よろしくお願いします
「中国から
昨夜、食堂で夜遅くまで遅くまで続いたクラス代表就任パーティーのせいか少し眠そうな様子で教室の机に座っている一夏が素っ頓狂な声をあげた。
「ああ。なんかお前の知り合いってヤツに伝言頼まれてよ。」
その目の前にある教卓にもたれかかる男、猿渡一海が数日前に校庭で少女から預かった伝言を少し違う内容で一夏に伝えている。
「流石に五目ラーメンの知り合いはいないんだが……」
「いや、まて広東麺じゃなくて担担麺だったかもしれねぇ」
どっちにしても麺類の友人なんて一夏に心当たりはない。と、2人の元へ男が近づいてきた。長身の髭面男 氷室幻徳だ。
「よう。氷室、お前昨日あの後どこに行ってたんだ?」
一夏が昨夜パーティーの途中で姿を消した幻徳に声をかける。
「オルコットに誘われてな。部屋でイギリスの菓子や紅茶を馳走になってた。」
「お前ら仲良いなぁ」
表情ひとつ変えずに言う幻徳と嫉妬する様子なんて見せない一夏に一海はケッ!と苛立った様子でそっぽを向いた。傍から見れば一海もほかの2人に劣らず充分すぎるほど男前なのだが何故か彼だけあまりそういう浮いた話はない。
「猿渡くんは……彼氏って言うよりカシラ?」
「そうそう!兄貴分みたいな!」
「クラスで一番頼りがいがあるよね〜」
というのはクラスの女子達の言葉だ。かつての世界で一海が培ってきた「カシラ度(頼れる漢の中の漢、カシラの中のカシラだけに許された漢の度量と強さを示す単位 by.赤羽)」が今、思わぬ形で彼の前に立ち塞っていた。
「幻徳さん、一夏さん、一海さん。おはようございます。転校生の話お聞きになりました?」
そこへ金髪の綺麗な髪を靡かせながら一人の少女が会話へ参加する。先程も話題にでてきたイギリスの代表候補生、セシリア・オルコットだ。初めの頃はその高慢な態度からクラスでも孤立しがちだった彼女だが、クラス代表決定戦以降人が変わったかのように態度が軟化していた。昨日もパーティーの中でクラスメイト達とかなり打ち解けたようだ。
「転校生?まだ四月だぞ」
セシリアの言葉に幻徳が疑問を浮かべる。時期がおかしい気がする。入学ではなく転入とは。それにこのIS学園は入学同様、いや確かそれ以上に転入の条件は厳しかったはずだが。
「先生にちらと聞いたが、なんでも中国の代表候補生だそうだ。」
幻徳の疑問に答えながら会話に参加してきたのは一夏の幼馴染、篠ノ之箒だった。代表候補生、という単語に一同の視線がセシリアに集まる。
「セシリア、会ったことはないのか?同じ代表候補生だろう」
箒の言葉にセシリアは首を横に振った。
「わたくしも他の国の代表候補生と直接会ったことはありませんわ。話に聞いたことはありますが……」
「ふーん、どんな奴なんだろうなぁ」
一夏の言葉に箒はムカッとした表情をする。
「なんだ、気になるのか?」
「え?まぁ、そりゃあ少しな」
一夏の返事が気に入らなかったのか、箒の機嫌があからさまに悪くなった。周囲の人間は幻徳を除いてあぁ……と呆れたような目を一夏へ向ける。
「今のお前に女子のことを気にしている余裕があるのか?来月にはクラス対抗戦があるというのに。」
「そう!そうですわ一夏さん!幻徳さんを差し置いてクラス代表になったのですから、勝っていただかないと困ります!その為ならわたくしセシリア・オルコット、どんな訓練にもお付き合い致しますわ!」
一夏につめよる女子二人。その様子を見ていたクラスメイトの女子達も一夏へ声をかけた。
「そうだよ織斑くん!やるからには勝ってもらわないと!」
「1位のクラスには学食デザートのタダ券半年分って話だからねー」
なるほど、そういう訳か。一夏は頭をかいた。道理で箒やセシリアも必死になる訳だ。女子ってスイーツ好きだもんな。
