戦姫絶唱シンフォギアEX   作:冬月雪乃

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十五話 反転聖剣

「フィーネ!?」

「ッチィ……!」

 

思わず助け起こしに向かうが、鞭で突き飛ばされる。

次の瞬間、フィーネに突き刺さる漆黒の拳。

 

「完全でない聖遺物が、人体に融合し、その出力(燃料)に耐え切れなくなったとき、自動で起動する破壊の化身ーー」

 

いわば、あれはギアを纏った獣だ。と土煙の幕の中、フィーネは嘲るように吐き捨てる。

 

「私もまた、融合症例へと自らを昇華したが、やはり完全聖遺物とでは違いが著しいな」

 

煙の晴れた先には真っ二つになったフィーネの姿。

しかし、ネフシュタンの強烈な再生能力によって瞬く間に元に戻る。

 

「しかし……自分の組み上げた決戦機能の一つにしてやられるのは癪ではあるな!」

 

 

ーー《AIGIS》

 

再びぶつかり合う。

ネフシュタンの防壁を四つに重ね、分厚い盾とするが、立花さんの拳が当たった瞬間から不気味に軋みをあげる。

悲鳴のようにも聞こえるそれだが、フィーネの表情は余裕のそれだ。

 

ーーどこで乱入するべきか。

 

攻撃力が過多なのは理解している。

このまま聖剣ビームを放てばフィーネも立花さんも諸共だ。

そうなればフィーネとの交渉は決裂必至だろうし、ただでさえ完全聖遺物とシンフォギアでは出力が違うと言うのに勝てる気がしない。

よって、止めるならば暴走中の立花さん。

しかしフィーネも諦めた訳ではないだろう。

塔は折れたが、なにかを企んでいるのはまず間違い無い。

そもそも私はどちらも大事だと認識していて、どちらに味方すべきか迷って動きが取れない。

こうしている間にも、二人は五度目のぶつかり合いに至っており、いかに決戦機能といえ、そもそもの出力や戦闘経験が違い過ぎるからかあしらわれているようにも見える。

とんでもない出力でエネルギーが収束し、立花さんに向かって照準が合わせられているのを理解する。

 

「ーーなら、」

 

閃き。

それが一番早いと確信をする。

できるかどうかでは無い。

やらなければならない。

このままでは立花さんも嬲り殺しだ。

しかし、救い出すには様々な不足が壁となる。

 

「ーー卑王鉄槌。極光は反転するーー」

 

謳うは減衰魔術。歌と同じく胸に浮かんだ呪文ではあるが、効果はあった。

聖剣の纏うフォニックゲインに異物である魔術が混じり、その荘厳なる輝きは瞬く間に穢され漆黒へ堕ちる。

それが意味するのはエネルギーがマイナスまで落ち込んだということ。

マイナスまで落ち込んだ出力で、しかし減衰し続け反転魔術にまで昇華した術式により数値上は負の値を示しているに関わらず、現実には圧倒的な程のフォニックゲインを撒き散らす矛盾が成立する。

 

「光を呑め」

 

フィーネが気付くがもう遅い。

溜め込んだエネルギーを盾状に展開して構える。

対し、こちらといえば過重なエネルギーを溜め込んだ聖剣が軋みをあげ、ドレスに付属した装甲は渦巻くエネルギーに耐え切れず自壊していく。

 

反転聖剣・極光砲撃(エクスカリバーモルガーン)ーーッ!」

 

シンフォギアを、フォニックゲインすら術式の一部と組み上げたぶっつけ本番の大砲撃は極大の斬撃砲となって二人ごとへし折れた塔を縦半分に砕き裂いた。

 

#

 

黒き極光の奔流が収まる。

市街への被害など一切考えていないそれは十三拘束無しですら壮絶な威力を誇り、機能停止にまで追い込まれたカ・ディンギルを再起不能修理不能にまで落とす。

それどころか盾を粉砕され、フィーネ自身も下半身を失い、しかし再生能力に物を言わせて復活させたが、融合症例第一号はどうか。

 

「……ゥ、ぅ……」

 

生きている。

どうやら直撃を受けたのは自分だけらしい、とフィーネは思う。

 

「容赦が無いな……!」

「フン、手足を捥いだ程度では貴様は死なんだろう」

 

朦々と立ち込める土煙を切り裂いて、怜悧な声が響いてくる。

その声は鏡崎円そのものであり、しかしどこか違うそれだ。

 

「それがおまえの本性か?」

「いや、違う。さっきの魔術はエネルギーを反転させ、負に落としていくものでな」

 

自嘲気味に笑う姿が露わになる。

ギアの装甲は無く、無事ーーといっても砕ける寸前だがーーなのはバイザーくらいだろう。

白と金の壮麗なギアは反転魔術の影響か黒と赤に染まり、アームドギアである聖剣もまた、その身を闇に染め上げていた。

適合率は落ちている。

が、そこもまた反転魔術。

落ちれば堕ちる程出力を増すものへと姿を変えていた。

 

「ほう、奇妙な姿だな」

「ッハ。下半身丸ごと失って生やした女に言われたくは無いな」

 

売り言葉に買い言葉。

 

「立花はーー、無事か。起きろ」

 

堕ちた聖剣の輝きを容赦なく振り抜く。

漆黒の風圧が転がって呆然としていた融合症例を現実に引き戻す。

無論当たらないようにではあるが、その姿は普段が清廉な王であるなら、それに対する暴君だとでも言えるだろう。

 

「随分と性格も変わったな」

「貴様と若干被っているのは業腹ではあるな」

「い、痛い……でも……!」

 

背後、立花響が起き上がるのを感じるが、この暴君から目を離すことは出来ない。

 

「そこまで警戒することはない。実は、私も既に限界でな。さっきの『気つけ』も当てるつもりが目が霞んで狙いが逸れたくらいだ」

 

言葉を証明するようにぐらりとバランスを崩す円。

聖剣を杖にするが、半ばから折れて倒れ込んだ。

 

「馬鹿な子」

「自覚はしている」

 

動かない。いや、動けないのだろう。

倒れたままの姿に滑稽さを感じ、笑いが込み上げる。

両肩から下がる鞭を砲身にエネルギーを溜め込む。

これをぶつければ流石に塵となるだろう。

 

「まど……か、ちゃん……。クリスちゃんも、翼さんも、みんな……」

 

茫洋と立ち尽くす融合症例を八つ当たりするように嬲る。

これくらいでは死なないだろうが。

今溜めているエネルギーボールを当てて仕舞えば全てが終わる。

 

そんな時だ。

 

歌が、聞こえた。

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