ドルヲタと悪党とインフィニット・ストラトス   作:ミュラー

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前回の後書きに2人のハザードレベルは5くらいとか書いたんですけどやっぱりアレ無かったことにして下さい。2人のハザードレベルの現状などは後で作品内で改めて説明します。ごめんなさい。本当にごめんなさい。
コメントで指摘して下さった方ありがとうございます!!


よろしくお願いします。


戦いのゴングが鳴る

 

「IS……やっぱりガーディアン相手にするのとは訳が違うんだろうな」

 

翌日の昼食の時間、味噌汁を啜りながら一海は手元にあるISの教科書を読み込んでいた。その向かい側では幻徳が黙々と焼き魚の身肉と骨を分別している。周囲では女子達が2人その食事の様子をまるで動物園の観客のように観察しているのだが2人は全く気にする様子もなかった。

 

「当然だ。同じロボットでも機械による自動制御と人間が直接動かすのでは全くの別物、それにオルコットは代表候補生だ。織斑には悪いがあいつとはISの操縦技術も比べ物にならんだろう、実質2対1だ。この勝負はもらったな。」

 

頭をかく一海に幻徳が勝ち誇るような表情で言う。

 

「なんだとコラ。……悪ぃがそうはいかねぇよ。一夏だって勝負の日までただ遊んで過ごすわけじゃねえんだ。」

 

今日の午前中の授業の際、専用機が用意されることを告げられた一夏の特訓相手を申し出た篠ノ之 箒の顔を思い浮かべながら一海は幻徳の言葉を否定した。

 

「それに、俺はお前にだって負けるつもりはねぇからな」

「言うじゃねえかポテト…… 手加減はしないぞ」

 

視線を交わす。幻徳は焼き魚の骨の分別を終えたようで身肉を箸で掴んで口元に運ぼうとする。

そこで無情にも昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。

 

「……なんだと……!?まだ食べていないぞ!」

「早く食わないからだろバカ。次は実習だ、さっさと更衣室行くぞ」

 

気がつけば自分たちを取り囲んでいた女子達も殆ど居なくなっている。

一海は食べ終えた自分の食器トレイを手にさっさと立ち上がる。幻徳は悔しそうな顔をしながら何度か時計と綺麗に骨だけが取り除かれた焼き魚とご飯が乗ったトレイを見比べていたが、やがて諦めたかのように一海の後を追った。

 

 

 

 

 

 

そして、一週間後。

決戦の日がやってくる。

 

 

 

放課後、アリーナのピットで試合前に自分のISの調整を行うセシリアに幻徳は声をかけた。

 

「オルコット、油断するなよ。ポテト……猿渡はお前が思っているよりもずっと強い」

 

そのアドバイスに対しセシリアはふふんと鼻を鳴らす。

 

「怖気づいたのですの?このイギリス代表候補生、セシリア・オルコットが男相手に不覚を取るなどありえませんわ!」

 

自信たっぷりのその返答に、幻徳はおそらく今の彼女にはどんなアドバイスをしても無駄だと判断する。試合を前にして、彼は強い不安と焦りに襲われていた。昼食の時、一海にあそこまで自信たっぷりの勝利宣言をした以上負けるのはまずい。非常にまずい。

 

 

 

一方、反対側のピット。

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

一海、一夏、箒の3人は無言で向かい合っていた。ピットの中に重苦しい空気が流れる。

一夏に用意される筈の専用機は、まだ彼の手元に届いていなかった。それだけではなく、特訓相手を志願した箒はなぜか一夏に剣道の稽古だけをしっかり付けたらしく彼はまだISについての基本的な知識や技術も身についていない有様である。

つまりぶっつけ本番で、イギリスの代表候補生と戦う羽目になってしまったのだ。

 

「「「…………」」」

 

空気が重い。箒も自分が指導すると豪語しておきながら結局1度もISについての指導をしなかった事に引け目を感じているのか先程から大人しい。

 

……とその時、慌てた様子で山田先生と千冬がピットへと入ってきた。

 

「織斑くん!すみません!遅れましたが今用意出来ました!織斑くんの専用IS!」

 

