ドルヲタと悪党とインフィニット・ストラトス   作:ミュラー

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仕事が落ち着いて10月頭辺りまで暇なので初投稿です
友人らも大学が再開してしまってマジで暇を持て余してるので投稿ペース上げていきます。


よろしくお願いします



白熱のクラスマッチ

世界のどこか、誰も知らない場所に存在するとある研究所。

 

そこで奇妙な椅子に座りカタカタとキーボードを叩く束の背中に声を掛ける者がいた。

 

「それで?俺の仕事はこのふたりの足止めってことでいいのかぁ?」

 

赤いパワードスーツに全身を包むコブラ男、ブラッドスタークだ。その手元にあるタブレット端末には二人の男の写真が映し出されている。

 

「そうだよ。私のゴーレムちゃんがいっくんの戦闘データを取り終わるまでの時間稼ぎ。殺しちゃダメだよ。後でその2人のデータも欲しいからね」

 

視線を目の前のモニターから一切逸らす様子のない束にスタークは肩をすくめてみせた。

 

「全く先生は人遣いが荒い。つい先日まで亡国なんとか?の拠点を潰して回ってたのに……」

「そういう契約でしょ。それにいっくんの戦闘データはこれの完成にも必要なんだよ」

 

束が指し示した先にあるもの、無数のケーブルに繋がれている赤いドライバーを見てスタークは「それなら仕方ない」とため息をつくような仕草をした。

そして、後ろを振り返り部屋の隅の暗がりへと声を掛ける。

 

「今回はお前達にも働いてもらうぞォ?」

 

光の当たらない闇の中で、2つの人影が静かに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合当日、第2アリーナ第1試合。織斑一夏VS凰鈴音。

 

噂の男子生徒と中国の代表候補生。専用機持ち同士の戦いとあって観客席は全席満員。一海達も人数分の席を確保することができず観客席最上段の通路からアリーナを見下ろしていた。

 

「中国で作られた第三世代型IS『甲龍(シェンロン)』。一夏さんの『白式』と同じ近接型のISだと聞いていますわ」

 

白式を纏った一夏と向かい合う鈴のISについて解説するセシリア。だがその声は途中で観客の歓声に遮られる。

 

「始まったか……」

 

幻徳が呟く。その視線の先では、刀を構えた一夏が鈴へ向かって突進していた。

 

 

 

 

「うぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 

日本刀型のブレード《雪片》を構え、スラスターを吹かせて鈴へと突っ込む一夏。対する鈴は回避する素振りも見せず手元へ呼び出した柄の両端から大型の青龍刀が伸びる武器《双天牙月》を振るった。お互いの刃がぶつかり合い火花を散らす。

 

「どう?一夏。今謝れば痛めつけるレベルを下げてあげるわよ?」

「いらん…っ!謝るのは試合が終わった後だ…!!そんなもん要らないから全力で来い!!」

 

言いながらも一夏は自分の刀が押されつつあるのを感じていた。正面からのパワー対決では分が悪い。そう判断し機動力による撹乱へと戦術を変えようとする。

だが

 

「──がっ!?」

 

後退し距離を取ろうとした一夏の上半身が突然衝撃を受け仰け反った。まるで思い切り顔を殴られたかのようだ。慌てて体制を直すが今度は腹部と肩へ続け様に衝撃を受ける。

 

「後悔させてあげるわ一夏」

 

にやりと笑みを浮かべる鈴。一夏は何が起きたのかも分からないまま、しかしこの衝撃が鈴からの攻撃によるものであることを瞬時に理解し、《雪片》を構え直す。

再び衝撃に備える一夏の目の前で、鈴の纏うISの肩部分のアーマーがスライドして開いた。

 

 

 

「なんだあれは……」

 

アリーナの様子を見下ろしていた箒が呟く。それに答えたのは横に立つセシリアだった。

 

「『衝撃砲』ですわね。空間に圧力をかけて砲身を生成、余剰で生じた衝撃を不可視の砲弾として撃ち出す第三世代型兵器……話には聞いていましたけどここまで厄介なものとは思いませんでしたわ…」

 

不安そうな表情を見せる箒とセシリア。それに対し隣に立っている一海と幻徳の顔にはそれほど深刻そうな様子は無い。

 

「まだ勝機はある。問題は織斑がそれに気付くか、だが」

「気付くだろ」

 

幻徳の言葉を一海が一蹴した。ネビュラガスによって視力も強化されている一海の目は、観客席の最上段からでもアリーナで戦いを繰り広げる一夏の表情をしっかりと写している。

 

「アイツの目は、まだ全然諦めてねぇ」

 

