戦姫絶唱シンフォギアEX   作:冬月雪乃

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9/15 訳の分からない顔文字が訳の分からないタイミングで忍び込んでたので始末しました。


三話 愉快な組織

放課後。

帰宅しようかと荷をまとめ、席を立ったタイミングで出口側から黄色い悲鳴が聞こえてきた。

きから始まる甲高いそれは不意打ちのように耳に叩きつけられ、三半規管を刺激する。

まぁ関係のない話だと帰ろうとすると背後、声が届く。

 

「ーー鏡崎 円さんはいるかしら?」

 

凛とした女声。

一斉に視線が集まるのを感じる。

 

「私ですが」

 

こうなっては誤魔化しは効かないだろう。

誤魔化す気は無いが。

振り返る。抜き身の刀のような意思力を感じる瞳に射抜かれた。

そう彼女こそ、リディアンを大きくした立役者。

先の悲劇で片翼を失いこそすれ、それを乗り越えてさらなる高みに上り詰めたアイドルの頂点。

 

「ーーなにか、用ですか? 風鳴翼先輩」

 

きっとこの学校に通う誰もが憧れ、尊敬する人物がそこにいた。

 

#

 

ツヴァイウイングの片翼、亡くなった天羽奏が緋色なら、風鳴翼は蒼だ。

前をシャンとして歩く本人を見ながら思う。

しかしその蒼は海のそれではなく、夜のそれ。

天羽奏がいた時代は昼のそれであったことを考えれば、天羽奏の夕暮れを越えて夜に至ったかのような。

 

「……何も聞かないのね」

「聞いて答えてくださる雰囲気には見えませんので」

 

冷たい夜の蒼が振り返る。

抜き身の刀かと思う視線は怖いが、こちらにはガンドがある。

一日中お腹を壊す呪いだってかけられるのだと考え、努めて物怖じしていないような姿勢を演じる。

 

「……そう」

 

短く答え、彼女は一つの扉を開く。

 

「エレベーター……?」

 

地下に向かう巨大な縦穴。

よく分からない色彩の絵画が大きく描かれたそれに箱が付いている。

その箱には手すりがあること以外はエレベーターと大差ない作りだ。

 

「これより先は真剣な場だ。そうでないならお引き取り願おう」

 

硬い声で翼先輩はいう。

 

「……帰っていいんですか?」

「……えっ」

 

空気が死んだ。

 

「いや、だって私なんの説明もなく、しかもしてくれる雰囲気すらなくここまで来て真剣になれないなら帰れ、なんて言われたら誰でも帰りますよ」

「……うっ」

「空気読まないで説明求めなかった私も悪いかもですけど、先輩も戦場に行くような面持ちで動かれては怖くて聞けませんし」

「……あうっ」

「いやー、よかった。帰っていいなら帰ります。それでは」

「あ、いや、まっ、待ってくれないか!?」

 

進行してきた方角から逆に足を向けると制止された。

だからと足を止めると、なんだか泣きそうな先輩がそこにいた。

 

「えっ……」

「つ、付いてきてほしい……じゃないとわたしはお使いもろくに出来ない剣になってしまう……」

「つ、剣……?」

 

お使いが出来ない剣とはなんだ。

剣は動かないぞ。

ものすごく気になるが、それはそれとしてあんな泣きそうな顔をされると帰るに帰れない。

 

「う、わ、分かりました。説明は、してくださいよ……!」

 

鏡崎円。十五歳。自分でも意外な弱点を発見したある日の放課後である。

 

#

 

破裂音が鳴り響く。

すわ銃声かと一瞬でルーンを組成。

さらにガンドを指先に共にして攻防自在の簡易要塞を組み上げる。

 

「って……え……?」

 

一瞬の動きに自分でもドン引きしていると、頭にルーンをすり抜けて細長いものが柔らかく乗る。

 

「び、びっくりさせてしまったみたいね!」

「そ、そうだな了子くん!」

 

騒然としている中、頭に乗ったそれを摘んで眺めると、

 

「……パーティ用の、クラッカー……?」

「その通りだ鏡崎円くん。一瞬で歴戦の兵士もかくやというほどの動きを見せてくれたが、君の周りを浮かぶそれは噂の魔術だろうか。とりあえず害意はないから解いてくれないか?」

 

男性の声。

声の元を辿ると、鍛え上げられた筋肉がいた。

おぉ! マッスル!

なんだこのツッコミ。

ちょっと自分が分からなくなってきた。

 

「やぁ。ようこそ特異災害対策機動本部二課へ。俺は風鳴弦十郎。司令官なんかやってる」

「私は櫻井了子。二課の技術局長なんかやってるわ」

「……あ、はい、ご丁寧にどうも……」

 

毒気を抜かれた様に呆然としていると、ルーンとガンドはゆっくりと霧散していき、消える。

それを好機と見たのか、女性が近寄り、

 

「あったかいものどうぞ」

「あっあったかいものどうも……」

 

すごく自然な流れで暖かいものを貰ってしまった。

思わず鋭く風鳴先輩を見ると、目を顔ごと背けて口を必死に押さえていた。

しかし身体全体が震えているため、隠し切れていない。

 

「ーー先輩……?」

「あ、くふっ、いや、これはちが、ふふっ」

「隠し切れていません」

 

ーー説明を要求します。

口から紡いだ言葉は自分でも驚くほど冷たく鋭いものだった。

 

#

 

つまり噛み砕いた説明としてはこうだ。

自分の持っていたペンダントは不思議な変身アイテムで、開発者は櫻井了子女史。

歌いながら戦うことでノイズを殴ることが出来る。

その核には聖遺物を使っており、変身する人間ーー装者はこれをエネルギーに変え、増幅させてバトルスーツに再構成する。

そしてそんな人間やノイズに対抗するために組織されたのが二課である、と。

 

「この歳で魔法少女の仲間入りとは恐れ入りますね。ところで全裸に剥かれるのは櫻井女史の趣味ですか?」

「ふえっ!? い、いやねぇ、違うわよ。そのままバトルスーツを構成すると大変な事になるからそうなってるだけよ?」

「作為的でないなら一度腹パンするだけで許します」

 

ーーもちろんギアを纏って。

本気を乗せた声色に櫻井女史の顔が青褪める。

しかし取り下げるつもりはない。

 

「いきなり公共の、道路のど真ん中で全裸に剥かれた女子高生の気持ちが分かりますか?」

「えっ、いや、あの」

「いえ、分からなくてもいいです。分からなくていいのでとりあえず殴らせてください」

 

ペンダントを取り出すと横合いから紙皿が飛び込んできた。

 

「いやいやいやいや、そういうのは良くないとはおもいますが、ひとまず料理など如何ですか? 冷めると勿体無いですし」

「緒川くん……!」

「ほほぅ、いえ、しかしたしかに料理に罪はありませんね」

 

ムグムグと口に料理を入れていく。

美味しい。

思わず笑みがこぼれると、二課の全員がほっこり顔になる。

なんだか恥ずかしくなって顔を隠してしまった。

なんだかんだ有耶無耶にされた気しかしない。

 

 

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