山田先生がまくしたてると同時にピットの搬入口が重い音を立てながら開く。扉の向こう側には、純白の装甲が操縦者を待ち侘びるように佇んでいた。

 

「これが織斑くんの専用IS、『白式』です!」

 

一夏はゆっくりと自分のISに触れる。その瞬間不思議と理解した。このISの「使い方」を。

 

「すぐに装着しろ。時間がないからフォーマットとフィッティングは戦いながらやれ。出来なければ負けるだけだ。」

 

千冬に急かされながら一夏は白式に身を委ねる。空気が抜けるような音と共に一夏と白式の意識は「繋がった」。視界が一気に広がっていく。

 

「準備は出来たみてーだな。」

 

隣に立つ一海はどこからか水色のガジェット───スクラッシュドライバーを取り出しながら一夏の装甲におおわれた背中を軽く叩いた。

 

「ぶっつけ本番だけどよ……あのイギリス女に見せてやろうぜ。俺達の実力を。」

「……ああ!行こうぜ一海!」

 

2人の男はゆっくりとピットのゲートからアリーナへと歩み出た。

 

 

 

 

 

「あら、出てくるのが遅いので逃げ出したのかと思いましたわ」

 

アリーナの中央付近に浮かぶ青いIS「ブルー・ティアーズ」を纏うセシリアが腰に手を当てながら嘲笑うように一海と一夏へ言葉を投げかける。その横には制服姿の幻徳が腕を組んで立っていた。

 

「よぉ、覚悟はいいなヒゲ」

 

スクラッシュドライバーを腰に装着しながら一海はセシリアの方を一瞥もせずに幻徳へ声を掛ける。

幻徳も横で「わたくしを無視しますの!?」と激怒しているセシリアに構わず同様にスクラッシュドライバーを腰へ装着し、懐から紫色の小さな筒状の物を取り出した。

 

「当然だ。…………行くぞ」

 

筒状の物────クロコダイルクラックフルボトルについているキャップを指で回し、赤い亀裂が浮かび上がったそれをドライバーへ装填する幻徳。

 

『Danger!!Crocodile!!』

 

一海もまるでウィダーゼリーの容器のような形をしたアイテム「ロボットゼリー」を取り出すとそのまま勢い良くドライバーへと装填した。

 

『ロボットゼリー!!』

 

「「───変身!」」

 

2人同時にドライバーに備え付けられたレバーを下げる。途端2人の体を巨大なビーカーのような物が覆い、内部で湧き出した黒い液体が飲み込んだ。

 

「なにあれ……IS?」

「でもあんなの見たことないよ」

「新型なのかな?」

 

アリーナの観客席で観戦していたクラスの女子達がざわめく。ピットのリアルタイムモニターでも山田先生と箒が驚愕した様子を見せていた。唯一千冬だけが冷静さを崩していない。

 

 

幻徳を包んでいたビーカーが、さらに展開された紫色の巨大なキバで叩き割られる。飛び散る破片の中から、紫色の鎧を纏った幻徳が姿を現した。何も映らない、漆黒の装甲に覆われた頭部へ顎部分から伸びた牙が喰らいつき、その一部分を破壊する。砕かれた装甲の下から現れた青い大きな『眼』が正面に立つ一夏と一海を睨み付けた。

 

『割れる! 食われる! 砕け散る!クロコダイル イン ローグ!!!オーウラァ!!!』

 

女性の悲鳴のような音と力強い男性の音声を響かせながら、幻徳は「仮面ライダーローグ」への変身を完了させる。

 

『潰れる! 流れる! 溢れ出る!ロボット イン グリス!!!ブラァー!!!』

 

一海も同じく男性の音声を響かせながら黄金の鎧を纏う「仮面ライダーグリス」への変身を終えた。

 

「手加減しないからな!」

「それはこちらの台詞ですわ!」

 

一夏は一海の変身が完了したのを確認し、自身のISに搭載された唯一の武器である近接ブレードを構える。

対するセシリアも大型のレーザーライフル《スターライトmkII》を手元に呼び出した。

 

 

白と青のIS、紫と金の仮面ライダー。4人はそれぞれ向かい合いながらゆっくりと己の武器を構える。

 

 

 

 