幻徳はそんな一海の様子を見て、以前の千冬の言葉を思い出していた。

 

 

 

 

 

「エネルギー無効化攻撃?」

 

思わず聞き返してしまった一夏に千冬は頷く。

クラス代表決定戦の後、自分のISの特性をよく理解できなかった一夏は一海と幻徳と共に様々なデータを確認していた。

だがいくら考えたりデータを見ても分かるようなものでもなく、その状況を見かねた千冬がやって来て説明をしてくれているのだ。

 

「お前の『白式』の刀──《雪片弐型》に搭載されている能力だ。ISがまとっているシールドや攻撃時に使用するエネルギーを無効化し、本体へ直接ダメージを与える。そうなった場合、どうなるか分かるな?」

「えっと……ISの『絶対防御』が発動して、大幅にシールドエネルギーを消費させる……でしたっけ」

「そうだ。氷室、あの試合で織斑の攻撃を受けた時、何か感じなかったか?」

「そういえば……」

 

幻徳はひとつ心当たりがあった。

《仮面ライダーローグ》に備えられている機能の一つ、外部からの衝撃を受けた際に装甲の内部を満たしているゼリー状のエネルギーが硬化しダメージを防ぐ『クロコダイラタンアーマー』。それが一夏のあの光る斬撃を受けた際発動しなかったのだ。

なぜ能力が発動しなかったのか。なぜ不意打ちとはいえたったの一撃で行動不能になるほどのダメージを負ったのか。なぜ刀が光っていたのか。その答えはただ一つ。

幻徳の疑問は千冬のその説明によって氷解した。そして同時に一夏との戦闘訓練は控えよう、と決意する。

 

「それって滅茶苦茶強いんじゃねえか?ISと戦うなら最高の能力だろ」

 

一海の言葉に千冬は首を横に振った。

 

「残念だが、能力が強力な分反動も大きい。《雪片》はその能力を使用するためにかなりのエネルギーを消費する。その消費分はどこから用意すると思う?」

「あっ、まさか……」

 

何かに気がついた様子を見せる一夏に、千冬は再び頷いた。

 

「つまり、白式本体を動かすためのエネルギーを攻撃に転化しているのだ」

「それって……」

「簡単に言うと欠陥機だ。」

「欠陥!?欠陥機って言ったか今!」

 

千冬に食ってかかった一夏の頭に出席簿が炸裂する。幻徳は顔をしかめて目を背けた。

 

「言い方が悪かったな。ISはそもそも完成していないのだから欠陥も何もない。ただ他の機体よりもちょっと燃費が悪くて近接攻撃特化になっているだけだ。大方、他の装備を格納するための拡張領域(バススロット)も埋まってるんじゃないのか」

「それも欠陥なのか……」

「話をちゃんと聞け。本来拡張領域用に空いているはずの処理を全て使って《雪片》を使用しているんだ。その威力は全IS兵装の中でも最強クラスだ」

 

それに、お前には銃より剣の方が合っている。と付け加える千冬。その表情は先程までの教師の顔ではない、ただ弟を思いやる姉の顔である。

こんな顔もできるんだな、と一海は少し驚いた。

 

「一つのことを極める方が、お前には向いているさ。なにせ───私の弟だ」

 

 

 

 

 

 

「そうだよな……!」

 

鈴の放つ不可視の砲弾を直感だけで紙一重で回避しながら、一夏は口元に笑みを浮かべる。彼もまた、千冬の言葉を思い出していた。

加速と停止を繰り返し、《衝撃砲》を回避しながら鈴へと急接近した一夏が《雪片》を横なぎに振るう。鈴は咄嗟に《双天牙月》を構えその斬撃を受け止めた。そして後方へ飛び退いて一夏と距離を開ける。

 

「鈴」

「なによ。喋ってる余裕があるわけ?」

「次で決めるからな」

 

静かに、鈴へ語りかけながら《雪平》を構え直す一夏。その表情を見て鈴はどきりとした。

 

「そっ、それをわざわざあたしに言ってどうすんのよ。次で決めに行くから、手加減してくださいとでも言いたいわけ?」

 

言いながら《双天牙月》を大形の両刃の形状から一対の青龍刀へと変形させ、構え直す。両肩に浮かぶ《衝撃砲》も目の前の一夏へと狙いを定めた。

鈴の言葉に、一夏はゆっくりと首を横に振る。

 

「違う。覚悟を決めたんだ。この一撃が決まれば俺の勝ち、外せばお前の勝ち……ってな」

 

鈴の目の前で刀が、ゆっくりと光を放ち始める。そして一夏はその切っ先を鈴へと向け─────真っ直ぐに突っ込んだ。

 

「ちょっ……死ぬ気!?このっ……!!」

 

