「期待していたのに」
「優勝逃しちゃうとか、酷いわ」
心無い言葉が響く。やめて。私はただ……。
「ヴィクトーリアって名前、皮肉だよねー」
「期待の新星とか言われて、調子に乗ってただけなんだって」
違う、私は。
「だから、お父さんも死んだんでしょ」
「―――っは! ……はぁ、はぁ……」
目が覚める。あたりを確認すると、すやすやと寝ている子達がカーテンを閉め忘れていた。そのカーテンを閉めてあげると再び寝床へと戻った。
……久しぶりに嫌な夢を見た。
ちらっとベッドの枕元にある写真と、割れたメダルを見る。割れたメダルの中央にはクロールをしている人の上半身のみが写されており、片割れはおそらくその下半身だっただろうことが伺える。
写真には、男の人と女の子が居た。海を背景に、サーフィンボードを手にした水着姿の男性が女の子を抱えていた。幸せそうな笑顔で。
彼女、ヴィクトーリアはそれをぎゅっと抱きしめると、元の位置に戻し、横になった。
「……父さん」
その呟きは、枕に吸い込まれ、消えていった。
☆☆☆
九日目。遭難六日目。
どんよりとした雲が空一面を覆う。なおも風は吹きすさび、波は荒れていた。流石に慣れたのか艦長もエルヴィーラ副長も、レオニーさんもジークリンデさんも、揺れながらスープをこぼさずに食べていた。嵐が続きすぎて辛い本日, いつもの食卓には保存のきく食糧が増えつつあった。もうおなか一杯に食べれないのかな。と言っても、美味しいし、腹八分目程度は食べられるし、まだまだ十分マシな部類ではあるが。
日は多分真上にあるのだけど、そんな実感がわかないくらいに黒い雲が邪魔で、相変わらず同じような日々が流れていく。私達にとっての敵は暇であった。食事はそんな一時にやすらぎを与える時間であった。
でも、少しでもこぼしたらローゼマリーさんがカンカンになって、飯抜きにされちゃうので、揺れに対応する体ができてしまった。いい事なのか、良くわからない技術である。
「ねぇ、ハンナ。この嵐はいつまで続きそう?」
すると、ビアンカ艦長がスープをパンに浸して一口楽しんでから、話しかけてきた。普通ならそれは不味いとか、そういう侮辱的な食べ方に当たるのだろうけれど、美味しそうにしているので私は満足です。
「……そうですね、恐らく本日の午前中には晴れると思ってたんですが……妙な感じがします」
「というと?」
「切れ目が見えたような気もしたのですが、雲が重なってきている気がするんです」
伊達に航海長をやっているわけではなく、私はだいたい天候を読むくらいはできるのだ。その勘が嫌な予感を脳裏によぎらせていた。
私がそう言うと、ジークリンデさんが肩を落としながら何となく察した。
「……つまり、嵐が合体してるってこと……?」
「連続で来たってことですね。また波が荒れるかも」
「最悪だよ全く。エンジンちゃんの機嫌さえよければ回避できたかもと思うと、面目ない」
「……ほーんと、つっかえね」
「酷いよ!? 酷いよジークリンデ!?」
いじめだーと言うレオニーさんに四人して笑い合う私達。するとエルヴィーラ副長がレオニーさんの頭に手をのせた。
「大丈夫だ。私が君を守るから」
「え? ……ぁ、ぅん」
「何大人しくなってんのよ……」
「はいはいそこまでそこまであついあつい」
「な! か、からかわないでくれよ、ハニー! 副長!」
イケメンがイケメンに誂われている図というのは中々貴重でした。と、感想を心の中で呟いていると、ふと背後に悪寒が走り、ゆっくりとそっちへ振り向いた。そこには、まるでゴミを見るような目で見下し、エプロン姿なローゼマリーさんが腕を組み仁王立ちでいた。
「……そこの四人……タマァ、トッタルデェ……とっとと食いぃ」
妙にドスの聞いたヤーパンの言葉に、私達は声にならない叫びを短く上げ、すぐさま食事に手を付けた。タマァって何!? なんて意味かわからないけど、すごく怒ってるのはわかった。ちらりと見ると、ビアンカ艦長は何食わぬ顔で食事をしていた。あ、ビアンカズルい。何、我関せずみたいな態度取ってるの!?