相変わらずの鈍感さを発揮しながら「まあ、やれるだけやってみるか」とつぶやく一夏。
「男たるもの初めからそんな弱気でどうする!やるからには優勝だ!!」
「そうですわ!一夏さんの評価がそのままクラスの評価に繋がってしまいますのよ!?」
だがこのクラスメイト達はそんな心構えでは許してくれそうにない。そんなにスイーツが欲しいのか。うーん、と悩む一夏に一海と幻徳が声をかけた。
「まぁ、代表戦まであと1ヶ月近く時間があるんだ。決定戦の時みてぇにぶっつけ本番みたいな形にはなんねぇだろ」
「結果としてお前に代表を押し付ける形になってしまったからな……俺達も特訓に協力させてもらおう」
「一海……氷室……!」
3人の男はガッチリと固い握手を交わす。持つべきものは同性の友。2人の存在に一夏は大きく救われていた。
「織斑くんファイト!」
「スイーツの為にね!」
「聞いた話じゃ専用機をもってるクラス代表って1組と4組だけらしいし!絶対いけるよ!」
いつの間にかクラス全員が盛り上がっている。この雰囲気を壊すのも忍びないので一夏は「頑張るぜ」と周りのクラスメイト達に応じた。
「──────その情報、古いよ。」
その時、聞きなれない声が教室に響いた。皆の視線が声の出処へと向けられる。
腕を組み、片膝を立ててドアにもたれている少女。その顔を見て一海が「あ!」と声を上げた。
「お前は……半ラーメン……?」
「
ツインテールの少女、鈴は顔を真っ赤にして一海を怒鳴りつける。その顔と名前に一夏は覚えがあった。
「鈴……?お前、鈴か?」
一夏の言葉に鈴はこほんと咳払いをしてからふっと笑った。
「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」
「何カッコつけてるんだ?すげえ似合わないぞ」
「んなっ……なんてこと言うのよあんたは!!」
気取った喋り方は一夏の指摘で一瞬で元の口調に戻った。そもそも最初に一海に怒鳴ってしまった時点で手遅れだったのだが。
「って言うかもしかしてさっき言ってた広東麺とか担々麺とかって……」
「悪い、名前間違えてたわ」
一夏は一海へ白い目を向ける。一海は軽い調子で謝った。
「と!に!か!く!この1組の代表に、2組の代表であるあたしが─────」
「邪魔だ。」
仕切り直すように一夏へ指先を向けながら喋る鈴の声を、後ろから現れた人物が遮った。なによ!と振り返った鈴の顔色が真っ青になる。
「
「ち、千冬さん……」
「織斑先生だ。そして入口を塞ぐな。邪魔だ」
「すみません…」
すごすごとドアからどく鈴。さっきまでの自信たっぷりな態度が台無しである。
「とにかく!また後で来るからね一夏!あとアンタ!後で覚えておきなさいよ!!」
「さっさと戻れ」
「はっ、はい!!」
鈴は一夏と一海の方へビシッと指を向けた後、千冬から逃げるように自分の教室へ向かって走り去って行った。
「いっ、一夏!さっきのは誰だ?知り合いか?やけに親しそうだったが」
鈴が居なくなった後、一夏は箒を先頭にするクラスメイトの群れに囲まれ質問攻めにあっていた。あっ。と一夏が声をあげる前にその並んだ頭へ流れるように出席簿が炸裂していく。
「席につけ馬鹿者共」
涙目になりながら箒達は自分の席へ戻っていく。その様子を見ながら一夏は苦笑いを浮かべるのであった。
「待ってたわよ!一夏!それと……」
「猿渡一海だ。」
「一海!!」
昼食の時間。男子3人+セシリア、箒の女子2人、計5人で食堂へ向かった一行を待っていたのは腕を組んで食堂の入口に立ち塞がる鈴であった。
「取り敢えずどいてもらっていいか?飯食えねぇし」
