戦姫絶唱シンフォギアEX   作:冬月雪乃

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予約投稿が六年後になってましたごめんなさい……


十六話 XD

立花響は歌を聴いていた。

それは、さまざまな声のハーモニー。合唱だ。

よくよく聴いていけば、親友や気の置けない友人たちはもちろん。教師やクラスメートの声も聞こえる。

 

「ッチ、耳障りな……」

 

フィーネは切って捨てるそれだが、あぁ、それはなにより雄弁な、無事の証明。

 

「どこから聞こえてくる……? この不快な……歌……ーー歌だと!?」

 

そのメッセージなんか考えなくても分かる。

感じる。今まで繋いでいった掌から、身体の全部から、熱くなるような不思議な力を。

 

「……聞こえる。みんなの歌が。みんなが頑張ってるんだ。だから」

 

拳を握って歯をくいしばる。

下肢に力を込めて這ってでも立ち上がる。

 

「まだ歌えるッ! 頑張れるッ! 戦えるッ!」

 

「まだ立ち上がる……!? 円といい貴様といい、なんだそれは!? 何を支えに立ち上がる!? 思いも心も確かに折砕いたはず……何をもって力と変える!? 鳴り渡る不快な歌の仕業か!? それは私の作ったものか!? おまえの纏うそれはなんだ!? なんなのだ!?」

 

円ちゃんを見る。

顔だけ向けてニヤリと笑っているのが見えた。

口だけの動きだが、不思議と声が聞こえる。

 

ーー答えてあげてください。

 

だから、大きく息を吸って、

 

「ーーシンフォ、ギアぁぁァァァアァアアッ!!!!」

 

瞬間。

爆発的なエネルギーが四つ。

飛び上がって天を衝き、雲を割った。

 

#

 

痛みが引いていく。

軋みをあげていた装甲は立ち直り、より頑丈に強化される。

無茶で砕けた聖剣は白と金、そして黒と赤のふた振りになり、両腰に生成された鞘に納まり、同時に胸に歌が。

それはきっと愛の歌。

抱きしめ、手を繋ぐことを切望する願いの歌。

誰かと繋がることをどこか切望する我々二課の装者に相応しい歌だろう。

まるで当たり前のように馬のようなアームドギアに乗っているし、天馬でもないくせに空を駆ける。

 

「エクスドライブモード……! どこまでも厄介な……!」

 

だが。とフィーネは銀の杖を取り出す。

ノイズを呼び出し、ノイズを操る聖遺物ソロモンの杖。

それをとんでもないフォニックゲインを潤沢に使い、ノイズを大量に召喚していく。

 

「ヘッ、今更ノイズなんざァっ!」

 

しかし空を自在にかける装者達にとっては苦にすらならない。

文字通り今更ノイズ。だ。

が、ただそれだけで終わるはずもない。

不意にノイズがフィーネに向かって飛んでいく。

それは一体ではなく、全て。

 

「一体なにを!?」

 

そこに現れたのはノイズの集合体から成った赤き龍。

胴体部近くに見えるフィーネはソロモンの杖とデュランダルを持ち、姿もネフシュタンから赤い衣に変わっている。

 

「我が大願を阻止したのだ。覚悟は出来ておろう?」

 

苛立ちのままに、怒りのままに放たれた極大のレーザーが街へと。

防ごうと動くが、その瞬間には既に着弾している。

まず来たのは光。

視界が潰れるような圧倒的な輝きが目に入る。

間髪を置かず来るのは音。

今まで聞いたことが無いような凄まじい轟音が耳を潰す。

最後、音とほぼ同時に来たのは爆風だ。

暴力的なまでの横殴りの風が吹き荒び、一瞬で大気を使い切った果てに落ちた大気圧を戻そうとした星の理が爆心地側に大気を送り込み、その勢いが同程度の暴風となって吹き込んでいく。

幸いにして装者は巻き込まれなかったし、直撃もしなかったが、もしどちらかであったならとゾッとする。

 

「容赦も躊躇も無しかよ……!」

 

雪音さんの声に誰もが同意する。

 

「もうあれば撃たせてはなりません。飽和攻撃で圧殺していくしか無いと思いますが……」

「んなら任せろッ!」

 

ーー

 

雪音さんの全力一斉射。

ミサイルに弾丸。果てにはレーザーまで。

それら全てが赤き怒りの龍に襲いかかる。

さすがに地面に固定された上での巨大な集合体。

避けられるわけもない。

 

「どーだよ!」

「こうだが?」

 

爆煙の中、見下したような声が響く。

そして煙の向こう側赤い触手が横薙ぎに振るわれ、それはほぼ一瞬で伸長。

あっという間に届く鞭撃となって振るわれた。

 

「ーーッ!」

 

聖剣を即座に抜いて十字に重ねて防御とする。

気合いを入れ、しかしあまりの重さに声にならず潰れた吐息となって肺から出て行く。

 

「ーーァァアッ!!」

 

聖剣の刃に追加されたスラスターを十字の下側だけ吹かせて上方向への慣性を作り、強引に弾く。

胴体のフィーネが驚いたように目を開いている。

 

「風鳴先輩!」

 

ーー蒼ノ一閃

 

返事は声ではなく、行動。

即座に振り抜かれた蒼き神剣はフォニックゲインを斬撃と固め、物質化して飛び道具とする。

それは赤き龍の頭部に当たるがーー

 

「今更そのような攻撃が効くものか。完全聖遺物ネフシュタンを再生リソースとするこの龍に対抗するなら、完全聖遺物で無くてはなぁ?」

 

あまりのうっかりさんに四人いる装者の内三人が顔を見合わせた。

にやりと笑った雪音さんが口火を切る。

 

「聞いたか?」

「えぇ。雪音さん。解説は敗北フラグだと彼女に教えてあげましょう」

「ふふ、そうだな」

「えぇ? つまりどういう……」

 

未だ分かっていない立花さんはとてもかわいらーーなんだこの寒気。

 

「つまり、おまえが切り札って訳だ!」

 

まず雪音さんが吶喊していく。

そして風鳴先輩がアームドギアを巨大化していき、

 

ーー蒼ノ一閃

 

斬撃を。

世紀のうっかりさんフィーネは余裕の笑みで自分への直撃を防ぐために胴体の隔壁を降ろすがーー

直撃。穴が空いた隔壁を抜けて雪音さんが侵入していく。

 

「持ってけ全部だ!」

 

隔壁内で様々な火薬が爆発していく。

内部は衝撃でひどいことになっているだろう。

そして、その衝撃によってフィーネの手から完全聖遺物(デュランダル)が抜けて宙を舞う。

 

「受け取れぇ!」

 

雪音さんが何発か撃ってデュランダルを弾いていくが、弾丸足りない!

落ち行くそれを寸でのところで聖剣ホームラン。

追い縋る触手を馬を捨てて自爆させ、片付ける。

馬捨てても飛べるというのはわかったが、ちょっと思いつきが過ぎた。

 

「立花ァ!」

「立花さん!」

 

残心していた風鳴先輩が叫ぶのと私が叫ぶのは同時。

覚悟を決めた顔で立花さんがデュランダルをキャッチ。

瞬間。

立花さんが真っ黒に染まった。

暴走だ。

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