とまぁ、波乱のお昼ご飯を過ごした私達ではあったけど、その後も特に変わりなくブリッジに出ては雲の流れなどを確認していた。その時はヴィクトーリアさんとエーリカさんが一緒に見張りを行っていて、うるさいのなんの……。賑やかなブリッジは、気合と根性で満面の笑みがそこにはあった。一緒に当直だったエリヴィエラさんのツッコミが炸裂してて、一番疲れていそうだったなぁ。
もう一人一緒にいたザシャさんは、お昼どきのビアンカ艦長みたいに我関せずな態度で見張りに当たっていた。彼女は話せないからと言う理由もあるのだけれど、おおよそそれを免罪符に馬鹿……もとい元気な彼女らのテンションから離れたのだろう。賢い人だ。
そんな大騒ぎな見張り作業を終えて、発令所に戻ると、ジークリンデさんが興奮気味にかけよってきた。何事かと思ったら、彼女はさっきのローズマリーさんの言葉が気になっていたらしい。
なので聞いてみたのだが、彼女もまたミヒャエラさんから教わったらしかった。
そして今度こそ言葉について知るためにミヒャエラさんに聞くと、面白いヤーパンの映画を教えられたらしい。そして、帰ったらぜひ見たいとのことで興奮気味だったのだ。
はははと苦笑しながら、一緒に見ようと言うジークリンデと約束をしてしまった。レオニーさんの方を見ると、レオニーさんも肩をすくめて苦笑していたから、レオニーさんにも同じように掛け合ったのだろう。と、今日はそんな約束と元気な人達の面倒見疲れがあった程度だった。
……それと、もう一つ。私が深夜の見回りをしていたときのことだった。艦首乗組員休憩室に差し掛かったとき、唸り声が聞こえてきたのだ。
「う……うぅ……」
そのカーテンを開けると、額に汗をかくヴィクトーリアさんがいて、私は慌てて体を揺すった。
「大丈夫……?」
「……こう、かいちょう……?」
「ヴィクトーリアさん、どうしたの……?」
なるべく抑えめの声でそう訊く私に、ヴィクトーリアさんが腰掛けるように体勢を変えた。どこか眠たげにしているものの、汗だくで、少し顔色が悪い。すぐ近くのタオルを手に取るととりあえず顔の汗を拭き取った。
「……悪い夢を見るんです」
「悪い夢……?」
そう語るヴィクトーリアさん。私はぼそっとオウム返しをすると、ヴィクトーリアさんはハッとして、なんでもないですといつもの笑顔に戻った。さっきまであんなに辛そうだったのに、そんな元気な笑顔を出せるって……。
「何か、辛いことがあれば相談して。絶対に聞くから」
「……ありがとうございます」
そうしてカーテンを閉める私。なんだかモヤモヤするけれど、どことなくまだ聞いてはいけない気がして、その場はそうしておいた。深夜にはそんな事があった。
しかし、翌日十日目、遭難七日目の今日は違った。大きな揺れが艦を襲い、食器類やベッド上の私物類が散乱する。ローゼマリーさんの悲鳴と怒号によって目が覚めた私は、本日の初仕事としてローゼマリーさんを宥めることから始まったのだった。
「艦長……」
「……お疲れ様、ハンナ。ローゼマリーはああなると私でも手がつけられなくなるわ」
「流石に波に対しての怒りを鎮めさせるのは無理です」
「え、じゃあどうしたの?」
「賭けトランプで接待をして寝てもらいました」
「おおよそ女子高生の宥め方じゃないわよね……」
「ですよねー……」
「被害総額は?」
「お皿いくつかと、私のお財布の中身1/3、あとゲルトルートさんの下着です」
私の乾いた笑いに、ビアンカ艦長は短く謝った。さらばいくつかの金額と、ゲルトルートさんの下着。途中から割って入って本気を出したくせに、カモられるゲルトルートさんには哀れみの念を送る以外なかった。
ローゼマリーさんがその後その下着をどうするのかはわからないけれど、とりあえず暇な時間を潰せたのは少し良かったように思える。なんだかんだ言って、少し楽しかったしね。
「さて、と。それじゃあそろそろ上がってもらおうかしら」
「はい。天候の確認と嵐の規模を調べておきたいですしね」
「あ、今は雨も降ってるらしいから、合羽を着ていきなさい」
「ありがとうございます、艦長。……しかし、雨ですか」
「えぇ。嫌になっちゃうわ」
軽口を叩きながら合羽を着る私。おぼつかない足元が海上の酷さを私に教えてくれていて、嫌になる。愚痴りながらはしごに向かおうとしたとき、上から滑るようにヴィクトーリアさんが落ちてきた。ずぶ濡れで、よろよろとしているその体を、私は反射的に支えた。
「って! ど、どうしたの?」
「はぁ、はぁ、こ、航海長、艦長は!?」
「ここに居るわ。どうかしたの?」
「光です! 光が見えました!」
「何?」
光? そう呟くとビアンカ艦長の顔が険しくなった。つまりは船か、陸があるということである。灯台の明かりであれば少しの間はふかふかのベッドで休むことはできるが、恐らく船だろう。船であった場合は、現在位置を聞いたり、助けを求めることができるだろう。
「おそらく、モールス信号です!」
「……嫌だわ。その先を聞きたくはないけど、どんな信号を送ってたの?」
「わ、分かりません……全方向に対して光を放っていたようだったので」
「……そう」
返事をするビアンカ艦長はしかし、思案するように何処かを見つめていた。少しして、私はビアンカ艦長に声を掛ける。彼女の頭の中では灯台か、船か、船なら何があったのかが巡っているのだろう。
「艦長?」
「……全方向への発信なら、恐らく近くに船団があると思うわ。船団からはぐれた船、なのでしょうね。少なくとも陸なんて希望は一旦思考外に置いておいたほうがいいかもしれないわ」
「……では、その船と接触します?」
「そうよ。ライトを持ってきて! コンタクトを行う!」
「ヴィクトーリアさんと艦長は先にブリッジへ行って、私がライトを持ってくるから!」
そう言うと二人を行かせ、私は発令所で少し探す。そして発光信号機を手に取ると少し重たいそれを何とか艦橋へと運んだ。ひょこっと顔を出すと、ザーザー降りの雨が私を襲う。命綱をつけ、体を出した瞬間、ブリッジに波が襲った。
「わぷっ」
「大丈夫?」
「平気です、艦長。それよりも、ライトです!」
そう言って、差し出された手をとり立ち上がるとビアンカ艦長に発光信号機を渡した。私はちらりとヴィクトーリアさんが指を差す先に、確かに微かだが光が遠くを照らしていたのを確認する。あれか……!
