船員の皆が成長しているのが素晴らしくいい……
色々語りたいが、とにかく言えることは皆はいふり見ようなということよ……
プロローグ
プロローグ
天から降り注ぐ雨が、彼らの傘を叩き、そのしずくを地へと伝わせ落とす。いくつもの雨音がまるでひとつの楽器のように、あるいは耳障りな雑音を作り出すブラウン管テレビのように響いていた。その曇天の下、幾人もの大人たちがある一箇所へと集った。
黒い傘に黒い服装。
誰一人として例に漏れぬその一集団は、今まさに葬儀を行っていた。
十字の墓石のもとにある棺には、色とりどりの華と白い帽子が添えられていた。その帽子は、唯一帽子に白いカバーをかけることが許された、艦長の帽子であった。
その帽子が、誰もがいつかは収まる棺に、唯一その人物が艦長であったという特徴を残してくれていた。
そんな黒服の大人たちが囲う中、その棺の真正面に立つのはある小さな少女だった。
彼女は、ただただその帽子を眺めていた。
雨は、祝福のように、彼女の涙のように、止まること無く降り続いた。
2010年 ドイツ:ヴィルヘルムスハーフェン
今日、私は――――新しい生活を始めます。
ヴィルヘルムスハーフェン海洋準備学校。そこは成績上位者しか入ることのできない最大級の海洋学校である。所謂、超エリート校だ。私、ハンナ・デーニッツは10歳となり、何とかギリギリでこの学校に入学できた。
でも、それはつまり、私より頭がいい人が多いわけで……友だちができるか、心配である。
潮風が私の頬をなで、その涼しさが燦々と照らす太陽の熱を紛らわしてくれた。
辺りには、こっそり近づいて乗り込めば、すぐにでも出航できそうなくらい近くに船が並んでいた。そう、ここは潮騒の聞こえる船の駅。空を低く飛ぶカモメの鳴き声が港であると、そう教えてくれていた。気分も軽く、深呼吸するたびに新しい気持ちになれる良い日良い場所である。
そんな素晴らしい日和から、良い入学式を迎えられそうだと考えることで、先程の不安を何とか振り払おうとした。
その時だった。
「……え」
声に出してその物体に驚く。まず、私の目に入ったのはお尻だった……。
訂正する。紺色のスカートだった。それも、これから入学する学校指定の。正しく状況を理解するのに時間はかかったけれど、どうにも学校の生徒がおそらくは船の積み荷である山積みの木箱に、頭から突っ込んだようだ。ただ、その状態から動きを見せないことから、私は数歩下がってしまった。
「な、何この人……行き倒れ……?」
正直な話、変質者ではないとは言い切れない訳だし、下手に近づけなかった。でも、単純に意識を失って突っ込んだと仮定するなら、救援を呼ばなければブルーマーメイドの卵ですら無い。私はとりあえず、意識があるかを確認することにした。
「だ、大丈夫ですか……?」
その声に反応してか、木箱とその破片に体を飲み込まれたおしりが動いた。出ようと突き上げると、それが力なく膝をつく。なんだ。意識はあるようだ。
しかし、動いて、そしてまた力なく膝をつく。出られそうにないことはわかったが、私の声は届いてなかったのだろうか。
「……助けて」
違った。単純に自力での脱出を図ったけれど、だめだったんだね。
はぁ、とため息を付いて、彼女を食人木箱から救出する。引っ張り出すことで何とかその木片たちから外へと引きずり出すことができたのだが……割と疲れる行為だったわ……。
一息ついて呼吸を整える私。彼女はぺたんと座ると、同じくホッと一息をついた。
「ありがとう。助かったわ……」
彼女は、右目を隠すような長い前髪を持った美少女だった。ただ、どこか気が抜けている雰囲気があり、少しはねている髪がそれを証明していた。まったく、変な人を救ったものだ。
「な、何故あんな場所に……?」
「……そこに、新天地が見えたのよ」
……訂正。相当変な人を救ったようだ。
「いや、何でそんな所に新天地求めてるの……」
「嘘よ」
「でしょうねっ」
「ふふ……本当はこれよ」
どうやらすこし誂われていたようだ。彼女は笑ってそう言うと、単眼鏡のようなものを取り出した。それはどうにも少し古びており、いくつかの傷が目立つ。しかし、それ以外の汚れが見当たらなかった。大事に扱われているようである。
「単眼鏡……?」
「違うわ。元は双眼鏡なの。ついさっき転んでしまって……落として……それを拾おうとしたのよ」
「へぇ?」
言われてみれば、その単眼鏡はある部分がへし折られたように割れていた。単純に見る程度なら単眼鏡としてはまだ使えるだろうが、ピントリングなどはもう使い物にはならないだろうことは理解できた。
しかし、と思う。うん。どんな転び方をしたらあんな場所にそれが飛んでいくのだろう……
「そう言えば自己紹介がまだだったわね」
「んーそうね」
てきとーな返事をしつつ、スカートの裾についた砂やゴミをぱっぱと手で払う。まったく、入学初日から騒がしいことだ。こちらは友人ができるかどうかも怪しいというのに……。
だが、そんな悩みを持つ私に彼女は手を差し出した。
「そういえば、同じ学校の子よね? 私はビアンカ。ビアンカ・フォーグラーよ」
そう、これは握手。私が不安に思っていたことを吹き飛ばす魔法だった。友情の証であるそれに、私は少し嬉しくなって、握り返した。
「私はハンナ……ハンナ・デーニッツよ! よろしく!」
―――おもえば、このときから私達は……運命づけられていたのかも知れない。
「さ、行きましょう!」
過酷な試練に立ち向かう家族のような”絆”を―――
誤字脱字誤訳誤変換等々ありましたらご連絡ください。
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書いちゃったよ……(白目)
今後絡んでほしいキャラ
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テア・クロイツェル
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ヴィルヘルミーナ
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その他(名前を挙げていただければ)