一海の言葉に鈴は「そ、そうね。」と慌てて道を開ける。取り敢えず話は注文をして席に着いてから──ということになった。
それぞれ注文した料理が乗ったトレイを手に空いていたテーブル席へ向かう。一海 幻徳 セシリア、その向かい側に箒 一夏 鈴の並びで席に着いた。
「それにしても久しぶりだな、鈴。1年ぶりじゃないか?元気にしてたか?」
「勿論元気よ。アンタこそ怪我病気はしてなさそうね!」
自分の料理を口に運びながら一夏と鈴は改めて再開を喜び合った。その様子を見ていた箒とセシリアが一夏を質問攻めにする。
「一夏、そろそろどういう関係か説明してほしいのだが」
「そうですわ!一夏さん、もしかしてこちらの方とつきあっていらっしゃるの?」
そわそわと落ち着かない箒に対して、セシリアは単純に好奇心からの質問のようだ。その言葉に鈴は頬を赤らめながら慌てた様子を見せる。
「つっ、つきあっ!?べべべ、別にあたし達は付き合ってる訳じゃ……」
「そうだぞ。ただの幼馴染だ。」
さらりと言う一夏を鈴が睨みつける。その様子を見ていた一海とセシリアはあー……と残念なものを見るような目で一夏を眺めた。その2人の横で幻徳が蕎麦をすする。
「幼馴染……?どういう事だ一夏。お前の幼馴染は……その、私だけではなかったのか?」
不安そうな顔で箒は一夏へ質問する。一夏がその質問に答えるよりも早く鈴が箒の言葉に反応した。
「幼馴染?ふーん……ってことはアンタが篠ノ之 箒?……初めまして、あたしも一夏の幼馴染なの。同じ立場同士、仲良くしましょうね」
「ふん……望むところだ。」
鈴が笑顔で差し出した手を箒が不機嫌そうな顔のまま握り返す。傍から見れば2人の少女が親交を深めているような微笑ましいシーンだが、その現場は殺伐とした雰囲気に包まれていた。
「そっ、そういえば鈴!お前一海とも顔見知りだったみたいだけど…」
いたたまれなくなったのか、一夏が話題を変えようとする。箒から手を離した鈴はあぁ、という表情でうどんを啜っている一海の方へと目を向けた。
「一海には学園に初めて来た時道を教わったのよ。──そういえばアンタ、ちゃんとアレ一夏に伝えたの?なんかあたしの事さっき知ったみたいな様子だったけど」
「ちゃんと伝えたよ。なぁ一夏」
「は、はは。そうだな」
ジト目を一海へ向ける鈴の顔としれっと言う一海の顔を見ながら、一夏は引きつった笑みを浮かべた。この調子だと一海が鈴の名前を盛大に間違えていた事を知ったら今度は怒鳴られるだけでは済まないだろう。
「えーっと、それであんたが氷室 幻徳?写真で見るより厳つい顔ね。よろしく幻徳。」
「あぁ、よろしく頼む、凰。」
ずぞぞぞぞ!と音を立てながら蕎麦を食べていた幻徳は口の中のものを咀嚼し終えてから鈴に軽い挨拶をした。隣でその様子を見ていたセシリアが慌てた様子で鈴の視界に映り込む。
「ンンンッ!そしてわたくしがイギリス代表候補生、セシリア・オルコットですわ!!」
「ふーん、そう。よろしくセシリア」
「んなっ…もうちょっとこう、なにかありませんの!?同じ代表候補生として」
「うん。あたし他の国とかあまり興味ないし」
鈴の言葉にセシリアの顔が怒りで真っ赤になっていく。
「いっ、言っておきますけど、わたくしあなたのような方には負けませんわ!」
「そう、でも戦ったらあたしが勝つよ。だって強いもん」
当たり前のように言う鈴にセシリアはわなわなと拳を震わせる。宥めるようにその肩に幻徳が手を置くとセシリアはハッとした表情をして全身から力を抜いた。
鈴はその様子を気にすることなく自分のラーメンのどんぶりを持ってごくごくとスープを飲む。そしてドンッと音を立ててどんぶりをテーブルに置くと一夏へ視線を向けた。