「ありがとう。ヘルミーネとゲルトルートは周囲に他の船が居ないか注意して! ヴィクトーリアは光を見失わないで!」
「「「はい!」」」
元気よく返事をし、各自が視界ゼロに近いそこで、双眼鏡を覗いた。私とビアンカ艦長、ヴィクトーリアさんは目標の船の光を見続け、相手とのコミュニケーションを行う。
ビアンカ艦長は発光信号機を肩に担ぐと、目標の船に向けて光を放った。手で発光信号機の隣にあるスイッチを押すと、信号機の光が遮断され、それでモールス信号を送るのだ。
「……! 艦長! 相手が気づきました!」
すると、光がコチラに向けられ、その眩しさに少し怯む。そして注意して船を見ると、ビアンカ艦長が声を上げた。
「タンカー船!? ずいぶんと、大きいのがいるわね!?」
「何があったんでしょうか!?」
「今それを聞いてるの!」
チカチカとライトで照らしてビアンカ艦長がやり取りを行う。だが、波や雨で凄くやりづらそうにしており、私もそのライトを支えて手伝っていた。
「どう!? なんて言ってる!?」
「……おそらく、現在航行不能! 支援を要請!」
「この嵐じゃ無理よ! 晴・れ・る・ま・で・待・機・!」
「晴れるのにいくらって!?」
「賭けてるわけじゃないです! ゲルトルートさんは黙ってて!」
「すっごいスースーする! なんか気持ち悪い!」
「本当に! ゲルトルートさんは黙って!」
「近いわね……こ・れ・以・上・は・近・づ・け・な・い・! 待・た・れ・よ・!」
「……艦長! 了解の返答が来ました! 大丈夫そうです!」
「わかったわ! ……ヴィクトーリア!」
「な、なんですか!」
名前を呼ばれたヴィクトーリアさんはビクリと跳ねると、ビアンカ艦長に向き直った。ビアンカ艦長はじーっとヴィクトーリアさんを見つめるとこう言った。
「……顔色が悪いわ! 交替なさい!」
「ま、まだいけます!」
そういうヴィクトーリアさんの言葉に、ビアンカ艦長は語気を強めて続けた。
「交代よ! ハンナ! 一緒に行って、交代させて! 私も後で降りるから
!」
「わ、わかりました!」
そう言って、私はヴィクトーリアさんを先に下ろすと、そのままついていく。だが、発令所についたあと、波に揺れた。よろめくヴィクトーリアさんを私は支えるが、その表情は何処か青いままで、乾いた笑みが張り付いていた。
「ヴィクトーリアさん……?」
「はは、は……大丈夫です。航海長は戻って……」
そう言って、肩を貸す私から離れるようにするヴィクトーリアさん。それでも私はその腕を離さず、支えるように手伝う。ヴィクトーリアさんの表情は、優れていない。なんでいつも見ている私が、気づけなかったんだろう……。そう、頭によぎる後悔が彼女を支えていた。罪悪感ではない、後悔だ。
だから私は、続けたんだ。
「……嫌です」
「……」
「昨日もいいました……悩みがあれば、相談してほしいって」
「……そう、だけど……」
「悪い夢、ですよね」
「……」
そして、黙るヴィクトーリアさん。私は昨晩知っていたのに。それでも気づけなかった。私の馬鹿。もっと前から色々あったんだ。それが、悪い夢につながったんだ。
過去の会話を思い出して、私は訊いた。
「教えてください。いつだったか、艦橋に居たとき泳げないって言っていたけれど、貴女は確か―――」
「ハンナ……航海長」
「……」
「一つ聞いていいですか?」
「何ですか?」
「……貴女は、海に溺れてる人を救うために、命をなげうって出られますか?」
そういう彼女の目は、今までの笑顔の彼女よりはるかに、真剣に、モノを問いていた。
☆☆☆
私達艦橋要員に許された上級休憩室の私のベッドで、私達二人は座って居た。周りには誰も居なくて、少し静かだった。実際は沈黙が乗組員休憩室の賑やかな声を聞かせていたが、それすらも聞こえないような静かさであった。
少しして落ち着いたのか、ヴィクトーリアさんがぽつりぽつりと語りだしてくれる。
