俺は仮面ライダーグリスだ」

 

 

 

 

 

今ここに再び『仮面ライダー』が誕生した。

 

だが2人はまだ気づいていない。

自分たち以外にもこの世界に紛れ込んだ「異物」が存在していることを。

 

世界のどこか、誰も知らない場所。満天の星空の下で再び『蛇』は目を覚ました。

 

 




高校入学するのに29歳と35歳のままじゃアレだったんで無理やり若返らせました……
まあスタークもガスで人の顔変えたりなんだりしてたんで多少はね?
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