「そういえばアンタ、クラス代表なのよね?」
「ん?おう。まあ成り行きでな。」
「ふーん……」
一夏の言葉に思案する鈴。やがて、何かを期待するような顔をしながら隣の一夏の方へと体を向ける。
「あの、さ。約束って覚えてる?」
「約束?」
鈴の言葉に、自分の記憶を掘り返す一夏。だが鈴はその様子に気付かず恥ずかしがるような表情で言葉を続けた。
「そうよ!もし、もしもよ?今度のクラス対抗戦であたしがアンタに勝ったら────」
「あ!思い出した!鈴の料理の腕が上達したら毎日酢豚を奢ってくれるって話か?」
「はい?」
鈴の表情が凍りついた。今度は一夏が鈴の様子に気付くことなく言葉を続ける。
「だから、鈴が料理出来るようになったら、俺にメシをごちそうしてくれるって話じゃ────」
パァン!と鳴り響く音が一夏の言葉を遮った。いや、音ではなく衝撃か。
「……へ?」
ジンジンと痛む頬に困惑する一夏と、彼にビンタを入れて俯いている鈴。箒も、セシリアも、一海も幻徳も、突然のことでどう反応していいのかわからないといった顔をしていた。
「…………」
一夏は恐る恐る鈴の表情を確認する。ゆっくりと顔を上げた彼女は───────泣いていた。
「おっ、おい鈴……?」
「最っっっ低!!女の子との約束をちゃんと覚えてないなんて!!男のクズ!バカ!アホ!一夏!」
一夏を罵倒し、食堂を飛び出していってしまう鈴。周囲の白い目に気付いた一夏は少し慌てて
「すまん!俺ちょっと謝ってくる!」
と鈴の後を追って飛び出していった。
「……それで、未だに謝れてねぇのか」
「あぁ……」
食堂での1件から数週間後。クラス対抗戦を来週に控え特訓の為にアリーナへ向かう途中、隣を歩く一海の質問に一夏は溜息をつきながら答えた。
「なんか、あれ以来避けられちゃってさ……顔合わせてもすぐ逃げられるし」
「まあ、約束を忘れてたお前が悪ぃな」
「くっ……でも、約束は酢豚を毎日食わせてくれるで間違って無いはずなんだけどな……」
その一夏の言葉に、一海は思わず足を止めた。
(それって、毎日味噌汁を作ってくれとかそういうアレなんじゃね?)
どーした?ときょとんとした顔をする一夏を眺める。恋愛関係に関しては絶望的に察しが悪いこのスーパー唐変木に、残念ながらそういった比喩表現は全く通じない。まだ1ヶ月程度の付き合いではあるが、一海はこの織斑一夏という人間を徐々に理解しつつあった。もしそうだとしたら、鈴のあの突然の怒りも理解出来る。
「い、いや。なんでもねぇ。……そういえばアイツ、お前に勝ったら約束がどうのとか言ってたよな?」
「ん?あぁ、そういえば。」
直後にビンタされてしまったので最後まで話を聞くことは出来なかったが、確かにそんなことを言っていたのを一夏は思い出す。
「ちょうどいいじゃねぇか。今度のクラス対抗戦、お前がアイツを倒して……謝って、改めて話を聞いてやれよ」
「うーん……そうだな!このままでいる訳にはいかないし、それが一番か!」
一夏はスッキリしたような顔で笑う。一海はそんな彼の様子を見ながら内心鈴に同情しつつアリーナへと向かうのであった。
そしてその翌日、生徒玄関前に大きく張り出された紙があった。
表題は『クラス対抗戦日程表』。
一年一組、織斑一夏の名前の横には一年二組、凰鈴音の名前が刻まれていた。
Vシネクローズにゴーカイジャーのシド先輩出るらしいっすね
キャスト情報見た感じカシラとげんとくんと美空と紗羽さんも出るっぽくてウレシイ…ウレシイ…
そのまま大ヒットしてVシネグリスとVシネローグとVシネマッドローグとVシネブロスも作れ(過激派)
なんなら葛城巧がエボルトと最上の野望を阻止する為に奔走する様子を描いた作品も作って欲しい