「……私は、私の父は、ライフセーバーだったよ。海に生きる様な人だった」
うつむく彼女の表情はわからずじまいだったが、声色は少し明るかった。それが、彼女が父親をどう思っていたのかを表していた。
「私はそれに憧れて六歳から泳ぎを習った。父みたいになりたくて、海も泳ごうとしたんだけれど、波のある場所って思い通りに泳げないんだ」
その手には一枚の写真が握られていた。そこにはサーフィンボードを持った男の人と、幼いヴィクトーリアさんが写っていた。誰だってわかる、家族の写真だ。
「で、父に怒られて……でも、優しんだ。それからは海を泳ぐ方法を教わって、水泳だって強くなった」
泳ぐのが、好きだったんだ。そう呟く彼女は天を仰いだ。しかし、その表情は曇っていた。
「でも、学校で強くなるたびに色んなバッシングを受けてさ。それでも父のようになりたくて頑張ったんだ。頑張って、頑張って、部のエースにだってなったんだよ」
その手に持つ割れたメダルが、その証拠であった。ちらっとしか見えなかったが、世界、ユース、という文字も見えた。本気でエリートだったのだ。しかし。
「大きな大会の、団体戦。でもそのまえに父は……溺れている人を助けに行って、死んだんだ」
「……」
視線は再び写真に写る父に移る。その目は悲しみを帯びていて、私は何とも声をかけられずじまいだった。
「それで、私は結局、勝てなかった。実力差が少しあったのもあるけど、父の死が、一番苦しくて……」
ヴィクトーリア(勝利の女神)なのにね、と。皮肉を込めて。私は胸が痛かった。違うんだって言いたくて、ヴィクトーリアさんの名前は、そんなもののためだけじゃないって。そう言いたくて、でも、言えなかった。
ヴィクトーリアさんは続ける。目を閉じて、耳をふさいで。
「もう二度と泳がない。そう決めていたよ。でも、父のようにはなりたくて、ブルーマーメイドになろうって……」
「そう、だったんですか……」
「……」
私は、そう言ってしかし、彼女を真っ直ぐ見ることができなかった。どう声をかけるべきなのか……。私は、どんな言葉も軽いように思えてしまって、いえなかった。
でも、ヴィクトーリアさんの脳内では、全く違っていた。私の言葉は、確かに響いていたのだった。
―――――――――――――
「ハンナ……航海長」
「……」
「一つ聞いていいですか?」
「何ですか?」
「……貴女は、海に溺れる人を救うために、命をなげうって出られますか?」
「―――少なくとも、救うために私達が存在しています。命は大事だし第一に考えるべきだけど、救えるのなら、私は出てると思う」
―――――――――――――
目を開けて、満面の笑みを浮かべる父のその顔に、彼女は悲しく微笑んで、呟いた。
「救うために私達が存在している……父も、そんな風に言っていた」
「え……?」
懐かしそうに。色のついた声音が、私の心にまで響く。でも、私はそう答えただけに過ぎなかった。すこし戸惑う私ではあったが、ヴィクトーリアさんのその横顔を見てそれも収まる。
「なんだか懐かしいや……なんで、今なんだろう……。聞いてくれてありがとう、航海長。話してみるもんだね。スッキリしたよ」
少し、涙声混じりにそう言って、最後は晴れた顔をしていた。わ、私、何かの役に立てた……の……かな……? でも、その晴れやかな表情はいつもと同じ……とは、少し違うけれど、少なくとも屈託のない微笑みだった。
「私も、父みたいに頑張るよ」
☆☆☆
それから数時間後。すっかり艦内は赤色点灯に変わり、夜へと変貌していた。今も艦内は揺れていて、潜行していたいくらいだった。タンカー船だって、ここに居るのはとても安全とは言えない状況下ではあったが、何とか踏ん張ってもらっていた。外は暗く見づらい上に、雷雨が私達の視界を奪っていた。
艦橋にいる当直の四人と変わって、私も見張りに付くことになった。のだけれど……
「ヴィクトーリアさん、本当に来るの?」
「大丈夫ですよ。頑張るって言ったのに……決意をしたのに」