 

 

クラスメイト達が見守る中、戦闘開始を告げる鐘の音がアリーナに響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

「「うぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁ!!!」」

 

 

開始と同時にスラスターを吹かせながらブレードを構えセシリアへと突進する白式。セシリアは素早くライフルを向けるが、上空から撃ち込まれた光弾によって銃身が弾かれたことで狙いが逸らされてしまう。放たれたレーザーは一夏とは全く違う方向へと飛んで行った。

慌てて上空を確認すると腕に装着した武器《ツインブレイカー》をこちらに向けている金色の戦士グリスの姿。先程突進してきた一夏の影に隠れていたのだろう。更にそちらに気を取られている隙に接近していた一夏がセシリアの目の前で近接ブレードを振り上げる。

 

「もらったァ!!」

「させるか!」

 

すかさずブレードとセシリアの間に体を割り込ませた紫色の戦士ローグが手にした奇妙な形状の片手剣《スチームブレード》で一夏の攻撃を受け止めた。さらにもう片手に持っていたこれまた奇妙な形の拳銃《ネビュラスチームガン》をガラ空きになっている白式の胸部へ向け、光弾を数発撃ち込む。

 

「ぐぁっ……!!!」

 

威力はそこまで高くはないが、体を衝撃が貫き思わず仰け反ってしまう。ローグはすかさず白式へ蹴りを叩き込んで吹っ飛ばした。だがグリスが一夏の体を受け止めたことで思ったほどの距離をとることもできない。

 

「あっ…ありがとうございます」

「油断するなと言った筈だ…!集中を途切れさせるな!」

 

悔しそうな表情で礼を言うセシリアを幻徳が叱責する。先程一夏にあそこまで接近されたのは完全にセシリアの油断だった。セシリア自身もそれを理解しているのか普段のように幻徳を嘲笑うこともせず表情だけを歪ませた。

 

「分かってますわ!それにわたくしもまだ奥の手がありましてよ!」

 

ライフルを構え直すセシリアの周囲に4つの小型のマシンが浮かび上がった。IS《ブルー・ティアーズ》に搭載された自律機動兵器《ブルー・ティアーズ》。機体名と搭載された装備の名前が同じなのは分かりにくくないのか?自身のISの装備を自慢するかのように解説してみせるセシリアを横目で見ながら幻徳は正面に立つ一海と一夏の様子を確認した。

2人とも消耗こそしているが、決定的なダメージは与えられていない。……やはり連携の有無の差は大きい。2人で息を合わせて攻撃を行ってくる相手に対してこちらはコミュニケーションすらまともに取れていない状態だ。

 

それに……幻徳は自分の拳を握ったり開いたりして何かを確認していた。

 

(ハザードレベルが落ちている…)

 

あのパンドラタワーでの戦い以来の戦闘。あの時と比べると自分でもはっきり感じるほど戦闘力が低下しているのが分かる。これも1度死亡した影響なのだろうか。視線を向けると一海も違和感を覚えているのか自分の全身を確認していた。

 

「よそ見する余裕はありませんわ!」

 

そこへ、セシリアの《ブルー・ティアーズ》───ビットが一海と一夏へ狙いを定め取り囲む。直後、四方から放たれたレーザーが2人を直撃した。

 

「ぐあっ!?」

「うおッ」

 

一夏のIS──白式の肩部分の装甲が弾け飛び、グリスも衝撃で仰け反る。

そこへビットの銃口が再び攻撃を行おうと光を放った。グリスはすぐに体勢を立て直すとダメージの大きい一夏を庇うために跳躍する。だが

 

「そこですわ!!」

 

すかさずセシリアのライフルから打ち出されたレーザー弾が空中のグリスを直撃した。地面へと叩き落とされた一海と一夏へ、ビットからの射撃が殺到し2人は爆煙に飲み込まれる。

その様子を見て幻徳は舌を巻いた。ビットによる四方八方からの攻撃に加え、セシリア本人による精密な射撃。1度距離を取られた状況からこれに完全に対応するのはかなりの難易度だろう。自分や、一海のように戦いの中に身を置き続けた者とは違う、ただの16歳の少女にすらこれ程の戦闘技能を身につけさせるISという技術と、それを生み出したという篠ノ之 束へ幻徳は心の中で賞賛を送った。