鈴へとまっすぐ飛んでいく一夏へ《衝撃砲》による攻撃が叩き込まれる。手を離れ、宙を舞う《雪片》。

だが、一夏の目には一切諦めの色はない。

鈴の意識が刀に向けられた一瞬の隙をついて、一夏は体制を崩したまま無理矢理全力で「加速」した。

一海や幻徳、セシリアに箒。彼らとの特訓の中で一夏が習得した技能「瞬間加速(イグニッションブースト)」だ。エネルギーを多く使うものの、一時的に代表候補生ですら完全に対応は出来ないほどのスピードを出すことが出来る。

鈴の視界から一夏の姿が消える。咄嗟に両手の青龍刀を前へ突き出そうとするが、それよりも早く衝撃が鈴の全身を貫く。次の瞬間その体は後方へと吹っ飛ばされ地面を転がっていた。ISのHPのようなものであるシールドエネルギーはまだ残っているが、突然のダメージで鈴本人の体が立ち上がることが出来ない。

先程まで鈴がいた場所に立っている一夏は回転しながら落ちてきた《雪片》を掴むと、倒れ込む鈴の目の前へ歩み寄りそれを振り上げる。自身の敗北を理解し、悔しそうに鈴は目を閉じた。

 

 

 

 

「決着だ」

 

それを見ていた誰もがそう思っただろう。ピットのリアルタイムモニターで山田先生と共に試合の様子を眺めていた千冬ですらそう思っていたのだ。

 

だが一夏の刀が鈴の纏うISに触れる寸前、爆発と共に「何か」がアリーナへ降り立った。

 

 

 

 

「何が起きた……!?」

 

観客席はパニックになっていた。

生徒達は皆押し合うように出口へ殺到している。先程までとは一変し、人がいなくなった観客席から一海たちはアリーナの様子を確認していた。

アリーナの中央に立ち込めている土煙から、深い灰色をしたISが姿を現す。その腕は異常に長く、つま先より先まで伸びている。さらに頭と肩が一体化したような形状の、おそらく頭部にあたる部分には剥き出しのセンサーレンズが並んでいた。

その長い腕から撒き散らすように放たれたレーザーを、鈴を抱えた一夏がギリギリで回避する。

 

 

「おいヒゲ、行くぞ!」

「ああ。……オルコット、篠ノ之。お前達は避難しろ」

 

スクラッシュドライバーを取り出しながら言う幻徳に、セシリアは首を横に振った。

 

「逃げるなら幻徳さんも一海さんもです!お二人だけ戦おうとしてるのを見過ごすわけには行きませんわ!」

「代表決定戦とは違う!これは実戦だ…!俺は、お前も、織斑にも、凰にも、誰にも傷ついて欲しくない……!!」

 

幻徳の言葉に何も言い返せなくなってしまうセシリア。その手を箒が引いた。

 

「……行こうセシリア、この2人は強い。私たちがいても足でまといにしかならないだろう………氷室、猿渡。一夏を頼む」

「っ……幻徳さん、わたくしは幻徳さんにも傷ついてほしくはありませんわ!どうかご無事で……」

 

出口の人の海の方へ走っていく2人の背中を眺めながら、幻徳はスクラッシュドライバーを装着した。

 

「随分と惚れられたな、ヒゲ」

 

同じくスクラッシュドライバーを腰に巻きながら一海がからかうように笑う。幻徳も小さく笑った。

 

「オルコットとはそんな関係じゃない。大体俺達は中身はオッサンだろ」

「へっ。そう思ってるのはお前だけだ」

 

軽口を叩きあいながら、《ロボットゼリー》と《クロコダイルクラックフルボトル》をそれぞれ握りしめてアリーナへと向かっていく一海と幻徳。

 

その背中に、聞き覚えのある声が掛けられる。

 

 

 

 

 

「おっとォ、悪いがそこまでだ。お前達をあの中に入れる訳には行かなくてなぁ」

 

 

 

 

2人は思わず足を止める。

それは、二度と聞きたくない声だった。

二度と聞くはずのない声だった。

 

一海と幻徳はゆっくりと振り返り、そして「それ」を視界に収め、両目を大きく見開く。

 

かつて、2人が仲間と共に戦った異形の存在。地球を滅ぼすために暗躍し、一海と幻徳に「仮面ライダー」となる資格を与え、そして最終的にその命を奪った『人類の敵』。

 

地球外生命体『エボルト』は、以前纏っていた赤いパワードスーツの姿で観客席に腰掛けていた。

 

 

 




最近のdocomoの謎のエグゼイド推しは何なんですかね

auは対抗してCMにタケル殿出せ


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