「うぅぅ……そう言われると弱いです……」
あの後、今日はもう休んでいても良いよと言ったのにヴィクトーリアさんはなおも出ると言って聞かなかったのだ。発令所のブリッジへの梯子を前に、雨合羽まで装備していたらもう文句も言えない。そのうえそんな言葉を言われると、私も渋々だが、了承せざるを得なかった。
「ちょっとだけですからね? 一時間程度で戻って休んでください」
「私はもう大丈夫なんだけどなぁ」
「一応ですよ、一応」
そう言いながら艦橋へと上がると、先についていたヘルミーネ……あ、ヴラドさんとザシャさんが待ってくれていた。特にヘル……ヴラドさんは何処で覚えたのかわからない立ち方をしてそこに居た。
「ごめんなさい、少し遅れて!」
「ハーッハッハッハ! よい! それくらいこのヴラドが許そう!」
「今日も絶好調だね! 右目は疼いてるの、ミーネ!」
「ヴラドだっ!」
「……」
「……あはは、これまた濃いメンバーね」
はぁ、と私はそう呟いてため息を付いた。ザシャさんが無言で肩をたたいたのがせめてもの救いだろうか。ちらりと見た手持ちホワイトボードにはコミカルな顔文字が書かれており、どう見ても私を煽っていた。……うん、やっぱり、濃いメンバーだわ。
「それじゃあ、とりあえず! ヴィクトーリアさんはタンカー船を見ていて! ザシャさん、ヘル……ヴラドさんは他に船が居ないかを見て!」
「了解!」
「……」
「ふふ、このヴラドに任せろ!」
とまぁ、わかりやすい返事をもらったところで、私達はそれぞれに仕事を始めた。ヴィクトーリアさん以外の私達は他に船が居ないかを確認し、ヴィクトーリアさんは常にタンカー船を確認していた。それから数十分後、特に変わりなく、とにかく私達は揺られていた。気になることは、タンカー船の上で何かをしていることくらいで、特に問題はないとヴィクトーリアさんが言っていた。
すると、艦橋にまたも人が増えた。
「皆、大丈夫かしら!?」
「艦長! 大丈夫です! 特に問題はありません!」
「そう、良かったわ! 私も少し見張りに付くわ! 何かあれば逐一報告を!」
「了解!」
私が喜んでビアンカ艦長を迎え入れると、ヴィクトーリアさんが少しだけムスッとしてコチラを向いていた。何かな? なんか変なことでもしたかな? と不安になるも、良く良く考えれば渋っていたヴィクトーリアさんの迎え入れようと、ビアンカ艦長の迎え入れようが違ったことかなと思う。まぁ、仕方ないよね、艦長だし。
そう考えながら、私は同じように変わらずあたりを見渡していた。なにせ、それ以外にしようがないからだ。
しかし、それはヴィクトーリアさんの短い悲鳴と、背後から照らされた明かりによって破られた。
「あっ!!!」
「何かしら?」
「どうしたの!?」
「何事!」
「……」
見事にバラバラな返事が一斉に送られる。だが、それになりふり構わずヴィクトーリアさんは指を指した。指し示した先を驚愕した表情で見ながら。
「ひ、人が! 人が、落ちた!!」
「え……?」
その場の誰もが耳を疑った。きっと見間違いだと、そう考えるのだってできる。でも、ヴィクトーリアさんの目は誤魔化せない。ハッと我に返ったビアンカ艦長が大声で叫んだ。
「発光信号機!! はやく!!」
「は、はい!!」
「えっと、送られてきました!」
「くっ……!急いで……!」
発光信号機をぶんどるようにビアンカ艦長が手にすると、タンカー船に向けて発光した。そして、少しして目標のタンカー船でライトが灯る。そのライトは近場を探しているものの、見つからないのかぐるぐるしているだけであった。しかし、ヴィクトーリアさんは正確に指を指していた。
「あそこです、艦長! あの位置! 船のすぐ近く!」
「……っ! 目が良いわね! 最高よ!」
即座にそっちへ向けると、確かに人がそこに居た。救命胴衣がその付近に浮かんでいることから、つける間かのタイミングで落ちてしまったのだろう。運が悪すぎる……!