だが、幻徳は知っている。アレが、この程度で倒れるような男ではないことを。横で勝利を確信し喜ぶセシリアへ声を掛けようとして────

 

「やってくれるじゃねぇか…コラ」

 

声が響くと同時に煙の中から茨のような物が飛び出し空中に浮いていたビットの1つを絡めとる。そのままビットは振り回されると別のビットに激突し爆発を起こした。

 

『チャージクラッシュ!』

 

黒煙の中から現れたグリスのドライバーにはゼリーではなくフルボトルが装填されていた。「茨」の成分が封じ込められた「ローズボトル」の能力。再びグリスの掌から茨が伸びていき3つ目のビットを絡めとった。

 

「オルコット!!」

「分かっていますわ!!」

 

幻徳の声に応じるようにセシリアはグリスへとライフルを向け引き金を引く。さらに放たれた光弾の間を縫うように駆けるローグが手にしたスチームブレードを構え直しグリスへととびかかった。グリスはビットへの攻撃を止め、回避の姿勢をとる。

次の瞬間、跳躍したローグへ向かって黒煙を切り裂くように光る刃が閃いた。

 

「何っ……ぐあっ!!」

 

完全な不意打ち。スチームブレードでの防御も出来ずローグの体はセシリアの近くまで吹き飛ばされていた。

 

「氷室さん!!」

 

セシリアが悲痛な声を上げる。空中で体勢を建て直しながら着地したローグは刃が飛び出してきた黒煙の中へ目を向けた。だがダメージは小さくないらしく、その場で膝をついてしまう。

 

薄くなる煙の中から、白式が姿を現した。だがその形状は、試合開始の時と比べて明らかに変化している。当初の機械的な形から、滑らかな曲線とシャープなラインが特徴的などこか中世の鎧を思わせるデザインへと変わっていた。さらに先程の戦闘の中で吹き飛ばされた肩の装甲や胸部の損傷も修復されているようだ。

新しくなった白式を纏う一夏はゆっくりと、近接ブレード《雪片弐型》を構え直す。

 

「まさか……一次移行(ファースト・シフト)!?あなた、今まで初期設定だけの機体で戦っていたというの!?」

 

セシリアはその姿を見て驚愕の声をあげた。一夏は笑みを浮かべながら雪片の刀身から光を放つ。

 

「これでトドメだ、行くぜ一海!」

「あぁ、決めるぞ」

 

『スクラップフィニッシュ!!』

 

再度ロボットゼリーを装填し、レバーを下ろす。全身にエネルギーを循環させながらグリスは空高く跳躍した。そして両肩から黒いゲル状になったエネルギーを噴出させながら、セシリアと幻徳へ向けてライダーキックを放つ。

さらに地上では光り輝く刀を手に、白式がセシリアへ向けて疾走していた。

 

 

「───っ!!」

 

セシリアを守るように残っていた2機のビットが白式へ突進する。だが一夏はその動きを見切り一瞬でそれを切り捨てた。小さな爆発音が2度、連続して響く。勝った!一夏はセシリアの前で再び剣を振り上げる。

 

「オオオオオオオオッ!!」

 

一夏が勝利を確信したその時、雄叫びを上げながら飛び込んでくる影があった。氷室幻徳、ローグだ。

ローグは振り下ろされた雪片を両手で受け止めると、そのまま力任せに刀ごと白式本体を振り回し─────空中から迫っていたグリスへと叩きつけた。

 

「何ィーーーー!!?」

「ウソだろ!!?」

 

グリスのキックと白式の刀が接触し、爆発を起こす。

一海と一夏の体は纏っていた装甲を失い、地面を転がった。同時に幻徳も光と共に制服姿へ戻りその場へ倒れ込む。

 

 

『試合終了。勝者────セシリア・オルコット』

 

決着を伝えるブザーと共に勝者の名前が読み上げられる。アリーナには意識を失っている3人の男と、唖然とした表情のセシリアだけが残されていた。

 

 





ゲイツくんいいですよねあのデレっぷり
まだ3話目ですよ
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