ヘルミーネさんも、流石にいつもの調子ではいられないのかあたふたしていた。
「あわわわ、でも、このままじゃ……」
「ヘルミーネさん! 発光信号機を支えて!」
「ひゃい!」
「……っ」
ザシャさんはホワイトボードに「どうすりゃいいんだよこれ」と書いて発光信号機の指す方を見つめていた。
そして、私は呟いてしまう。それはあまりにも絶望的だった。波は荒れ、救命胴衣は無い。もう、そのままさらわれてしまってもおかしくなかったのだ。
「もう、助からないかも……!」
「っ艦長!!」
だからか、ヴィクトーリアさんは声を上げた。悲痛なようで、本気で懇願するような、そんな叫びを。
「私に……! 私に、行かせてください!」
「だめよ! どれほど今の海が危険か! 泳げるからの問題じゃない!!」
「わかっています!! それでも、それでも……! 何もしないまま終えたくない!!」
しかし、その願いにビアンカ艦長は鬼の形相でそういった。だが、ヴィクトーリアさんは続けた。その想いの力は強かった。
「……っ……近づけて、船同士がぶつかったら! 大変なことになるのよ!?」
「艦長は!!」
それでも食い下がらないビアンカ艦長に、ヴィクトーリアさんは最後の叫びを上げた。
「艦長は、そこに溺れている人を見つけたら、どうします!?」
私に対して言った、その質問。そんなの反則だ。でも、私はそれでも、今のヴィクトーリアさんには賛同していた。危ないからだめだとか、色んなことを言えたはずなのに、それでも……ビアンカ艦長に甘えているのはわかってる。でも、言ってほしかった。最終決定権は、ビアンカ艦長にあるのだから。
「……っ、私達は!!」
それを救助するか、しないか。究極の二択だった。救助を選択すると、船に近づくこととなる。もし体当たりを喰らえば沈む可能性があった。しかし、このまま放置していると、あの人は死ぬかもしれない。それは一秒一秒が命取りになる今、数秒も待っていられなかった。
ビアンカ艦長はキッとヴィクトーリアさんを睨む。その目に迷いがないのを見て、ビアンカ艦長は叫んだ。
「海に生き!! 海を守り!! 海を往く!! それがブルーマーメイド!!」
その覚悟を見て、ビアンカ艦長は腹をくくったんだ。叫ぶその言葉は私達の目標、将来、そして夢。それがかなっても、その先を往くための合言葉。
「その卵なんだったら……! 針路15度、微速前進!! ヨーソロー!!」
賽は投げられた。ビアンカ艦長の命令に従って、艦を動かし始めた。その指針に狂いはあるかもしれない。それでも。
「行くしか無いじゃない!!」
ビアンカ艦長の代わりにザシャさんとヘルミーネさんが発光信号機を手に持ち、ヴィクトーリアさんの指差す方を照らし続けた。夜である今ここ一帯は暗闇に覆われ、明かりといえば手に持つライトとタンカー船のライト、そして雷だった。その上雨で視界が奪われ、もはや絶望的状況にもかかわらず、私達は果敢にも救助活動に挑んだ。
ヴィクトーリアさんは長めの頑丈な命綱をつけると、素早く制服を脱ぎ捨てた。イルカの髪留めを外して、首にかけていたゴーグルを装着した。そして、U-ボートがタンカー船に近づいた。どのくらいの距離かはわからないが、少なくとも船員が見えるくらいには居て、雨だけでなく汗が伝っていく。
「ヴィクトーリア!」
「はい!」
「絶対に、無茶はしないで……!」
「……Jawohl Herr Kapitän(諒解、艦長)!」
近づいたことと、ビアンカ艦長のその声に、短く軽い敬礼をすると、彼女は勢いよく海へと飛び込んだ。揺れが凄まじく、波は荒れている。それでも彼女は止まらず、進んだのだ。
「照らし続けて! 絶対に見失うな!」
「ふたりとも、頑張って!」
「わわわわわわかりました!」
「……っ」
足場の悪い中で、私達三人がかりでそのタンカー船の乗組員を照らし続けていた。だが、波に隠れたりして、見つけ出すのに一苦労する。あまりにも難しいミッションだった。そして、そこですごい光景を目にする。
「ああああああああああああ!!」
其処には、マーメイドが居た。荒れ狂う波を物ともしないかのように、そのさきへと向かっていく。まるで人ではなかった。
その叫びは悲痛かもしれない。けれど、その泳ぐ姿は軽やかで、何よりも美しかった。私は、私達はその姿に、少しの間、見惚れてしまった。
――――期待していたのに
―――優勝逃しちゃうとか、酷いわ
だから何! 私は、勝ちたかったんじゃない!
――――ヴィクトーリアって名前、皮肉だよねー
―――期待の新星とか言われて、調子に乗ってただけなんだって
ちがう、違う違う違う! 勘違いも甚だしい! 私は、その世界で勝ちたかったんじゃない!
―――だから、お父さんも死んだんでしょ
違う!!! 父は立派に死んだんだ! 人を助けて死んだんだ! それを私は言い訳にして負けたんだ!! 私、自身に!!!
「あああああああああああああ!!」
違う。私は、私が勝ちたかったのは、父と、いつまでも理想のままの自分だった!!
いくつもの葛藤、いくつもの想いを持って、この荒波を超えて、決着を―――!
瞬間。
大きな雷鎚が、あたりを照らした。劈く音が凄まじいものだったことを表すが、ビアンカ艦長だけはしっかりと認識していた。大きな波が、近づくのと、そのすぐ近くにタンカー船。
「全速後退!! 対ショック体勢!!!」
その叫びは虚しく、艦は波に流された。時既に遅し。大きく揺らぐ船体に、皆が転覆を脳裏によぎらした。しかし、それは免れることとなる。それと同等の傷跡を残して……!
そう、轟音とともに、艦首が船へと激突したのだ。
バリバリバリバリ!
嫌なひっかき音と何かが破損する音が響き渡る。でもそれ以上に酷い状況が艦内で起きていた。
「きゃあああああああああああああああああああああ!!」
「うあああああああああああああああああああぐっ!!」
揺れで悲鳴が響くものの、一番の衝撃である激突はその悲鳴すら許さなかった。投げ出されたように壁や床に叩きつけられる子達。衝撃から浸水発生、機材の破損、第一魚雷発射管破損。その他計器類も破損しその破片が散らばる。出血した血も混じり、あたりは赤色にもなっていた。
艦内ではエルヴィーラ副長が叫んでいた。
「被害報告! 早急に私に伝えろ!!」
「艦首被害甚大!! 第一魚雷発射管破損! 浸水発生! 負傷者数名! ……多くは軽傷です!」
「ゲルト!! げるとおおおお!!」
「ゲルトルートが負傷! 出血してる!」
「マリアンネ! 急患だ!」
「黙って報告してろ! 今すぐに向かう!」
「どっちだよ!?」
「艦首にダメコン急げ!! はやく!」
「お願い! ナタリアさんが!」
「アンネリース! 順番だ! 少し落ち着け!!」
「マルゴットもだ! 助けて!」
「くそっ、機関士が二名も……! 艦首には僕が向かう! ダメコン編成して! ついてきて!」
「頼む、レオニー! 他数名艦首へ! 余った者はその二人の応急処置を! マリアンネ、あとは任せた! 後進一杯!!」
ジリリンジリリンとベルが鳴ると、EOT(エンジンオーダーテレグラフ)が後進一杯に向けられた。レオニーさんが工具箱を持って全力で艦首に向かうと、浸水箇所の応急処置を行う。穴を埋め、バルブを閉じたりしてダメコンを行う。そこにツェツィーリア……ブリギットさんが加わって一気にその場を持ちこたえさせようとかたをつけていた。
そして、患者たちは艦長室へと運び込まれる。艦長室は臨時で医療ベッドになるよう訓練していたのだ。マリアンネさんは今対応しているゲルトルートの他に、ナタリアさんとマルゴットさんの応急処置をする皆に対応した。忙しそうに三人の体と患部を見て回るマリアンネさん。しかし。
「忌々しいことに、どいつも軽傷だ! この艦並みに悪運が強いのか知らんが、とてつもなく運がいい! 止血すれば軽いめまい程度で済む! 自身の血を見てな!」
「止血は!? 包帯とかは何処に!」
「向こうの棚にある! 私のベッドだ! 清潔感を保てよ、薄汚い手で触るようならその手をフランクフルトのようにパンパンに腫れさせてやるからな!」
いくつかの被害報告とは裏腹に、全員がほぼ軽傷だったのだ。幸いにも止血すれば大丈夫であり、ガーゼやテープでの応急処置となるようだった。
しかし、其処にまたも急患が現れた。
「お願い! 通して! 先に治療を!」
「応急処置とはいえ順番は守れと親に―――!!」
悪態をつきながら振り返ったマリアンネの視界には、目を閉じ頭から出血するビアンカ艦長と、それを抱きかかえて現れた航海長達艦橋組が映っていた。
☆☆☆
その恐ろしい光景を目の当たりにしたマリアンネさんは一瞬立ち尽くした。しかし、すぐにはっとすると声を上げた。
「艦長……!」
「艦長が先だ! 速く!」
今まで聞いたことのない声音で、マリアンネさんはビアンカ艦長に駆け寄ると、すぐさま駆けつけたゲルトルートが艦長室へと運んだ。ゲルトルートは自身の怪我よりビアンカ艦長のほうが先だと考えての行動であった。マリアンネは患部の頭を撫で、出血している部分を探す。私はと言うと、腰が抜けてしまって、その場で崩れ落ちてしまっていた。
「ハンナ……!」
「じ、ジークリンデさん……えへへ、だめだわ、立てそうにないの……」
「怪我!? 大丈夫なの……!?」
「大丈夫……怪我はしてないから。それよりも、それよりも……艦長が……」
「包帯はまだか!! ナマケモノ並にとろくさい!! とっとともってこい!」
ジークリンデさんに支えられて私は何とかその場に立つことができていた。だが、肝心のビアンカ艦長の負傷に、皆がざわついた。嵐の中で引っ張ってきてくれた絶対的信頼を置ける人。それが今、倒れたのだから。
だからか、マリアンネさんは声を上げて呼んだ。それに応じて絶望する皆に割って入るラッヘルさん。彼女は包帯を抱えてコチラまで持ってきてくれていた。
「持ってきたよ! 包帯!」
そして、それを渡そうとした時だった。またも大きな揺れが艦内を襲った。
「うわあああっ!」
「あぁぁぁ!! 包帯がっ!!」
ボトボトボトと、地面に転がる包帯類。巻いていたそれらが開放され、コロコロと転がって広がっていく。ラッヘルさんは地面に転がる包帯を必死で拾おうとして、そして泣いた。
「うぅぅぅううううう……わああああああああ……!!」
「泣くな! 文屋!!」
その泣き声をかき消すようにそう大喝すると、自身の白衣を思いっきり破った。ビリビリビリと布の裂ける音が、全員の耳に届いた。誰もがその光景を疑っていた。何よりも大切にしてきた白衣を、マリアンネさんは何の躊躇もなくやぶってみせたのだ。そして、それをビアンカ艦長にあてがえると、包帯のように巻いて、止血をしていた。
その手早い対応に皆が息を呑んでみていた。ビアンカ艦長の安否も気になるという理由もある。すると、いくつか応急手当をしながら彼女は私に聞いてきた。
「……艦長は何故こうなった?」
「か、艦橋に波が……さらわれて、そ、装甲に、激突して、それで……」
「……強く打って気絶したか。当たりどころが悪ければ死んでいたが、おそらく脳震盪だ。じき目を覚ます」
そういう彼女は白衣の一部をあてがえてから少ししてそういった。その言葉に皆がふぅっと安堵した。
その時、悲報のなかで朗報が舞い込んだ。
「急患だよ!! 助けられたんだ!! 私―――」
下着姿のヴィクトーリアさんが、肩で息をし、他の人達と一緒になって男性を支えていた。そう、船員を連れてきたのだ。息をしているが、意識は失っており、応急処置は終えていた。人工呼吸や色んなことで彼を助けたのだろう。
だが、嬉しそうに来たヴィクトーリアさんは、その惨状に笑顔を凍りつかせた。
「艦……長……?」
☆☆☆
それから二時間後。
浸水は停止、排水も完了し、治療も終えた。しかし、ビアンカ艦長は目覚めなかった。そのビアンカ艦長に集まるように全員が其処に居た。狭い艦内だから、後ろの方にいる人達は発令所に、調理室までいて、見えないだろうがビアンカ艦長を想っていた。私達艦橋要員も、ビアンカ艦長を見下ろしていた。
ヴィクトーリアさんがポツリと呟く。
「私の、せいだ……」
ビアンカ艦長のその姿を見て、ほろほろと涙をこぼしていた。
「私が、助けに行くなんて言ったから……!」
「違う!」
だからこそ。だからこそ、私は叫ぶ。それは違う。助けに行くなんて言ったから。それが間違いだ。
「貴女は助けることができた! 救えた!!」
「でも、艦長が、皆が……!」
「大丈夫」
すると、割って艦長室に入ってきたのは負傷したソリナさんだった。そこに、マルテさん、ゲルトルートさんが現れた。
「私も無事だしぃ~」
「余裕余裕。賭けに勝ったから、パンツも戻るし」
「……っ」
すんっと鼻をすすって、二人を見るヴィクトーリアさん。彼女たちの微笑みが、優しいものだった。だから、私は続けて言った。
「間違っていないよ。貴女はよくやった。よくやったよ……」
「航海長……」
そう言って、私はヴィクトーリアさんを抱きしめた。ぎゅっと抱きしめて、背を撫でた。母が良くしてくれたように。すると、艦橋要員の上級休憩室からうめき声が聞こえてきた。
「ぅ……」
『!!』
全員が息を呑んで、彼を見る。まぶたが開き、その青い目が天井を眺めていた。私達が行くより先に、ヴィクトーリアさんが駆け寄り、私達もそこへと駆け寄った。
「……ここは」
よくわからない状況下に、彼はそう呟く。それにエルヴィーラ副長が声をかけた。
「ようこそ、U-101へ。ごきげんいかがかな?」
「……信じられない、生きてるだなんて……」
「……ほら」
段々、意識が覚醒していったのか、状況を飲み込んでいく。そして、私はヴィクトーリアさんを前に押し出した。彼女が間違っていなかった、最大の証。父が成し得てきた、人命救助の成功だ。
「……君だね」
「……あ……」
「ありがとう」
その一言に、彼女の目からまた、大粒の涙が頬に伝った。すると、助けた実感が徐々に湧いてきたのか、顔をクシャクシャにし、涙は止まるところも知らないで、大声で泣いた。
「……うぇぇ……うぇぇぇえええええん!!」
「あわわわ―――ぐぇぇっ!?」
勢いよく私の胸に飛び込んでくるヴィクトーリアさん。思わず車に轢かれたカエルの鳴き声のようなくぐもった声を出してしまった。こ、このやろぉ……。なかなかやりおる……。
そして、そのまま抱きしめて、頭を撫で続けたのだった。
「こぉぉぉかいちょおおおおおお……うわぁぁああん!!」
今後絡んでほしいキャラ
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テア・クロイツェル
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ヴィルヘルミーナ
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その他(名前を挙げていただければ)